著者
中村 百合子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.105-124, 2005-09-20

本稿では, 1947年から1948年に, 日米の関係者の協働によって編集された『学校図書館の手引』の内容・記述を, 複数の日本人の編修委員が当時目にしたと述べていた米国の8冊の図書と対照させながら, 分析した。特に第2章第1節「設置の基準」と第4章第2節「図書および図書館利用法の指導」には, 当時の米国の図書の影響がはっきりと認められた。しかしその他の章や節, たとえば第3章「学校図書館の設備」;第4章第1節「図書委員の構成と活動」;同第3節「読書指導の実施」;同第5節「学級文庫の指導」;同第6節「読書会・発表会の開催と読書クラブの奨励」;同第9節「図書の増加と図書費の問題」では, 日本人執筆者の判断によると考えられる記述が目立った。つまり, 『学校図書館の手引』には, 米人ライブラリアンの指示や, 当時の米国の学校図書館に関する図書の内容・記述が反映されていたが, そればかりではなく, 日本人の執筆者各人の経験や専門分野の知識も少なからず反映されていた。
著者
山根 仁 金原 伸大 江田 慧子 中村 寛志
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.8, pp.29-39, 2010-03

本研究は長野県松本市にある上高地において,チョウ類群集の季節変動や種構成を明らかにするとともに,チョウ類群集を用いて環境評価を行った。調査は2009年5月26日,6月23日,7月24日,7月30日,8月20日,10月16日の計6回のチョウ類のトランセクト調査を行い,また2009年7月24日と7月30日には定点観測を実施した。その結果,トランセクト調査では7科41種554個体が,また,定点観測では6科24種152個体が確認された。上高地の種構成は高原性種の割合が53.7%で最も高く,またクモマツマキチョウ北アルプス・戸隠亜種Anthocharis cardamines isshikii,オオイチモンジLimenitis populi jezoensis,コヒオドシAglaisurticae esakii の3種の高山チョウが確認された。上位優占3種は,ヤマキマダラヒカゲNeope niphonicaniphonica,コムラサキApatura metis substituta,スジグロシロチョウPieris melete meleteであった。Simpson の多様度指数の値は,平均8.22で6月23日以外は安定した値を示した。EI 指数は100となり,「良好な林や草原」と判定され,環境階級存在比(ER)による環境評価では,天然更新林といった環境の1次段階と判定された。また,過去の上高地や近隣の島々谷のチョウ類群集との比較から,現在の上高地のチョウ類群集はタテハチョウ科や高原性種が増加傾向にあり,それらの種の生息に特に適した環境になりつつあることが示唆された。
著者
中村宏 小野智司 中山茂
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.22, pp.1-2, 2013-02-20

本研究では対話的な進化計算を用いて利用者の嗜好を反映した映像のダイジェスト生成手法を提案する.ダイジェストの適切さは質的評価と量的評価の 2 つの指標から評価する.質的評価はユーザの嗜好の反映度である.量的評価は再生時間の適切さと冗長性の少なさである.冗長性の評価やユーザ評価の推定に,Bag of Visual Words を使用した.提案手法ではユーザ評価の推定に特定のジャンルの映像に依存した特徴量を用いないため,ホームビデオ等の映像にも適用可能である.This paper proposes a video digest generation method based on interactive evolutionary computation. The proposed method evaluates solution candidates from the viewpoints of qualitative and quantitative criteria. As a qualitative evaluation, the proposed method maximizes user preference, and as quantitative evaluation, the method minimizes the redundancy and the inappropriateness of video length. The method uses features based on Bag of Visual Words, which are not depend on video categories and users, enabling even to summarize home videos.
著者
中村 禎子 安藝 真里子 橋口(石黒) 美智留 上田 成一 奥 恒行
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-15, 2008-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
23

長崎県海岸部の海砂から分離したVibrio alginolyticus SUN53(登録番号NITE-P-14)を用いて,平均分子量30万以上のアルギン酸ナトリウムを分解し,この小分子分解物を用いてラット小腸粘膜二糖類水解酵素に対する阻害作用を検討した。その結果,アルギン酸小分子分解物水溶液はラット小腸粘膜スクラーゼ,マルターゼ,イソマルターゼ,トレハラーゼおよびラクターゼに対して阻害作用を示し,その機序は拮抗阻害であることが明らかになった。また,阻害効果は,スクラーゼに対して強く,トレハラーゼに対しては弱いことが明らかになった。以上の結果,SUN53菌によって分解されたアルギン酸小分子分解物は,今後,血糖上昇抑制作用を持つ食品素材として,生活習慣病の予防に寄与する可能性のあることが示唆された。
著者
清田 忠志 谷口 明 清田 誠良 中村 安弘
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.71, no.602, pp.69-75, 2006
参考文献数
13
被引用文献数
10 5

In this study, we analyzed the difference of the air temperature in the urban area of Hiroshima among calm, sea breeze and land breeze by the observation. The summary of the results is shown below. 1) In the calm period, the air temperature in the urban area rises. However, the air temperature is slightly lower in green belt and around the river. It is caused by the influence the micro-scale climate. 2) In the sea breeze period, the air temperature of urban area lowers inversely as the distance from the coastline. In addition, the air temperature lowers around the river, since it becomes a way of the wind. It is the phenomena of the meso-scale.
著者
嶋田 義仁 坂田 隆 鷹木 恵子 池谷 和信 今村 薫 大野 旭 ブレンサイン ホルジギン 縄田 浩志 ウスビ サコ 星野 仏方 平田 昌弘 児玉 香菜子 石山 俊 中村 亮 中川原 育子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

家畜文化を有したアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明が人類文明発展の中心にあった。家畜は蛋白資源生産(肉、乳、毛、皮)に止まらない。化石エネルギー使用以前人類が利用しうる最大の自然パワーであった。移動・運搬手段として長距離交易と都市文明を可能にし、政治軍事手段としては巨大帝国形成を可能にした。これにより、旧大陸内陸部にグローバルな乾燥地文明が形成された。しかしこの文明は内的に多様であり、4類型にわけられ。①ウマ卓越北方冷涼草原、②ラクダ卓越熱帯砂漠、③小型家畜中心山地オアシス、④ウシ中心熱帯サヴァンナ、である。しかし海洋中心の西洋近代文明、化石燃料時代の到来とともに、乾燥地文明は衰退する。
著者
山子 茂 中村 泰之
出版者
日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協會誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.135-140, 2009-03
被引用文献数
5
著者
中村 裕一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.57-62, 2013-02-01
参考文献数
16

映像には多くの情報を記録することができ,ライフログのデータとして優れている反面,閲覧に時間がかかり,一覧性も悪いなどの欠点もある。そのため,メディア技術を用いて,ライフログ映像の加工を行うことが必須となる。本稿では,記憶補助から集団活動の解析や補助まで,様々な目的に対して,種々の画像・映像処理を行って,ライフログ映像の活用を支援する手法について紹介する。
著者
吉澤 一家 中村 文雄
出版者
日本珪藻学会
雑誌
Diatom (ISSN:09119310)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.9-15, 1995-12-31 (Released:2012-12-11)
参考文献数
25

The growth characteristics and extracellular organic matter of Synedra acus Kützing, which often causes problems to the public water supply, were investigated by using an artificial culture medium. Synedra acus was removed from the water of a reservoir; the cultivations were carried out between 10-25°C with continuous light illumination, under cool-white fluorescent lamps at 4,500 lx and 2,000 lx.Under these conditions, the higher the temperature and the brighter the light became, the more rapidly the diatoms grew. With the growth of the diatoms, extracellular organic matter, which included saccharides, increased at a 40% ratio. Following the Logarithmic phase, extracellular saccharides were yielded at a ratio of 11-12% to the dry algae.The composition of these saccharides was recorded as follows: Rib + Ara: Fuc: Xyl: Man: Gal: Glu = 4.3: 1.8: 7.1: 8.6: 9.4: 68. As a result, saccharides produced by Synedra acus were characterized by a high concentration of Glu and the absence of Rha.
著者
重本 直利 細川 孝 望月 太郎 碓井 敏正 細井 克彦 植田 健男 碓井 敏正 細井 克彦 小山 由美 植田 健男 中村 征樹
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

研究成果は以下の5点である。(1)ステークホルダー間調整視点から「評価-機能モデル」を仮説的一般理論としてまとめた。(2)「評価-機能」の相互関係性の検討を行う上での基本用語の整理を行った。(3)韓国およびドイツ等での「大学内ステークホルダー間調整」視点からの調査において、教員、研究員(職員)、学生(院生)における「評価-機能」の相互関係性をまとめた。(4)日本の大学および認証機関における「PDCAサイクル」での評価の取り組みを「評価-機能モデル」から検討し、結論としてコミュニケーション型モデル・了解志向型モデルを提案した。(5)『研究報告書(研究記録を含む)』としてまとめた(2010年3月19日)。また、重本直利は『大学経営学序説』(晃洋書房、2009年)において成果の一部の公表を行った。
著者
加藤 正博 稲葉 美代志 板鼻 秀信 大原 英治 中村 好一 上里 新一 井上 博之 藤多 哲朗
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:00374377)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.288-292, 1990
被引用文献数
2

Twentythree crude drugs and related plants were examined for their anticoccidial activity by the use of the experimental coccidiosis in chicken. The activity was found in the dry leaves and calyxes of some Hydrangea plants. As the active components of H. macrophylla subsp. macrophylla forma macrophylla, febrifugines were isolated which have been known to be contained in Dichroa febrifuga and H. umbellata. However, although the febrifugines in the latter two plants were reported to be mainly trans, in the H. macrophylla plants, cis-febrifugine was found to be a major component and the trans-counterpart, a minor component. Furthermore, the cis-isomer showed no anticoccidial activity in chicken even at the concentration level of 25 times the effective dose (3 ppm, IE=100) of the trans-isomer.
著者
中村 譲 山形 洋一 高岡 宏行 高橋 正和 OCHOA A. J. Onofre MOLINA Pedro A. 高橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.51-58, 1981
被引用文献数
3

国際協力事業団のグアテマラ共和国におけるオンコセルカ症の研究と防除プロジェクトは1976年から5年計画として開始された。その昆虫学部門は, エスクイントラ県サンビセンテパカヤ郡のパイロット地区の北部を流れるラバデロス川流域において最初のブユ駆除をおこなった。対象種はSimulium ochraceumとし, テメフォス10%固型剤を水量0.5l/secあたり2g投入することを2週ごとに繰り返した。作業は1979年3月下旬より開始され, 同年5月末までの結果につき報告した。同川には支流が21本あり, 支流上流部で水量0.1l/sec以上の流れのすべての水源と, 途中で2倍以上に水量が増加する点とを殺虫剤投入点としたところ, 5月末現在で投入点は57カ所となった。投入薬量は合計242gであった。作業量は2人1組で乾季で1日半であった。殺虫剤投入前に19支流調査して11支流にS. ochraceum幼虫が存在したが, 2回目の殺虫剤投入後には21支流中4支流のみで同種幼虫が見いだされた。幼虫定期観察のための2カ所の定点においては, 10分間採集法でも人工基物(シリコンチューブ)法でも1∿5週後に幼虫はゼロになった。成虫は, 殺虫剤投入2∿4週間前に人囮3時間採集法で286∿403個体採集されたが, 徐々に減少し, 5月かには6個体になった。テメフォス固型剤は, ブユ幼虫に対する高い有効性とともに作製, 保存, 運搬, 投入などの点から野外での実際の散布計画でも有望と思われる。
著者
石山 洋 佐藤 達策 片桐 一男 板倉 聖宣 中山 茂 吉田 忠 酒井 シヅ 菅原 国香 中村 邦光
出版者
東海大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

南蛮文化導入期から顧みると,直接日本へ渡来した文物や学術よりも訪中したイエズス会士の著書を輸入して学んだ西洋科学技術の影響のほうが日本の文明に与えたものは大きかった。中国語訳された書物は、日本の最高に知的レベルの高い人びとが学びやすかったからである。江戸時代の前期はその消化に費やされた。とくにマテオ・リッチの業績が大きな影響を与えている。第2期として,蘭学興隆期がくる。ここでは,オランダ語の原書を日本人が直接読み,訳した。その訳語には,中国語訳の先例を探し,できるだけ,それを採用する努力がなされた。新訳語を造ることには消極的であった。しかし導入された知識は科学革命以後のもので,イエスズ会士がもたらしたルネサンス時代の訳語だけでは対應できず,止むを得ず新訳語の造語もおこなわれた。その過程を追ってみると,始めは音訳で入れ,次ぎに義訳へ訳し直す傾向が見られる。また直訳を志向しつつ,既存の義訳の蓄積も活用する傾向も指摘されている。別に留意されるべきことは,アヘン戦争後,中国へ進出した英米のミッションの新教宣教師による中国文の西洋知識普及書の存在である。これを利用した清朝知識の著作も含め,わが国へ紹介され,19世紀の西欧科学技術導入に影響を与えた。明治に入って,外来学術用語は多方面に滲透し,乱立した。情報流通の必要上,とくに教育上,訳語の標準化が求められてきた。政府直接ではないが,学協会を通じて,権威側で進められた。1880年代から開始された数学部門の例もあるが,訳語の統一が活発化するのは20世紀以後である。そこには先例となる中国語訳への依存は見られず、むしろ中国人の日本留学者などの手で,日本語訳が中国語訳の中に定着したりしている。各種の事例で例証することができた。
著者
中村 裕之 荻野 景規 長瀬 博文 吉田 雅美
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

低レベルマイクロ波の全身暴露によってもたらされる内分泌免疫系への影響を脳内神経伝達物質との関連において解明することを目的に、マイクロ波(周波数2,450MHz、強度2mW/cm^2、90分間)暴露による脾臓細胞中ナチュラルキラー細胞活性(NKCA)、血中の諸指標と下垂体と胎盤のβ一エンドルフィン(βEP)の変化を妊娠ラットあるいは処女ラットにおいて検討した。このレベルのマイクロ波は、処女ラット、妊娠ラットでそれぞれ、0.8と0.9°Cの温度上昇をもたらしたが、血中コルチコステロンへの有意な変化は引き起こさなかった。処女ラットでは認められなかったが、妊娠ラットのマイクロ波暴露群のNKCAは非暴露群に比べ有意に減少した。オピオイド受容体拮抗剤であるnaloxoneの前処置では、妊娠期におけるマイクロ波によって低下したNKCAと、上昇したPRL、低下した視床下部medianeminenceのCRHをreverseした。一方、CRH受容体拮抗剤であるα-helicalCRHのicv投与によっても同じく、マイクロ波暴露によって上昇した血中プロラクチン(PRL)と下垂体βEPと、減少したNKCAをreverseした。これらの結果から、妊娠中のマイクロ波暴露による免疫機能低下には、マイクロ波暴露に際して視床下部CRH神経系と、視床下部あるいは下垂体のオピオイド神経系が刺激され、その結果、下垂体PRLが活性化されるという中枢性機序が考えられた。その際のマイクロ波による生体影響は、マイク口波の温熱作用と非温熱作用の両作用によると考えられた。