著者
香川 英介 井上 一郎 河越 卓司 石原 正治 嶋谷 祐二 栗栖 智 中間 泰晴 丸橋 達也 臺 和興 松下 純一 池永 寛樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_155-S3_158, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
6

背景 : 心肺停止患者に対し低体温療法を行うことで社会復帰率が上昇することが報告されている.  目的 : 良好な社会復帰 (FR) 可能な心停止時間について検討した.  方法 : 2003年から2008年に低体温療法を行った80人 (HT-group) と, 2007年4月から2008年5月までの院外心肺停止患者で, 自己心拍は再開したが低体温療法は行われなかった174人 (NT-group) を対象とした. 心停止時間は心肺停止から自己心拍の再開もしくは体外循環の開始までの時間と定義した.  結果 : FRはHT-groupで30人, NT-groupで20人であった. FRにおいてはHT-goupの方がより若年であった. FRに関して心停止から心拍再開もしくは体外循環の開始までの時間は独立した予後因子であった (OR 1.07, 95%CI 1.02-1.13, p<0.01). FRにおける心停止時間は低体温療法を行ったもので有意に短かった (26±15 vs 12± 5分, p<0.01).  結語 : 低体温療法により良好な社会復帰に許容される心停止時間は延長する.
著者
井上 一哉 松山 紗希 田中 勉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_51-I_62, 2014 (Released:2015-02-20)
参考文献数
24

本研究では,地下水揚水に伴う揚水井の集水域を後方粒子追跡法により効率的に推定する方法を提案した.また,面積と周長の推定に加えて,移流時間の等しい集水域同士をアンサンブル推定する方法を考案した.不均質透水場を対象に,サイトデータを基に不均質度の等しい100通りの透水係数分布を地球統計学的に発生させ,集水域を推定した.その結果,透水係数の不均質度と揚水量の増加は集水域分布の推定確率を低下させる方向に作用する結果を得た.また,ランダムウォーク粒子追跡法を用いて,移流時間の異なる集水域ごとに,集水域から揚水井に至る汚染物質の流入確率をアンサンブル推定した.その結果,低い揚水量ほど揚水井への物質流入確率は低下し,遅延係数の空間分布を化学的不均質性として考慮すると,流入確率はさらに低下する結果を得た.
著者
井上 一哉 上田 祥央 田中 勉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_121-I_132, 2016 (Released:2017-01-29)
参考文献数
38

本研究では,水溶性物質の地下水揚水可能範囲を集粒域と定義し,集粒域の確率空間分布を時系列推定する方法について示した.領域内に不規則配置した粒子群の移流分散挙動をランダムウォーク粒子追跡法により解析し,揚水井への粒子流入の有無とトラベルタイムを記憶した.地球統計学的に生成した100種類の不均質透水場に対するすべての粒子の輸送情報を任意幅の格子内にてアンサンブルすることで既定の経過時刻に対する集粒域の確率空間分布として求め,境界条件や揚水量,揚水井の数を変えた条件に対応した集粒域の時系列分布を提示した.また,集粒域分布の不確実性評価としてエントロピーを導入し,集粒域規模の拡大に呼応した不確実性の増加を定量化した.さらに,分散現象の効果により集粒域の面積は集水域より大きくなることを示した.
著者
井上 一明
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.171-193, 2010-12

小此木政夫教授退職記念号問題意識I 「革命政党」としてのZANU-PFと有権者の忠誠心 1 民族的分裂の選挙(一九八〇年・一九八五年総選挙) 2 持続可能な野党の不在と政治的アパシーの選挙II 「民主主義体制」から「選挙権威主義体制」へ 1 体制の転換点としての国民投票 2 「選挙権威主義体制」下の選挙 3 「選挙権威主義体制」の解体 : 飢えのなかの選挙結語
著者
佐々木 丞平 西上 実 若杉 準治 山本 英男 山下 善也 大原 嘉豊 赤尾 栄慶 羽田 聡 淺湫 毅 中村 康 久保 智康 尾野 善裕 山川 曉 永島 明子 宮川 禎一 森田 稔 小松 大秀 村上 隆 呉 孟晋 水谷 亜希 難波 洋三 伊東 史朗 井上 一稔
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、木を単に造形作品の素材・材料としての視点から捉えるのではなく、樹木そのものを信仰の対象として崇拝し、美の対象として描いてきた、日本人の樹木に対する精神のありようにまで踏み込んで調査し考察することが主たる目的であった。このような視点から調査研究を進めてきた結果、たとえば山形・熊野神社の伝十王坐像にトチ、静岡・建穂寺の千手観音立像にクスノキがあえて用いられている背景には、用材としての性能ではなく、信仰的な意味合いが強く意識されていたことなど、日本人と樹木の関係にかかわる貴重な成果が得られた。
著者
長瀬 文昭 田中 靖郎 石田 学 高橋 忠幸 満田 和久 井上 一 宇野 伸一郎 HOLT S. 伊藤 真之 SERLEMITSOS P. 松岡 勝 北本 俊二 WHITE N.E. 林田 清 MADJSKI G. 田原 譲 CANIZARES C. 大橋 隆哉 MUSHOTZKY R. 紀伊 恒男 PETER R. 国枝 秀世 山内 茂雄 堂谷 忠靖 村上 敏夫 常深 博 牧島 一夫 小山 勝二 山下 広順 三原 建弘 小川原 嘉明 吉田 篤正 槙野 文命 HUGHES J. 宮田 恵美 鶴 剛 粟木 久光 石崎 欣尚 藤本 龍一 上田 佳宏 根来 均 田代 信 河合 誠之 RICKER G. HELFAND D. MCCAMMON D.
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

「あすか」は、日米共同で製作されたX線天文衛星であり、1993年2月に打ち上げられた。そして、その後の観測運用も両国の緊密な協力によって遂行されている。これまで衛星は順調に運用され、装置は正常に稼し、所期の性能を発揮しており、試験観測・公募観測とも順調に行われてきた。本研究の目的はこの衛星の観測・運営を日米協力の下で行い、中性子星やブラックホールを含むX線連星や、超新星残骸、活動的銀河核、銀河団等からのX線放射、宇宙X線背景放射等の研究を行うことであった。この目的に沿って研究を進め次の各項目に述べる成果を挙げた。(1) 専門科学者グループの会合を定期的に開催し、観測計画の評価・ターゲットの選択、衛星の運用、適切な検出器較正等の衛星観測運営上の基本方針について討議をおこなった。(2) X線望遠鏡および各測定装置の精密な較正を行うとともに、各検出器の諸特性・応答関数の時間変化を明らかにし、すべての観測に対し正確な解析を可能とした。(3) データ解析ソフトウエアーの改良・拡充、科学データの編集、管理を両国研究者が協力し且つ継続的におこなった。(4) 観測から得られたデータを共同で解析、討議を行って、その科学的成果をまとめた。さらにこれらの得られた成果を各種国際学会・研究集会において発表し、また学術専門誌に公表した。(5) 観測者の占有期間を過ぎたデータを統一的に編集・管理し、またその観測記録を整備して、これらの観測記録、アーカイブデータを広く公開し、世界中の研究者の使用の便に供した。特に、「あすか」によるX線観測では、その高感度、高帯域、高分光撮像特性により、宇宙論研究に重大な寄与をするX線背景放射の解明、遠方のクエーサーや原始銀河からのX線放射の発見、銀河団の進化および暗黒物質の解明、活動銀河核、ブラックホール天体、ジェット天体、強磁場中性子星等の特異天体の解明、激変星、高温白色わい星、超新星残骸等における高温プラズマ状態の研究等において重要な成果を得ることが出来た。これら「あすか」の成果は国際的にも高く評価されている。以上、本研究課題に対する科学研究費補助金により、国際協力の下での「あすか」衛星の観測・運営が円滑に行われ、また十分な科学的成果を挙げることが出来た。
著者
小倉 充夫 井上 一明 島田 周平 青木 一能 遠藤 貢 松田 素二 児玉谷 史朗
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

冷戦の終焉とアパルトヘイト体制の崩壊は南部アフリカ地域に政治的、社会的、経済的変動をもたらし、民主化、経済自由化、地域協力の進展を促した。1990年代初頭において多くの人々はこの地域の将来に楽観的であった。しかし変革からおよそ10年後の今日、南部アフリカ諸国は失業率の上昇などの経済的苦難、犯罪や感染症の増加など深刻な問題を抱えている。構造調整政策の導入は経済危機を克服するために導入されたが、多くの都市住民の生活を一層困窮させることになった。こうした状況が人々の移動のあり方ばかりでなく、政治意識・政治行動にも影響を与え、農村社会を変化させた。これらの問題を各分担者等はそれぞれの研究領域と対象地域において調査しまとめた。具体的には、ザンビアにおける民主化と非政府組織、ジンバブエからザンビアへの移住農民の生活、ザンビア東部州からの移動と農村社会、ジンバブエにおける農村・都市間移動と反政府運動、植民地時代モザンビーク農村における人口移動、モザンビーク・南アフリカ間の労働移動、アパルトヘイト後の南アフリカにおける和解、ユダヤ人移民差別、中国人労働者導入問題などである。南部アフリカ諸国は南アフリカを中心として相互に密接な関係を発達させてきた。それはアパルトヘイト時代においても継続していた。したがってこの地域においては、一国的な分析は多くの場合限界があると同時に、歴史的な背景と変化のなかに位置づけて現状をとらえる必要がある。それ故、本研究では歴史的分析を重視し、その成果は報告書にも反映された。
著者
樋出 守世 中村 秀男 井上 一彦 今井 奨
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.244-250, 1990-04-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
34

1) Strontium-90 level was determined in May 1989 in 40 sample groups of Japanese teeth, for a total of 1022 third molars, obtained from donors born in 1900-1970.2) The teeth from donors born in 1925-1931, and which were extracted in the donors' twenties did not contain detectable strontium-90.3) Strontium-90 level of the teeth from donors born in and after 1942 suddenly increased, and reached peak value of 62.8 to 72.8mBq/g Ca in 1953. It abruptly decreased after 1954 and reached approximately 20mBq/g Ca by 1970.4) In the teeth obtained from donors born in 1900-1924, and which were extracted at the age of 30 to 69, a small amount of strontium-90 was detected.
著者
小倉 充夫 青木 一能 井上 一明 遠藤 貢 舩田 クラーセンさやか 眞城 百華
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大半のアフリカ諸国で、 国民統合は言語やエスニシティの同一性によってもたらされはしなかった。冷戦後の現代においても国民形成はアフリカでは最重要な課題であり続けている。この問題を民主化、移動、都市化と関連させて検討した。都市第一世代であった年長者に比して、現在の都市青年層はより教育を受けているが就業が困難であり、彼らの国民的そしてエスニックなアイデンティティの動向に注目する必要がある。
著者
井上 一紀 高橋 渡 高橋 篤司 梶谷 洋司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術
巻号頁・発行日
vol.97, no.577, pp.79-86, 1998-03-06
被引用文献数
8

各レジスタのクロック到達時刻を適切に決定することができれば, クロック周期をレジスタ間の最大遅延時間よりも小さくすることが可能である.本稿では, Elmore遅延モデルを用い, 与えられたクロックスケジュールを実現するクロック木配線アルゴリズムを提案する.本手法は, deferred-merge-embedding(DME)法を採用しており, クロック木のトポロジーの生成と, 中間バッファの挿入及びサイジングを同時に行う.本手法により, ランダムに生成されたクロックスケジュールに対しては, ゼロスキュー配線よりもやや大きな配線長で, なだらかに生成されたクロックスケジュールに対しては, ゼロスキュー配線とほぼ同等の配線長でクロック配線を実現できることを実験により示す.
著者
高橋 徹 清水 裕子 井上 一由 森松 博史 楳田 佳奈 大森 恵美子 赤木 玲子 森田 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.252-256, 2007 (Released:2007-10-12)
参考文献数
38
被引用文献数
6 9

昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.