- 著者
-
馬渡 耕史
春田 弘昭
大野 朗
中野 治
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.3, pp.304-312, 2012 (Released:2013-09-30)
- 参考文献数
- 37
1995年より2005年までに経験した急性大動脈解離92例を対象に, 臨床像と予後を検討した. 男性41例, 女性51例, 平均年齢72±37歳(35~93歳)で, Stanford A型(以下A型)49例, Stanford B型(以下B型)43例, DeBakey I型33例, DeBakey II型16例, DeBakey IIIa型10例, IIIb型32例, 腹部限局1例であった. A型49例のうち少なくとも2例がDeBakey IIIの経過中に逆行性解離をきたした症例であった. 偽腔開存型45例(A型32例, B型13例), 血栓閉塞型47例(A型17例, B型30例)で, A型に偽腔開存型が多かった. 発症後, 来院までは平均1.2±9.0時間(0.5~10.2時間)で, 8例は来院時心肺停止の心タンポナーデ例であった.心タンポナーデ例は全体25例で, 偽腔開存型18例, 血栓閉塞型7例であった. 25例中5例(偽腔開存型1例, 血栓閉塞型4例)で心嚢ドレナージ後の手術で救命できた. 心タンポナーデを呈さなかったが血性心嚢液を認めたのは4例で全例生存している. 1週間以降の合併症として血管径の拡大2例, 瘤破裂5例, 再解離1例, 再交通2例, 脳梗塞1例, 急性心筋梗塞1例, 腹部臓器虚血1例, 下肢虚血1例であった. 手術例は偽腔開存型15例, 血栓閉塞型7例であった. 死亡率は偽腔開存型が血栓閉塞型と比べて高かった(40% vs 0% p=0.049). 急性期の死亡は31例でA型が28例を占めていた. 生存例61例中の慢性期死亡は15例(24.6%)で大動脈解離関連の死亡は再解離と破裂の2例(3.3%)のみであった. 急性大動脈解離は心タンポナーデの危機を乗り越えられれば, その後の予後は比較的良好である.