著者
土居 修一 中川 明子 吉村 剛 堀沢 栄
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

ヤマトシロアリの採取をするためにアカマツあるいはクロマツ林内で枯れ枝や切り株中を探索した時、褐色腐朽材や健全材ではシロアリが営巣・摂食して居ることには頻繁に遭遇するが、白色腐朽材にはほとんどシロアリが営巣・摂食していない,褐色腐朽材ではセルロースやヘミセルロースなどが優先的に分解されリグニンが残されているのでシロアリの餌としてはむしろ不都合であるが、初期腐朽では適度に柔らかくなって養分もほとんど残されており、また腐朽菌種によっては道しるべフェロモンとして働く代謝産物を作ることもあるため営巣・摂食しやすいと考えられる.他方、白色腐朽材にはリグニンが少なくセルロース、ヘミセルロースが残されており、しかも適度に柔らかくなって営巣・摂食しやすく褐色腐朽材より優れた餌になりうるはずであり、上記の事象の合理的な説明がつかない。本研究の目的はこの理由を萌らかにすることである。昨年度は、京大生存研のシロアリ試験地でトランセクト法による調査を実施し、白色腐朽材がイエシロアリおよびヤマトシロア夢に忌避される傾向があることが確認された。また、2年前に埋設しておいたアカマツステークにおいても同様の現象が確認された。しかしながら分離菌で腐朽した木材を加熱すると忌避効果は示されないことがわかった。そこで、今年度は野外杭試験で暴露された腐朽材を試料として加熱、風乾およびそのままの状態で摂食試験を行ない、そのままの状態では、忌避効果が示されることが明らかになった。この試料につき、凍結乾燥後ヘキサン抽出を行い抽出画分をペーパーディスク法で検定したところ、この画分に忌避活性があることが明らかになった。今後、この画分の活性物質の化学構造を特定するとともに、活性を持つ腐朽菌の探索を行う予定である。
著者
清水 麻記
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

現在、日本には7000館近くの博物館・科学館が存在する。こうした既存のインフラは、施設の維持費が増大こそすれ、これまであまり地域の人々に活用されてこなかった。博物館の教育的役割の重要性がますます高まり、人々のニーズを読み取り、これまでにない教育プログラムの開発・実施や自己収入獲得の有効な方法を見出すことを迫られている博物館にとって、館の自己収入につながり教育プログラムを提供できるバースデー・プログラム(以下BDP)は有効である。このBDPに着目し、事例収集を行った上で、日本の現状に即した日本型のバースデー。プログラムを考案・実施した。得られた結果を以下に要約する。 ・欧米においては、BDPは館の自己収入に有効であり、得られた利益でコミュニティ・アウトリーチ事業を始めるなど、有効な結果も生み出している(家庭へのアウトリーチBDP、館からの招待状などでブランド化)。 ・日本では、個人の来館者のためのお誕生日企画は数例散見されるが、恒常的なプログラム提供にはいたっていない。その理由は、人材不足、館の運営・サービス内容がいまだ多くの通常の来館者へのサービスの充実で精一杯であるという事実に関連している。 ・日本では、公の性質をもつ館が多く、個人的なパーティーを博物館等でもつことが考えにくい傾向があるが、バースデー・コーディネーターの導入が可能になれば新規事業としてのお誕生日企画も可能である。 ・沖縄こどもの国ワンダーミュージアムにおけるプログラム開発・実施より、公共性の高い施設においても、大多数の来館者向けにBDPが可能であることを実証できた。また、お誕生日から連想される「いのち」の大切さをテーマとし、BDPをミュージアムで行う意義があることを核にした教育プログラムを開発し、動物園・水族館には汎用性の高い先行事例をつくることができた。今後も、日本のミュージアムでのお誕生日プログラムの開発に向けて、大人も子どもも含めた来館者がどのようなことを期待しているのか、館側は何ができるのかについて調査・研究していくことが重要である。これにより、博物館が人々の生活に意義のある存在であり続ける方策のひとつが見出せるのではないだろうか。平成4月より、沖縄こどもの国ワンダーミュージアムにおいてお誕生日ワークショップがズタートする。共同研究して頂いた館に、現場で研究成果が引き継がれさらに発展したお誕生日プログラムが開発されていくことは、本研究において最も嬉しい成果である。
著者
水野 広祐 河野 泰之 甲山 治 小座野 八光 遠藤 尚 渡辺 一生 加納 啓良 加納 啓良 プジョ スメディ ノーフボーム フルベン スカイク アルトゥール・ファン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

インドネシアの民主化と地方分権化、さらにその後の経済成長はジャワ島農村を大きく変化させ、土地を持たない世帯が80%を占めるに至り、1904年の32%、1990年の56%を大きく上回った。この変化は、世帯規模の縮小と世帯数の増加、農村内非農業部門の展開と、ジャカルタなどへの出稼ぎ労働力の結果であり、人口増加はこの間、少なかった。19世紀後半、森林や灌漑排水の国家による整備管理が進んだ。しかし、民主化・分権化の結果、それまのでサトウキビの栽培強制が2世紀ぶりになくなり、土地利用の自由化が進んだ。今日、住民の創意が生かされ、集約農業(赤玉ねぎ等)や非農業(煉瓦つくり)、私有地植林が展開している。
著者
遠藤 智美
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

音声知覚時において、視覚情報から得る音響要因としてフォルマント周波数に着目し、フォルマント周波数以外の音響要素を揃えた母音を用いて母音弁別課題を実施し、課題遂行時の脳波を計測した。健常成人を対象とした脳波計測の結果は、有意な波形差は認められなかったが、皮質下に電極を留置した難治性癲癇患者に対して実施した皮質内脳波計測では、音声のみの提示で音声提示から200ms以内に、左外側側頭葉後部で認められた母音ごとの差が、視覚情報と同時に提示すると認められなくなった。これは、口の形という視覚情報があることで聴覚野近傍の神経応答が変化することを示唆する。
著者
大村 廉
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では, センサデータに欠損が生じた場合にも適切に行動の推定を行うことが可能な行動認識手法の検討を行った.行動認識で用いられるパターン認識のプロセスから,欠損センサデータの補完,欠損特徴量の補完,識別処理での対応,を検討した.具体的には,センサデータの補完には ARAR モデルによる系列データ予測を用いた.欠損特徴量の補完には重回帰およびカーネル回帰による予測を用いた.識別処理での対応には,あらかじめ人工的にセンサデータを欠損させたデータにより学習させた識別器を欠損部位ごとに作成し,欠損状況に併せて選択するようにした.実験の結果,識別器で対応するよりも,センサデータおよび特徴量を補完する方が多くの場合性能がよくなることがわかった.また,欠損部位によって適切な対応方法が異なることがわかった.欠損部位に適した補完方法を用いることで,欠損が無い場合にほぼ匹敵するか,あるいは 0.03 ポイント(F 値)程度の性能低下で欠損データへの対応が可能であることがわかった.
著者
山本 啓一 三村 徹郎 矢島 浩彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

車軸藻内では非常に早い原形質流動が起こっている。この流動は、きんにくと同じミオシン・アクチン系によることが示唆されてきたが、そのミオシンの形態や運動能力については良く判っていなかった。そこで、我々は、オオシャジクモChara corallinaのミオシン抗体を用いて車軸藻cDNAライブラリーをスクリーニングし、このミオシンをコードする遺伝子をクローニングした。読みとった塩基数は8384で、その中に翻訳領域6471塩基対(2157アミノ酸)が含まれていた。計算によって求められた分子量は245532で、生化学的に得られたシャジクモ・ミオシンをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳道にかけることよって決められた値と良く一致していた。得られたアミノ酸配列から二次構造予測を行ったところ、N末端にATP加水分解部位やアクチン結合部位を含む球状構造、それに続いて軽鎖結合部位と考えられるIQモチーフ、コイルドコイルを作る領域、そして尾部末端の球状領域からなることが示唆された。この構造は、我々が以前に電子顕微鏡で観察したものと非常に良く一致していた。さらに、遺伝子の一部を大腸菌内で発現させ、それに対する抗体を作ったところ、この抗体は性化学的に得られたシャジクモミオシンと反応した。以上の結果から、我々がクローニングした遺伝子は、間違いなくシャジクモミオシンのものであると考えている。
著者
松本 ディオゴけんじ
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当該年度に実施した研究の主要な成果は以下の通りである.1. ベキ等なヤン・バクスター写像の構成とバブルソートとの関係全順序集合の要素をいくつか並べ, 隣り合う要素の大小を比較しながら整列させるソーティングアルゴリズムをバブルソートと呼ぶ. バブルソートは可積分系における重要な研究対象である超離散戸田分子方程式, 箱玉系と関係があることが知られており, バブルソートに現れる"隣り合う2元を大小関係に従って並べ替える写像"は全順序集合上のベキ等なヤン・バクスター写像を与えていることが示されている. そのため一般のベキ等なヤン・バクスター写像はバブルソートの一般化と考えられ, ベキ等なヤン・バクスター写像の構成は超離散可積分系を理解するための新しい視点を与える重要な研究対象であると考えられる.本研究では, 分配束(全順序集合を含む代数系)上のベキ等なヤン・バクスター写像を考察することにより, 二つの非可換な二項演算を持つプレ・半環に吸収律を緩めた条件を追加して得られる代数系からベキ等なヤン・バクスター写像が構成されることを示した. また, この代数系は零環(積が零元となる自明な環)を含んでおり, 去年度研究をした半群上のベキ等なヤン・バクスター写像の延長上の研究である.2. 上述の代数系の構造と余積の調査分配束は上述した代数系の重要な例であり, 上述の代数系で消約律や可換律が成立をするものを考えることにより, 分配束が得られることを示した, また, 適切な条件を考えることによりこの代数系上の余積の族が得られることも示した.
著者
平田 研二
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

次世代の分散型エネルギー需要・供給ネットワークにおける供給家, 需要家を自身の利得確保を追求するエージェントと捉える. また, 社会としての公共の利得確保を目指す独立した行政機関に対応するユーティリーを想定する. 本研究では, ユーティリティーによる価格 (税金/補助金) の提示とエージェントの分散意思決定の相互作用により, エネルギー需要・供給ネットワークの最適な運転状態への誘導を可能とする. また提案する運用方策を太陽光発電システムにおける電圧変動抑制問題, 配電系統における電圧変動の抑制問題, 電気自動車の分散型充電管理といった実際的な課題への適用し, 有効性を検証する.
著者
田名部 雄一 岡林 寿人
出版者
麻布大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.インドネシアの在来件犬について調査した。バリ島で3ケ所から100頭、カリマンタン島で5ケ所から100頭を採血し,血液タンパク質の多型を主に電気泳動法により調査した。また外部形態についても調べた。インドネシア在来犬の外部形態は一定していない。赤、黒、白などの単色の他、赤虎、黒虎、黒ゴマなどが多い。全て立耳で殆ど差尾であった。吻は長く、ストップは極めて浅い。舌斑はカリマンタン島では61.6%と高く、バリ島では7.2%と少ない。小型で体高36〜41cm、体長39〜44cmであった。血球グルコースホスフェイトイソメラーゼ(GPI)に今までに知られていないGPI^C、GPI^Dの多型がかなり高い頻度で認められた。GPI^Dはモンゴル在来犬にも低い頻度で存在する。東北アジア犬に独特の遺伝子であるとみられていたヘモグロビンA(Hb^A)は、インドネシア在来犬ではHb^Aに固定されていた。もう1つ東北アジア犬に独特の遺伝子ガングリオシドモノオキシゲナーゼg(Gmo^g)インドネシア在来犬では極めて低く、カリマンタン島の犬では皆無であった。このようにインドネシア在来犬には、東北アジア犬の特色をも持っていた。主成分分析を行った所、インドネシア在来犬はモンゴル在来犬と近く、韓国在来犬とは遠い距離にあった。このことからインドネシア在来犬が直接琉球列島を経て日本列島に入った可能性は低い。インドネシア在来犬とモンゴル在来犬の間には、かつて相互に遺伝子の交流があった可能性がある。2.モンゴルに生息するオオカミのさらに追加して調べた所、Hb^Aの頻度は0.875、Gmo^gの頻度は0.293となった。この2つの遺伝子はアジア犬に高い頻度で見出される遺伝子であるが、ヨーロッパ犬では低い。また、インドオオカミやヨーロッパオオカミには見出されない。このことからアジア犬の成立には、東アジアにいるオオカミ(Canis lupus chanco)の遺伝子の流入の可能性が高い。
著者
廣川 美子 瀬口 哲夫 岡村 穣 伊藤 恭行 阪口 明弘 寺田 博一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究費により以下の1.〜5.を行なった。1.蛍光X線分析装置(アワーズテック製:OURSTEX 100FA)・デジタル顕微鏡(キーエンス製:VH-8000)・分光測色計(ミノルタ製:CM-2002)を用いて、土壁の色彩及び発色元素の測定を行なった。測定場所は、京都市桂離宮御殿中書院(一の間、大ばらし工法で江戸時代の壁が残っている)、京都市妙法院(庫裏)、佐原市加瀬家(仏間)、京都市大徳寺玉林院、札幌市八窓庵、京都市杉本家、京都府綴喜郡田辺町澤井家、犬山市如庵、京都府大山崎町妙喜庵待庵、如庵写し〔京都市正伝如庵,京都市長好庵,和歌山市遊風〕、京都市島原の角屋である。加えて土壁の施工方法の解明の可能性を考察した。2.全国の伝統的建造物群保存地区のうち14の街並と内外土壁の色彩の調査を行なった。調査した街並は、千葉県佐原市佐原、埼玉県川越市川越、福岡県甘木市秋月、福岡県吉井町筑後吉井、北海道函館市元町末広町、兵庫県神戸市北野町山本通、京都市上賀茂,産寧坂,祇園新橋,嵯峨鳥居本、岡山県川上郡成羽町吹屋、鹿児島県出水市出水麓,薩摩郡入来町入来麓,川辺郡知覧町知覧である。3.佐原市佐原及び奈良県橿原市今井町の伝統的建造物群保存地区の再生計画を検討した。4.石田志朗博士の協力により、聚楽土と思われる土の地質学的成因の分析実験を従来からに引き続き行ない考察した。5.海外調査を行なった。5-1.中国福建省(南靖と永定)の土壁よりなる土楼及びその保存地区の町並の現地調査を行なった。5-2.スペイン・カタルーニャ地方の土壁を持つ伝統的集落の現地調査を行なった。
著者
黒川 隆志 上田 毅 黒坂 志穂
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

持久走中の生理学的特性や運動学的特性,走者の意識から生涯体育につながる持久走の指導法を検討した.小学5年生男子30名(1,000m),中学2年生男子57名(2,000m),高校2年生男子27名(3,000m)を対象に,①最大努力の全力法,②「ややきつい」感じのRPE法,③走能力により走距離を選択する内回り法の3つの持久走を実施した.中学生と高校生の全力法では走速度と心拍数の経時的低下から,高い運動強度による疲労感や痛みが持久走嫌いを助長した.RPE法と内回り法では持久走中,走速度と心拍数が維持された.RPE法が最も好まれた方法であった.小学生では,3種類の持久走間に顕著な差はなかった.
著者
水谷 規男 山口 直也 上田 信太郎 岡田 悦典 京 明 緑 大輔 笹倉 香奈
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、刑事法研究者及び実務家からの聞き取り調査をアメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ等の国々について行い、司法取引制度ないしそれに類似する実務が英米法系の国々においてだけでなく、従来は取引に否定的であると考えられてきた大陸法系の国々においても、司法の効率化のために存在していることを明らかにした。これに対して、我が国で導入が検討されている刑事免責制度や捜査・公判協力型協議・合意制度は、訴追側と弁護側の取引を容認するものであるものの、司法の効率化よりも供述の獲得にウエイトがある点に特徴があることを明らかにした。
著者
森川 治 戸田 賢二 前迫 孝憲
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

Windowsで動く、遠隔学習システム(動画の解像度が320x240画素)を試作し動作確認した。動画部の解像度不足のため、教育現場で実証実験はできないとの評価が出た。高解像度化・映像合成のハードウエア化を検討した。映像合成システムの使いにくさは、ディスプレイが単一のビデオ信号だけを表示するように設計されている点にあると考えた。全画面、フレームレートという概念を持たない、新しいビデオ信号の提案を行った。提案したビデオ信号を使って、お互いに情報交換することで、表示位置と縮尺率を決定する自律型カメラと、それを表示する表示装置を設計した。出願していた映像表示装置の特許 5548898を取得した。
著者
小宮根 真弓
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ST2LはIL-33受容体であり、可溶性ST2はIL-33とST2Lの相互作用およびそのシグナル伝達を阻害することが報告されている。われわれは、野生型マウスおよび可溶性ST2トランスジェニックマウスを用いて、FITCあるいはオキサゾロンによる接触過敏反応について検討し、組織学的にも検討したが、野生型マウスと可溶性ST2トランスジェニックマウスの間で、統計学的有意差は認めなかった。また、培養表皮ケラチノサイトを用いて、IL-33の産生メカニズムに関する検討を行った。その結果、UVB、IL-17、IFNγによってIL-33産生が誘導され、その誘導はEGF受容体に依存していることが明らかとなった。
著者
河鰭 一彦
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は柔道の衝撃負荷定量化をし科学的エビデンスに基づく安全に柔道を学習するための新資料の提供を目的とした。本研究は柔道初習者が最初に学ぶ受け身に焦点を当てた。なぜなら受け身は学習者が受ける衝撃負荷を全身運動をもとに緩衝する技術であり事故防止には重要な学習項目である。研究を進める中で以下の点があきらかになった①柔道熟練者はどの方向に投げられても採用する受け身は「横(側方)受け身」であった。②「横(側方)受け身」は「後ろ(後方)受け身」と比較して大外刈りを施された際の頭部動揺が小さい傾向があった。③「横(側方)受け身」の頭部動揺が小さい理由は「横(側方)受け身」頭頸部筋力の有効活用があった。
著者
戸田 由紀子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、トニ・モリスンの小説が「母性」の言説をどのような政治的レトリックとして用いているかを、「共和国の母」の理念と「近代母性のイデオロギー」といった19世紀に大量生産された「母性」の言説と、黒人女性との歴史的関係を踏まえて考察した。公民権とフェミニズムを経た現代黒人文学では、黒人女性たちの多様な「母性」を自己定義することができるようになった。しかしその一方で、奴隷制や人種間の非常にデリケートな問題を扱う場合には、白人の「近代母性のイデオロギー」が戦略的に用いられていることを分析し、人種とジェンダーの問題が根強く残るアメリカ社会をモリスンの小説が提示しながら批判していることを論じた。
著者
佐野 博之
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

この研究の目的は、財政的外部性を伴う地域間競争で長期的に優勢となる政策策定者の選好のタイプについて調べることである。そのために、間接的進化アプローチを用いて、地方政府間の支出競争の簡単なモデルを構築した。Edwards and Keen(1996)に従い、政策策定者の選好は住民の厚生と政策策定者にのみ便益をもたらす財政的余剰によって定義されるものと仮定した。選好のタイプは進化的均衡として内生的に決定されるものとし、純粋にbenevolentな政策策定者は長期的に生き残れないことと、住民の厚生がナッシュ均衡と比較して小さくなることを示した。しかしながら、現時点でこの研究は完成していない。
著者
西田 浩之
出版者
東京農工大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

流体制御デバイス(DBDプラズマアクチュエータ)により細長形状の飛翔体周りの流れを能動的にコントロールし空力特性を制御するコンセプトを実証するため,風洞実験と数値シミュレーションを行った.飛翔体の前胴と後胴の右舷と左舷にそれぞれアクチュエータを取り付け,別々に駆動することで縦と横の空力(ピッチングモーメントと横力)を比例的に制御できることが実験により実証された.シミュレーションにおいては剥離流れの構造を再現することに成功し,より効率的な制御方法を探る為の知見を得ることができた.
著者
宮島 昌克 清野 純史 能島 暢呂 鶴来 雅人 吉田 雅穂 池本 良子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地震発生直後に管路に直接的な被害が無くとも急激な流量の増加と水圧の低下といった配水システムにおける異常事態に着目し,被害地震が発生した際にアンケート調査を大規模水道事業体に行った。さらに,この現象が貯水槽の水のスロッシングによる水位センサーの誤作動によるものであることを明らかにし,今後発生する巨大地震による長周期・長継続時間地震動が配水システムの異常挙動に与える影響を明らかにした。
著者
清水 宏泰
出版者
大阪医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

メダカのエラ上皮細胞を用いて水生生物に対する化学物質の影響評価方法を確立しようとした。メダカのエラ細胞の分離、パッチクランプ法によりホールセルモードで電流を観察することは容易であったが、いったん化学物質を暴露するとシーリング率が落ち、画一的・再現性のある結果を得ることは難しかった。イオンチャネルを評価する場合、遺伝子破壊メダカ等によるバイオアッセイを組み合わせるのがよいと考えられた。