著者
名和 行文 丸山 治彦 大橋 真 阿部 達也 緒方 克己 今井 淳一
出版者
宮崎医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

宮崎県下では1988年に我々が世界初のドロレス顎口虫人体感染確定診断例を見いだし、それ以前の7例の類似症例のうち皮膚生検で虫体が確認されていた2例からも、パラフィンブロックから虫体を剖出し、いずれもドロレス顎口虫幼虫であると同定した。それ以後も新規患者の発生が続き、延べ14例(虫体確認例4例)の患者を見つけた。問診上、14例中13例は渓流釣り愛好家あるいはその家族で、渓流魚の生食歴があり、これが感染源として重要であると推測された。また、1例はマムシ生食の既往歴がある。患者への感染源、および流行地域でのドロレス顎口虫の生活環を明らかにする目的で、まず終宿主である野生のイノシシについて調査を実施したところ、宮崎県の中央山地では現在でもほぼ100%の感染率であった。また、雌成虫より虫卵を取り出し、人工孵化して得た第1期幼虫を第1中間宿主である冷水型ケンミジンコに感染させて、第3期幼虫を得ることができた。次に、第2中間宿主や待機宿主について調査をおこなったところ、患者発生と密接な関係のある西都市銀鏡地区に棲息するマムシにはドロレス顎口虫幼虫が濃厚にしかも100%という高率で寄生しており、この幼虫をブタに感染させたところ成虫が回収された。さらに同地区で捕獲されたシマヘビも幼虫を保有していた。聞き取り調査によると野生のイノシシはヘビ類を食するということなので、自然界の生活環のなかでヘビが重要であると推察される。患者への感染を源として、問診では渓流魚が感染源となっている可能性が高い。そこで我々はヤマメについて約200匹を検査したが、これまでのところ幼虫を検出することはできなかった。また、1990年にはブル-ギルを刺身にして食した夫婦が同時に発症したため、一ツ瀬ダムにて捕獲したブル-ギル約200匹についても検査をしたが、幼虫は発見できなかった。したがって今後更に多数の検体についての調査を実施する必要がある。
著者
山本 元久 小原 美琴子 鈴木 知佐子 岡 俊州 苗代 康可 山本 博幸 高橋 裕樹 篠村 恭久 今井 浩三
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.349-356, 2005-10-31
参考文献数
44
被引用文献数
9 14

症例は,73歳女性.1998年頃より口渇,両側上眼瞼腫脹が出現,2003年10月には両側顎下部腫脹を認めた.同時期に近医で糖尿病と診断され,経口血糖降下薬の投与が開始された.2004年夏頃より上眼瞼腫脹が増強したため,当科受診,精査加療目的にて10月に入院となった.頭部CT・MRIでは,両側涙腺・顎下腺腫脹を認めた.血清学的に高γグロブリン血症を認めたが,抗核抗体・抗SS-A抗体は陰性であり,乾燥性角結膜炎も認めなかった.さらなる精査で,高IgG4血症及び小唾液腺生検にて著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を認めたため,Mikulicz病と診断した.腹部CTではびまん性膵腫大を認め,ERCPで総胆管・主膵管に狭窄を認めた.自己免疫性膵炎の合併と診断し,プレドニゾロン40 mg/日より治療を開始した.その結果,涙腺・顎下腺腫脹は消失,唾液分泌能も回復した.また膵腫大,総胆管・膵管狭窄も改善した.耐糖能障害も回復傾向にある.Mikulicz病と自己免疫性膵炎は共に高IgG4血症を呈し,組織中にIgG4陽性形質細胞浸潤を認めることから,両疾患の関連を考える上で非常に興味深い症例であると思われた.<br>
著者
井坂 元彦 今井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論
巻号頁・発行日
vol.98, no.441, pp.1-18, 1998-12-02
参考文献数
64
被引用文献数
42

1993年の発表から5年を経て, "Turbo codes" 及びその関連分野は符号理論研究の主役に踊り出た感がある.その成果は, 単に特性の良い符号化復合法を与えるに留まらず, 様々な形で拡張され従来の符号理論, 通信理論の研究成果と融合しながら発展を続けている.また深宇宙通信, 移動通信, 磁気記録などへの応用が検討されるなど実用に供される日も遠くはないようである.本稿では, "Turbo codes"或いはその関連分野における主な研究成果を概説する.
著者
樋出 守世 中村 秀男 井上 一彦 今井 奨
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.244-250, 1990-04-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
34

1) Strontium-90 level was determined in May 1989 in 40 sample groups of Japanese teeth, for a total of 1022 third molars, obtained from donors born in 1900-1970.2) The teeth from donors born in 1925-1931, and which were extracted in the donors' twenties did not contain detectable strontium-90.3) Strontium-90 level of the teeth from donors born in and after 1942 suddenly increased, and reached peak value of 62.8 to 72.8mBq/g Ca in 1953. It abruptly decreased after 1954 and reached approximately 20mBq/g Ca by 1970.4) In the teeth obtained from donors born in 1900-1924, and which were extracted at the age of 30 to 69, a small amount of strontium-90 was detected.
著者
荻野 昌弘 古川 彰 松田 素二 山 泰幸 打樋 啓史 今井 信雄 亀井 伸孝
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、太平洋戦争とその敗戦が戦後の日本社会およびアジア太平洋地域の形成に与えた影響における「負」の側面と、忌まわしい記憶として現在も残る戦争の記憶とを一括して「負」の遺産と捉え、調査研究することを目的としている。この目的のため、太平洋戦争時における日本国内および旧植民地、および中国大陸、太平洋諸地域など関連地域に関する調査を実施し、戦争に関する関連研究機関との協力関係の構築、図書館、博物館など資料の所在確認と基礎的データの収集に努めた。本研究の成果は次の三つの点にある。1戦後の日本社会の変容と太平洋戦争との関係-戦争が戦後の日本社会にいかなる影響を与えたのかという点に関して、空間利用という観点から分析した。具体的には、旧軍用地や戦争被害に遭った地域などがいかに変容したか、それが戦後日本の社会の構造変動にいかなる影響を及ぼしたかを考察した。このアプローチは、日本のみならず、太平洋戦争や第二次世界大戦に関係した地域,国家全体にも応用可能である。2戦争に関連した地域と観光開発-1のアプローチから、かつて戦場であった太平洋の地域を捉えると、その一部が、観光地になっていることが明らかとなった。かつての戦場は、いまや観光開発の対象であり、またグアムやサイパン、パラオのように、観光地としてしか認識されていない地域も存在する点に十分に留意する必要がある。3戦争が生み出した文化-太平洋戦争開戦から一年は、日本軍が勝利を収めていた。したがって、1942年の段階では、日本は一種の沸騰状態にあった。こうしたなか、思想や文化の領域においても,アメリカに対する勝利の事実抜きにしては、考えられなかったような新たな試みが生まれる。
著者
土橋 正和 今井 順一 金子 正秀
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.77-80, 2009-02-28
参考文献数
2
被引用文献数
1

入力顔画像から顔パーツを抽出・分析し、最適な似顔絵テンプレートを自動選択して似顔絵を生成する方法について述べる。形状ベースパターンマッチング手法により、入力顔画像から各顔パーツ(眼、眉、鼻、口)を抽出する。300人分の顔画像データベースから抽出した顔パーツに対して、輝度の主成分分析により特徴量を求め、階層的クラスタリングを用いて互いに似た形状でまとまるように各顔パーツの画像を分類する。特徴量と分類結果を用いてSVMによりマルチクラスの識別器を作成する。この識別器を用いて入力顔パーツのクラスを選択し、対応する似顔絵テンプレートにより似顔絵を描画する。実際にユーザに似顔絵を作成してもらい、手動での作成に比べユーザの負担を軽減でき、また、入力顔の特徴を良く表現した似顔絵を生成できることを確認した。
著者
今井 久登
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

記憶の想起意識を俯瞰的に検討し,次の成果を得た。① 研究史:想起意識は当初,記憶システムの定義として位置づけられた。研究の進展と共に,想起意識から手続き的定義へと精緻化されたが,このような想起意識の位置づけの変化は明確に議論されず,結果として想起意識が研究の焦点から外れていった。② 実証研究:匂い手がかりによる自伝的記憶の無意図的想起と, 外的想起手がかりがない場合の展望記憶の自発的想起の研究を行い,それぞれの想起意識の性質を明らかにした。③ 5種類の想起意識(想起意図/想起努力/想起の自覚/回想・親近性/想起意識のない再認)を連続的に関係づけ,想起意識を全体的に捉える図式を提案した。
著者
今井 芳昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

対面する二者が、説得テーマに関する長所と短所を相互に挙げた後、送り手が受け手に一定の意見をもつよう働きかけるという説得場面を実験的に設定した。その結果、長所に同期させる形で、送り手が受け手の動作をミラーリングすることが受け手に影響を与え得ること、個人的な利益よりも社会全体の利益を強調することが効果的である傾向、そして、受け手が自分に説得能力があると認知しているほど影響されにくいことが見出された。
著者
今井 正司
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度における研究テーマは、発達障害児における注意制御機能の促進が学習課題遂行に関する認知と感情に及ぼす影響について検討することであった。具体的には、認知神経課題を用いて注意制御機能を促進することで、学習への取組みに必要な「集中力」「達成動機」という認知的側面を向上させ、「イライラ感(怒り)」「無力感」などの感情的側面を自己制御できるようにすることであった。成人を対象にして行われた注意制御機能の促進に関する研究においては、「注意制御機能の促進は、メタ認知的な対処方略を活性化させ、感情制御能力を高める」という知見が得られている。本研究は、これらの研究知見を学習に対する困難さを抱えている児童に適用した神経教育学的アプローチという新たな視点に基づく試みであった。研究の結果、注意制御機能の促進は、集中力や達成動機に関する能力を向上させ、課題遂行に伴うネガティブな感情を制御する効果が示された。特に、課題遂行に伴う「イライラ感」や「衝動性」の制御において効果がみられ、学校生活場面においては、攻撃行動の低減(自己抑制)が顕著に示された。しかしながら、「全問正解しなければ意味がない」などの「過度な完全主義的認知」を有している児童の場合には、注意制御機能とは別の認知機能にも焦点を当てる必要性が課題として示された。神経教育学的アプローチに基づく本研究においては、学校適応の基盤となる認知・感情・行動に関する制御機能の獲得促進に関する具体案と根拠が示されたといえる。今後は、本研究で得られた知見を、特別支援教育において有益な実証的知見を蓄積している応用行動分析的アプローチに組み込むことで、さらなる効果を期待できることから、教育臨床的に意義が高い研究であると言える。
著者
今井 小帆里 倉林 修一 清木 康
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.88, pp.151-156, 2008-09-14
参考文献数
9

音楽データを対象としたデータベースの実現において,楽曲中の時間軸に沿って表現されたデータの物理的な特徴量や,感性的な印象,構造的な意味を,利用者が検索対象の楽曲を理解しようとする意図や視点に応じて計量する機構の実現が重要である.本稿では,楽曲を特徴づける物理量や,そこから発生する感性的な印象をユーザの要求に応じて分析し,楽曲の内容を対象とした検索やデータの閲覧を支援する機能を有する音楽データベースシステムの実現方法を示す.本システムの特徴は,音楽理論における音楽構造分析の手法や,音楽心理学,および,色彩心理学の研究成果をメディア分析関数群として実装し,それら分析関数を用いて楽曲データの内容変化をデータベースが自動的に解釈する機能を有する点にある.本システムの利用者は,音楽データベース問い合わせとともに,検索対象楽曲を理解しようとする意図や視点として様々な分析・可視化関数の組み合わせを発行し,それらに応じた検索・可視化結果を得ることが出来る.本稿では,クラシック楽曲を対象とした検索・可視化機構の実現方法を示し,本システムの実現可能性,および,有効性を評価する.A large number of music resources are provided in the world-wide scope. In this paper, we propose a novel music database system equipped with a musical knowledge base that assists database processing automatically by providing formal intelligence about music. The musical knowledge base sets appropriate parameters for database processing. It offers an easy and intuitive mechanism for general users to retrieve musical compositions. One of the most significant advantages of our database system is that it supports various combinations of media analysis functions that are stored in the knowledge base. This system makes it possible to express users' intensions to retrieve music data as a combination of query sequence and its interpretation methods. We show several experimental results to clarify the feasibility of our method.