著者
桑田 正明 佐々木 千一 鎌田 実 岩上 健
出版者
一般財団法人日本海事協会
雑誌
日本海事協會會誌 (ISSN:02870274)
巻号頁・発行日
no.257, pp.237-243, 2001

船舶の機関室には火災探知器の設置が義務づけられているが、煙探知器においては、機関室内の気流の影響で探知器が有効に作動しない場合がある。発火源のほとんどが重油等の可燃性油であることから、本報では、探知器高さや気流影響を考慮して、重油燃焼時の煙探知器の作動特性を明らかにする。また、船舶の海上試運転時に実施される火災探知器の効力試験を想定し、重油燃焼の場合と同等と見なしうる発煙筒を用いた効力試験の方法についても述べる。
著者
ローシュングリ アブリミテイ 岩元 泉 坂爪 浩史 高梨子 文恵
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.37-53, 2005-03-01

現在,新彊ウイグル自治区の農村女性において教育レベルの格差が拡大している。そこで我々は農村地域における女性の教育レベルの現状,および低学歴が家庭経済状況とどのような関係にあるかを明らかにすることを目的として,トルファン市ヤル村およびウルムチ県三坪農場の2つの地域で調査研究を行った.この2つの村で調査した結果,ウイグル農村女性においては教育機会が乏しく依然として低学歴状態に置かれていることが分かった.また,伝統的慣習による早婚の傾向,早婚による離婚,さらに低学歴に深い相関関係が見られた.これらは低い経済生活水準とも相まって,悪循環に陥っている.しかし次第に女性の収入が世帯の収入に寄与する割合も高くなってきている.経済的収入機会を増やすことが農村女性の地位向上には重要であることが明らかになった.
著者
小滝 篤夫
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.17-24, 2004-03-25
参考文献数
9

田倉山火山は,スコリア丘と溶岩台地からなる.溶岩は下位から小倉・衣摺・田倉山溶岩の3種に区分され,スコリア丘は田倉山溶岩流出後に形成されたことがわかっている(田倉山団研1984).スコリアの風化が進んでいるため,スコリア丘の層序をスコリア中の重鉱物組成によって確立することは困難であったが,新たにスコリア中に残る鉄-チタン鉱物の化学組成の分析を行ない,田倉山溶岩とスコリア丘を構成するスコリア層を対比した.また,JR夜久野トンネル工事のボーリングコアや工事中の露頭から得た試料により,溶岩の基盤岩の形態を検討した結果,田倉山団研(1984)が述べた基盤岩の高まりは見られないことがわかった.
著者
岩村 忍 栗田 宣彦
出版者
JAPAN SOCIETY FOR HEAD AND NECK SURGERY
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-10, 1996
被引用文献数
12

片側麻痺声帯の固定位置が正中線から外側にむかって離れれば離れるほど,音声障害や嚥下障害の程度は増強する。したがって,中間位固定症例の方が正中あるいは副正中位固定例よりも障害は強い。治療法として内視鏡的または経皮的に,麻痺声帯外側にむけてシリコン,テフロン,コラーゲン,脂肪などの注入術がおこなわれ普及をみた。しかし,麻痺声帯の正中移動の程度に限界があり,加えて,麻痺声帯の厚み矯正,張力獲得,前額面における両声帯間のレベル差矯正などが期待できかねた。これらの短所を補う治療法は,恐らく披裂軟骨内転術であろう。この方法の歴史は決して新しくない。披裂軟骨に直接ふれ,これを内転固定させるという思想のもとに,喉頭截開して前方から接近する方法や,甲状軟骨後端から接近する術式が試みられた。術式が複雑である。 われわれは披裂軟骨に附着せし外側輪状披裂筋に着眼した接近法を開発した。生理学的に同筋収縮は声帯の全長にわたる正中移動を招来することが知られているゆえ,同筋をその走行方向に牽引固定すれば,同筋収縮と同じ結果をえられると推定し,38例の片側声帯麻痺に手術した。局所麻酔のもと,甲状軟骨板に在る斜線を一里塚とし,この直前に,小さな窓を開け,甲状軟骨内膜を切除して同窓内に外側輪状披裂筋を直接露出した。同筋に糸をかけ,窓の前下方に牽引固定することにより,好成績をえた。術式と結果を詳述する。
著者
犬塚 康博
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.18, pp.15-25, 2009-03

新京動植物園は、満洲国の首都新京特別市にあった。上野動物園園長古賀忠道の指導のもと1938年に着工され、仙台動物園園長を辞した中俣充志が園長に就いた。広大な敷地に設けられた同園は、動物園と植物園の総合という分類学展示から生態学展示への転換、動物展示における無柵放養式の全面的採用、動物の北方馴化、教育と研究の主導と娯楽の後退、産業への応用など、斬新なテーマを多くもりこんで計画された。指導に際し古賀が「あまり日本の動物園のまねはしないで下さい」と主張したのに即せば、同園は〈日本ならざる未来〉であったと言える。無柵放養式と北方馴化はドイツのハーゲンベック動物園をモデルとしており、狭義には〈極東のハーゲンベック〉を目指したと言うこともできるだろう。同園は完成することなく1945年に終焉するが、北方馴化のテーマは北海道の動物園へ、無柵放養式のテーマは多摩動物公園での本格的採用へと、それぞれ継続した。
著者
齋藤 亮子 沼澤 さとみ 二口 尚美 太田 優子 長岡 美紀子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-54, 2003-03-01

この研究の目的は、THA(人工股関節全置換術)の予定者が入院以前にクリニカル・パス(診療情報)を入手してから入院までにどのような過程を経て医療に自発的に参画するようになるのか、その過程とそのパターンの種類を明らかにして考察を加えることである。それは情報の提供の仕方と、その後の援助について検討する資料となると考える。対象は本研究に参加の承諾が得られた患者10名である。研究デザインは質的記述的方法を採用した。データ收集は半構成式質問を用いた面接を行い、許可を得て録音し、面接後文字再生してデータとした。分析は継続的比較検討法を用いた。その結果患者はパスを受け取ると1.パスを見る・読む、2.驚き戸惑う、3.情報の確認、4.医療者を信頼、5.自己像の再構築、6.意思固め、7.取組の表明の7ステップをへて自発的参画にいたっていたが、これらのステップの組み合わせのちがいによって、パターンが3つあった。1)自発性のパターン、2)乗り気パターン、3)気乗りしないパターンがあった。それぞれのパターンに応じた援助が必要であると考えられた。
著者
許 蓉
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.121-127, 2012-03-01

日本の文化は「恥の文化」であろうか、「菊と刀」が定義した「恥の文化」とはどのような本質を持っているか、筆者は先行研究を踏まえ、日本・西洋以外の第三の外国人の視点から日本の文化を考えてみたい。「恥の文化」は日本独特な文化で、「集団性」と「儒教的精神性」の二つの側面を持った文化である。その文化は日本の自然条件や外来文化の影響によって形成されたもので、プラスとマイナスの両面を持っており、日本の学校と日本の社会に大きな影響を及ぼしている。昨今のグローバル化時代に求められている人材は「自主行動型」である。従って、恥の文化による協調性と集団性は素晴らしいものであるが、それだけでは今の時代に生き抜いていけない、個性と自主行動性も求められている。今後、恥の文化はどのように変遷し、日本を景気低迷の中から、そして地震、津波、原発の破壊から立ち直らせていくのか、今後の研究課題にしたい。
著者
亀井 雄一 岩垂 喜貴
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.11-17, 2012-02

睡眠は,子どもの行動・発達において非常に重要である.しかし,子どもの睡眠に関する重要性はさほど浸透していない.日本では生活の夜型化と睡眠時間の短縮化が著しく,子どもにおいても同様である.睡眠時間の短縮や生体リズムの変調は,脳や身体の発達に影響を与える.また,肥満のリスク因子であることが指摘されている.さらに,日中の眠気,集中力・記憶力の低下,抑うつやイライラといった精神症状,頭痛・肩こりなどの身体症状を引き起こす.子どもの健康な生活のためには,適切な睡眠時間の確保と規則正しい生活習慣が重要である.子どもにとって,よい睡眠習慣とともに睡眠障害も見逃せない問題であるが,その対応も不十分である.その理由として,年齢によって出現しやすい睡眠障害が異なること,子ども特有の症状を示すこと,などが考えられる.本稿では,子どもの睡眠習慣とその問題点,子どもによくみられる睡眠障害とその特徴,行動・発達障害にみられる睡眠の問題,について概説する.よい睡眠習慣と睡眠障害の適切な診断・治療が,子どもの発達と生活のために重要である.
著者
石野力 米澤朋子 中祐介 吉田侑矢
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.34, pp.1-6, 2013-08-24

本稿では参加者同士が交代で短い演奏情報をシーケンスに投入するネットセッションシステムを提案する.演奏知識や技術を持たなくても単純な音楽情報を交換することでメロディを連鎖させることが可能なシステムである.今回は 4 ステップのシーケンサを用いる手法と,4 本の指に曲げセンサを装着した手袋による手法を紹介する.従来のセッションとの違いは同時性である.本システムでは,非同期でありつつ短い音楽フレーズを投げ合い,つなげた連結フレーズをループ再生し続けることで,お互いの音を聞き,掛け合いのようにして楽しむことができる.これにより,簡単に相手と協調演奏ができる新たな音楽コミュニケーションを成立させることを狙う.
著者
北村 光二
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 = Primate research (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.109-120, 2008-12-20
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

This paper aims to consider why the sphere of social phenomena is significant in the study of primates, including humans, and what aspects of the phenomena we should focus on in order to understand its significance. Although the process of making relations with others may easily become undecided, it may not be retained. We humans cope with such undecidability by paying attention to the motivation of activity easily shared by participants, or adequate readiness for regulating each other's interaction. This does not mean that the social sphere is independent of other spheres, but these characters are common to the activities of making relations with the natural environment for surviving. The social sphere should be placed in the larger range of phenomena produced by the activities of making relations with the outer world in general. An individual animal tries to decide his act of making relation with an object depending on the meaning of the object, while he tries to identify the meaning depending on his act of making relation with the object. Here, the undecidable circle is formed. The same situation is found in the case of making relations with others. That is to say, one tries to decide his act to the other depending on the other's act while the latter decides his act depending on the former's act, so that the undecidable circle is also formed here. The undecidability in the process of making relations with objects is usually perfectly hidden. However, the other's selection in the process of making relation with the object is always apparent in the social sphere. The other not only makes the undecidability apparent by making a different selection from my own, but also teaches a new way of coping with it by sharing the motivation with him or regulating the process of interaction with him.
著者
高橋 一正 畔 和夫 奈良部 幸夫 今井 昭生 小西 優介 天田 巌 宇田川 毅 草葉 義夫 村松 岳彦 天野 壮泰 谷岡 慎一 市野 富雄 中野 清志 村上 一方
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1571-1575, 1989

波長可変レーザー装置を用いてcis-ビタミンK2(cis-VK<SUB>2</SUB>)→trans-ビタミンK<SUB>2</SUB>(trans-VK<SUB>2</SUB>)の光異性化反応を試みた。cis-VK<SUB>2</SUB>またはtrans-VK<SUB>2</SUB>の溶液に紫外から可視領域のレーザー光を照射し,それぞれの異性化量を測定した。その結果,cis-5-VK<SUB>2</SUB>→trans-VK<SUB>2</SUB>の異性化に有効な波長は280~460nmであり,とくに435と355nmが高い異性化率を示した。trans-VK<SUB>2</SUB>→cis-VK<SUB>2</SUB>の異性化反亦も同時に進行するがその速度は遅く,光平衡組成はtrans-VK<SUB>2</SUB>/cis-VK<SUB>2</SUB>7/3となった。また異性化反応は溶媒の影響を受け極性溶媒よりも無極性溶媒が有効であった。cis-VK<SUB>2</SUB>→trans-VK<SUB>2</SUB>の異性化はテトラプレニル側鎖中のナフトキノン骨格にもっとも近い二重結合で起こり,他の二重結合部では起こらず選択的反応である。窒素雰囲気下でのおもな副生成物はメナクロメノロ一ルであった。これらの結果から異性化反応過程を推定した。
著者
北村 俊平
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.25-37, 2015
被引用文献数
1

鳥類は地球上のさまざまな生態系において,多様な生態系サービスを担っている.本総説では,鳥類による花粉媒介と種子散布についての知見をまとめた.動くことのできない植物にとって,花粉媒介と種子散布は自らの遺伝子を広げる数少ない機会の一つであり,多くの鳥類が花蜜や果実を餌資源として利用している.自然実験を利用した研究から,花粉媒介者や種子散布者である鳥類を喪失することで,実際に植物に花粉制限が生じ,更新過程が阻害されている事例や群集レベルでも種子散布が機能していない事例が明らかになってきた.現段階では例数は少ないものの,鳥類による種子散布の経済的価値を評価した研究も行われている.スウェーデンの都市公園では,公園内の優占樹種であるコナラ属の種子散布者であるカケス1ペアの経済的価値は,人間が種子の播種や稚樹の植樹作業を行った場合にかかる費用に換算すると58万円から252万円に相当する.一方,鳥類は優秀な種子散布者であるがゆえに外来植物の分布拡大を促進する負の側面も知られている.これまで見過ごされてきた鳥類による花粉媒介や種子散布の情報を蓄積していくことで,それらの生態系サービスをうまく活用する方策,ひいては鳥類を含む生物多様性の保全に結びつけていくことができるのではないかと期待される.
著者
田中 俊行 小川 哲史 池谷 俊郎 竹吉 泉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.1891-1895, 2007

当院悪性腫瘍患者への告知率は78%である. 告知を受けていないがん患者と主治医の立場から当院の告知のあり方を検討した. 2005年4月から2年間にチームが介入した患者566例を依頼時のがん告知で「告知なし」「原疾患まで (以下, 原疾患) 」「転移まで (以下, 転移) 」「予後まで (以下, 予後) 」の4群に分けた結果, 「告知なし」11%, 「原疾患」28%, 「転移」52%, 「予後」9%であった. 「告知なし」の平均年齢 (77歳) はその他の群に比べ有意 (p<0.01) に高い値であった. 「告知なし」は, 男性19例, 女性41例と女性が多かった. 「告知なし」のチームの関与日数は16日で, 「原疾患」や「転移」に比べ有意 (それぞれp<0.01) に短かった. 死亡の割合は, 「告知なし」が明らかに高かった (67%). 主治医の医療従事年数は「告知なし」12年で, 「転移」や「予後」に比べ有意に (p<0.05) に短く, 一方10年以下の割合は一番高かった (42%). アンケートで, 全医師は告知が必要と考えているが, がん患者を受け持つ医師は「患者に聞いてから告知をする」を含めても患者主体の告知は41%であった. がんを受け持つ医師は経験年数が少ないほど家族にゆだねる傾向にあった. 高齢の患者に, 医師 (特に医療従事年数の比較的短い医師) と家族で告知を決めている傾向があるかもしれない. 今後医師への教育が必要になってくる.
著者
小林 尊志 野田 雅文 出口 大輔 高橋 友和 井手 一郎 村瀬 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.457, pp.165-169, 2011-02-28
参考文献数
6
被引用文献数
1

近年,Twitterに代表されるWebサービスの登場により,多くの人々が放送映像を視聴しながらリアルタイムに意見や感想を投稿するようになった.本報告では,Twitterを利用することで視聴者の意見を大量に自動で収集し,視聴者視点による要約映像の生成する手法を提案する.提案手法では,まず,視聴しながらリアルタイムに投稿されたTwitterの"実況書き込み"から,投稿者が応援するチームに関する属性を判別する.そして,同一チームを応援する視聴者の実況書き込みの状況から,視聴者の意見を反映した要約映像を自動で生成する.実験では,Twitterにおけるプロ野球の試合に関する実況書き込みを利用して中継映像の要約映像を生成し,提案手法の有効性を確認した.
著者
窪田 篤彦
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1984

博士論文