著者
塩見 慎次郎 丁野 久美 西川 美穂 岡部 真美 中村 怜之輔
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.235-241, 2002-09-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

パイナップル果実の収穫後のガス代謝および果皮色の変化に対するエチレンの関与について, エチレンの作用阻害剤である1-メチルシクロプロペン (1-MCP) を用いて調べた。緑熟段階で収穫した果実の炭酸ガス排出量およびエチレン生成量は貯蔵中に上昇し, 末期上昇型パターンを示したが, エチレン生成量は最大でも1nl g-1 h-1に達しなかった。1-MCP処理によって呼吸量は減少し, エチレン生成量は一時的に上昇した。プロピレン処理は呼吸を一時的に増加させたが, エチレン生成を促進しなかった。果実をクラウンと果実部に分けてガス代謝を調べたところ, 末期上昇パターンはクラウンではなく, 果実部に依存していた。未熟果・緑熟果・適熟果に1-MCP処理を複数回行うと, いずれの熟度においても処理直後にエチレン生成が一時的に促進された。呼吸およびエチレン生成は樹上で発育に伴って増加し, 収穫後も増加し続けた。果皮の着色は収穫熟度に関係なく進行したが, 未熟果になるほど1-MCP処理によってその進行が遅延した。以上より, パイナップル果実のエチレン生成はエチレンによるネガティブフィードバック調節 (自動抑制作用) を受けること, 果皮色の変化にエチレンが関与しているごとが示され, 収穫後のガス代謝や果皮色の変化が樹上での変化と同様であることからパイナップルは少なくとも一部追熟性をもつことが明らかになった。
著者
中村 栄子 石渡 孔実子 並木 博
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.845-847, 1990-12-05
被引用文献数
4 5

After removal of anionic surfactants by an ion-exchange technique, cationic surfactants were extracted as their chlorides into chloroform. Ion pairs of the cationic surfactants and Disulphine Blue formed in the chloroform phase were measured spectrophotometrically as follows : A 50 ml of a sample solution containing cationic surfactants (above 1μg as Zephiramine) is passed through an anion-exchange column (Amberlite IRA-401,15 ml) at a rate of 1 ml/ min and the column is washed with 50 ml of 50% methanol. Five milliliters of sodium chloride solution (10%) and l0 ml of chloroform are added to the eluate. The mixture is then shaken for 1 min to extract cationic surfactants into chloroform. The chloroform phase is shaken for 1 min with a mixture of 10 ml of citrate buffer solution (0.1 M, pH 5), 5 ml of sodium sulfate solution (0.4 M) and 1.5 ml of Disulphine Blue solution (1.17×10^<-4> M). The absorbance of the chloroform phase is measured at 628 nm. Cationlc surfactants in water above 20 μg/l could be determined by the proposed method.
著者
阿部 紫織 中村 要介 若月 泰孝 佐山 敬洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2017

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)において,IPCC第5次評価報告書が公表されており,人為的な気候変動の理論はもはや疑う余地がない.この気候変動が河川の流況や人間活動に及ぼす影響については,全球レベルでの研究は多数報告されているが,流域スケールでの影響評価事例はまだ十分ではない.一方,気候変動との因果関係は定かではないが,全国各地で浸水被害が発生しており,2015(平成27)年9月関東・東北豪雨による鬼怒川の堤防決壊や2016(平成28)年8月末の小本川の外水氾濫は記憶に新しい.現在気候下での外水氾濫のリスクを評価するだけでなく,将来気候下での浸水被害を定量的に評価することは,気候変動への適応策としても水防災意識社会の再構築の観点からも重要である.本研究では,利根川水系鬼怒川・小貝川を対象とし,気候変動が河川の流況やその氾濫原に及ぼす影響を定量的に評価することを目的とした.<br />本研究では,CMIP-3,SRES-A1Bシナリオに基づいた21世紀末の気候場について,領域気象モデル(WRF)で予測を行った結果を用い,将来の気候場の予測を領域気候モデル実験で推定した.同様のモデルを用いて現在気候の再現計算を行い,現在気候と将来気候の比較を行った.気候変動を評価する水文モデルにはRRIモデルを用いた.シミュレーション期間は2007年~2009年の3年間とし,それぞれ2ヶ月のスピンナップ期間を除いた前年の11月1日~当該年の10月31日とした.<br />河川への気候変動の影響を評価するため,①基準水位の超過頻度,②豊平低渇流量,③氾濫による浸水域について集計を行った結果,以下の推察が得られた.<br />氾濫危険水位の超過が最大で2倍増加し,浸水リスクが増加傾向にあると予測された.また,平水~渇水流量は減少傾向にあり,渇水リスクが増加傾向にあることが示唆された.浸水リスク増加に伴い浸水域が10~40%程度増加し,地域の水害リスクが高まることが確認された.<br />なお,気候変化影響評価には3年間の集計では不十分であり,今後30年分の計算結果を適用する予定である.また,本気候実験の降水量は過大であり,バイアス補正についても別途検討している.
著者
中村 利廣 貴家 恕夫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.824-829, 1980-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

粉末X線回折法を用いて,従来正確な定量法のなかった亜鉛末中の酸化亜鉛の定量方法を検討した.亜鉛末中の酸化亜鉛と同じ半値幅になるように加熱結晶化された標準酸化亜鉛を用いて検量線を作成することにより,結晶化度の差に原因する誤差を取り除いた.更に,加熱結晶化する方法と粉砕して結晶化度を低くする方法で調製した酸化亜鉛について,格子ひずみ量を比較して,加熱結晶化した酸化亜鉛のほうが,亜鉛末中の酸化亜鉛に近く,検量線作成用標準物質として適していることを見いだした.この標準酸化亜鉛を用いて,標準添加法で酸化亜鉛(1.9~5.9)%の試料を定量した.定量下限は0.27%,定量値3.9%のときの変動係数は5.8%であった.
著者
中村 壮伸
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

パーシステントホモロジーが非晶質構造の記述に有効であることを発見した。特筆すべき成果としては、(1)シリカガラス、金属ガラスと呼ばれる質的に異なる形態をとる非晶質構造を統一的に扱うことが可能であること(2)乱れた構造の中に隠された秩序構造を抽出することが可能であることなどがあげられる。さらに乱れた構造の記述手法を用いて物性との相関を議論する枠組みの構築した。具体的にはパーシステントホモロジーのような抽象的に定義された変数に対し、自由エネルギー計算を行う手続きを、確率過程を用いて定式化した。
著者
角田 雅照 伏田 享平 亀井 靖高 中村 匡秀 三井 康平 後藤 慶多 松本 健一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.874-881, 2011-12-15 (Released:2012-02-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本稿では,時空間情報(位置,移動時間,移動距離)と動作に基づく認証方法を提案する.ユーザは時空間情報で定義された特定の認証点において,特定の動作を行うことにより認証に成功する.ただし,時空間情報を認証に用いる場合,認証に時間が掛かり,やり直しが容易ではないため,正しいユーザが認証に失敗する確率を抑える必要がある.そこで,認証行為の部分的な誤りを許容する,部分一致認証を提案する.また,時空間文字を用いて安全性の評価方法を定式化するとともに,提案手法が安全性において有効であることを実験により示す.実験により提案方法の安全性を評価した結果,本人拒否率は0.233%,他人受入率は0.010%となった.
著者
中村 理絵
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.67, pp.一-十六, 2019-03-25
著者
松浦 信夫 竹内 正弘 雨宮 伸 杉原 茂孝 横田 行史 田中 敏章 中村 秀文 佐々木 望 大木 由加志 浦上 達彦 宮本 茂樹 菊池 信行 小林 浩司 堀川 玲子 菊池 透
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.427-434, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
25

小児において適応が認められていない,経口血糖降下薬メトホルミンの有効性,安全性を評価するために,臨床試験を行った.47名が試験に登録され,38名が試験を終了した.HbA1c値を指標とした主要評価項目では38名中30名(78.9%)が有効と判定された.HbA1c値,空腹時血糖など7項目を指標とした副次評価項目を経時的に比較検討した.試験開始前に比し12週,24週終了時でのHbA1c値,空腹時血糖は有意に低下した.乳酸値を含めた臨床検査値に異常なく,有害事象は47例中16例に,副作用は1例に認めたが,試験を中止するような重篤なものは認めなかった.
著者
安藤 聡子 柳沢 文敬 中村 優文
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第16回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.49-53, 2019 (Released:2019-06-14)

調査によると、企業は自己のイノベーションの阻害要因として、「アイデア不足:「技術力やノウハウの限界」、「協力相手の発見が困難」などを上位に挙げている。そして実際の情報収集方法として、「学会への参加」や「ヒューマンネットワーク」など、属人性の高い手段があげている。産業分野での動向調査において特許を中心とした分析が広く行われてきた、一方、企業に多くの利益をもたらす特許は、そのアイデアの部分について学術情報の貢献が大きいという報告もある。日本の学術および特許出願の存在感は近年相対的に低下していることを鑑みると、企業活動においてもますますグローバルな情報収集の重要性が増してきている。グローバルな学術情報を活用することで、他社や、イノベーションを加速する情報を取得可能か、過去の事例を基に試みたので報告する。
著者
長谷部 雅彦 杉山 典正 高石 静代 中村 幸子 西田 彩子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第16回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.19-24, 2019 (Released:2019-06-14)

本研究は、特許/非特許、Web、SNS分析などからニーズを読み取り、既存の医療技術やセンシング技術を組み合わせた、新しいヘルスケア関連サービスを提案することを目的とした。世代ごとのヘルスケアに関する課題を整理した結果、ヘルスケアのうち、特に青年期から壮年期の現役世代にケアの必要性が高いメンタルヘルスに注目した。更に調査を進めた結果、近年ストレスなどの精神状態測定に関連する特許出願や文献報告が増えていることが分かった。提案における条件として、オフィスでの利用を想定しており、組織の生産性向上を実現しつつ、スタッフの「ウェルネス」を高めることとした。また、診断において極力個人を特定しない、プライバシーに配慮したシステムとしてAI技術を用いた新規サービスを提案した。
著者
辻 澄子 松村 郁子 中村 優美子 外海 泰秀
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.357-363, 2000-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
2 7

食用黄色5号 (Y-5) 中の副成色素, 未反応原料及び反応中間体などの有機性不純物の分離・定量に当たりHPLC条件を検討した. その結果, 0.02mol/L酢酸アンモニウム溶液とアセトニトリル-水混液 (7 : 3) との濃度勾配系を用いるHPLC条件を変化させることにより, 4,4'-(ジアゾアミノ) ジベンゼンスルホン酸=二ナトリウム塩とスルファニル酸アゾG塩色素との分離定量を確立した. 本HPLC条件を用いて平成10年度Y-5製品検査合格品39検体中の有機性不純物の実態調査を行った. その結果, 検体中の副成色素の総量は規制値の五分の一未満であり, 未反応原料及び反応中間体の総量は規制値の半分以下であった.
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
寺本 亮太 中村 真之 松尾 翔太 孫 学強 高木 良太
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.93-104, 2011

現在日本では中心部から離れた郊外に存在するオールドニュータウンが問題となっている。自動車での移動に依存していた世代の高齢化により移動手段が確保できず公共交通機関も少ないため不便地域となりつつある。この現状を改善するため交通面から三つの提案を行う。一つ目の提案は電動アシスト付自転車の共同利用である。団地内の数ヶ所に高齢者でも乗ることのできる電動アシスト付自転車を配置し、住民の方々に共同で利用してもらう。二つ目の提案はバスロータリーの設置である。これはバスの本数が少ない地域に路線バスを引き込みバスの便数を増やす方法である。三つ目の提案は電動カートの導入である。比較的低コストで走らせることのできる電動カートを導入することにより、不便地域から駅やバス停までを繋ぐことが出来る。本稿では三つ目の電動カートの導入を中心に提案を行う。The old new town which exists in suburbs has several problems in Japan nowadays. Residents having moved by car is aged and unable to drive, so the town is now an inconvenient area because there are few public transportation. In order to improve this current situation, three transport policy proposals are presented. The first proposal is the shared use of bicycles with electric assistance. We arrange the bicycle with electric assistance by which elderly people can ride, and get residents to use together. The second proposal is installation of a bus rotary. This policy improves the bus service by increase the frequency and changing routes and facilities. The third proposal is introduction of an electric cart. By introducing the electric cart which can be comparatively run at low cost, inconvenient areas can be connected to stations and bus stops. In this paper, we focuses on the third proposal: introduction of electric cart.
著者
中村 陽一 斉藤裕樹 戸辺 義人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.117, pp.1-6, 2008-11-20
参考文献数
8

近年,センサネットワーク技術の発展,GNSS (Global Navigation Satellite System: 全世界的航法衛星システム) 機能を持つ小型デバイスの普及により位置情報サービス(LBS: Location-based Service) の利用分野が急速に拡大し,注目が集まっている.LBS で用いる情報は実世界の様々な情報であり,常に増加していくものである.そのため分散環境にて情報を管理する必要がある.また実世界の情報は位置依存情報であるため,位置情報を加味した管理方法が問われる.そこで本研究では,地理位置情報を扱うスキップ構造を用いた P2P ネットワーク GeoSkip を提案する. GeoSkip は,各ノード毎にそのノードを中心に一定の角度で空間を分割し,その分割エリアごとにリンクを構築することで,1 次元の情報のみ扱う従来の SkipGraph の概念を 2 次元に拡張する.これにより位置依存データの効率的な分散配置,検索を行う.GNSS (Global Navigation Satellite System) equipped mobile devices and the improvement of the technology for sensor networks have enabled Location-based Services. The location-based services deal with real world information which is collected from mobile devices and sensors. Due to large amount of collected data, we should manage such data in distributed fashion. This paper proposes a scalable peer to peer network architecture, called GeoSkip. Geoskip extends 1-dimensional SkipGraphs to 2-dimensional content space in order to achieve efficient data processing for location-based contents.
著者
本庄 華織 大里 俊明 大森 惠 村木 岳史 石川 耕平 岡村 尚泰 中村 博彦
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.525-530, 2019-05-10

Ⅰ.はじめに もやもや病では,過換気や啼泣によるhypocapniaが虚血発作や脳梗塞発症の引き金になることがよく知られている.そのため,小児もやもや病の血行再建術の周術期管理において,啼泣を回避することが虚血性合併症を予防する上で非常に大切である.特に術直後は,麻酔覚醒時の術後興奮,疼痛,不安により啼泣しやすい状況にある.さらに脳循環動態が極めて不安定なために,啼泣によるhypocapniaにより広範な脳梗塞に至る危険性がある.啼泣を回避し,normocapniaを維持するため,麻酔科の協力を得て,superficial temporal artery(STA)-middle cerebral artery(MCA)anastomosis+encephalo-myo-synangiosis(EMS)終了後,抜管時より翌朝までデクスメデトミジン(dexmedetomidine:DEX)にて持続的に鎮静を行った. 海外では,DEXのもつ鎮静・鎮痛・臓器保護作用,そして呼吸抑制が少ないという特徴より,小児への投与の有効性が報告されている22,24).日本では2004年から市販されているが,小児例,脳神経外科領域での報告例は少ない. 小児もやもや病の術後啼泣回避のための鎮静薬として,DEXの有用性を検討したので報告する.