著者
土井 悦四郎 小林 猛 久保田 清 河村 幸雄 上野川 修一 松野 隆一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究班は2グループよりなる。1のグループは、化学工学的手法を用いて研究を行い、2のグループは、分子論的手法を用いて、研究し、両者の討論により研究を進めてきた。1のグループは、食品のマイクロ波加熱を、速度論的に解析する手法を開発し、エクストルージョンクッキング、高周波処理による水分収着挙動を熱力学関数による解析を行った(久保田)。高度不飽和脂肪酸の包括、粉末化による酸化抑制効果を包括剤としてマルトデキストリン、プルラン、カゼインナトリウウム、及びゼラチンを使用し、酸素透過速度により評価した。そして拡散速度が、膜の含水率に依存する事を見いだした(松野)水/油/乳化剤の三成分よりなるW/O/W型エマルシヨンについて分散小胞粒子の水透過性、ゼーター電位に及ぼす小糖類の影響を詳細に調べた(松本)。2のグループは、モノクローナル抗体を用いて、β-ラクトグロブリンの変性構造の中間状態における立体配置を検出することに成功した(上野川)。α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンの混合系あるいは他のタンパク質の加熱ゲルの構造と、ゲル形成機構を明らかにした。大豆タンパク質の加工特性並びに生理機能(抗高血圧症)の分子機構を検討した(河村)。卵白アルブミン、血清アルブミン、リゾチームなどの各種食品タンパク質の加熱ゲル形成過程を詳細に検討し、普遍性のあるゲル網目構造の形成機構に関するモデルを構築し、その妥当性を証明した(土井、中村)。1と2のグループの結果を総合して食品物性の分子論的知見と化学工学的手法による結果の矛盾点を討論し、食品物性研究の新しい方向を見いだした。以上の結果は今後のわが国の食品科学研究にたいして新しい方向を与え、食品製造、加工の実用面にも大いに貢献するものである。
著者
北西 允 清野 惇 倉持 孝司 豊田 博昭 植田 博 大熊 忠之 上谷 均 山田 浩 川内 つとむ 盧 雲 揚 磊 田 平安 廖 俊常 余 久隆 聶 天こん 呉 耀森 劉 澤貴 姚 登魁 魯 国棟 ちゅ 明れん 劉 永誉 胡 澤君 趙 長清 閻 培 つう 明理 吉川 栄一 市川 太一 安井 威興 大賀 祥充 石外 克喜 片岡 直樹 吉川 元 加藤 高 董 しん 杉田 憲治 高 紹先 上野 裕久 YANG Lei RYU Ini TAN Pinan RYU Zukui 楊 磊 聶 天貼
出版者
広島修道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

1 政治・法意識の比較研究 広島修道大学法学部の新入生及び4年次生に対しては1989年4月、西南政法学院の学生に対しては同9月、アンケ-トによる異識調査を行なった。その後中国では意識調査ができなくなってしまったが、修道大学の新入生に対しては、同12月追跡調査を行なった。1991年度に追跡調査を行なうべく中国側と話合いを重ねたが、中国政府が意識調査を禁止しているとの情報もあり、遂に実現できなかったのは残念である。しかし、1度ではあるが中国の学生の政治・法意識の調査が行なえた意義は大きく、その後も中国で意識調査が行われないためかえってこの調査結果は貴重である。調査結果の分析は、修道大学の研究叢書として、来年3月までには発表すべく作業を進めている。2 日中法制度の比較研究 日中両国の研究分担者がそれぞれ個別に或は共同して研究し、各年度双方から5名づつ計30名が相手国を訪れ、裁判所、議会、市役所、大学のほか刑務所、登記所等も視察し、関係者に質疑を行ない、法施行の実態を見、まだ研究会をもった。そのほか、政法学院の楊磊研究員は1988年9月から2年間修道大学客員助教授、その後今月まで非常勤講師として、合計3年半、広島大学の片岡直樹研究員は1990年4月から政法学院に留学生として1年、ともに相手国の研究員と共同研究を行なって来た。3 研究成果の発表 10に記載のとおり、これまでの研究成果の1部は既に杉田憲治が3本、片岡直樹が1本、加藤高(楊磊と共沢)が1本、楊磊が1本、計6本の論文として発表しているが、更に全員の共同研究の成果としては、修道大学総合研究所発行の広島修道大学研究叢書として、1993年3月までに『日中学生の政治・法意識』、1994年3月までは『日中両国法制度の比較法学的・法社会学的研究』の2著を出す予定である。
著者
大川 四郎 加藤 順一 原 禎嗣 上野 利三 桝居 孝
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

まず、太平洋戦争中の捕虜問題の背景として、防衛省防衛研究所図書館所蔵「金原節三業務日誌摘録」に見られる、陸軍中枢の捕虜観を検討した。当初、当時の俘虜情報局長官は、日本が批准していないとはいえ、俘虜の待遇に関するジュネーブ条約の遵守を主張した。しかし、当時の陸相はこれに反対し、捕虜軽視策が強行された。こうした捕虜観が、軍内部の上意下達機構を通じて、戦場あるいは収容所の現場で、捕虜と直接に接する日本軍将兵らに投影され、例えば虐待という形で現出した(第1部)。次に、本研究の主対象である、日本赤十字社所蔵の太平洋戦争中旧文書(以下、「日赤戦中文書」と略)を調査した。この「日赤戦中文書」には、欠落部分が多いので、本研究では、在ジュネーブ赤十字国際委員会(以下、ICRCと略)附属文書館所蔵の対日関係文書で補完していくという手法を用いた。もっとも、ICRC文書館所蔵文書が膨大であり、実際に閲覧・分析し得た文書は1944年前半期までであった。そこで、分析の対象時期を1942年から1944年前半期と限定し、具体的には、(1)俘虜収容所視察、(2)救恤品配給、(3)赤十字通信、に関する旧文書について検討した。(1)立会人抜きの自由対話が禁じられていたため、俘虜収容所視察が形骸化していた、だが、その枠内ではあれ、函館俘虜収容所のように捕虜処遇に尽力した実例があったこと、(2)日赤俘虜救恤委員部とICRC駐日代表部の尽力で、各種救恤品が各捕虜収容所に配給されていた、だが、救恤品が最終的に、名宛人である捕虜本人にまで届いたかどうかまでは、確認できなかった、(3)赤十字通信は俘虜情報局、日赤俘虜救恤委員部、ICRC駐日代表部の協力で開設されたものであること、を明らかにした(第2部)。総じて、陸軍側の捕虜軽視策に著しく阻まれたが、ICRC駐日代表部と連携した日赤俘虜救恤委員部の捕虜救恤業務が続行された。
著者
三原 建弘 杉崎 睦 磯部 直樹 牧島 一夫 根来 均 林田 清 宮田 恵美 上野 史郎 松岡 勝 吉田 篤正
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

全天X線監視装置MAXIは2009 年8 月15 日から観測を開始した。本科研費により地上解析計算機と地上ソフトウエアの整備を行い、2009 年12 月から観測データの自動世界公開を行っている。MAXI は3 年9 か月を経た現在でも順調に観測を続けている。3 年間の観測で|b|>10°の高銀緯領域において0.6mCrab 以上の502 個のX線源を検出した。14 個のセイファート銀河からも有意なパワースペクトルを得たが、検出器数が予定より半減、観測時間が半減したため統計負けし、精度の良いブラックホールの質量推定には至っていない。
著者
田中 望 斎藤 里美 岡崎 敏雄 山田 泉 林 さとこ 上野 田鶴子 大橋 敦夫 大谷 晋也 古川 ちかし
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

今回の3年間の研究の結果として概略つぎのようなことが判明した.1. アジアからの外国人女性たちに対する日本語教育は,多くの場合,抑圧的な構造をもち,彼女たちを日本人につごうのよい「疑似日本人」にしたてるために機能する,同化的なものであること.2. それに対して,日本人による支援活動のなかに,アジアからの外国人女性たちにコミュニティでの声をもたせることに成功している少数の例があること.3. 地域社会では,抑圧的な日本語教育と声をもたせるための支援活動のあいだで,どちらをとるかの議論がおこっており,外国人に日本語を教えるというパラダイムに変更を迫る動きがあること.なお,3年間の調査を通じて,もつとも重要な成果といえるのは,調査研究そのものに対する見直しを被調査者から突きつけられたことである.このことは,エスノグラフィ的調査といえども,調査のもつ搾取的構造から逃れられないことを意味しており,調査のあり方に根本的な反省を加えなければならないことになった.今後は,調査研究という枠組みをはなれて,研究者といえどもたんなる「異者のかかわり」として地域社会と関係をもつというあり方を追求する必要があると思われる.
著者
蜂須賀 元文 上野 勝代 佐々木 伸子
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 (ISSN:13433954)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.17-25, 2001-12-25

Homes for single mothers should play the role of a "residence" until they are on their own. However, little attention has been paid to residential environments of the homes and not enough researches on the homes have been done from the viewpoint of their structures. This study aims to elucidate the realities of the residential environments of the homes and describe how the residents are actually supported. Questionnaires were sent out nationwide to 299 homes for single mothers to gather information. Ground plans of the homes were also collected. In addition, we visited homes that were considered to be advanced and interviewed the staff and the residents there. The results of our research are summarized as follows : (a) Sixty percent of the homes for single mothers don't function fully as a residence. (b) Nearly half the homes don't necessarily provide the residents with adequate support because the staff at these homes are off duty at night and on holidays. (c) The support of most homes doesn't meet the needs of the households of mother and child. That is the reason why the rate of living units used by families of mother and child at each home is low.
著者
橘 秀樹 押野 康夫 山本 貢平 桑原 雅夫 上野 佳奈子 坂本 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成10年に改正された「騒音に係る環境基準」では、環境騒音の状況に関して従来の点的把握から面的把握に変更され、評価指標としても騒音レベルの中央値(L50)から国際的に広く用いられている等価騒音レベル(LAeq)に変更された.また「環境影響評価法」でも大規模開発の際には環境の変化を正確に把握することが必須となった.このような背景の下に、本研究では、騒音のエネルギー的平均値を意味する等価騒音レベル(LAeq)によって環境騒音の状況を正確に把握あるいは予測し、その結果を客観的な形で表示する手法を確立することを目的として、以下の研究を行った。(1)道路交通騒音の予測・モニタリングに関する検討わが国における統一的な道路交通騒音予測モデルであるASJ RTN-Model 1998の内容をさらに充実するための基礎的研究として、大型車の影響や都市部における垂直方向の騒音分布に関する実測調査や、掘割・半地下道路からの騒音伝搬の計算手法の簡易化、きわめて複雑な特性を有する交差点周辺の騒音予測手法の開発などを行った。また、騒音対策として多用されている遮音壁の挿入損失の数値解析手法の検討や建物群による騒音低減効果などについても、検討を行った。(2)騒音伝搬特性の測定法に関する検討屋外では、騒音の伝搬に対して風などの気象条件による影響が大きく、またそれによって伝搬特性が時間的に変化する問題(時変性)が大きな問題となる。このような環境下において騒音の伝搬特性を精度よく測定する方法について、時間伸張(TSP)信号を用いる手法などについて、理論的・実験的検討を行った。(3)建設工事騒音の予測に関する検討最近では、各種の建設工事に伴って発生される騒音についても、環境アセスメントの対象となってきており、この種の騒音の予測手法を開発する必要がある。そこでそのための基礎的検討として、時間変動特性がきわめて多様である建設工事用機械類を対象とした騒音源データの測定・表示方法、LAeqを基本評価量とする騒音予測計算法の基本スキームについて検討を行った。
著者
上野 吉一
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.11-19, 1996-08
被引用文献数
1

最近、日本において"フェロモン"という言葉が非常に一般的になり、広く使用されるようになってきている。しかし、そうした場合の多くで、"フェロモン"を「性に関連した匂い」ひいては「性的魅力」を意味する言葉として用いている。フェロモンを性と強く結び付けて捉えるというこの傾向は、通俗的な使用のみならず学術的な使用においても少なくない。そのため、その意味するところが非常に偏って認識され、かつ"匂い"との区別が曖昧になっているように思われた。そこで本研究では、従来フェロモンの概念がどのように規定されてきたのかを検討し、その基準の再確認を試みた。この結果、ある匂いをフェロモンとするための基準として、次の5つを挙げることができた。1)同種ないし近縁種のみで作用。2)送り手・受け手にとり互恵的な特異的反応(リリーサー効果もしくはプライマー効果)の解発。3)生得的要因への高い依存。4)特定の匂い刺激のみに起因する反応。5)1つないし少数の物質の情報伝達への寄与。これをもとに哺乳類での"フェロモン"の使用を鑑みると、これまでにも指摘されてきたように、フェロモンと表現することが必ずしも妥当ではない場合が多いと考えられた。また、中にはフェロモンの概念の基準を考え合わせることなく使用している場合すらあった。このような"フェロモン"の使用は、匂いに対する過剰ないし誤った評価・認識を引き起こし、哺乳類における嗅覚コミュニケーションの適切な理解を妨げる。そこで本論文では、哺乳類の匂い情報を考えていく上で、上記の基準を満足することが明らかな場合を除き、学術用語として"フェロモン"の使用を避けるようにすべきだと考える。
著者
成田 龍一 岩崎 稔 長 志珠絵 佐藤 泉 鳥羽 耕史 水溜 真由美 上野 千鶴子 戸邉 秀明
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本科学研究費補助金にかかわる、本年度の研究成果は、これまで収集してきた「東京南部史料」の分析と、その歴史的な位置づけを集約した『現代思想』臨時増刊「戦後民衆精神史」にまとめられている。同誌は、2007年12月に刊行された。ここには、研究協力者(池上善彦、『現代思想』編集長)の多大の協力がある。研究代表者および、研究分担者、研究協力者による成果は、以下のとおりである。研究協力者の道場親信(東京外国語大学講師)「下丸子文化集団とその時代」「工作者・江島寛」、研究協力者・岩崎稔「詩と労働のあいだ」。「討議戦後民衆精神史」に、成田龍一(研究代表者)、鳥羽耕史(研究分担者)、道場が参加した。さらに、道場による「東京南部文化運動年表」が付された。そのほか、『現代思想』「戦後民衆精神史」には、浜賀知彦氏の所蔵にかかわる1950年代のサークル誌である、『油さし』『いぶき』『たんぽぽ詩集』などの分析が寄稿されている。これらは、池上、岩崎、道場が主宰する研究会での成果の反映である。『現代思想』「戦後民衆精神史」には、木戸昇氏による「東京南部」のサークル運動の概観も「資料」として付されており、『現代思想』「戦後民衆精神史」は、1950年代のサークル運動、さらには文化状況の研究を一挙に進めたものといいうる。また、他の研究者たちによる1950年代の文化運動、およびサークル運動の研究会やシンポジウムにも参加し、成田・岩崎・鳥羽はアメリカ合衆国コロンビア大学を会場とするMJHW(近代日本研究集会)で報告と討論をおこなった。さらに、鳥羽と池上は、1950年代に生活記録運動を展開し、サークル運動と深いかかわりをもった鶴見和子をめぐる研究集会(京都文教大学)に参加した。韓国やドイツにおける研究者との交流を、持続的に行ってもいる。
著者
石澤 良昭 上野 邦一 菱田 哲郎 一島 正真 VERIATH Cyiril 丸井 雅子
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

上智大学アンコール遺跡国際調査団は、2001年3月と8月に仏教遺跡バンテアイ・クデイから274体の廃仏と千体仏石柱を発掘した。歴史上初めての大量廃仏発掘であった。この大発見は国内外の各紙に報じられた。仏像の大きさは大きいもので1.8mほど、小さいもので20cmほどの大中小があった。仏像は砂岩製で,青銅製の小物2体も見つかった。これら仏像は蛇神ナーガの上に結跏跌座したブッダ坐像であり、仏陀を守っている彫像(以下ナーガ坐像と略す)である。時代は11世紀から13世紀である。<インドからヒンドウ教と仏教が到来>カンボジアには1~2世紀頃インドから海のシルクロードを通じてヒンドゥー教と仏教が入ってきたが,カンボジアで土着した大乗仏教は、観世音菩薩のナーガ坐仏を信仰していた。<政治抗争と廃仏事件>これら廃仏はほとんどが首を切られていた。13世紀半ば頃ヒンドゥー教を信奉するジャヤバルマン8世(1243-1295)が命じて全国の仏教寺院に安置されていた仏像を引っ張り出し、首を切断して埋納抗に埋めたのであった。本研究は、この274体の廃仏事件から始まるものである。<バンテアイ・クデイ遺跡周辺調査>バンテアイ・クデイ遺跡発掘を再開し、アンコール遺跡群および地方の仏教系遺跡(バンテアイ・チュマール、コンポンスヴァイ、プリヤ・カンなど)の遺跡調査を実施。<マトゥラー地方の発祥ナーガ坐仏の歴史背景調査および東南アジアとの比較研究>マトゥラー地方ではクシャン朝(BC2世紀~AD6世紀)からグブタ朝(4~7世紀)にかけて多数のナーガ坐仏が製作された。これらナーガ坐仏は力強く量感に富む造形を持ち、インド各地、そして海外のカンボジアなどに伝播した。インドとカンボジアに共通するナーガ坐仏が何故時を超えて存在したかを問い、両地域に存続した仏教的精神価値体系の結晶を探ろうとする初めての試みであった。<カンボジア・インドのナーガ坐仏の図像学的特相調査および比較考察>(1)肉髷相、(2)衣相、(3)耳朶相、(4)自毫相、(5)手足の千幅輪相、(6)印層、(7)宝冠飾り、(8)身広長等相、(9)真青眼相などについて調査し、両地域における図像解明を実施し、信仰における受容状況とその展開、さらにその時代の仏教精神の比較検討をした。加えて両国におけるヒンドウ教徒と仏教の政治的背景と歴史展開をそれぞれ詳解に考究し、大きな学術研究の成果をおさめた。
著者
上野 照剛 伊良皆 啓治 関野 正樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

神経電磁気現象に関する脳機能情報を解析して,脳機能の動的機構の解明に迫るため,MRIによる神経電気活動の電流分布イメージングや細胞膜の水透過率を解析する手法を提案した.また,経頭蓋磁気刺激と脳波の同時計測により高時間分解能,高空間分解能を有する新しい脳機能ダイナミックスイメージング法を開発した.さらに,アミロイド沈着をMRIで観測するため,鉄の貯蔵蛋白質であるフェリチンに着目し,これに交流磁場を印加することで,鉄イオンのフェリチンへの取り込みとフェリチンからの放出に関する磁場の作用を調べた.
著者
平山 次清 高山 武彦 平川 嘉昭 庄司 るり 上野 道雄 塚田 吉昭 岩下 英嗣 土井 康明
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海上が荒れた場合はバラストタンクと主翼および尾翼を制御することによって浅く潜航し波浪影響を避けるという新コンセプト船を提案し、その実現可能性について主として流体力学・運動制御工学の観点から実験・数値計算を実施して検討した結果、船長の半分程度まで潜水すれば波浪影響は数%以下に抑制可能であることやウェザールーチングの観点からは10%程度の燃費低減が可能といった結果を得た。
著者
横山 幸満 石井 紘 鈴木 将之 上野 勝利
出版者
宇都宮大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.大谷石の間隙は全体の40%で、間隙中の水と気体の挙動が強度に影響を及ぼす。岩というより超過圧密土としての性質が卓越する。2.地下水面下にある大谷石を地上で自然状態に放置すると、急速に脱水が進行する。これを吸収させても飽和度は80%にしか戻らない。3.完全飽和及び完全乾燥状態の大谷石の一軸圧縮強度は共に100kgf/cm^2程度で大きいが、上記の乾燥履歴を受けたものは強度が50%以下になる。4.大谷石は多孔質材料であるコンクリートと同様にクリープ挙動をする。50年以上安定している残柱の応力状態を考えると、応力比70%がクリープ破壊のめやすとなる。5.深い陥没は、残柱の逐次クリープ破壊に起因するもので、広い範囲の支持体を失った天盤が曲げ破壊することによって生じるものである。6.浅い陥没は、残柱破壊を必ずしも伴わず、地下水位上で風化を受け易い天盤の曲げ破壊によるものである。7.天盤のドーム状崩落やせん断破壊は曲げ破壊より起こりにくい。8.陥没・落盤等の事故の時系列解析の結果、これらのイベントは地球潮汐応力の球テンソル成分が圧縮の時に起こり易いことが分かった。限界状態にある天盤に対して、地球潮汐応力がトリガー効果を与えたものと考えられる。9.陥没前の地盤振動を解析した結果、約15日の卓越周期を得た。これも地球潮汐応力の影響を示している。10.実際の空洞直上のボーリング孔に高感度ひずみ計を埋設して計測を続けているが、地球潮汐力によるひずみを明確に捉えている。付近の地震計の動きとの相関を追っている状況である。
著者
上野 孝 湊 賢一 松浦 俊彦
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

約300nmと1nmに粒子径を制御したイカ墨を用いる色素増感太陽電池の研究を行った。特に大きい粒子の利用について検討した。スクリーン印刷法を用いて、酸化チタンペーストにイカ墨粒子を混合したペーストを透明電極上に積層して、450℃で焼成すると白色の酸化チタン電極に変化し、イカ墨粒子が分解蒸発した。それと同時に、酸化チタン電極の表面粗さが増大した。これはイカ墨粒子が酸化チタン電極の多孔性を高める増進剤として効果があることを示唆していた。
著者
上野 正雄
出版者
明治大学法律研究所
雑誌
法律論叢 (ISSN:03895947)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.35-60, 2009-03

罰金刑は刑罰の王である。もちろん我が国における裁判中の数量的割合においてであるが、後記のとおりそれがほぼ九割に達している以上、こう言っても間違いはないであろう。とすれば、そのあり様は刑事政策的観点から見て非常に重要なものであると言わざるを得ないはずである。では、現実はどうか。近時の社会の関心は死刑や絶対的無期刑といったより重大な刑罰に専ら向いているようである。全国紙においてさえ、労役場留置される罰金刑受刑者が近時増えている事態を、こともあろうに「モラル崩壊顕著に」という見出しで報道しているような状態である。本稿では、このような罰金刑について、その制度の仕組みと現状を概観したうえで、問題点とその改善策を労役場留置と日数罰金制を中心に検討することによって、刑事政策的により有意義な罰金刑のあり様を模索したい。