著者
上野 一彦 長澤 泰子 津田 望 松田 祥子 牟田 悦子
出版者
東京学芸大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

本研究では、中枢神経系の発達やかたよりから、コミュニケーション能力の遅れ、種々の知的学習能力の習得困難、さらには行動面での不適応症状をもちやすいことなどから、近年注目されている学習障害(LD)児を対象とし、その実態解明と具体的な指導方法探究のために、主として二つの側面からの研究を行なった。1.LDに関する心理学的能力のデータベースの作成と、それにもとづく能力分析による類型判別の試み。5才〜12才のLD及びボーダラインLDに関する200例のWISCーR、ITPA、TKビネーの心理検査結果によるデータベースを作成した。WISCーRを中心とした群得点分析から、全体的能力水準と処理能力の欠陥特性を考慮した3つの典型類型及び3つの重複類型からなる類型モデル図を作成し、その臨床的妥当性についての検証を試みた。同時に、12のWISCーR、10のITPAの各下位検査変量、計22の変数データについての多変量解析を試み、類型判別と診断基準の因子的妥当性についても知見を得た。2.感覚様相の処理特性からくるコミュニケーション行動中の受容能力および表出能力の発達のかたよりにたいする具体的援助の一方法として、同時提示法によるサイン言語法の開発とその適用研究。現在、英国の障害児教育現場で広く普及しているMAKATON法の日本版作成作業を進めた。この方法は、キーワード法によるサインシステムを採用し、話しことばとサインとシンボルの同時提示による言語発達プログラムである。現在、第1から第9ステージにおける約330の核語集の選定、基本的サインの作成作業を終え、類型分類によるLD児の指導グループ適用研究から、顕著な指導効果が認められた。
著者
上野 一彦 長澤 泰子 菊池 けい子 津田 望 松田 祥子 牟田 悦子
出版者
東京学芸大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

本研究グループは、中枢神経系の発達の遅れやかたよりから、コミュニケーション能力の発達不全、種々の学習能力の習得困難、協調運動の発達不全、さらには情緒・行動面で不適応症状をもちやすいLD(学習障害)児を研究対象とし、その実態解明と具体的な教育的援助の方法探究のために、主として二つの側面からの研究を行った。第一は、LDの生育歴にみられる障害徴候と問題行動、およびWISCーRによる心理学的能力を下位項目としたデータベースの作成である。6才〜14才のLD及びボーダーラインLD、比較のための軽度精神延滞(MR)、約200名の面接と心理診断を行い、知的能力から精神発達の4つの水準(MR、ボーダーラインLD、低IQ・LD、高IQ・LD)と、情報処理過程によるモデルに立脚した個人内差の特徴から、各LD群の類型化を試み、それらのレベルと特性の二次元空間内での問題症状の発生時期と内容、行動特徴について分析・検討し、治療教育につながる指導プログラムの手がかりを得た。第二は、感覚様相の処理特性からくるコミュニケーション行動中の受容能力および表出能力の発達のかたよりにたいする具体的援助の一方法として、同時提示法によるサイン言語法の開発とその適用研究である。この研究は、英国の障害児教育現場で広く普及しているマカトン(MAKATON)法のサインとシンボルの日本版作成作業に取り組んだ。今年、第1から第9ステージにおける約330の核語彙の選定、基本的サイン作成を完了し、サインに対応するシンボルと言語指導プログラムを作成した。
著者
難波 陽介 中務 桂佑 説田 章平 大石 真也 藤井 信孝 若林 嘉浩 岡村 裕昭 上野山 賀久 束村 博子 前多 敬一郎 大蔵 聡
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第103回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2010 (Released:2010-08-25)

【目的】キスペプチンは,Kiss1遺伝子にコードされ,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌刺激因子として注目されている神経ペプチドである。我々はウシKiss1遺伝子のcDNA塩基配列を同定し,ウシ型キスペプチンが53アミノ酸残基からなると推定した(第101回日本繁殖生物学会大会)。また,黒毛和種成熟雌ウシにおいて,ウシ型キスペプチンC末端部分ペプチドの末梢投与が黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を刺激することを示した(第102回日本繁殖生物学会大会)。本研究では,ウシにおけるキスペプチンの生理作用についてさらなる知見を得るため,全長ウシ型キスペプチン(bKp-53)の末梢投与によるLHおよびFSH分泌に対する効果と,第1卵胞発育波における主席卵胞の発育刺激効果を検討した。【方法】動物は黒毛和種成熟雌ウシを供試した(n=5)。プロスタグランジンF2α投与により誘起した発情日をDay 0とした。Day 5に,bKp-53 (0.2 nmol/kg)またはGnRH (0.2 nmol/kg)を静脈内投与した。投与前4時間から投与後6時間まで10分間隔で採血し,血漿中LHおよびFSH分泌動態を調べた。また,実験期間を通じて毎日,主席卵胞の直径を超音波診断装置により測定した。【結果】bKp-53の静脈内投与により,LHおよびFSH分泌の一過性の亢進がみられたが、主席卵胞は排卵しなかった。一方,GnRHの静脈内投与により,LHおよびFSH分泌は顕著に亢進し、投与後30時間から42時間までに主席卵胞の排卵を確認した。以上より,GnRHによる強力な性腺刺激ホルモン分泌刺激効果とは異なり、ウシにおいてキスペプチンはLHおよびFSH分泌を緩やかに亢進させる可能性が示唆された。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。
著者
上野 和之 神山 新一 MASSART R. BACRI J.ーC. 小池 和雄 中塚 勝人 神山 新一 上野 和之
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

平成9年4月から平成11年3月までの2年の研究期間中に2回の日仏共同研究セミナーを開催し、研究成果の発表と討議を通して共同研究の進展が図られた。2年間の共同研究の成果をまとめれば、以下のようになる。1. 高機能磁性流体の開発とその物性超微粒子の表面改質や各種ベース液への安定分散の成功により、磁性流体の高機能化が進み、知能流体としての特性の解明が進められた。特に、超微粒子の磁化特性や超微粒子を含む磁性流体の光学特性(Soret effect)の解明が、測定法の開発も含めて進められた。また、液体金属を母液とする磁性流体の開発も進められた。2. 管内流動特性の解明高機能磁性流体を用いて、管内振動流や気液二相流の流動特性に及ぼす磁場の影響が詳細に解明された。特に、非一様磁場下での磁性流体の加熱沸騰を伴う気液二相流の熱・流動特性の解明が進められた。3. 応用研究磁性流体の応用研究としては、ダンパ、アクチュエータ、ヒートパイプ、エネルギー変換システムの開発に関する基礎研究が進められた。
著者
上野 行一 坪能 由紀子
出版者
高知大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

平成16年度は、研究課題の第一に関して、平成15年度に引き続き実地調査(東京都現代美術館、ポーラ美術館、宇都宮美術館等予定)を行い完了させた。英国における創造的な芸術教育プログラムの調査結果を考察した結果、1989年に学校教育に導入されたナショナル・カリキュラムの目的・内容を忠実に採り入れたものであることが明確となった。これまで英国の社会教育は、インフォーマルな教育の場として学校教育とは峻別してとらえられがちであった。そのことが英国の教育の特質という見方が濃厚でもあったが、ナショナル・カリキュラムの導入による学校教育の基準化は、意外にも社会教育の場にまで浸透しているということである。研究課題の第二(プログラムの構築と検証)に関して、平成16年度は、研究成果を報告書にまとめるとともに、各地の公立文化施設におけるテキストとしての実際的な活用を考慮し、CD-ROMによる映像記録を中心にした創造的な芸術教育プログラムを作成した。プログラムは美術館が所蔵する作品を基本とした美術鑑賞教育用のものとした。創造的な芸術教育プログラムを実施する公立文化施設は高知県立美術館とし、11月12日第1回の実施がされた。一階のギャラリーを専用スペースとして借り、横尾忠則、クレメンテの作品を高知大学教育学部附属小学校5年生が鑑賞学習した。これは、第46回高知県造形教育研究大会の公開授業とも位置づけられた。学校教育における研究・公開授業が公立文化施設でおこなわれ、学校教育と社会教育が融合した事業となった。
著者
山田 和子 上野 昌江 柳川 敏彦 前馬 理恵
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

目的:4か月児健康診査(以下、「4か月」とする)、1歳6か月(以下、「18か月」とする)における母親の育児不安とその関連要因を明らかにするとともに、都市部と郡部の育児の違いを明らかにすることで、乳児からの育児支援の方法について検討する基礎資料を得ることを目的とする。調査方法:調査対象はA市(以下、「郡部」とする)の平成20年7月~12月生まれの児を持つ母親とした。調査方法は健診の問診票を送付時に本調査の調査票を同封してもらい、健診時に回収した。育児不安得点を平均点により2分して比較した。結果:調査の回収は4か月107名(回収率97.3%)、18か月103名(回収率92.8%)であった。4か月において、育児不安が強い群の方が、児への気持ち得点、母性意識得点は、有意に否定的であった。育児で心配なことも育児不安が強い群の方が有意に心配なことが多かった。郡部と都市部を比較すると、育児不安得点は、郡部の方が都市部より低かった。児への気持ち得点は、郡部の方が都市部より子どもへの否定的感情が弱かった。4か月と18か月の育児不安得点との相関をみたところ、4か月時に育児不安がある母親は18か月時点でも有意に育児不安があった。18か月において、育児不安が強い群の方が夫の育児参加や話しすることが有意に少なかった。まとめ:4か月で育児不安がある母親は18か月でも育児不安があることが多いことより、乳児期早期からの育児支援の必要性が示唆された。さらに、育児不安の状況は地域により異なることより、各地域の状況に応じた育児支援対策を行うことが必要である。
著者
上野 恵
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.33-40, 2004-08

平成15年11月3日から同29日まで、研究マネジメント能力、国際対応能力向上を目的とした、文部科学省主催の「国際研究交流担当職員短期研修プログラム」に参加を与えられた。スウェーデンのヴェクショー大学図書館でゲストライブラリアンとして仕事をした経験を元に、スウェーデンの大学図書館の特色、図書館員の役割と実際の業務、図書館サービスの内容と、それらを可能にするスウェーデンの社会背景等について報告する。
著者
望月 聡 上野 洋子 佐藤 公一 樋田 宣英
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.495-500, 1999-05-15
被引用文献数
8 11

冬期および夏期に漁獲されたマサバを用い, 死後変化に対する貯蔵温度の影響を検討した。魚体が完全硬直に達するまでの時間は, 冬期夏期ともに5℃で貯蔵したときが最も長かった。背肉中のATP, IMP, イノシン, およびクレアチンリン酸の含量の変化は冬期では5℃で貯蔵したときに最も遅く, 夏期では0℃で貯蔵したときに比較して5℃および10℃で貯蔵したときの方が遅かった。K値は冬期夏期ともに10℃で貯蔵したときの上昇速度が速かった。筋肉破断強度の経時変化は冬期は顕著に, 夏期はわずかではあるが5℃で貯蔵したときに高い値を維持した。以上の結果から, マサバの死後変化を遅くするための貯蔵温度は, 漁期を問わず5℃程度が適当であると考えられた。
著者
坂本 宏 上野 健治 田中 博 堀川 浩二 高畑 博樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.881-891, 1996-11-25
被引用文献数
4

地球局の小型化,通信容量の増大,静止軌道/周波数の有効利用を可能にするマルチビーム衛星通信方式の実現のため,衛星搭載用固定通信および移動体通信用機器を開発し,技術試験衛星VI型に搭載した.本衛星は1994年8月28日宇宙開発事業団種子島宇宙センターより打ち上げられ,きく6号と命名された.衛星はドリフト軌道投入のためのアポジエンジンの故障によって静止化を実現できなくなり長だ円軌道に投入された.このためドップラー効果による周波数偏位が大きく,また静止軌道に対して準備した地球局アンテナでは高速に移動する衛星を長時間にわたって追尾することができず,高速広帯域通信実験の実施は極めて困難となった.一方,搭載通信機器の軌道上での基本性能評価は短時間の測定でも可能と判断し試験を進めた.本論文では,性能評価試験を可能とさせるための衛星システム運用および評価試験方法を述べ,軌道上で測定した結果から,新たに開発したマルチビーム搭載通信機器が所期の性能を満足し宇宙実証できたことを述べる.
著者
高後 裕 蘆田 知史 藤谷 幹浩 大竹 孝明 前本 篤男 上野 伸展
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ヒトおよびマウス腸管を用いた腸内細菌叢の解析から、腸管内とバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なること、健常人と炎症性腸疾患患者におけるバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なることが示唆された。宿主由来および腸内細菌由来活性物質の作用解析から、プロバイオティクス由来の腸管保護活性物質が、腸炎による腸管障害を改善することが明らかになった。また、この作用は上皮細胞膜トランスポーターによる細胞内への取り込みや上皮細胞接着分子との結合により仲介されることが明らかになった。以上の研究結果から、プロバイオティクス由来の活性物質を用いた新規腸炎治療開発の基盤的成果が得られた。
著者
上野 洋 深川 周和 飯田 登 水野 忠則 渡辺 尚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.707-716, 2001-04-01
被引用文献数
2

モバイルコンピューティング環境のもとで, 即時系データと待時系データを統合的に送受信するマルチメディア通信方式として, 無線を使用した分散制御型の多重アクセス方式(DMMA)を提案する.DMMA方式は, (1)制御局を必要とせず, 端末が集まればその場でアドホック無線ネットワークを構築できる.(2)即時系データの連続性を保証しつつ低負荷時には待時系データの送信に複数のスロットを割り当て, チャネルの有効利用と不必要な遅延を回避する.(3)コンテンション領域(期間)が可変となるため, 即時系データを扱うには不向きなTreeアルゴリズムを, 領域が間欠的に現れる構造に改良している.(4)新規加入端末はある有限時間ネットワークを監視すれば網の状態を把握できるため, 動的に網に出入り可能である.以上の四つの特徴をもつ.また, DMMAの性能をシミュレーションにより評価を行い, その結果マルチメディアデータの種類によらず, 等しいスループットを提供できることを示した.
著者
中嶋 康文 上野 博司 溝部 俊樹 橋本 悟
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

血液単球系細胞からのTissue Factor(組織因子)の放出にRaf-MEK-ERK1/2pathway 及びその下流の転写因子Egr-1の関与がRNA 干渉法による遺伝子ノックダウン手技を用いて示唆された。クロドロネート前処理することで、血液中の単球系細胞を抑制したマウスにこれらの遺伝子ノックダウン単球系細胞を注入後、肺梗塞モデルマウスを用いて、肺梗塞の重症度及び生存率を検討したところ、Tissue Factorの発現、炎症系が抑制されることで重症度と生存率が改善した。
著者
中川 正男 中山 義雄 安江 勝夫 上野 将司
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.199-211, 1971-12-01

昭和46年7月18日,兵庫県西南部を襲った集中豪雨により相生市周辺で山地崩壊が相ついで発生した.相生市周辺の地質は後期中生代に噴出した流紋岩質溶結凝灰岩より構成される.一般に播磨地方の流紋岩質溶結凝灰岩地域は特異な山容をなし比較的安定した地貌を呈しており,崩壊等の災害は予測できそうもない地域である.この報文は相生市周辺の勾配 30° 以上のいわゆる急傾斜地の崩壊と法面崩壊の現場を観察し,地質状況や崩壊の形態を3つのタイプに分類してその数例を写真でしめしたものである.
著者
上田 豊 中尾 正義 ADHIKARY S.P 大畑 哲夫 藤井 理行 飯田 肇 章 新平 山田 知充 BAJRACHARYA オー アール 姚 檀棟 蒲 建辰 知北 和久 POKHREL A.P. 樋口 敬二 上野 健一 青木 輝夫 窪田 順平 幸島 司郎 末田 達彦 瀬古 勝基 増澤 敏行 中尾 正義 ZHANG Xinping BAJRACHARYA オー.アール SHANKAR K. BAJRACHARYA オー 伏見 碩二 岩田 修二
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1.自動観測装置の設置と維持予備調査の結果に基づき、平成6年度にヒマラヤ南面と北面に各々2カ所設置したが、各地域におけるプロセス研究が終了し、最終的には南面のクンブ地域と北面のタングラ地域で長期モニタリング態勢を維持している装置はおおむね良好に稼働し、近年の地球温暖化の影響が観測点の乏しいヒマラヤ高所にいかに現れるかの貴重なデータが得られている。2.氷河変動の実態観測1970年代に観測した氷河を測量し、ヒマラヤ南面では顕著な氷河縮小が観測された。その西部のヒドン・バレーのリカサンバ氷河では過去20年に約200mの氷河末端後退、東部のショロン地域のAX010氷河では、ここ17年で約20mの氷厚減少、またクンブ氷河下流部の氷厚減少も顕著であった。地球温暖化による氷河融解の促進は氷河湖の拡大を招き、その決壊による洪水災害の危険度を増やしている。3.氷河変動過程とその機構に関する観測氷河質量収支と熱収支・アルビードとの関係、氷河表面の厚い岩屑堆積物や池が氷河融解に与える効果などを、地上での雪氷・気象・水文観測、航空機によるリモート・センシング、衛星データ解析などから研究した。氷河表面の微生物がアルビードを低下させて氷河融解を促進する効果、従来確立されていなかった岩屑被覆下の氷河融解量の算定手法の開発、氷河湖・氷河池の氷河変動への影響など、ヒマラヤ雪氷圏特有の現象について、新たに貴重な知見が得られた。4.降水など水・物質循環試料の採取・分析・解析ヒマラヤ南北面で、水蒸気や化学物質の循環に関する試料を採取し、現在分析・解析中であるが、南からのモンスーンの影響の地域特性が水の安定同位体の分析結果から検出されている。5.衛星データ解析アルゴリズムの開発衛星データの地上検証観測に基づき、可視光とマイクロ波の組み合わせによる氷河融解に関わる微物理過程に関するアルゴリズムの開発、SPOT衛星データからのマッピングによる雪氷圏の縮小把握、LANDSAT衛星TM画像による氷河融解への堆積物効果の算定手法の確立などの成果を得た。6.最近の気候変化解析ヒマラヤ南面のヒドン・バレーとランタン地域で氷河積雪試料、ランタン周辺で年輪試料を採取し、過去数十年の地球温暖化に関わる気候変化を解析中である。7.最近数十年間の氷河変動解析最近の航空写真・地形図をもとに過去の資料と対比して氷河をマッピングし、広域的な氷河変動の分布を解析中である。8.地球温暖化の影響の広域解析北半球規模の気候変化にインド・モンスーンが重要な役割を果たしており、モンスーンの消長に関与するヒマラヤ雪氷圏の効果の基礎資料が得られた。
著者
浅野 和也 青木 智一 長友 晃彦 菅原 拓 橋田 淳一 阿部 紀夫 岡本 諭 上野 悠也 七夕 雅俊 大久保 好幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム
巻号頁・発行日
vol.108, no.453, pp.145-146, 2009-02-23

低消費電力で1Gbpsフルワイヤ処理が可能な1Gbps IPsecアクセラレータの開発について前回報告したが,今回は同じLSIにルーティング機能(NAPT,PPPoE等)を追加した実装について報告する.結果として,NAPT+IPsec(トンネルモード/3DES/SHA1)を700Mbpsで処理可能であることが確認でき、高速かつ低消費電力のブロードバンドルータ実現に有効なソリューションとなることが実証できた.
著者
青沼 佳代 矢内原 仁 上野 宗久 出口 修宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.745-751, 2007-09-20

(目的) PlasmaKinetic (PK) system<sup>®</sup> は生理食塩水で灌流を行う TUR system である. そのため術中に低ナトリウム血症を発症しないという従来の monopolar 電気メスでは解決できなかった大きな利点がある. PK system<sup>®</sup> を用いてTUR-Pを行った46例における1年間の臨床経過を報告する.<br>(対象と方法) 2004年6月22日から2005年11月17日までの間に PK system<sup>®</sup> を用いてTUR-Pを行った前立腺肥大症を有する46症例について安全性, 有用性を検討した. 麻酔は腰椎麻酔40例, 仙骨部硬膜外麻酔6例に施行した. 臨床成績として国際前立腺症状スコア (IPSS), QOLスコア, 最大尿流量率 (Qmax), 残尿量 (RUV) の各項目を評価し, 術前, 術後1ヵ月, 3ヵ月, 1年のデータを比較した. れ性機能につき国際勃起機能スコア (IIEF5) で術前と術後1年を比較した. また, PK system<sup>®</sup> の切除凝固能について従来の monopolar TUR と比較し, 組織学的検討を加えた.<br>(結果) すべての症例で術中低ナトリウム血症などの合併症を認めず安全に手術が施行でき, 術後経過においても良好な臨床経過を得られた. 手術時間は99.0±43.2分, 灌流液使用量は28.2±16.3L, 前立腺切除重量は35.3±19.4gであった. 尿道カテーテル抜去までの日数は1.7±1.0日, 術後入院日数は4.3±2.4日であった.<br>術前と術後1ヵ月, 3ヵ月及び1年の時点におけるIPSSは28.2±7.4から6.1±5.9, 2.7±3.5, 6.6±5.3, QOLスコアは5.4±1.0から0.9±1.2, 0.6±0.9, 1.3±1.1と有意に低下した. また最大尿流量率 (ml/s) は3.7±4.0ml/sから19.5±9.6, 17.9±7.3, 18.7±9.9ml/sと有意に増加した. 排尿後残尿量は104.8±83.6mlから19.4±25.0, 11.1±247, 17.9±28.5mlと有意に減少した.<br>性機能についてはIIEF5による術前, 術後1年の統計を調査し, それぞれ6.2±5.2, 6.0±5.3であった. 術後勃起障害を訴えたのは2例であった.<br>組織学的検討ではPK system<sup>®</sup> の切開面は出力を上げても切開面における炭化組織の付着は認められなかった.<br>(結論) PK system<sup>®</sup> は従来の monopolar TURに匹敵する切除, 凝固能を有しており安全にTUR-P行うことが可能であると考えられた. 一年間の経過観察において, 良好な結果を得られたことからも, 今後広く普及するものと考えられた.