著者
田中 嘉雄 上野 正樹 濱本 有祐 木暮 鉄邦
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

Tissue engineering chamber(以下、TEC)を再生の場として、動脈血管束,人工真皮, FGF-2、多血小板血漿(PRP)を併用して、独自の栄養血管を有した軟組織を再生する方法を検討した。実験群は、コントロール群、非活性化PRP群、活性化PRP群、活性化PRP群+ FGF-2群、非活性化PRP+ FGF-2群の6群(n=5)に分け、再生組織の量、器質化の成熟度、血管新生について検討した。結果:血管付軟組織の再生組織量はcontrol群1. 13±0. 33cm^3、非活性化PRP群1. 79±0. 35cm^3、活性化PRP群1. 48±0. 22cm^3で、非活性化PRP群がcontrol群に比し有意差を認めた(p<0. 05)。人工真皮の器質化も非活性化PRP群で進んでいた。TECを用いた血管柄付き軟組織再生において、活性化PRPよりも非活性化PRPが有用であることが判明した。
著者
寺岡 宏樹 上野 直人 遠藤 大二
出版者
酪農学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)ツメガエルの約4万クローンのcDNAについてマクロアレイを行った。2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p- dioxin(TCDD)は受精後27時間胚で1クローンの増加、5クローンの減少、7日胚で41クローンの増加、12日胚で14クローンの増加、42クローンの減少を起こした。しかし、cytochrome P450 1A(CYP1A6,7)を除いて、ノーザンブロット法で増減が一致したクローンを見つけることができなかった。2)ノーザンブロット法により、Ah受容体は受精後初日から既に弱いが発現し、7日で顕著な増加がみられた。AHRの発現はTCDD暴露で影響されなかったが、CYP1A6,7の他、CYP1Bでは顕著な誘導が受精後2日からTCDD濃度依存性に観察された。この他、Arntやグルタチオン転移酵素の発現はTCDDに影響されなかった。3)以上の結果から、初期発生においてTCDDであきらかな誘導を受けるCYP1AについてTCDD感受性の高いゼブラフィッシュで役割を検討した。モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(AHR2-MO)を用いて、ゼブラフィッシュで報告される二種のAh受容体の一つ(AHR2)の翻訳を阻止したところ、体幹の血流遅延・浮腫、下顎の成長阻害および中脳背側部の局所循環障害とアポトーシスなどこれまで知られている主なTCDD毒性が顕著に阻害された。AHR2-MOは毒性とともに、CYP1A誘導を阻害したので、CYP1Aに対するモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(CYP1A-MO)を処置したところ、上述のTCDDによる毒性が抑制された。4)最近、TCDDがヒト由来培養肝細胞で、炎症や各病態で誘導されるプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ2(COX2)が誘導されることが報告された。COX2阻害剤は同時暴露した場合TCDDによる中脳静脈の血流遅延とアポトーシスを顕著に回復させた。COX2に対するモルフォリノアンチセンスオリゴ処置は低濃度TCDDによる血流遅延とアポトーシスをほぼ完全に消失させた。48〜50hpf胚の頚動脈と思われる部分にCOX2 mRNAの強い発現が観察できた。TCDD処置はCOX2発現に全く影響しなかった。5)我々はこれまで、ソニックヘッジホッグ(shh)が下顎にも発現し、TCDD暴露により顕著に減少した。AHR2-MOはTCDDによるshh発現の低下と下顎の低形成を阻止した。TCDDは下顎原基のptc1と2の発現には影響を与えなかった。以上より、TCDDによる毒性発現機構にAHR2、CYP1A、COX2、Shhの各分子が関与することが示唆された。
著者
見舘 好隆 永井 正洋 北澤 武 上野 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-196, 2008
被引用文献数
4

学生の「学習意欲」や「大学生活の満足度」は,どのような要因が押し上げているのか.想定される様々な要因を探るアンケートを公立S大学の学生に実施し,その結果から因子分析によって「学習意欲」「大学生活の満足度」に影響を与えていると想定される因子を抽出した.そして抽出された因子間の因果関係を共分散構造分析にて分析した結果,「教員とのコミュニケーション」は「学習意欲」を高め,さらに「大学生活の満足度」にも影響を与えていた.また,「友人とのコミュニケーション」は「大学生活の満足度」にあまり影響を与えておらず,「学習意欲」には関連がないことが示唆された.
著者
栗原 敦 上野 英子 棚田 輝嘉 西澤 美仁 渡辺 守邦 野村 精一 佐藤 悟
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

最終年度にあたる本年は、これまでの共同研究の集成として『伊東夏子関係田辺家資料』(調査報告)を編集・刊行した。この概要はI短冊の部翻刻(付脚注)II書筒の部翻刻(付脚注・解説)III田辺家資料リスト、の三項目からなる。このうちI・IIIについては本学文芸資料研究所「年報」を通じて報告したものをふまえて,補訂を加えて収録しているので,ここではIIについて概要を記す。ここでは、伊東祐命発信のもの三通・中島歌子発信十九通・三宅花圃発信三通・伊東夏子発信二通の,計二十七通の書筒について,翻刻と注・解説を行った。執筆年が不明であること,私的な内容であること等から分析は困難を極めたが、歌会や吟行・添削等の連絡や,借家や手伝い人の斡旋、裁裁の依頼等の日常的なつきあい,更には中島歌子周辺のごく親しいグループの存在を物語る記述にあふれていた。以上は、萩の舎に学んだ女流作家樋口一葉の日記の背景をなす,萩の舎塾の具体相の理解の一助となることであろう。
著者
岡島 厚 上野 久儀 溝田 武人 岡野 行光 木綿 隆弘 木村 繁男
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

工業プラントの配管内センサーに用いられるブラフな断面構造物の後流域は、流れの剥離による複雑な渦構造を呈し、構造物は後流渦によって様々な自励振動現象が生じる。高速増殖炉「もんじゆ」のナトリウム漏洩事故の主な原因であった低流速域で起こった流れ方向振動も自励振動の一つである。本研究は円柱や矩形柱断面柱などの構造物の流れ方向流力振動の発生機構に関し、風洞実験、水槽実験、数値シミュレーションによって、主として両端弾性支持円柱した自由振動試験によって、次のようなことを明らかにした。(1)振動する円柱及び種々な断面比の矩形断面柱周りの流れ(レイノルズ数Re=10^4)をスモーク・ワイヤー法によって可視化し、振動特性と流れパターンの対応を示し、共振流速の1/2を境にして二つの励振域において、それぞれ振動円柱周りの対称渦及び交互渦の鮮明な可視化映像を得た。(2)表面粗さを導入して、臨界域以上の高いレイノルズ数領域の円柱周りの流れを実現して、高レイノルズ数領域の渦励振の様相を明らかにした。臨界域では直角方向振動が極端に抑制されることを見出した。(3)矩形断面柱の流れ方向振動に関しては,断面比が小さく垂直平板に近い場合には交互渦による第二励振域が断面比が大きくなりアフターボディーが長くなると、対称渦を伴う第一励振域が支配的となることを明らかにした。(4)二自由度弾性支持円柱の流れ方向の流力振動時の対称渦及び交互渦の渦構造を数値シミュレーションして、それぞれの後流の三次元構造の様相には、相違があることなどを見出し、2つの励振現象は後流の交互渦の形成強さと密接に関係していることを示した。
著者
森田 健 大中 忠勝 上野 智子 山本 昭子
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ヒトの生体機能が季節により変動することはよく知られているが、原因がはっきりしている例は少ない。また、生体リズムの季節変動についても報告が少ない。季節により生体リズムが変化する機序としては、日長の変化によるリズム同調の変化が考えられる。このことから本研究では、緯度が異なる3地域(高・中・低緯度)及び季節(春・夏・秋・冬)において人々が日常生活の中で受ける光の量及び質の違いを把握し、ヒトはその環境にどのように適応しているのかという環境適応能の観点から分析を行った。その結果、自然の光環境が気候や季節及び緯度により大きく異なることが明らかになった一方、被験者の受光量や活動量は季節や緯度との関係性は低く、むしろ個人の生活スタイルや過ごす場所に依存している可能性も示唆された。しかし生体リズムの指標となるメラトニンリズムには、季節変動及び地域差における特徴が明確に表れた。特に中緯度:日本の秋において、高いメラトニン分泌量及び位相後退の特異的季節変動が認められたが、これが外部の光刺激変化によるのか、また冬に備える内分泌機能の働きによるものなのなど、その原因を明確にすることはできなかった。本研究における調査は、フィールド調査であり、生体リズムに影響する様々な因子の厳密な制御は行っていない。しかし、日常生活における実際の光環境下で確認した本成果は、今後の光環境計画を考える上での基礎的知見を提供するものと考えている。
著者
上野 正雄
出版者
明治大学法律研究所
雑誌
法律論叢 (ISSN:03895947)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.113-133, 2009-09

二〇〇七年五月一四日、「日本国憲法の改正手続に関する法律」(マスコミ略称「国民投票法」)が成立し、同月一八日公布された。この法律では、「日本国民で年齢十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。」(同法三条)とされているが、付則三条一項において「国は、この法律が施行されるまでの間、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。」とされたうえ、同条二項において「前項の法制上の措置が講ぜられ、年齢満十八年以上二十年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間、第三条…略…の規定の適用については、これらの規定中『満十八年以上』とあるのは『満二十年以上』とする。」こととされた。
著者
杉山 哲男 長井 孝一 久田 健一郎 上野 勝美
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度,12年度で合計2回,延べ約50日間,雲南省西部で野外調査を実施し,多くの地質学的新知見を得るとともに,多数の化石,岩石試料を採集した。これまでに明らかになったことを要約すると,1)Baoshan地塊の上部古生界は,温暖な下部石炭系,氷河起源の異常礫(ダイアミタタイト)を含む寒冷な砕屑岩相と浅海-陸上噴出の玄武岩からなる下部ペルム系,温暖だが単純な動物相からなる中部ペルム系から構成されている。2)Baoshan地塊のゴンドワナからの分離は,Woniusi玄武岩の噴出時期に相当し,前期ペルム紀であることを化石によって確認した。3)Baoshan地塊の下部石炭系化石群は,中国南部や西欧の動物群と共通要素を持ち,下部ペルム系には小型単体サンゴなどからなる寒冷な環境に適応しうる動物群が産出する。また,中部ペルム系には温暖なTethys海要素と共通な化石群を含むが,東南アジアのSibumas地塊や東アジアのCimmerian陸塊と共通の化石も多く含まれている。4)これらを総合すると,石炭紀前期には温暖な陸棚浅海に位置していた同地塊は,石炭紀後期にゴンドワナ大陸とともに寒冷化,旋回南下し,ペルム紀前期に寒冷域でリフティングによってゴンドワナから分離北上を開始し,ペルム紀中期には中緯度付近まで北上していたというシナリオが,化石,堆積相からも強く示唆されることが明らかになった。5)西側に隣接するTengchong地塊の上部古生界についても,Baoshan地塊と共通要素を持っていることが明確になった。6)東隣のChangning-Menglian縫合帯には,海山型の炭酸塩buildupsが多数分布しており,今後詳細な検討が不可欠であることが明らかになった。
著者
矢箆原 隆造 谷野 元一 寺西 利生 和田 陽介 生川 暁久 上野 芳也 宇佐見 和也 園田 茂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B1O1004, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】脳卒中患者の歩行や立位訓練において短下肢装具(以下,AFO)はよく用いられる.今までAFOの効果を検討した報告では,歩行を指標にしているものが多く,立位を指標にしている研究は少ない.そこで我々は当院に入院した脳卒中患者に対してAFOの効果を立位バランスの観点で検討したので報告する.【対象】当院に入院し,歩行訓練においてAFOを使用しており,AFO装着時と裸足時ともに上肢支持なしで1分間の静止立位が可能であった初発脳卒中片麻痺患者14名を対象とした.対象者には研究の趣旨と内容について説明し同意を得た.年齢は53.1±11.0歳,性別は男性12名,女性2名,障害側は右片麻痺9名,左片麻痺5名,診断名は脳出血10名,脳梗塞4名,発症から計測までの期間は62.1±29.7日であった.下肢Br.stageの中央値は3.5,SIAS下肢深部覚の中央値は1,FIM運動項目合計点は63.4±13.0点,FIM認知項目合計点は29.5±5.9点,FIM歩行項目は3点が3名,4点が4名,5点が7名であった.使用装具は調整機能付き後方平板支柱型AFOが10名,両側金属支柱付きAFOが3名,継ぎ手付きプラスチックAFOが1名であった. 【方法】計測機器は酒井医療社製Active Balancerを用いた.前方2mの位置に視線と同じ高さの直径5cmの指標を注視させ,上肢を下垂した状態で60秒間立位をとり,足圧中心(COP)の総軌跡長,外周面積を計測した.計測はAFO装着しての開眼時,閉眼時を計測,次に裸足での開眼時,閉眼時の順に計4回行った.そして開眼時,閉眼時それぞれのAFO装着時の総軌跡長,外周面積と裸足時の総軌跡長,外周面積を比較した.統計処理にはWilcoxon符号付き順位和検定を用い,5%未満を有意水準とした. 【結果および考察】開眼での総軌跡長はAFO装着時に159.6±63.7cmであり,裸足時に282.7±136.5cmであった(p<0.05).外周面積はAFO装着時に7.2±5.9cm2であり,裸足時に9.5±5.2cm2であった(p=0.08).開眼では総軌跡長にて有意差を認め,外周面積では有意差は認めなかったものの裸足時に比べAFO装着時では平均値が減少していた.閉眼での総軌跡長はAFO装着時に230.5±89.4cmであり,裸足時に282.7±136.5cmであった(p<0.01).外周面積はAFO装着時に12.7±8.5cm2であり,裸足時に18.1±11.2cm2であった(p<0.01).閉眼では総軌跡長,外周面積ともに有意差が認められた.この結果からAFO装着は立位バランスの向上に有用と考えられた.この理由としてAFOが麻痺側足部を固定し,関節の自由度を制約したことにより安定性が増したことが考えられた.また閉眼では外周面積においても有意差を認めたため,閉眼のような視覚を遮断し,体性感覚が優位となる難易度が高い課題ではAFOの効果がよりみられやすいと考えられた.
著者
上野 隆
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-48, 1954-01-01

本論文の要旨は昭和27年4月1日第4回日本産科婦人科學會總會に於て發表した.更に其の1部は昭和25年5月21日春季名古屋醫學會第59回總會,昭和25年10月22日秋季名古屋醫學會第60回總會,昭和26年2月25日第7回東海産科婦人科學會,昭和26年11月3日第9回東海近畿連合産科婦人科學會に於て夫々分割發表した.
著者
上野 正道
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.283-291, 2002

This paper clarifies John Dewey's reconstruction of the aesthetic experience in light of recent studies that interpret his theory of art as being related to social and cultural issues. By focusing on Art as Experience (1934) and his other works in the 1920s and the 1930s, the following three points are indicated. First, he developed his concept of art through his inquiry into the common experience shared by mankind. By criticizing art that is spiritualized out of any connection with the world of daily life, he insists that the experience of art is public and communicating since it has the potential to create community. Second, Dewey was critical of the nationalism and the expansion of the market mentality in the 19th century that had deprived art of the actual sense of community and helped to separate people's experiences. In contrast, his theory of art reflected the public participation of the mass culture in the 20th century. Third, it is of great help to see Dewey's friendship with Albert C. Barnes. Barnes established the school that idealized Dewey's concepts of democracy and art education, though they faced many difficulties of putting their ideals into practice. It follows from these that Dewey attempted to construct a publicness founded on the aesthetic experience of the community.
著者
石澤 良昭 VELIATH Cyril 片桐 正大 上野 邦一 菱田 哲郎 後藤 章 青柳 洋治 村井 吉敬 中尾 芳治 荒樋 久雄
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ミャンマー・マンダレー管区パガン地域およびマンダレー地域の調査研究旅行経路:成田(関空)-バンコック-ヤンゴン-パガン-ヤンゴン-バンコック-成田(関空)<国内における準備活動>(1)ミャンマーに関する水利灌漑関連の文献資料、農業関係資料(特にJETROアジア経済研究所図書館)の調査、収集、(2)パガン遺跡調査、エーヤーワディ川に関するビルマ語文献、英領時代のチャウセー地方の灌漑調査報告書、農機具調査報告書、灌漑水路による乾季作調査などに基づき調査方法の確定、など。<現地における調査・研究活動>1)ミャンマー文化省を表敬訪問、考古局長U Nyun Han氏と打ち合わせ会議:担当官の同行による現地調査地点の確認と調査地の事前通告の再確認。マンダレー・チャウセー灌漑局と打ち合わせ。2)ビルマ語の灌漑地図:地図および報告書の収集と同時に検分。チャウセー農業報告書の主要部分の英訳作成。3)マンダレー、チャウセーおよびパガン調査:(1)乾燥地帯と在地灌漑技術の痕跡調査。(2)シャン高原に源を持つ水量豊かな複数の河川とチャウセーとの複合扇状地調査。(3)古い形の集住社会(カヤイン)単位の検証と灌漑稲作の関係調査。(4)パガン王朝諸王の灌漑施設建設、大人口の集中と寺院建設の検証(5)当時の河川交通による交易とコスモポリタン的パガン文化の調査。(6)寺院仏塔のレンガ材と水利構造物の建築方法調査(建築班、考古班):一部オーガによるボーリング(7)チャウセー地方の河川取水による古水利網調査(灌漑工学班):往時の生産高と村落配置の考察(8)パガン都城と内陸交易物産と村落経済調査(社会経済班)(9)修復中の仏塔・寺院調査(歴史・考古班)4)研究協力者:U Nyun Han(ミャンマー文化省・考古局長)パガン保存修復担当
著者
刈谷 三郎 上野 行一 小島 郷子 笹野 恵理子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「遊び」の活動に着目して、日本と韓国の子どもの日常生活や「遊び」の現状を調査し、子どもの置かれている実態を把握する。そして、いわゆる「実技教科」と呼ばれる、音楽科、図画工作科、体育科、家庭の学校での教科カリキュラムと子どもの日常生活における「遊び」の経験がどのように関連しているかを分析し、「遊び」と実技教科カリキュラムとの関係を考察することを目的とした。これまで私たちが行ってきた「教科教育における授業評価システムに関する教科横断的研究」(平成13-15年科学研究費助成)及び、戦後の教育課程比較や学習指導方法の比較をまとめた「日韓教科教育入門」(平成17年)の研究において比較的似通った教育課程を持つ両国で、子どもたちの「遊び」と実技系教科がどのように関わり、結びついているかの比較を行った。これまでの研究成果を元に、まず、子どもの「遊び」の日韓比較を、合計約2000名の児童を対象として都市部と地方に分け調査を行い、当該調査の分析と考察を行った。これについては「日本・韓国の子どもの遊び比較研究」と題し、刈谷三郎が2007年12月2007International Leisure Recreation Seminar(ソウル)において、その成果を発表した。韓国における高学歴志向、少子化、受験といった社会的背景が、子どもの「遊び」に深く投影されていることを指摘した。質疑の中で東北アジアでの研究への発展が示唆された。引き続き、子どもの「遊び」の実態把握からよみとれる日常生活経験を軸に、実技教科カリキュラムとの関連において考察を行い、遊びを自発的な自己完結的な子どもの日常生活文化として考えると、日本の子どもは実技教科が形成する学校教科文化と子どもの日常生活文化の乖離を強く意識し、韓国の子どもの方が、日常生活文化と学校の実技教科文化との接続を認識し、融合的に把握していること論証した。これらの研究成果は韓国・日本教育学会誌(韓国・日本教育学研究)において「実技系教科と遊びの日韓比較研究」として掲載予定(2008年8月)である。しかしながら、現時点では当初の目的の一つであった、新たな実技教科カリキュラムモデルの提案には至らなかったことが課題として残された。
著者
大橋 謙策 山崎 美貴子 上野谷 加代子 福山 和女 対馬 節子 本田 芳香
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

地域ケアシステムにおけるソーシャル・ケア実践の効果、ケアマネジメント及びコーディネイト機能を評価する枠組みとして、ソーシャル・ケア・スタンダードの構築を試みた。1.ソーシャル・ケア・スタンダードの概念及び分析枠組みの構築のために、モデルとして英国の「ソーシャルケアワーカーのための行動規範(2002)」についてカテゴリー分類を行い、1)実践のプロセス2)実践における責任の所在3)サービスの提供方法4)サービス提供の結果5)実践の根幹にあるものという5項目が明確になった。2.日本、米国、英国の特定地域での保健福祉職対象の聞き取り調査結果について、サービス提供管理者及び従事者の専門的行動の意識化の側面から分析し、その結果をもとに日本版ソーシャル・ケア・スタンダード試案を作成した。[管理者のスタンダードの枠組み]1)組織・事業所の業務を遂行する責務2)ソーシャル・ケア従事者による専門性に基づいた業務遂行の保証3)専門職の業務遂行を評価する責務4)ソーシャル・ケア従事者の技能向上促進の責務5)ソーシャル・ケア従事者間のチームアプローチの促進[従事者のスタンダードの枠組み]1]組織・事業所の一員としての業務責任を遂行する責務2)専門性に基づいた業務遂行の責務3)専門職として業務を評価する責務4)自己の技能向上促進の責務5)チームメンバーとしての業務遂行の責務地域ケアシステムの質を担保するには、サービスが適切に提供されているかという評価と、サポート体制が必要である。サービス評価にあたって実践者それぞれの専門性のもとでの実践行動を明確にする意味においては、この試案の実用性を見出せる。地域ケアシステムのサポート体制としては、社会一般の人々の信頼と信任を促進するために、全国レベルでの第三者評価機構設置の必要性が明確になった。