著者
黒須 一見 小林 寬伊 大久保 憲
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.345-349, 2011 (Released:2012-02-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

結核患者を受け入れている施設ではN95微粒子用マスクの使用頻度は高く,毎回着用時にユーザーシールチェックを実施し,年1回程度定性的なフィットテストを実施する必要がある.ユーザーシールチェックは,着用者自身の感覚による影響があり,毎回実施していれば適切な使用ができているとはいいきれない.今回,医療機関における正しい呼吸器感染防護具の使用法の促進のため,N95微粒子用マスクの漏れ率に関する検討をおこなった.   JIS規格日本人標準人頭にN95微粒子用マスク9種類を着用させた状態で,労研式マスクフィッティングテスターMT-03型®を用いて漏れ率を各15回測定した.   更に,漏れ率の低値だった製品を選択して,同一製品間の漏れ率のばらつきを検討した.   その結果,国産製品と折りたたみ型製品がカップ型製品よりも漏れ率が低く,より密着性が高かった.微粒子測定器(particle counter)を使用して漏れ率を定量的に示すことで,日本人に適した種類やサイズを示すことが可能となった.   漏れ率の低かった3社製品について,同一製品間のばらつきを検討した結果,同一製品間のばらつきが少ないことが明らかとなった.
著者
久保田 翠
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.40-57, 2006 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

本稿は20世紀中葉を代表する2人のアフリカ系アメリカ人の演説の音楽的分析である。より先行する世代の説教師CLフランクリンの説教は、興奮してくるにつれ、ブルース的な音階をなぞる様を呈したが、この種の「黒人音楽」的特徴を、M.L.キングJr.とマルコムXが、どのように保持または逸脱しているかを調査し、可能な範囲で記譜を試みた。その結果、前者ではピッチの上昇によって漸次的に感情を盛り上げていく手法が明らかであり、後者では一定のテンポとピッチで矢継ぎ早に発し続けるアタックの強い音節が、時にシャッフル・ビートに漸近しながら、スウィングに似た刺激をもたらしていることが理解された。
著者
久保田 康裕
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.43-49, 2022-12-28 (Released:2023-05-29)
参考文献数
6

自然保護区の拡大による生物絶滅の抑止効果は,「保護区を設置する場所」に依存する。一方,保護区は土地・海域の利用に関する法的規制を伴うため,保護区を拡大できる場所は,社会経済的に制限される。陸や海の空間計画には,生物多様性保全と社会経済的利用の調和が求められる。したがって,自然共生の理念を基に,ある空間を経済的に利用しつつ保全も副次的に達成するOECM によって,民間主導の保全事業を推進することは有望である。しかし,保全の実効性を担保するという観点では,OECM の難易度は低くなく,保全政策としては共同幻想に終わる可能性もある。生物多様性保全を目的としたOECM を長期的に駆動させる原動力として,生物多様性ビッグデータ・テクノロジープラットフォームが重要である。
著者
山本 哲 山本 定光 久保 武美 本間 哲夫 橋本 浩司 鈴木 一彦 池田 久實 竹内 次雄
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.173-177, 2011 (Released:2011-07-27)
参考文献数
6

北海道函館赤十字血液センター(以下函館センター)の製剤部門は2006年に北海道赤十字血液センター(以下札幌センター)に集約され,管内供給は北海道ブロックの需給コントロールによって管理されることとなった.製剤部門の集約は,在庫量の少ない血小板製剤に影響が現れやすいと考えられたので,同製剤の緊急需要(当日受注)に対する供給実態について,受注から配送に至る経過に焦点をあて回顧的に調査した.当日受注で,在庫分に由来すると思われる配送所要時間が2時間未満の血小板製剤の割合は集約直後の2006年度で減少したものの,在庫見直し後の2009年度は2005年度並みに回復した.在庫分がなく札幌からの需給調整に由来すると思われる所要時間6時間以上の割合は2005年,2006年に比べ,2009年度では半減した.時間外発注で1時間以内に配送した割合も在庫見直し後の2009年度に有意に増加し88.5%に達した.製剤部門の存在は,血小板製剤の緊急需要に対し,一時的な在庫量の増加をもたらすものの安定供給の主要な要因とはならず,適正な在庫管理が最も重要な要因であることがわかった.血小板の緊急需要に対しては,通常の需要量を基礎にして在庫量を設定すること,需要量の変化に応じてそれを見なおすことにより対応が可能であった.供給規模が小さく,在庫管理の難しい地方血液センターでは,血小板製剤の広域の需給調整を活発にすることで経済効率を保ちつつ医療機関の需要に応えるべきと考える.
著者
久保寺 逸彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3-4, pp.230-236, 1952 (Released:2018-03-27)

According to the standard literature, the Ainu are indifferent to ancestor worship, as evidenced by the fact that they do not visit the graves of the dead. This judgement is mistaken. It will be shown here that they practice the worship of the souls of their ancestors with no less proper ceremony and frequency than other peoples. The ceremony in question is divided into two categories : nurappa and shi-nurappa. (1) When the Ainu brew a small quantity of sake, or they are presented with it, they hold a small-scale nurappa. (2) Periodically in spring and autumn, and most ceremoniously in winter, each family of the village brews a large quantity of sake and invites many relatives and neighbors and holds a large-scale shi-nurappa. These ceremonies may be performed by themselves or as part of other religious services such as the iomante (bear-festival). Since the dead are considered deities who live in the subterranean divine land in the same way as they did on earth, the souls of the ancestors should be worshipped along with other deities, and other deities are usually worshipped along with the souls of the ancestors. The ceremony for the souls of the ancestors is performed before a special altar, which is erected between the sacred window on the east side of the house and the nusa-san altar in front of the window (Fig.3 on p.53). One male and several females participate in the ceremony. The former is the family-chief, or a representative of his who is aged, eloquent, and well versed in ritual formulae, and should belong to the patrilineal descent of the male ancestors of the family ; the female participants have, as a rule, the same upshor forms (s. p.69) as those of the female ancestors being worshipped on that occasion, that is to say, they belong to their matrilineal descent. The male worshipper erects ceremonial shaved sticks (inau), makes libations, offers prayers to the ancestral souls, and crushes sake-lees, tobacco, cakes, and other offerings in his hand and scatters them around. The female participants also take these offerings in their hand, and crush and scatter them ; in former days, however, they seem to have offered prayers, too. After this the women have a drink by themselves, eat some of the offerings, and dance solace to the ancestral souls ; in the house the men have a feast toward nightfall. Another prevalent misconception is that Ainu women are not qualified to participate in religious ceremonies. Therefore, it is all the more significant that in fact the matrilineal female descendants worship the souls of their female ancestors during these ceremonies. One of the chief findings of our 1951 joint research on the Ainu is the fact that in their social structure matrilineal descent prevailed for females and patrilineal descent for males. The author intends to take this peculiar feature of their social structure into consideration in analyzing their religious rites and ceremonies.
著者
久保 昇三 秋元 博路
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.50, no.585, pp.220-224, 2002-10-05 (Released:2019-04-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
大久保 暢俊 下田 俊介 鷹阪 龍太 山田 一成
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.156-163, 2018-03-25 (Released:2018-03-25)
参考文献数
21

The purpose of this study is to investigate consumer attitudes towards shopping in Japan. Factor analyses of data by 1,286 nonprobability online panels in a Web survey (in 2014) confirmed a hypothesized two-factor structure (the hedonic and utilitarian), but although the hedonic subscale had enough internal consistency, the utilitarian subscale had relatively low internal consistency. The correlations of the scores on consumer attitudes towards shopping with other measures, such as bargain orientation, impulsive buying tendency, and frugality, provided support for the criterion validity of each subscale. In many cases, these relationships were not affected by variables such as gender, life stage, and household income. Implications for the two-dimensional model of Japanese consumer attitudes towards shopping are discussed.

7 0 0 0 OA 富士山見たら

著者
久保田 宵二[作詞]
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1933-01
著者
石川 健太 山口 美和子 澤 幸祐 高田 夏子 大久保 街亜
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.87-92, 2014-04-25 (Released:2014-04-15)
参考文献数
33

This study investigated the effect of interpersonal dependency on judgments of gaze direction of individuals with different facial expressions. Based on interpersonal dependency scores, 46 participants were divided into two groups (high interpersonal dependency and low interpersonal dependency). Participants judged the gaze direction of photographs of faces with angry, neutral or happy expressions. Relative to the low interpersonal dependency group, the high interpersonal dependency group was more accurate in the judgments of gaze direction. This tendency was more salient for the happy and neutral expressions than for the angry expressions. Since people with high interpersonal dependency are highly motivated to seek support from others, this result suggests that they are sensitive to signals with pro-social information such as the gaze direction of others with positive attitudes.
著者
深津 章子 宮本 佳代子 大久保 研之 池本 真二
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.678-685, 2018-10-30 (Released:2018-10-30)
参考文献数
20

低炭水化物食に伴う脂質摂取量の増加が若年女性の糖質・脂質代謝に及ぼす影響を評価した.クロス・オーバー方式にて,早朝に各試験食を負荷した後,次の食事(セカンドミール)として共通の昼食を摂取させて,摂取前後の血糖値,血清インスリン,遊離脂肪酸,中性脂肪,ケトン体濃度,およびヘパリン静注前血清リポ蛋白リパーゼ量を測定した.試験食は標準(Control)食(炭水化物:C 60 %,脂質:F 25 %),低炭水化物・標準脂質(LCAF)食(C 30 %,F 25 %),低炭水化物・高脂質(LCHF)食(C 30 %,F 45 %)である.LCAF食とLCHF食は朝食後の血糖上昇を抑制したが,昼食後の血糖値はControl食に比し,LCHF食で上昇しLCAF食で抑制した.LCHF食のセカンドミール摂取前後の遊離脂肪酸と摂取後のインスリンは高値を示したことから,LCHF食はインスリン抵抗性を惹起したと考えられた.
著者
川久保 善智 大野 憲五 岡崎 健治 波田野 悠夏 竹下 直美 鈴木 敏彦 橋本 裕子
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1907年、京都市三玄院で石田三成の墓が発掘され、頭蓋の石膏製のレプリカが作成されたが、その直後に紛失していた。このレプリカが2014年、約100年ぶりに再発見された。本研究では、このレプリカの表面形状をレーザースキャンで3Dデータ化し、破損箇所の補修や皮膚形状のシミュレーション等を行い、それらの結果を加味し、3Dプリンターで出力した頭蓋の復顔を行う。
著者
鈴木 健治 髙橋 啓治 芳賀 みのり 久保田 美央
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.266-272, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

優れた知的資産を持つ日本企業が,世界に新たな市場を創り出すイノベーションを起こすために,何ができるだろうか。本研究では,イノベーションを持続的に生み出す海外企業の市場情報と同社の知的財産の因果関係が分析的に調べられた。その結果,まず,市場シェアに知財情報を関連づけて,5つの図に描く市場情報駆動型の新しい分析方法が確立された。この5つの図は,企業の市場シェア構築への知的財産の影響を明確にするため,経営デザインシート作成の補助ツールとしても有用である。続いて,この市場情報駆動型の分析方法により,日本企業がイノベーティブな組織に変わるための6つの質問が提案された。
著者
三枝 信吾 加茂 亜里沙 稲本 あさみ 久保 宏紀 山崎 允 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12208, (Released:2022-02-21)
参考文献数
43

【目的】二次性サルコペニアを呈したTrousseau 症候群患者に対する理学療法について報告する。【対象と方法】卵巣癌の精査中に小脳梗塞を発症した50 代女性である。初期評価では,握力は右8.5 kg/左11.5 kg,快適歩行速度は0.73 m/ 秒,Skeletal Muscle mass Index(以下,SMI)は4.4 kg/m2 であり,重症サルコペニアを呈していた。分岐鎖アミノ酸を含む栄養療法でタンパク質の摂取量を漸増させ,運動療法は低負荷高頻度Resistance Training と有酸素運動を中心に実施した。【結果】最終評価では,握力は右18.9 kg/ 左19.3 kg,快適歩行速度は1.17 m/ 秒,SMI は5.6 kg/m2 と各指標で改善を認め,歩行自立で自宅退院となった。【結論】二次性サルコペニアを合併したTrousseau 症候群に対して,適切な栄養管理下の運動療法は効果的である可能性が示唆された。
著者
塩野 貴之 真栄城 亮 楠本 聞太郎 久保田 康裕
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.427-437, 2014-03-18 (Released:2014-04-24)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では, “TimeTree: the timescale of life”(TimeTree)を用いて生物多様性の進化的な背景を理解するための授業を実践し, その学習効果を検討した。TimeTree は, 2 種の生物が共通祖先から分岐した年代を調べることができるオンラインツールである。これを用いて様々な生物種間の系統樹を作成し, 生物の進化の産物である生物多様性の概念を理解できる授業を開発した。TimeTree の教材としての有効性を検証するため, 教養課程の大学1, 2 年生47名を対象に, 動物園で実習を行った。実習では, 学生にスマートフォンを用いてTimeTree を操作させ, 10種の動物種間および霊長類7種間の分岐年代を調べさせ, それを基に系統樹を作成させた。なお, 実習の前後に進化に関するクイズを行い, その学習効果を検討した。動物園での実習とクイズの正答率の結果から, 系統的思考法(tree thinking), 進化の時間スケール, 生物地理, 大進化に関する項目について有意な学習効果がみられた。ただし小進化や収斂進化については実習だけでは身につかず, 改善の余地があった。新指導要領による生物教育では進化や生物多様性が重要視されているものの, それらの理論や概念を学ぶことのできる教材が不足している。TimeTree を用いて系統樹を描く授業は, 高校や大学の教養教育で進化や生物多様性の理解を促進すると考えられる。
著者
北村 立実 松崎 慎一郎 西 浩司 松本 俊一 久保 雄広 山野 博哉 幸福 智 菊地 心 吉村 奈緒子 福島 武彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.217-234, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
68

多くの人々が霞ヶ浦から多様な恩恵(生態系サービス)を受けていることから,今後も持続的に利用していくために,その内容や享受量の変遷を把握するとともに,生態系サービスの価値を経済的に可視化することで,政策の意思決定や行動に反映させるなどの適切な湖沼・流域管理に結びつける必要がある.そこで,本研究では霞ヶ浦の生態系サービスの項目を整理し,享受量の変遷を把握することで特徴を明らかにするとともに,代替法を用いて生態系サービスの経済評価を試みた.その結果,生態系サービスを供給サービス,調整サービス,文化的サービス,基盤サービスの 4 つに大別し,生態系サービスのフローの構成として,自然資本,人工資本,人的資本の 3 種の資本を介して得られていると定義した.また,生態系サービスの享受量の推移の特徴として,取水や洪水調節などの人間活動を豊かにする項目は増加したものの,魚種や植物などの生物多様性や人々が霞ヶ浦と触れ合うような項目が減少したことが明らかとなった.さらに,2016 年の霞ヶ浦の生態系サービスの経済的な価値として1,217.3 億円/ 年と見積もられ,供給サービスや調整サービスで高い傾向にあり,文化的サービスや基盤サービスは貨幣換算できない項目が多かった.一方,経済的な価値を算出する上でいくつか課題も明らかとなったことから,今後はこれらの課題解決に向けた研究も必要である.