著者
水野 眞治 小島 政和 比嘉 邦彦 二宮 祥一 尾形 わかは 中川 秀敏 中田 和秀 中野 張 北原 知就 高野 祐一 高橋 幸雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

数理ファイナンス/金融工学に関連する数理技術、特に「最適化・オペレーションズ・リサーチ」「確率数値解析」「情報ネットワークセキュリティ」という3つの要素技術に関して理論的研究を行った。また、それらを実装したソフトウェアをインターネット上で公開した。さらに、金融数値計算を行うシステムの設計と構築を行った。その結果、高度な専門的数理技術を容易にアクセスできるようになった。
著者
伊藤 芳明
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、アブラナ科野菜等に含まれるイソチオシアネート化合物の抗糖尿病効果の作用機序の解明を目的として、第1にイソチオシアネート化合物の1つであるphenethyl isothiocyanate (PEITC)がAktやErkの活性化を介してインスリン様作用を発現していること、第2にPEITCによるEGF受容体family分子であるErbBの活性化が部分的にAktの活性誘導に関わっていることを明らかにした。
著者
森元 伸枝 大森 信 加護野 忠男
出版者
大手前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

神戸の洋菓子業界には、規模の異なる複数の企業群(全国ブランド化した企業群と地域密着型の企業群)が存在しており、その企業群の人材育成のしくみに焦点をあてることで、業界が存在する地域の規範的要素や社会構造が地域産業における長期にわたる継続的成長に向けた協働にどのような戦略的影響があるかを明らかにしようとした。その過程で、菓子業界における未曽有の変化により、神戸の洋菓子業界内に新たな第三の企業群の存在を発見した。
著者
児島 孝之 高木 宣章 尼崎 省二
出版者
立命館大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ねじりを受けるプレストレスト鉄筋コンクリ-ト(PRC)部材の終局耐力、変形性能に及ぼす導入プレストレスの影響を、軸方向鋼材量、横方向鉄筋量を要因とした一方向あるいは正負交番純ねじり載荷試験を行なうことにより検討した。得られた研究成果は、次のとおりである。1.ひびわれ発生ねじりモ-メントは、導入プレストレスの増加に伴い増加する。その増加率は、プレストレス係数にほぼ等しいものの、導入プレストレスが大きいとプレストレス係数より大きい傾向にある。2.土木学会「コンクリ-ト標準示方書」のねじり耐力式における終局時の軸方向鋼材と横方向鉄筋のせん断流q_1q_wがほぼ等しく、両者の鋼材比もほぼ等しい比較的大断面を有するPRC部材であっても、導入プレストレス量の増加に伴い終局ねじり耐力を増加する。3.ねじり耐力式における終局時の軸方向鋼材と横方向鉄筋のせん断流q_1とq_wがほぼ等しいねじり型配筋であっても、両者の鋼材比のつまり剛性の差による変形破壊のために実験値が理論値より小さくなることがある。4.ねじりモ-メントの増加によりPC鋼棒のひずみはほとんど増加せずに、最大ねじりモ-メントに達する。最大ねじりモ-メント後、荷重繰返しに伴いPC鋼棒のひずみは増加するものの、ねじり耐力は増加しない。そのため、導入プレストレスの少ないPRC部材の終局ねじり耐力の理論値は、実験値より大きく危険側になる。5.高強度せん断補強鉄筋は、最大ねじりモ-メント時に非常に小さいひずみしか生じず、降伏していない。最終グル-プまでに数本の高強度せん断補強鉄筋が降伏するものの、全般的にひずみの増加が少なく、普通強度のせん断補強鉄筋に比較してねじりに対して必ずしも効果的に抵抗しない。
著者
北村 勝朗 生田 久美子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は, スポーツ指導者の熟達化過程のモデル構築および育成プログラム開発である。日本で優れた指導実績を残しているエキスパート指導者を対象とし, 1対1, 深層的, 半構造的インタビューにより調査を行った。同時に, 調査対象指導者による指導を受けた経験を持つ選手を対象とし, 選手の視点から捉える指導者の思考・行動について調査を行った。得られたデータは質的データ分析法を通して多角的に指導熟達化モデルとして構築された。分析の結果, 最終的に指導熟達化モデルは, 前年度までの研究成果を受け,(1)指導者としての意識変革,(2)関係再構築への認識, および(3)指導役割の取り込み, の3つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。
著者
ANAK AGUNG GEDE DHARMA SATYA (2014) ANAK AGUNG GEDE Dharma Satya (2013) ANAKAGUNGGEDE DharmaSatya (2012)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成26年度の研究進捗状況を以下に述べる。1.新しいハプティック・インターフェースの開発手法の提案をHCII 2014に発表し、LNCS vol.8511に採択された。2.進化的アルゴリズムを用いたデータベースによるハプティック・インターフェースの進捗状況をADADA 2014に発表した。3.進化的アルゴリズムを用いたデータベースによるハプティック・インターフェースの開発を完成し、ユーザーの主観的評価による検証実験を行った。本年度の研究業績を以下に述べる。1. 国際論文誌(査読有り) :1本;2. 国際学会発表(査読有り):1本;3. 国内学会発表(査読無し):1本
著者
好井 千代
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、平成13年度から平成15年度にかけての3年間、19世紀末から20世紀にかけての世紀転換期のグローバリゼーションの諸相を同時代のアメリカ文学の作品を通して考察したものである。グローバリゼーション研究は社会学や経済学政治学、更には文学研究など様々な領域において最近10年間ほどの間に隆盛になったが、現代社会や現代文学を議論の中心に置くことが多かった。本研究は、グローバルな現代社会の原型は100年前の世紀転換期に培われたという立場から、こうした現代寄りのグローバリゼーションの議論を100年前の世紀転換期の社会とアメリカ文学に応用し、当時のアメリカの代表的な小説家でコスモポリタンを自認していたHenry Jamesの諸作品を通じて、当時のグローバリゼーションの諸特徴を明らかにした。具体的にいえば、国境を超えた世界の一体化と大きく定義づけられるグローバリゼーション現象の大きな原動力が資本主義であることや、そうした資本主義が支配するグローバリゼーションとは全く別の形のグローバリゼーションを異種混交の開かれたコスモポリタニズムの典型としてのクレオール文化が表していることなどを、Jamesの代表的な諸作品を分析しながら考察した。更に、9・11テロ以降「グローバリゼーション」研究から「グローバリゼーション」をふまえた上での「(アメリカ)帝国」研究へと批評が大きく推移しつつある動向と連動しながら、グローバリゼーションと帝国主義との関係にも着目し、様々な国家や文化の共存を促進するとともに多国間、多文化間の序列化、主従関係をも生むグローバリゼーションの特質にまで考察を深めた。
著者
山田 勝士
出版者
福岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究では、ラットにおけるあくび行動の発現機序について検討を加え、以下の研究結果を得た。1.あくび行動は、選択的ドパミンDー2受容体作動薬のタリペキソ-ルの皮下投与によって誘発され、本あくび行動は、βーアドレナリン受容体遮断薬のピンドロ-ルあるいはαー1アドレナリン受容体遮断薬であるプラゾシンやブナゾシンの前処置によって増強された。2.ムスカリンMー1受容体作動薬であるRS 86およびAF102Bの皮下投与によってもあくび行動を誘発した。3.RS 86、AF102B、ピロカルピンおよびフィゾスチグミンの投与によって誘発されるあくび行動は、ピンドロ-ルの前処置によって増強されたが、プラゾシンやブナゾシンの前処置では影響を受けなかった。4.これらの薬物によって誘発される全てのあくび行動はムスカリン受容体遮断薬であるスコポラミンおよびαー2アドレナリン受容体遮断薬であるヨヒンビン、イダゾキサンあるいはラウオルシンの前投与によって著明に抑制された。5.ドパミンDー2受容体作動薬誘発あくび行動は、ジヒドロピリジン系カルシウムチャンネルアンタゴニストであるニフェジピンおよびニカルジピンの前投与によって増強されたが、非ジヒドロピリジン系のベラパミルやジルチアゼムでは増強されなかった。6.ムスカリンMー1受容体作動薬およびコリンエステラ-ゼ阻害薬によるあくび行動は、いずれのカルシウムチャンネルアンタゴニストの前処置によっても影響されなかった。以上の結果より、あくび行動は、高感受性ドパミンDー2受容体あるいはムスカリンMー1受容体の刺激を介して発現し、また本行動に関与するドパミン性神経ーアセチルコリン性神経連絡系のアセチルコリン性神経活動に対してノルアドレナリン性神経が抑制的に、さらにアセチルコリン性神経に続く未知の神経に対してアドレナリン性神経が抑制的に制御していることが明らかとなった。さらに、あくび行動の発現に関与するドパミン性神経活動においてカルシウムが重要な役割を演じていることが示唆された。
著者
川内 陽平
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

餌生物転換期(全長30m程度)前後において,スケトウダラ太平洋系群稚魚が好適な飼料・物理環境に適合することは重要と考えられるが,充分に検証されてこなかった。本研究では,2011、2012年の北海道噴火湾周辺における昼夜で計量魚群探知機による音響調査,海洋環境観測,稚魚と動物プランクトン採集を行うことによって,稚魚の分布と周囲環境との関連を詳細に検証した。稚魚の摂餌状態と餌料環境の結果から,30mm以上の大型稚魚は小型のものと比較してより大きなカイアシ類等を摂食し,中底層では大型稚魚の栄養状態は良かった。摂食量については全体的に夜間のほうが多い傾向にあった。大型の餌であるEucalanus属は大型稚魚に好適な中底層に多い傾向が確認された。しかしながら,昼夜・湾内外における各体サイズの稚魚の鉛直分布状況の違いや捕食者からの影響の可能性を考慮すると,当海域の稚魚は代謝や逃避等とのバランスをとって摂餌していた可能性がある。また,年のよって卓越した餌種が変わったことから,太平洋系群の各年級群の栄養状態や成長の違いに大きく関わると考えられる。一般化加法モデル(GAM)による2011年の湾全体の稚魚分布と物理環境との関係の結果から,全ての環境要因(水温,塩分,分布深度)が稚魚の分布選択の説明因子として有意であることが示された。また,おおまかに昼間は低温な中層で,夜間は温かい表層に分布する傾向があったものの,湾内外で詳細な分布特性は異なるものであった。これまでの局地的な結果とよく一致するとともに,さらにより広範囲かつ場所に応じた詳細な稚魚の分布特性を定量的に捉えることができたといえる。以上の結果を踏まえ,さらに経年的な解析を行うことで当該時期が太平洋系群に与える影響についての傾向明らかにしていく予定である。
著者
寺田 悠紀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は、テヘラン現代美術館の設立(1977)と変遷を事例として調査し、近代の概念・施設と言われる「ミュージアム」(美術館)を通して、イランにおける「近代」の受容と反発について理解を深めることを目指している。また、公共空間に展示される美術品の内容の変遷に注目しながら、「美」という概念と社会政治的要因の関わりについて明らかにすることを目的としている。今年度得られた成果は以下である。今年度はイラン・イスラム共和国テヘランを訪れ、1)昨年度収集することが出来なかった雑誌等のアーカイブの収集と、ペルシア語の資料を精読し用語の使い方等についての分析をすること、2)イランにおける「ミュージアム」の形成を更に深く理解するため、美術館だけでなく他多数の博物館の展示内容にも注目することを計画していた。1)についてはテヘラン現代美術館の付属図書館、ホセイニーイェ・エルシャード図書館、マレク国立図書館と博物館、イラン文化遺産・手工芸・旅行業協会などの機関を訪れ、革命後の博物館について書かれた専門誌「ムーゼハー」をはじめとする政府の文化政策の変遷を明らかにするための関連文献を収集した。また、1979年のイラン革命前に刊行されていた雑誌「タマーシャー」のバックナンバーやシーラーズ芸術祭(1967年から1977年までペルセポリスにて開かれた祭典)のために特別発行された新聞を入手した。これらのペルシア語の資料は、革命前後の変化を明らかにするために重要だと考える。2)については、2012年に建設された聖なる防衛博物館(イラン革命とイランイラク戦争に焦点を当てた展示)や旧アメリカ大使館の内部に設けられた博物館など、政府の政治的メッセージが強く打ち出されている施設に現代美術作品が展示されるという最近の傾向を概観し、調査対象の美術館への理解が深まった。
著者
坂上 倫久
出版者
愛媛大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

最近我々は、E3ユビキチンリガーゼの一つであるCUL3が血管新生に極めて重要であることを発見した。その中でCUL3は、VEGFR2 mRNAの安定制御を通じて血管内皮細胞機能に関与することを新たに見出した。本研究は、CUL3によるVEGFR2 mRNA制御機構に焦点を当て、血管内皮細胞においてCUL3が標的とする基質およびそのアダプタータンパク質を同定し、血管新生におけるCUL3複合体の果たす生理的役割を明らかにすることを目指すものである。はじめに、VEGFR2-3' untranslated region(UTR)をベイトとしたプルダウン法によって、VEGFR2 mRNA安定性を制御する因子の同定を行う計画を進めたが、ベイト調整が非常に困難で時間を要したため、アダプタータンパク質を同定する実験を優先的に進めるここととした。CUL3のアダプタータンパク質はBTBドメイン(BTBD)を持つことが知られ、ヒトでは180種程度存在することが知られている。この中で血管内皮細胞特異的に高発現するいくつかのBTBDタンパク質に対するsiRNAを合成し、VEGFR2 mRNAを制御するBTBDタンパク質のスクリーニングを行った。その結果、二つの因子(VEGFR2 regulating protein1 and 2)を同定することに成功した。これらのタンパク質を血管内皮細胞においてノックダウンすると、VEGFR2の発現が著しく低下することが分かった。これはCUL3ノックダウン時と同程度であった。一方で、本タンパク質を血管内皮細胞に過剰発現させると、VEGFR2の発現量が大幅に増強されることも分かった。また、293T細胞を用いたプルダウン実験より、同定した二つのBTBDタンパク質はCUL3と結合することを確認した。
著者
浅田 晴久
出版者
奈良女子大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究はインド北東地方、アッサム州のブラマプトラ川氾濫原に居住するムスリム移民の生業活動を明らかにし、ヒンドゥー教徒の在来民の生業活動と比較することにより、ブラマプトラ川氾濫原の自然環境に適応する技術を評価するものである。調査村落における現地調査の結果、ムスリム移民は在来民が適応できなかった氾濫原の自然環境を積極的に改変し、年間を通して土地生産性の高い生業を行っていることが明らかになった。従来の研究では生産力の違いが周辺住民との対立を生んでいるという見方であったが、生産物の交換を通して在来民との経済関係が保持されているという側面が見られることも分かった。
著者
伊集院 壮
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2型糖尿病は骨格筋をはじめとする末梢組織でのインスリン抵抗性の誘導とそれにともなう糖代謝能の低下が原因で起こる疾患である。本研究では、ホスホイノシチドホスファターゼSKIPが、骨格筋において小胞体ストレスとインスリンシグナル、そしてインスリン抵抗性を結ぶ分子であることを初めて明らかにした。さらに、SKIPによるインスリンシグナル制御は小胞体内腔のシャペロンであるGRP78との結合に大きく依存していることを明らかにした。これはPI3キナーゼシグナルと小胞体ストレスが非常に密接に機能していることを示す全く新しい発見である。
著者
田口 寛
出版者
三重大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

先ずトリゴネリンの生合成について検討した。その結果、コーヒー植物体各部位における含量は、生育の段階にかかわらず、トリゴネリンが1mg/gのオーダーであり、ニコチン酸はその千分の1の値であった。また、トリゴネリン合成酵素活性の分布を調べたところ、非常に高い活性が葉に検出され、以下未熟の種子、枝の順であった。さらに、本酵素の精製を試みたが、酸化防止とポリフェノールの除去を完全にしないと活性な酵素は抽出できなかった。酵素の性質を要約すると、基質はニコチン酸とS-アデノシルメチオニンであり、反応の最適pHは7で、重金属イオンによって阻害され、ニコチン酸に対するKm値は0.58mMと計算された。次に【N^1】-メチルニコチンアミドについて検討を加えた。一般的な食品105種類について含量を測定した結果、その含量の多いものは次のようであった(食品可食部100g当りのmg数):干しわかめ(3.19),茶の葉(3.04),ロースハム(2.83),砂ギモ(2.42),しょうが(1.63),しいたけ(1.32),うに(1.15),こうなご(1.14),糸引納豆(1.09),しゃこ(0.88),丸干し(0.87),わかさぎ(0.86),ほたてがい(0.85)。次に、試薬の【N^1】-メチルニコチンアミド(10mg)を小試験管に入れ、種々の温度のオイルバス中で5分間加熱して、ビタミンへの変換を調べてみたところ、240℃以上の高温で変換し、最大変換率は約70%で、生成物はニコチンアミドであった。そこで、実際の食品の調理・加工によっても【N^1】-メチルニコチンアミドなどがビタミンに変換するかどうかを調べるため、この目的に合った食品数種類を選び、焼くのと油炊めとを行った後に、ニコチン酸・ニコチンアミドのマイクロバイオアッセイをした結果、単位重量当りで比較して、生のときより明らかにビタミン効力は増加していた。以上のように、食品中には潜在性ニコチン酸・ニコチンアミドが存在しており、高温にするほどビタミンの量が増加した。
著者
岩本 通弥 KIM H.-J. KIM H.-J 金 賢貞
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究「文化遺産ガバナンスと社会関係資本の構築と実践に関する民俗学的研究」の目的は、日本のローカル社会における綿密なフィールドワークに基づき、文化遺産に関連する政策の形成・実施・管理をめぐる多様な主体たちの実践を「文化遺産ガバナンス」というパースペクティブから分析するとともに、この社会的現象のダイナミズムが「社会関係資本」の構築にいかにつながっているのか、そのメカニズムのあり方を民俗学的に検討することである。具体的には、1)日本のローカル社会における「文化遺産ガバナンス」の実態の究明と、2)土着の文化遺産、地域固有の経験知と市民的公共性の構築の可能性の検討とに二分できる。以上の目的を達成するため、最初予定していたとおり、フィールドワーク地の埼玉県秩父市に居住地を移し(平成23年8月末)、以下に示す手順に従って現地調査を実施した。まず、平成23年度の4月から9月までのあいだ、第2次集中的現地調査(Second Intensive Fieldwork)を通して、秩父夜祭における中核的祭礼集団としての「中町」にフォーカスを合わせて主要なインフォーマントや、祭りの維持・管理におけるコアー・アクターたる人物を対象にインタビュー調査をした。ほかにも、地元の観光化を推進する行政主体として秩父市の産業観光部観光課や秩父観光協会や秩父商工会議所において聞き取り調査を行った。また、文化財行政のあり方を把握するために、秩父市の教育委員会文化財保護課についても同様に聞き取り調査を実施した。この一連の調査を通して、かなり規模の大きい秩父夜祭の伝承と維持・管理の体制がある程度明らかになったと考える。ほかにも、本研究における主要な方法論であり、かつ認識論的側面をなしている「社会関係資本」の構築の現状を考察するために、このような文化遺産ガバナンスに密接にかかわっている人々、とりわけ、中町などの地元住民たちが、土着の文化としての秩父夜祭の持続と管理以外にも別のネットワークを通して社会と関係を結んでいるのか、また、それが、当該地域社会における公共的生活をめぐる種々の情報の交換や共有、地域社会において生じるトラブルの解決のための協力・協調のネットワークを作り上げるのに、本研究において文化遺産ガバナンスと位置づけた秩父夜祭の伝承と維持・管理に関連する諸実践が役立っているのかを検討するため、地元の住人に焦点を当ててその人間関係や地域生活の実態を調べた。加えて、土着文化としての秩父夜祭とは直接的なかかわりを持たずとも、地域生活の質の向上や問題解決のためにアソシエーションを作って活動する人々のネットワークや実践のあり方をも調べるために秩父ボランティア交流会など、NPO団体についても調査を行った。次に、同年度の10月から翌年の2月まで第3次集中調査(Third Intensive Fieldwork)を実施し、以前の調査のフォローアップを図った。その結果、秩父夜祭の中核的祭礼集団ではなくても不可欠の参加集団であり、にも拘らず、常に周縁に位置づけられる秩父歌舞伎の伝承団体の正和会を新たに調査した。最後に、もともと平成24年度の3月にドイツ民俗学の現状を視察する調査を予定していたが、諸般の事情により中止した。
著者
赤司 英一郎
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

十九世紀末から二十世紀初めにかけてのハプスブルク帝国における「部屋」のトポスについて研究することで、この多民族国家において他者からの分離と孤立の度を深めていった人々および個人にとっての心理的避難所として機能した「部屋」のはたらきを明確にするとともに、そのような内部としての「部屋」と外部にいる他者との関係をあらたに見直し、その当時に表された作品と作者と社会とをむすぶ糸について新しい見解を提示した。
著者
濱田 彰
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,学習意図の無い状況下で起こる英語語彙学習の認知プロセスを明らかにすることである。具体的には,日本人英語学習者の文脈内語彙学習に焦点を当て,推論による未知語処理を通して記憶される語彙情報が,どのようなプロセスを経て知識として体系化されるのかを明らかにする。本課題の最終年度となる平成27年度は,これまでの実験環境で得られた結果を教室環境で再現すること,および研究成果を博士論文としてまとめることを中心に研究を進めた。これまでの研究結果から,日本人英語学習者は単語と文脈の意味的類似度に基づいて未知語の意味を推論し,推論内容を心内に符号化していることが明らかになった。実験的な要因として使用した意味的類似度は,言語統計解析モデルの一つである潜在意味解析により規定されていた。そこで,英語リーディングのような言語活動に付随する語彙学習の効率を上げるための教材作成に向けて,潜在意味解析の応用可能性をさらに追及した。単語―文脈の意味的類似度が文脈内語彙学習の成果を予測する要因になるのかを検証したところ,意味的類似度が高くなるほど未知語の意味・用法の付随的学習が促進され,その効果は意図的学習の場合よりも大きくなることが分かった。以上の結果は,付随的語彙学習の認知プロセスは,潜在意味解析理論が前提とする,言語学習の用法基盤モデルに従うことを示している。また,付随的語彙学習はテキスト理解に伴う記憶表象構築のプロセスと密接に関連していることが分かった。博士論文では結論部分で,英文テキストからの付随的語彙学習の効果を向上させるための教育的介入として,潜在意味解析を利用した教材開発,タスクを用いた読解指導の在り方,語彙知識の多面的な評価方法を提案している。
著者
上野 田鶴子 山田 泉 八代 京子 箕口 雅博 田中 望 甲斐 睦朗
出版者
東京女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

外国人技術研修者が生活の場でどのようにして日本人と関わり、コミュニケーション・ネットワークを形成していくのか,その際の問題は何か,それに対して日本語教育はどのような対応が可能であるかを明らかにすることを目的とし,インタビュー調査等を用いたエスノグラフィック調査により,長野県小諸市を中心に調査を行い以下の結果を得た.1)技術研修者を含む外国人のネットワーク形成にはボランティア的支援を行う日本人の側のネットワークの存在が前提となる 2)日本人のネットワークには,外国人の危機状況に応じて支援を行う危機対応ネットワークと日常的なコミュニティ・ネットワークとがある.3)小諸市においては危機対応ネットワークには病気,怪我に対応する医療関係の医師ネットワーク,法律の問題に対応する弁護士ネットワーク,タイ語,タガログ語などができる日本人ボランティアネットワーク等がある.4)コミュニティ・ネットワークとしては,まだ明確なものは形成されていないが子供たちをキ-として保育園に形成される母親たちのネットワーク,外国人と結婚した日本人を中心としたネットワーク等が萌芽的な形で存在している.これらの地元の支援グループと外国人グループとの共同の活動を通して行うアクション・リサーチを行い,調査を継続し,さらに具体的な内容と問題の検討を行った.日本語教育関係の活動としては,こもろ日本語教室が試験的に開かれたが,これは当面ボランティア教師の養成を中心に,市民の間に外国人日本語を教えることの意味を考える場を提供することを目的としている。本研究は今年度で科学研究費補助金による調査研究を終了したが,アクション・リサーチの中で提起された問題については今後も引き続き調査研究を行う予定である.
著者
吉村 治正 澁谷 泰秀 渡部 論
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

職歴に関する社会調査を従来の訪問面接法ではなく、郵送法およびインターネット法で実施することは可能か、これを実施した場合にどのような技術的な問題が生じるかを、実験的社会調査を通じて検証した。その結果は、回収率・項目欠損率・回答者の偏りという三点で見る限り十分評価し得る値が示されており、職歴のような複雑な構造を持つデータであっても、自記式による調査は可能であると結論づけられる。ただし、職歴を自記式で調査する場合には、調査項目のレイアウトや選択肢の与え方など、調査票の構成を入念に行い、回答者が答えやすくなるような工夫を施すことが必要となることが明らかになった。
著者
都丸 けい子 竹川 佳津子
出版者
聖徳大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

初めに、避難児童のメンタルヘルスの状態およびレジリエンスの検討に関しては、第1に、時間経過と共に地震、津波、原発の恐怖や早期は減少傾向を示した。学校生活や気持ちの安定についても同様の結果であった。一方で、生活における困難や身体の変化への戸惑いは、制度上の変遷や発達といった進行形の変化を伴うため、一時的に不安定な様相を示した。しかし、やはり時間の経過と共に、次第に安定する傾向が認められた。次に、避難児童への支援活動および支援体験の意味づけに関しては,子どもたちの不安や困難に寄り添う支援を行うことで、子どもたちのみならず教員自身にもPTGという形で、支援体験の意味づけによる成長・発達が生じていた。