- 著者
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今井 博久
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学療法学会
- 雑誌
- 日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.2, pp.135-142, 2007-03-10 (Released:2011-08-04)
- 参考文献数
- 14
性器クラミジア感染は, これまでは医療機関を受診した有症状の感染者の有病率が明らかになっていたが, 感染の大半を占める無症候患者の感染状況は十分に明らかにされていなかった。また, 近年, 性交し始める年齢が低くなりティーンエイジャーにおける感染の蔓延が懸念されているが, そうした疫学情報もなかった。そこで, 高校生を含む若年者を対象とした無症候性クラミジア感染症の大規模スクリーニング調査研究が開始された。本論文では,(1) 先行して実施した大学生や専門学校生の調査,(2) 高校生を対象とした大規模調査, この2つの調査について説明し, これらの調査結果をふまえながらティーンエイジャーにおけるクラミジア感染症の蔓延とその予防について述べたい。大学および専修職業学校に在関する無症候の性交経験を有する18歳以上の男女学生における性器クラミジア感染症の有病率は8.3%(女性9.1%, 男性7.0%) であった。特に, 年齢別にみると女性では18~19歳でla4%の感染率を示し, ティーンエイジャーへの感染が深刻な状態にあることを示唆していた。ティーンエイジャーの中心層である高校生における感染拡大が懸念され, 高校生を対象にした大規模調査が実施された。その結果, これまでに5,000名を超える高校生の対象者を得て, わが国において初めて高校生の無症候性クラミジア感染の感染状況が明らかになってきた。感染率は女子高校生では13.1%, 男子高校生では6.7%であった。ティーンエイジャーにおける蔓延は間違いないことが明らかにされた。米国では39%(カリフォルニアの女子高校生2003年), スウェーデンでは21%(ウプスラの女子高校生1994年) などであり, わが国はおそらく先進諸国のなかで最も感染が拡大していることが考えられた。一連の調査結果から具体的な対策を考察すると, 性感染症の蔓延防止対策の実施に向けて (1) 蔓延予防対策の焦点を当てるべき対象者をティーンエイジャーとすべきである,(2) 性別, 年齢, 危険因子が明らかになったので, こうしたデータに基づいた蔓延予防対策の施策を実施することが要請される,(3) 今後は各省庁や地元医師会, 関係学会, 学校教育関係者等が協力し合って緊急に対策を講じる, といったことが必要となろう。