著者
岩崎 陽一 白柳 龍一 中村 京子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-4, 2014-10-11

放送局の保有するラジオ番組の録音には,音楽史を知るための貴重な資料が含まれているにも関わらず,わが国ではそのほとんどが一般には公開されていない.本稿は,NHK アーカイブスの放送音源の一部をデジタル配信および高品位 CD で提供する,NHK エンタープライズとナクソスの共同事業を紹介する.そのなかで,人気ではなく資料価値を重視した場合のデジタル配信の優位性を明らかにし,また実演家の許諾取得に伴う法的および 「道義的」 課題とを論じる.Each broadcasting station has broadcast archives, which contain audio recordings that may be valuable materials for research in music history. Nevertheless, in our country, most of such archives are not available to the third party people. This paper introduces the joint projects of NHK Enterprises and Naxos for distributing a part of NHK radio broadcast archive digitally and physically. We will focus on the advantage of digital distribution as a means for spreading valuable but less popular materials, and legal and moral issues concerning rights handling.
著者
中村 五月
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高齢者の尿意の訴え方と援助方法の実態,尿意の訴えの有無に関連する要因を明らかにし,尿意を訴える能力に応じた援助方法を検討した.対象者は介護施設に入所する17名で,排尿援助場面での尿意の訴え方で「自発的に訴える」3名,「援助者が確認すると訴える」7名,「援助者が確認しても訴えない」7名に分類された.援助者の確認に対して尿意の訴えの有無に関連する要因を分析した結果,言語障害の有無,認知機能,ADL,援助方法には関連がなく,意欲に有意差が認められた.また,尿意の訴えの有無には「トイレの認知」が影響していた.尿意の訴えを促すためには排尿援助のみならず生活意欲を高める援助が必要であることが示唆された.
著者
中村 仁彦 山根 克 高野 渉 神永 拓
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

人間の身体と運動の記号モデルと自然言語モデルを接続することによって,世界や他者の理解を行い,それに基づいて自己の行動を決定する計算システムを構築した.人類の祖先がたどったものとは異なる経路をたどって,まだきわめて限られてはいるが, われわれが世界や他者を理解するのと類似の方法をロボットが獲得した瞬間である. これを再帰的に行うことによって, 他者の行動決定のモデルを推論する自己のモデルを推論するなど,いわゆる「こころの問題」に接近することができる.この過程で,人間の深部身体感覚や神経活動の推論の計算基盤を構築し,これらをヒューマノイドロボットへ実装するために,カに敏感なアクチュエータと駆動系,外乱の機敏に反応して随時にステップを変更する歩行制御系を開発した.
著者
服部 良久 青谷 秀紀 朝治 啓三 小林 功 小山 啓子 櫻井 康人 渋谷 聡 図師 宣忠 高田 京比子 田中 俊之 轟木 広太郎 中村 敦子 中堀 博司 西岡 健司 根津 由喜夫 藤井 真生 皆川 卓 山田 雅彦 山辺 規子 渡邊 伸 高田 良太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

23人の研究分担者が国内外の研究協力者と共に、中・近世ヨーロッパのほぼ全域にわたり、帝国、王国、領邦、都市と都市国家、地方(農村)共同体、教会組織における、紛争と紛争解決を重要な局面とするコミュニケーションのプロセスを、そうした領域・組織・政治体の統合・秩序と不可分の、あるいは相互関係にある事象として比較しつつ明らかにした。ここで扱ったコミュニケーションとは、紛争当事者の和解交渉から、君主宮廷や都市空間における儀礼的、象徴的な行為による合意形成やアイデンティティ形成など、様々なメディアを用いたインタラクティヴな行為を包括している。
著者
鯵坂 学 徳田 剛 中村 圭 加藤 泰子 田中 志敬
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.1-87, 2010-05

日本の大都市では2000年を画期として、長らく続いた人口の郊外化がおわり、人口が都心部に向かう都心回帰といわれる状況がみられる。その原因は、不況により都心地域の地価が下がり、オフィス需要が減少し、そこに大型のマンションが建てられ、新しい住民の居住が促進されたためである。本研究では、大阪市の都心区における新しい住民と古くから住んでいた住民との関係について、大阪市特有の地域住民組織である「地域振興会」(振興町会や連合振興町会)に焦点をあて、共同調査を行った。結果として、新住民のそれへの参加は少なく、旧住民中心に運営されてきた振興町会の側も新住民への対応に苦慮していること、新旧住民間の交流やコミュニティの形成が課題となっていることが判明した。
著者
中村 健
出版者
日本リメディアル教育学会
雑誌
リメディアル教育研究 (ISSN:18810470)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.85-95, 2012-03-31

This article first reviews the historical process of how the first universities,i.e., the Universities of Bologna and Paris, arose, and then overviews and compares the current higher education reforms which are being implemented in Japan and Europe. Through this, the author draws the following conclusion: the essence of the first universities established in Medieval Europe was their universality, achieved mainly through the universal influence of their knowledge and the mobility of academics and students. The reform of higher education currently being implemented in Europe, called the "Bologna Process," apparently has this universality as its basic philosophy. In contrast, the reforms being implemented in Japanese higher education seem to lack a historical standpoint and make light of the universality which we should expect of our universities.
著者
辛島 彰洋 中村 有孝 安斎 友花 塚田 僚 益田 幸輝
出版者
東北工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、以下に記すように、睡眠-覚醒状態に依存したシナプス結合の可塑的変化が大脳皮質と海馬で観測されことを示し、そのメカニズムに迫ることができた。大脳皮質では、体性感覚野スライス標本を用いたin vitroパッチクランプ実験と、体性感覚応答を覚醒時と睡眠時で比較するin vivo実験を行った。覚醒時にシナプス結合が増強し、睡眠中には減弱していることを示す結果が得られた。さらに、感覚遮断実験により、覚醒時の増強が経験依存的である可能性を示した。大脳皮質と同様に海馬CA1領域でも、in vitro実験も行い、覚醒時にシナプス結合が増強していることやその増強が経験依存的である可能性を示した。
著者
井上 仁 橋本 敦史 中村 和晃 舩冨 卓哉 山肩 洋子 上田 真由美 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.9, pp.1490-1502, 2014-09-01

本論文では,調理中に起きる食材切断行動を利用した食材認識手法を提案する.一般的な物体認識手法の多くは,画像だけを用いている.しかし食材は異種であっても色が似通っていたり,同一種でも形状が大きく異なるために,画像のみでは認識が困難である.本論文では,食材を切断する際に観測できる荷重と切断音を新たな特徴として統合的に利用する.食材切断時にまな板にかかる荷重は,食材の硬さを反映した特徴であり,切断時に発生する振動音は食材内部の構造を反映している.ゆえに,これらの特徴は画像と併せて用いることで,食材の認識精度を向上させることが期待される.三つの特徴を統合した際の認識精度について,23種の食材を用いて検証し,大幅な認識精度の向上を確認した.
著者
中村 直毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.256, pp.29-32, 2013-10-15

東日本大震災により宮城県の沿岸地区では,医療機関の壊滅が著しく,早急な社会医療基盤の再建が急務となっている.宮城県では,単なる医療機関の復旧でなく,よりよい社会基盤の構築に結びつく復興を目指し,医療情報福祉分野の社会基盤として,みやぎ医療福祉情報ネットワークシステムを構築することになった.本システムでは,病院,診療所,薬局,介護施設等で保有する患者・住民の医療・健康情報を,安全かつ円滑に記録・蓄積・閲覧を可能とするとともに, 宮城県の医療機関の相互接続を可能とするネットワーク基盤を整備した.本稿では,本システムの中核をなすネットワーク基盤に焦点を当てて報告する.
著者
白石 直 渡壁 壽人 佐郷 ひろみ 中村 友道 石谷 嘉英 此村 守 山口 彰 藤井 正
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2004, no.7, pp.103-104, 2004-09-04

A flow-induced vibration test facility that simulates a hot leg piping of the Japanese sodium-cooled fast reactor (JSFR) with 1/3 scale is used to investigate the flow pattern and pressure fluctuations of the pipe. As the observation of flow pattern, the velocity distributions measured by LDV show the flow pattern is independent of Reynolds number at high Reynolds number. The maximum velocity is about 15 times the mean velocity in the elbow. A statistical analysis of the pressure fluctuations in a separation region shows the power spectrum is of white noise up to 20Hz, the autocorrelation sharply drops to zero less than 1 sec of time interval and the probability density distribution figures almost the Gaussian distribution, excepting its flatness-3 is 3.
著者
寺野 香織 剣持 聡久 中村 暢達 根本 啓次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, 1996-03-11

筆者らがこれまで開発したバーチャルスキーシステム(図1)は,スキーヤの生体情報を計測し,その動作に応じて映像や音響を呈示し,仮想的なスキー滑走を行うVRシステムである.[figure] このVRシステムの音響生成部では,現実を再現するスタート時のカウントダウン音や,ゴール時の観客の歓声,ゲーム性を高めるBGM,映像情報を補助するボール通過音等の効果音を呈示してきた。しかし,実際のスキー場では,他にも色々な音が生じている。本稿では,より臨場感ある音環境生成のための,滑走音の呈示について述べる。
著者
朝長 健太 櫻井 康雅 矢寺 和博 川波 敏則 西田 千夏 山崎 啓 中村 武博 吉井 千春 城戸 優光 佐多 竹良
出版者
医療法人茜会・社会福祉法人暁会学術委員会
雑誌
昭和病院雑誌 (ISSN:18801528)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.060-064, 2007-10-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
7

症例は1日25本×50年間の喫煙歴のある67歳男性。15年前から糖尿病の治療歴あり。健診での胸部レントゲン写真異常と労作時呼吸困難のため来院。受診時に低酸素血症(room air SpO2 86%)を認め、胸部レントゲン写真では、両肺野全域にわたる斑状網状影、胸部computed tomography (CT)では気管支周囲の間質を中心としたびまん性の斑状網状影、すりガラス影を認めた。経気管支肺生検にてcellular NSIPに矛盾しない所見が認められ、総合的に非特異的間質性肺炎(NSIP)と診断し、副腎皮質ステロイドパルス療法を含む治療を行い、軽快退院に至った。
著者
木村 暁 中村 安秀
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.81-90, 2014-06-20 (Released:2014-07-17)
参考文献数
29

目的  途上国では処方箋を必要とする薬剤の販売規制が不十分であり、薬剤耐性の発現という視点からも、抗生物質による自己治療は世界の公衆衛生の大きな問題である。インドネシアにおいては処方箋薬による自己治療は一般的であるうえに危険な偽造医薬品の流通も社会問題となっている。インドネシア首都圏において抗生物質を買い求める顧客の行動様式とそれに対する薬剤師の対応を明らかにし、抗生物質を用いた自己治療に係る要因を考察することを目的とした。方法  南タンゲラン市チプタ地区における地域薬局6店で抗生物質を求めた200名の顧客に出口調査を行った。調査項目は健康保険加入・非加入を含めた一般属性のほか、来店時の処方箋の有無、購入にあたっての薬剤師の指示の有無など構造化質問表を用いた。また薬局に勤務する薬剤師、薬局経営者ら8名に半構造化インタビューを行った。調査項目は一日に抗生物質を買い求める顧客数、そのうち処方箋を持たない顧客の割合、薬剤師の顧客対応、経験した健康被害の有無などとした。調査は2012年5月下旬から7月初めにかけて実施した。結果  薬局に抗生物質を買い求めに来た顧客の48.5% (97/200)が処方箋を持っていなかった。医師の受診か自己治療か、という選択は健康保険の加入の有無と有意に関連していなかった。処方箋を持たない患者が抗生物質を購入するときは飲み残しサンプルを薬局で提示するケースが51.9% (54/104)を占め、家族・友人あるいは薬剤師の推薦などに従うケースに比べて有意に多かった。薬剤師は薬剤耐性とアレルギー発現に留意して問診を行い,処方箋を持たない顧客に抗生物質を交付することは慎重であった。薬剤師は自己治療の問題を軽減するために顧客や地域への働きかけと患者教育が重要であると考えていた。結論  健康保険の加入状況が処方箋の有無及び医師の受診頻度と有意に相関しなかったことは自己治療の選択が経済的要因だけではないことを示すものと考えられた。顧客の自信過剰な態度、飲み残しサンプルでの購入、家族・友人の勧めを薬剤師の勧めに優先させる傾向などから自己治療は限られた経験や情報に基づくヒューリスティックな選択であると同時に限られた選択肢の中でのリスクマネジメントであると考えらえた。  抗生物質は治療効果が短期間で明白となることから高い学習効果と成功体験をもたらして自己治療に好都合である。この成功体験が自己治療の選択行動を強化していることが考えられた。行動変容を促す患者教育は薬剤師の新たな役割と期待される。