著者
岩久 正明 福島 正義 岡本 明 子田 晃一 児玉 臨麟 吉羽 邦彦 鮎川 幸雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、ウ蝕への系統的対応のためのクリニカルカリオロジーを確立することを目的として、これまでの一連の研究成果を総合的に検討するとともに臨床対応へのシステム化を図ることである。主要な結果は以下のとおりである。1.ウ蝕の各ステージにおける病態の分析・診断(1)レーザーによるウ蝕診断法ついてその有用性を明らかにした。(2)ウ蝕治療後における抗原提示細胞の局在とその動態を免疫組織化学的に検索した結果・修復処置後も長期間残存するが明らかにされた。2.感染症としてのう蝕への対応(1)ウ蝕象牙質から高頻度に検出されるPseudoramibacter alactolyticusの遺伝学的多様性が明らかにされた。(2)in vitroにおける人工的バイオフィルム形成モデルを確立し、抗菌剤効累の判定におけるその有用性を明らかにした。3.ウ蝕治療(1)Er: YAGレーザーよる歯質蒸散部の微細形態、切削効率、および歯髄反応について検討し、その臨床応用への有用性が明らかにされた。(2)象牙質・歯髄複合体の修復、再生メカニズムの解明の一環として、直接覆髄処置後ならびに歯牙移植実験モデルにおける硬組織形成過程を免疫組織化学的に観察し、この過程における非コラーゲン性タンパクの関連性を明らかにした。(3)難治性感染根管症例への対処法として、混合抗菌剤の応用を検討し、根管内貼薬の基材としてのプロヒレングリコールの有効性が認められた。4.術後の再感染予防再発予防のための抗ウ蝕性修復材に関する研究の一環として、各種フッ素徐放性修復材料による歯質の強化(耐酸性)が明らかにされ、臨床応用への有効性が示唆された。5.術後指導、定期診査、リスク評価要介護高齢者の口腔ケアのために新たに開発された口腔ブラシのプラーク除去効果と臨床応用への有用性が示唆された。
著者
矢野 武志
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

敗血症性ショックは、過度の血管拡張がもたらす持続的な低血圧状態であり、血圧の維持に難渋する場合が多い。血管拡張の原因物質は過剰な一酸化窒素であり、これは高度な炎症の結果発現した誘導型一酸化窒素合成酵素によって作り出される。過剰な一酸化窒素存在下ではカテコラミン類の感受性が低下し、有効な昇圧作用を得るためには多量に投与する必要がある。血管平滑筋の収縮と弛緩は、平滑筋構成タンパク質であるミオシン軽鎖のリン酸化および脱リン酸化によって引き起こされる。本研究では、ラットから摘出した大動脈を用いて、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬の血管収縮作用について調べた。ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬は濃度依存性に血管収縮作用を示し、一酸化窒素供与体であり血管拡張物質であるニトロプルシドナトリウム存在下でも血管収縮作用は変化しなかった。また、血行動態への影響を調べるため、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬をラット生体モデルに経静脈的に投与したが、血圧と心拍数に変化は生じなかった。
著者
中山 茂樹 積田 洋 鈴木 弘樹 鈴木 弘樹
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

隔離室の調査分析では、1、 変化の乏しい閉鎖された空間で、空間要素を改良することは、患者の空間に対する満足度をよくする。また、唯一外的情報としての窓からの風景は、患者にとって重要な空間要素である。2、 隔離室に長期入院するほど患者は、安全・安心感において良い評価となる。3、 入院回数が1回の患者の全員が、自宅が安全・安心・居心地がよいと回答し、複数回の入院患者は隔離室が安全・安心・居心地がよいと回答する割合が増えてくる。共用エリアの調査分析では、1.統合失調症患者および認知症患者において、1人あたりの空間量的増加や空間が新しくなるなどの環境の変化は、身体的症状、睡眠障害などを改善する。
著者
奥島 美夏 永井 史男 金子 勝規 池田 光穂 石川 陽子
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は引き続きASEANにおける看護・介護人材の調査を中心に進めた。まず、奥島はマレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムで現地調査を実施した。本プロジェクト初のマレーシア・ブルネイの調査では、保健省・看護師協会・大学などを訪問し、政策方針、外国人看護師の受け入れ状況、看護教育、卒業後の進路などについてインタビューを行った。両国はインドネシアと同じマレー語圏だが主に受け入れ国であり、しかし近年は現地看護師のシンガポールや中東への流出にも苦しんでいることがわかった。金子はタイ、カンボジアにおいて現地調査を実施し、医療政策や病院経営などについて調査を進めた。また、インドネシアにも奥島の調査に合流し、地方部(東カリマンタン州)における保健医療の現状を探るため、保健所(地域保健センター)、助産院、看護学校、現地民の自宅介護などについて参与観察・インタビューした。地方部では海外就労の機会は少ないが、結婚・出産・育児などのライフステージに合わせて大学や大学院への進学や、昇進にむけたプロモーション(地方勤務)などを行い、長期的な勤務を続けていくことが可能であることがわかった。永井は金子、および研究協力者の河野あゆみ教授(大阪市立大学看護学部)と、タイにおいて共同調査を実施し、医療政策や看護教育のほか、介護制度の普及と自治体の役割について調査した。なお、同教授には次年度の成果論集にて、主に看護教育面に関する報告・執筆などでも協力を依頼する予定である。さらに日本国内では、石川がEPA看護師や所属機関関係者へのインタビュー、池田は多様な保健医療の在り方と今後の動向について講演を行った。
著者
岩船 昌起 鈴木 雄清 境 洋泉 木下 昌也
出版者
志學館大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

体育学・医学等での身体活動に関する成果をスポーツ環境の評価に展開するため,"拍速"という運動効率の新指標を提唱した。拍速は,1拍当たりの移動距離(meter/beat)を示し,酸素脈や一回拍出量と関連する。本研究では,拍速を用いて自転車ロードレースでの"坂"の評価を試みた。実験道路(比高約200m平均勾配0.056)を上る場合,被験者の持久力に応じて約12〜30分かかる。拍速は,スタート直後に急激に減少し,約1〜2分で安定化する。拍速の平均値は,運動強度ごとに若干異なるが,被験者の持久力をほぼ反映する。また道路を急勾配と認める度合やペダルを踏み込む意識との相関が高く,坂の知覚の一面を指標する。一方,約5〜8分かかる下りでは,拍速は,カーブや急勾配でのブレーキによる速度制御のため,持久力よりも技術力と関連し,急勾配の認識や爽快・恐怖感との相関も高い。このように坂の知覚の過程は上りと下りで異なり,道路のアフォーダンスに起因すると思われる。また,上り下りだけでなく,コースの勾配・曲率や被験者の能力に応じた違いも拍速は定量化できる。「ツールドおきなわ市民200km」のコースで,移動地点ごとの拍速は,その地点と約30秒前の地点との相対比高と相関が高い。30秒での移動距離は,勾配や速度との関係から一般に上りで約50m,下りで約400mとなる。200kmコースでは,約70km以降の区間で上記の規模を超える上り下りが連続するため,上りで約50m,下りで約400m先までの勾配・曲率の変化を見越して走行を効率化することが持久力温存の鍵となる。また,約80〜90km区間と約145〜165km区間では,数100m規模の上り下りが周期的に繰り返すため,精神・技術的な素早い切り替えも要求される。ArcGISで上記の成果を基に,霧島市のサイクリングマップなどを作成した。近く大学のWebで公開する。
著者
大場 修 包 慕萍 西澤 泰彦
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、現在の中国東北地方に現存する旧満鉄日本人社宅街の計9類型の集合住宅の住戸プランを実測し、文献と照らし合わせて満鉄附属地における集合住宅の歴史を明らかにした。具体的には、満鉄附属地では1908年から集合住宅が建設され、1920年から商住兼用集合住宅が普及、1930年代には大規模な集合住宅地が建設されるようになった。また、6類型の住戸標準プランを定め、畳モジュールを使いながら和室から洋間へ変更できるように工夫し、住宅地では近隣住区を意識した計画手法が見られた。これらは、日本及び中国の近代都市史・建築史上、時代を先取りした設計と開発の手法であると評価でき、その意義を明確にした。
著者
高田 卓
出版者
核融合科学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

断熱消磁冷凍機(ADR)用の小型のボビンレス超伝導ソレノイド磁石の開発に成功した。極細の径0.127mmのNbTi線を用い、1N以下の張力コントロール可能な専用に開発した巻線機を用いての製作を成功させた。作成されたマグネットを液体ヘリウムの浸漬冷却によって約4.2Kの環境下で励磁試験を行った。デザインの前提としていた4A通電時中心磁場2Tの仕様を満たすことを確認した。またさらに高い6A通電で3Tを記録した。クエンチが起こる電流値まで通電していないが、NbTi線の臨界磁場、臨界電流の特性から推測される限界の90%以上の通電電流でクエンチを起こしていないということは、機械的に問題なくエポキシの選定等を含む製作方法に問題が無いことを示している。これにより、既存のADRと置き換えると、数%~20%程度の冷凍能力向上が期待できる。また、一方で断熱消磁冷凍機用の磁気シールドを多層化する方法について検討を行った。原理検証を行うため、上述の超電導磁石を用いて、溶接などの複雑な方法を用いずとも多層シールドによって均一な磁気遮蔽が行えることを示した。これを元にシミュレーションによって、断熱消磁冷凍機用磁気シールドのデザインを行った。その結果、磁気シールドの多層化による効果は大変大きく、重量の半減させる技術となりうることをしめすことができた。以上の結果からADRシステムの軽量化に資するマグネットのボビンレス化及び磁気シールドの多層化という2つの技術が製作可能であり、宇宙機搭載に貢献する事を示すことが出来た。
著者
栗原 健夫
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

[目的]近年,貿易活動などにともなう侵入種の分布域拡大や,地球温暖化による生物分布域の高緯度地方への移動が懸念されている.しかし,その根拠となる大きな時空間規模の定量的データば,海洋底生生物では皆無に近い.そこで,沖縄〜北海道の太平洋岸の磯の貝類相について,以下の仮説を検証した:(1)1930年頃に1ヨ本に侵入してきたとされるムラサキイガイは,近年,分布域を拡大しているか? (2)ピザラガイ,イボニシなど19の優占種の分布域重心は近年北上しているか?[方法]沖縄〜北海道の21ヶ所の磯を定点とした.ここで環境庁は計4回,コドラート調査し(1978年と1984-6年との春・夏),本報告者ば計3回,同様の方法で再調査した(2005年夏と2006年春・夏).[結果]合計で約30万個体,344種の貝類を記録し,以下の解析結果を得た:(1)ムラサキイガイは70年代には九州〜東北地方の8定点に出現したが(3.6〜1048.4m^<-2>),80年代にはこのうち3定点だけに出現し(0.4〜870.2m^<-2>),2000年代にはほとんど出現しなかった(2006年春・夏の福島県において,1.3m^<-2>;他は0m^<-2>).(2)分布域重心の年変動傾向は,優占種間で有意に異なった.調査期間中に重心の北上した優占種は14種,そうでないものは5種だった.[考察]根絶策によらない侵入種分布域の極端な縮小という,報告例の乏しい現象を,本研究は明らかにした.この結果は,あいまいなデータにもとつく「侵入種の分布域拡大」という喧伝に見直しをせまる.また,本研究は,近年,多くの貝類優占種が北進していることを明らかにした.これは地球温暖化の影響を受けたものかもしれない.ただし,種それぞれが違う傾向を示したことに注意する必要がある.
著者
佐々木 聡
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

前年度から引き続き、優秀若手研究者海外派遣事業による助成を受け、中国・復旦大学古籍整理研究所にて本研究に従事した(2010年2月~本年1月)。派遣中は、陳正宏教授(書誌学)・余欣副教授(敦煌学)らの指導を受け、特に資料の基礎的検討に力を入れて本研究を遂行した。先ず、前年度の『白澤圖』の研究を受け、関連資料である敦煌本『白澤精怪圖』の資料的性格を明らかにするため、6月にフランス国家図書館にて原本の実見調査を行った。この調査により、従来知られていなかった複雑な来歴や書名の問題点などを指摘し、資料的性格の解明に繋げた。その成果については、復旦大古代史研究班ワークショップでの報告(11月3日)を経て、海外学術誌に投稿した(「法蔵『白澤精怪圖』(P.2682)考」、審査中)。また、平行して本研究遂行上重要な資料である唐・瞿曇悉達『開元占經』についても、書誌的調査を行った。本書は、先行研究では海外所蔵資料の調査が不十分であったが、報告者は日本・中国・台湾の各研究機関が所蔵する抄本の大部分を調査し、抄本の流布系統を明らかにした。中でも、復旦大所蔵の明憲宗御製序本の発見は、従来不明であった写本系統の解明に繋がるだけでなく、本書のテキスト校訂研究にも裨益する重要な成果と言える。派遣終了後、日本中国学会若手シンポジウム「中国学の新局面」(3月26日、東京大学)にて、本研究の総括的な成果を報告した(「『白澤圖』をめぐる辟邪文化の広がりとその鬼神観」)。本報告では、『白澤圖』を一例に、神仙道の志向性の強い辟邪書が、時代が下るにつれ、形式を変え、人々の基層文化の中に浸透してゆく過程と鬼神観の変遷を明らかにした。また、前年度に行った初期道教経典に見える鬼神観及び辟邪文化と対比・比較しうる視点も提示した。
著者
冨永 伸明 山口 明美
出版者
有明工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,内分泌かく乱物質であるBisA曝露を多世代にわたって行った線虫受精卵のヒストンH3のメチル化およびアセチル化修飾状況を定量的に解析することに成功した.線虫は,BisA曝露で経世代的に産卵数が減少することを報告しているが,本研究の結果から,その際に受精卵中の細胞において特異的なヒストンH3Lys4のジメチル化修飾体,Lys9のアセチル化修飾体が減少していることが分かった.このことは,内分泌かく乱物質の経世代的な影響はエピジェネティックな修飾として次世代の受精卵に受け継がれる可能性が高いことを示すものである.
著者
布原 佳奈
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

目的:助産診断能力を高める分娩シュミレーションプログラムを開発する方法:助産師学生、助産実習の臨床指導者および教員を対象に、助産実習で困難だったこと、学内演習で強化すべき点について、質問紙調査あるいは半構成的面接を行った。調査結果をふまえて初散布の映像教材を作成した。助産師学生を対象に映像教材を用いた分娩シュミレーションプラグラムを実施後、評価のための質問紙調査を行った。結果:"産婦の健康状態の診断"、"分娩進行状態の診断"、"分娩経過の予測"、"分娩進行に応じた産婦と家族のケア"について、9名全員が本プログラムは役に立つと回答した。結論:本プログラムは産婦をイメージ化しながら、リアルタイムでアセスメントし、助産ケアを考えることができ、助産診断能力が高められることが示唆された。
著者
岡本 健
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

我々の生命活動を支える非常に重要な過程として光合成と呼吸がある。近年、枯渇する化石エネルギーに替わるエネルギー源を早急かつ効率的に得ることが求められている。そこで、光合成系や呼吸鎖のように励起状態および基底状態の電子移動過程を緻密に制御することによりクリーンな物質変換を伴う高効率エネルギー変換系を構築することが焦眉な課題となっている。そこで本研究では、高効率エネルギー変換系を開発することを目指して、共有結合と非共有結合により高度に制御された電子移動系の構築を行ったものである。主な成果は次のように大きく3つに要約される。1.天然の電荷分離系を凌駕する超長寿命電荷分離状態を実現するドナー・アクセプター連結2分子系の開発に成功している。さらに非共有結合を利用することにより、電荷分離寿命を顕著に長寿命化できることを初めて見出している。2.生体内で重要な役割を果たしている水素結合、金属イオン、アンモニウムイオン、さらにダイマーラジカルアニオン錯体形成による電子移動反応の活性化や制御の効果を初めて定量的に明らかにしている。3.我々の生命活動において、非常に重要な過程である酸素の4電子還元反応の制御とその反応機構の解明に成功している。以上のように、本研究はクリーンな物質変換を伴うエネルギー変換系を効率良く構築している自然界の光合成と呼吸鎖に注目し、共有結合と非共有結合を利用した光電荷分離状態の長寿命化とその応用、電子移動反応における非共有結合による活性化と制御、さらに多電子移動過程の金属錯体による精密制御に成功している。本研究の成果はエネルギー・環境問題の解決に向けた重要なステップとなる。
著者
江口 正登
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、20世紀後半以降のパフォーミング・アーツにおけるメディアの利用の様態を包括的に検討し、その歴史的な変遷およびそこから見出される理論的な展望を明らかにすることである。しかし、研究を進めていく中で、こうしたメディアの問題が位置づけられるべき、より大きなパースペクティヴ自体をまず明確化することの重要性が強く意識されるようになった。それは、パフォーマンス研究という研究領域や、パフォーマンスという概念そのものが、我が国ではまだほとんど認知を得ておらず、研究者の数も極めて少ないという現状を認識してのことである。そこで、最終年度となる本年度も、アメリカ合衆国における芸術実践および知的言説の両面における「パフォーマンス的転回」について検討する作業に集中的に取り組んだ。特に、2012年8月後半からは、ニューヨーク大学に滞在して調査を進める機会を得た。本研究においては、資料の圧倒的大部分がアメリカ合衆国に蓄積されており、また、パフォーマンスの記録映像などは、国内からは入手はもとより参照も不可能な場合が多いため、この機会を十分に活用し、精力的な調査・収集を行っている。日本を離れていることもあり、本年度中にこれを研究成果としてまとめることはできなかったが、2013年8月の帰国以降、順次その成果を発表していく予定である。三年間の研究期間の総括として、上記のような経緯により、研究計画の重点に変更が起きたこと、すなわち、基礎的な調査としての性格が増し、それによって研究成果をまとめるのに多少の遅れが生じたことを述べておかなければならない。しかしその分、当初の研究目的を越えて、パフォーマンス研究の問題設定や手法を我が国の研究状況にどのように取り入れていくべきかということまで含めて、より生産的な基盤を確保することができたと考えている。これを引き継ぎ、今後も本研究を発展させていきたい。
著者
坂内 徳明 金澤 美知子 鳥山 祐介 ニコラエフ N. V. イリイナ O. N. 坂内 知子 ニコラエヴァ N. V.
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、ロシア近代の社会と文化に関する諸問題を考察する上で欠かすことのできない貴族屋敷(ウサーヂバ)という文化現象を特に近代ロシア文学の成立をめぐる「環境」として捉え、ウサーヂバ文化の意義について明らかにすることにあった。本研究の最終年度にあたる平成27年度には、これまで三カ年の研究成果を全体で11本の論文ならびに翻訳、さらに文献目録としてまとめ、成果報告書(176ページ)として刊行することができた。本研究の成果により、ロシア・ウサーヂバの文化史的意義の大きさが明らかになり、加えて、この現象がさらなる学際的な研究対象となることが確認された。
著者
河原林 桂一郎 山下 幹生 藤戸 幹雄 坂本 和子 木谷 庸二 小山 登 森永 泰史
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

企業や文献調査によりハード・ソフト・サービス融合型デザイン開発の成功3類型を抽出することによって戦略的デザインマネジメントとしてのユーザーインヴォルブメント型デザイン開発の有効性を確認すると同時に企業内デザイン部門の活動の定量化による指標分析を行い統合型デザインマネジメントとコラボレーション型のデザインマネジメントの手法に集約し、戦略的デザインマネジメント手法の論理化を行った。
著者
グブラー P
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

去年までに開発したQCD和則の新しい解析手法を今年度に入り、有限温度におけるチャーモニウムの解析に応用し、チャーモニウムの様々な量子数を持つ状態がどの温度で溶けるかを調べました。この研究成果を論文にまとめ、Physics Review Lettersにpublishしました。また、同じアプローチをボトモニウム系にも応用し、それぞれのチャンネルの融解温度を計算しました。この結果も論文にまとめ、現在雑誌に投稿中です。このように、様々なクォーコニウムの有限温度を持つ物質中の振舞いを調べることが、LHCなどで行われる重イオン衝突において、どのような温度のクォーク・グルーオン・プラズマが作られたかを理解するために非常に重要な意味を持ちます。さらに、新しい解析手法の応用範囲を広げるため、三つのクォークからなる核子に関するQCD和則に適用可能であることを示し、その結果を論文としてpublishしました。また、核子に関するQCD和則の信頼性を高めるためには、これまでは無視してきたα_s補正を取り入れ、パリティ射影を行った和則を解析しました。この解析の結果として、核子の基底状態だけではなく、その負パリティを持つ励起状態も再現できることを示しました。この結果は現在論文にまとめているところです。研究計画の中にあったもう一つのテーマは格子QCDによるΛ(1405)と呼ばれる粒子の研究です。この研究では、クエンチ近似を使わずに、しかも比較的に軽いクォーク質量で得られているゲージ配位を用いて、Λ(1405)の性質を調べています。そのためにはいくつかの演算子を用意し、その演算子と結合する状態を対角化することによって分離します。これまでは、いくつかのテスト計算を行い、以前の研究に得られた結果が再現できることを確認しました。
著者
星野 友
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、分子量・分子量分布・分子構造が限りなく均一なペプチド結合性の多官能性高分子(モノクローナルプラスチック抗体)を調製する方法を確立する事を目的とした。始めにリビングラジカル重合法により多官能性の高分子ライブラリーを調製し、標的ペプチドであるメリチンと相互作用する為に最低限必要な官能基の数および種類を特定した。次にアフィニテイー精製法によりメリチンと強く結合する構造を有する高分子のみを分離できる事を明らかにした。最後に、ブロック共重合体ライブラリーを調製し、メリチンと強く結合する配列を有する高分子を同定した。
著者
中本 高道 石田 寛
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では小型嗅覚ディスプレイを開発し、香るバーチャル空間の実現を目指した。まず、電気浸透流ポンプと弾性表面波デバイスを組み合わせた超小型嗅覚ディスプレイを開発した。この嗅覚ディスプレイはクレジットカードより小型で鼻元で最大8成分の香りを調合できる。低揮発性香気成分で残香の評価を行い、良好な結果を得ることができた。また、広範囲の香りをカバーできる要素臭の検討を行った。質量分析器データを用いてNMF(Nonnegative Matrix Factorization)法で基底ベクトル探索を行い、その基底ベクトルが得られるように要素臭調合を行う。精油に関して30要素臭を用いて香り近似の実験を行いオレンジ、ミント、ブラックペッパーの近似臭を約9割の確率で正しく識別できることがわかった。さらにNMFで用いる距離指標を検討し、IS(Itakura-Saito)-divergenceを用いればKL-divergenceやユークリッド距離よりも広範囲の検出器強度に渡って良好な近似性能が得られることがわかった。それから、流体シミュレータを用いて、障害物がある環境で任意の位置の香り濃度を計算させる方法を開発した。与えられた室内環境の幾何学的形状をレーザスキャナで計測しさらに壁面温度分布をサーモグラフィにより計測して、それらの結果を利用して流体シミュレーションを行った結果、室内に広がる匂いの分布を計算により求めることができた。また、風感を導入するために匂いと気流を同時に体験者に提示する装置を製作し、モニタから風や匂いが出てくるような感覚を与えることができ、仮想的な発生源の位置を制御できることがわかった。さらにヒータを追加し、温かい食べ物や飲み物から匂いが立ち上る様子を再現できるように改良し、学会で実演を行い、多くの人々に体験してもらうことができた。
著者
小森 康加 榎本 至 北田 耕司
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

水球競技において,シュート時の投球速度は競技力を構成する重要な要因であるが,投球速度を決定する体力的要因は明らかではない.これは投球動作が多くの体力要素で構成され,複雑に関与しているためであると考えられる.本研究では,水球競技におけるシュート時の投球速度と体力特性との関係を明らかにし,投球速度に関連した体力要素を検証することを目的とした.その結果,水中での投球速度と最も関連した体力要素は水中垂直跳びであった.動作制限法の結果からも,水中での下肢の動作の貢献度が大きいことが明らかとなったことから,投球速度を向上させるためには下肢を中心とした水中トレーニングを確立する必要性があると考えられた.
著者
木村 幹 大嶽 秀夫 下斗米 伸夫 山田 真裕 松本 充豊
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、現在の各国政治に顕著に見られる「ポピュリズム現象」に注目し、その原因と各国の事情について分析したものである。研究の概要は以下のようなものである。1)「ポピュリズム」の概念に対する検討。本研究においては、従来の錯綜した議論の中から、ポピュリズムを政治家や政党の「戦略」としてのポピュリズムと改めて位置づけた。2)戦略としての「ポピュリズム」が採用されるに至った各国の事情。本研究におしては、主たる検討対象として、日本、ロシア、台湾、韓国の4カ国を取り上げ、その具体的な状況について検討を行った。3)各国に共通する状況と世界的な「ポピュリズム」現象が持たされた理由。本研究では、その理由として、従来の政治体制、就中、政党と議会に対する信頼の低下が、各国の政党や政治家をして、政治的リーダーシップの獲得・維持のための合理的な選択として、政治家の個々の個人的人気に依拠せざるを得ない状況を作り出していることを指摘した。また、このような政党と議会に対する信頼の低下の背景に、冷戦崩壊とグローバル化の結果として、各国の従来の政治システムが機能不全を起こしていることがあることを明らかにした。以上のような、本研究は今日も続く、世界各地の「ポピュリズム」現象とその結果としての不安定な政治状況に対する包括的な理解を築くものとして、大きな学問的意義を有している。そのことは、本研究の成果が既に国際的な学術会議や、雑誌論文として公にされ、国内外に広く反響をよんでいることからも知ることができる。