著者
今井 公太郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.617-622, 2010-11-01 (Released:2011-05-12)
参考文献数
8

本稿は駒場リサーチキャンパスに計画中の60号館の改修計画に関する報告である.60号館の概要ならびに改修の経緯について述べ,建物の歴史性の扱いについて考察したうえで,改修計画の方針と手法について論じている.歴史性の表現としては,新旧の仕上げのコントラストを際立たせる方針が導かれている.この方針を実現する手法として,構造体の素直な表出,単純な部分増築,メカニカルチムニー,天井を貼らないで床下空間を利用した設備計画など,可能なかぎり古い部分を隠蔽しない手法が検討されている.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
渡辺 寧 村上 浩康 松枝 大治 吉田 武義 水田 敏夫 石山 大三 清水 正明 木村 純一 渡邊 公一郎 今井 亮 浦辺 徹郎 鹿園 直建 林 謙一郎 実松 健造 星野 美保子
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

世界各地の重希土類およびインジウム鉱床の調査を実施し,ベトナム,タイ等東南アジア地域で重希土類に富む花崗岩風化殻を発見するとともに,日本,中国,ベトナム,ペルー, ボリビアでのインジウムの資源量の見積もりを行った.これらの結果,中国以外の地域でも重希土類およびインジウムの資源ポテンシャルが存在することが判明し,また鉱床成因のための必要条件が考察された.
著者
今井 透 野原 修 遠藤 朝彦 深谷 修司
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.559-568, 2005
参考文献数
5
被引用文献数
4

【背景】空中飛散花粉の自動計測の有効性が示されているが, 現在は自動計測器による観測法や評価法の標準化は行われていないので, 自動計測情報は混乱している. 【方法】2000年から2004年までの5年間の春季に東京都内で, ダーラム式花粉採集器と自動計測器(KH-3000)を用いて飛散花粉を観測した. 【結果】自動計測値と従来からのダーラム式観測値と良い相関関係を示した時期では, 自動計測器の有用性は高いと考えられた. 両観測値の相関が高い時期は, 大量飛散年の主に2月下旬から4月上旬だった. 逆に少量飛散年や2月上旬と中旬, 4月中旬と下旬は両観測値の相関が低下した. 自動計測値とダーラム式観測値の比はノイズの少ない時期で平均3. 5であり, 自動計測値を換算することでリアルタイムに飛散状況を判断できるようになろう. 【結語】花粉飛散数が多く花粉回避が必要な時期ほど, 自動計測の信頼性が高いので花粉回避に自動計測値は有用である. 今後自動計測の実用性を高めるために, データの集積と計測法の標準化が望まれる.
著者
今井 民子
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.65-71, 2002-10

本稿は近代音楽史学の礎となったJ.ホ-キンズとC. バーニーの『音楽通史』に関して,特に18世紀の各国の音楽に対する両者の見解を比較検討するものである。その結果,明らかとなったのは,ホ-キンズの保守的音楽観とバーニーの進歩的音楽観の相違である。すなわち,バーニーは大陸音楽紀行の成果をふまえ,18世紀の新しい潮流を視野に入れて各国の音楽をとらえているのに対し,ホ-キンズは斬新な音楽よりも,コレツリやジェミニア-ニに代表される古典様式の音楽に音楽発展の完成をみていた。ホ-キンズが『通史』で示した古楽復興-の強い関心は,彼の保守的姿勢のあらわれであり,彼はその中に,音楽のアマチュアリズムの確立と,古典的趣味の育成を求めていたといえよう。
著者
テイラカラタネ ラール 今井 健 柳田 洋吉
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.37-53, 1998-12-26

米はスリランカの主食であり,家族農業経営によって担われた水稲栽培はほかの食用作物の栽培に比べ,スリランカの気候条件にマッチしているため優位性がある。また稲作部門は全人口の10%以上をしめる季節労働者を雇用しているが,全ての商品作物の中で単位面積当たりの労働時間がもっとも少ない。1997年の8月,アヌラダプラ地域の110戸の農家を対象とした調査でスリランカの水田農業における様々な実態を明らかにした。本研究の主要な結果は次の通りである。1.アヌラダプラ地域の世帯主の57%は,年齢が40歳以下であり,この地域の農家は若い人が多いことを示している。また,農家の人々の本業は,伝統的農村では94%は農業であり,新入植農村ではそれは73%で月日入植農村では83%となっている。農業以外に商業などの自営を行う人が近年では増加している。2.アヌラダプラ地域の一戸当たり平均耕地面積は3.7acre(1.48ha)であり,一戸当たりの水田面積は2.2acre(0.88ha)で,したがってこの地域は60%は水田である。また,栽培作物の構成は,水稲65.1%,その他畑作物などが34.9%であり,水稲の割合がもっとも高い。3.伝統的農村の4acre(1.6ha)以上の大きな農家についてみると,そのうちの48%は様々な形態の借地となっている。たとえば,分益小作,抵当システム,政府所有地の借入れなどである。大規模農家は小規模農家からの借地が容易に行えるため,農地を購入するより安価な借地の方が多く借地に様々な形態がある。4.稲作の費用の48%は労働費で占められている。労働力利用方式には,家族労働力,共同手間替え,お手伝い,雇用労働,請負耕作賃労働など,様々な様式がある。農繁期にはどの農家も労働力が不足しており,雇用労働や農家同士の共同作業や協力して助け合うことで労働力を補充している。そのため,このような様々な様式がある。5.標準的な稲作農家(2.5acre(1.6ha)経営)の1シーズン1acre(0.4ha)当たりのコストは約1万4千ルピー(2万8千円)であり,利潤は約6325ルピー(1万2650円)である。新規参入農家には政府が規定する最低規模2.5acreを保証し,標準的な稲作農家としている。一般的な他産業就業者の利潤は5000ルピー(1万円)程度で,標準的な稲作農家の利潤は2635ルピー(5270円)で比較すると他産業就業者の半分程度の利潤しか得られていない。
著者
今井 一洋
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.901-917, 2003-11-01
参考文献数
173
被引用文献数
1 13

分析化学の本質は物質の検出にある.分析化学が方法に関する学問であり,多くの自然科学に横断的な方法について考える学問であるとすれば,物質の検出法に関する問題は分析化学で最も真剣に取り上げなければならない.一方で,検出の確実性はその検出の量的再現性によって検証される.ある研究者が得た結果を,他者が追試して量的に同じ結果が得られれば,その検出の妥当性が保証されるのである.分析化学で取り扱う検出には,定量と言う概念が絶えず付随しているものである.ある物質が天然に純粋な形で存在することは極めて稀である.特に生命科学の分野では,多くは他の物質と共存して存在している.したがって,その物質の検出のためには他の類似物質との識別が必要となる.物質の検出にはその物質の出す信号を捉えることが多い.その物質の信号と共存物質の発する信号(雑音)とを識別する必要がある.信号には種々の種類があり,それを捉えるための方法も数多くある.例えば放射能を出す物質を検出するには,その放射能を捉えればよい.非放射性の他の共存物質と識別でき,雑音ゼロの状態で高感度(信号/雑音比が大きい)に検出できる.しかし,共存物質も放射性物質であれば,信号と雑音とを識別できず,目的物質を検出できない.そこでそれらを除くか,分離するか,あるいは目的物質を取り出す必要がある.すなわち,物質を分離する方法が必要である.分析化学の取り扱う検出では,分離を伴わない検出は稀である.以上を概念図として示.した.筆者は生命現象を分析化学的に捉えるにはどうしたらよいかを考えてきた.生命は生体が恒常性維持機能を働かせることにより維持されている.筆者はこの維持機能に関わる生体分子を検出し,その変動を量的に捉えることにより生命現象を理解しようと考えた.生体には無数の分子が存在している.しかも,平常状態の生体は維持機能を絶えず微妙に働かせて平衡状態を保っているため,関連生体分子の変動は微小であり,数多くの共存生体分子の中からその分子のみを捉えることは容易ではない.従来の物質の検出法・分離法を十分利用するにしても,これらのみに頼っていては研究が進まないことが分かった.そこで以下のような方策を考えた.それは,生体の恒常性維持機能の及ぶ範囲内で生体に連続的に負荷を懸けると,それに抵抗する生体の反応が連続的に起こり,その結果として関連生体分子が連続的に増量し,周囲から浮かび上がって見えるようになる.そのような状態になれば関連生体分子のみを捉えられるであろうというものである.すなわち,ここでは共存生体分子が雑音であり,関連生体分子を信号と見なすと分かり易い.言うまでもなく,この生体分子を他の共存分子と分離して検出・定量するのである.この手法を種々の恒常性維持機能,例えば,血圧維持機能や血糖値維持機能に適用すれば,生命現象の一端が理解できるであろう.さらには,生体恒常性維持機能の変質として理解される病態,例えば高血圧や糖尿病と生体分子の動態との関連把握,それらに基づく治療,ひいては予防もできるのではないかと思われた.本論文は,生体分子の検出・分離・定量のための方法の開発と生体試料への適用,及び前述した生体恒常性維持機能の新しい側面からの研究について述べたものである.検出法としては,信号に対し雑音の少ないとされる光分析法(蛍光検出法,化学発光検出法)を取り上げ,分離・定量法としては高性能分離が期待される高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を取り上げて検討した.
著者
長松 康子 佐居 由美 今井 桂子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中皮腫患者が急増し、国民の石綿に対する不安が高まっていたが、保健師向けの石綿関連相談ガイドラインが無かった。そこで、保健師向けの石綿関連相談ガイドラインの構築を目的として研究を開始した。まず、石綿関連NPOの石綿関連相談記録344件の内容を分析したところ、子どもを含む曝露不安、職業などからすでに曝露した人からの発症不安、関連疾患を発症した患者からの相談及び遺族からの相談に分類できた。相談内容に対して回答を行うには、医療のみならず、建築、法律、心理などの専門的知識が必要と考えられた。とくに、学校や工事現場などの環境曝露への不安に関する相談が多かったことから、子どもと保護者向けの石綿情報サイトを開設した。さらに全国の保健所の石綿関連相談事業についての調査を行った結果、前年度の相談件数は、平均5.3件で、担当者数は平均3.0人で看護師を配する保健所が7割を超えた。担当者で研修を受けたものは14%のみで、マニュアルを全く使用しない者が35.4%に上った。相談担当者の7割以上が該当業務について自信が無いと回答した。その理由として多かったのは、相談件数が減って知識が蓄積されない、相談内容が多岐にわたるなどであった。保健所の石綿関連健康相談担当者の自信度が低く、マニュアルがあまり使用されていないことから担当者のニーズにあったガイドライン作成が必要と考えられた。しかし、研究途中で他の研究者によって優れたガイドラインが開発されたので、保健所職員がもっとも相談対応が困難であると回答した患者の不安について研究目的を変更した。胸膜中皮腫患者14名を対象にインタビュー調査を行ったところ、患者は様々な困難を体験していた。困難は、進行の速い難知性疾患であること、希少疾患であること、石綿被害によって起こることという、中皮腫の特性に起因していた。このような複雑な困難が、次々と起こり、病気の進行が速いため、一つの困難が解決する前に新たな困難が発生して、困難の重層化が起こっていた。また、患者は医療従事者が経験と知識が不足しており、十分なケアを受けていないと感じていた。
著者
今井 晋哉
出版者
帯広畜産大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

形成期の近代ドイツ市民社会における「市民的公共」の正と負の両面の解明を目指し、今年度は1840年代のハンブルクを例に、市民的公共の担い手としての啓蒙主義的市民結社「パトリオット協会」と、同結社の援助・指導の下、活動を始めた初期の「労働者教育協会」との相互関係を直接の対象として、文献・史料の蒐集・分析に取りかかった。この間、ハンブルクの文書館・図書館への史料情報の照会、先方からの返答など、発注段階での手続きに思いの外時間がかかり、注文した史料のなかには、なお現地でフィルム化を進めてもらっている最中のものもあり、したがって、今年度内における原史料の入手については計画通りいかなかった面もあるが、一方公刊史料や各種研究・参考文献については、本補助金のおかげで非常に充実した蒐集を行うことができた。パトリオット協会自身による協会史や労働者教育協会会員による新聞への寄稿などを読み進むうち、教育協会の活動についての両協会の交渉過程で鮮明になっていった両者の対立においては、協会構成員の経済的地位の相違に起因したという側面よりも、直接にはむしろ、行われるべき教育を、技術・職業教育や市民として修得すべき生活道徳の面に限定しようとするパトリオット協会と、歴史や社会問題についての講義や討論会をも求める教育協会の手工業職人との間の、教育プログラムをめぐる対立の方が中心的であったことが明らかになってきた。現在、この論点を中心とする論文の原稿を執筆中である。また、教育協会に参加した多様な「労働者」の状況を探るため、19世紀初め以来の社会下層民の、とりわけ手工業職人の状況についても勉強にも取り組んだ。この過程で、社会経済史学会からの依頼もあり、裏面の通り、ドイツにおける労働者階級形成を主題とする近年の歴史研究の動向についてまとめた論考を執筆、発表することとなった。
著者
吉田 敦彦 今井 重孝 西平 直 西村 拓生 永田 佳之 井藤 元
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1)日本各地の全てのシュタイナー学校(8校)のフィールドワーク調査による現状把握。2)範例な実践事例の収集および学習指導要領との対照における分析・考察。3)ユネスコスクール認定のシュタイナー学校におけるESD実践事例の研究。4) NPO法人立シュタイナー学校における社会的制度的認知プロセスに関するアクションリサーチ。5)シュタイナー学校の卒業生に関する欧米の先行調査の紹介と日本での調査実施の準備。
著者
今井 昭二
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、ファーネスアトマイゼーションの領域において黒鉛炉原子吸光法における原子化装置の中の電熱黒鉛炉の表面と分析元素の相互作用に関する基礎的成果を得た。更に、新規の分析法を提案した。(1)基礎的研究:溶液中において炭素材料に金属イオンを吸着させた場合、ある種の元素において炭素材料中の細孔に単原子状態で分散していることが分かった。この炭素材料の加熱によりイオンは原子に還元され、つづいて原子が脱離して原子蒸気の発生する。その発生する原子蒸気に関するデータから計算によって原子化の活性化パラメーターを求めることが可能となった。炭素材料の細孔の原子サイズレベルの表面の凹凸状態を示す指標の表面フラクタル次元とその原子化の活性化パラメーターに強い相関性があることが分かった。(2)新規の分析方法:本方法を用いて、炭素材料中の細孔の内壁表面の幾何学的構造を示す表面フラクタル次元を測定する新規な方法が見いだされた。表面フラクタル次元は、細孔の比表面積と関係式で結ばれ、本方法でこの表面フラクタル次元を求めることでサブナノメートルレベルの径をもつ微細孔の比表面積も求める方法が示唆された。(3)システム化:炉内での原子蒸気の発生およびそのときの温度の計測とデータ処理を最新のPCシステムを用い測定装置がシステム化された。自動分析も可能なシステムが完成した。(4)応用分析:表面のナノサイズでの制御は、分析元素の分散、共存物質の化学干渉、原子化装置表面への浸透および還元反応などを制御することで分析が困難であった環境有害微量元素のカドミウム、鉛およびヒ素の高感度分析を可能にした。(5)最近の動向:黒鉛炉原子吸光分析法における本体装置開発、関連装置開発、最新の分析方法、ナノテクノロジーおよびナノサイエンスの導入についての動向が明らかにされた。
著者
今井 範子 中村 久美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1223-1232, 1998-11-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

In Part 3, we aim to clarify the actual conditions as well as the consciousness of storing provisions in preparation for disaster and what articles to be taken out in case of emergency. The results are as follows : The earthquake disaster made the majority of people aware of the necessity of preparing for emergency, and about half of those surveyed made it a point to store things for emergency evacuation : cash, bankbooks, personal seals, underwear, for example, in addition to torch, radio, food, and drinking water. Those emergency articles are normally kept in a bedroom for quick evacuation. It should be noted, however, that they are often stored in places that might prevent quick evacuation ; such is considered to result due to the limited space available for some households. Such being the case, it is recommended that each community should provide a common storage of emergency articles to supplement individual storage. It is further recommended that each community should get ready emergency items such as temporary toilets and first-aid and rescue kits.
著者
今井 悦子 早川 文代 畑江 敬子 島田 淳子 相内 雅冶
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.697-708, 1994-08-15
被引用文献数
2

5種類の目皿(細孔の直径2.4,3.4,4.8,6.8および9.6mm)を通した挽き肉(牛,豚および鶏の3種類)を用いてハンバーグ様試料を調製し,試料の官能的識別および物性に及ぼす粒度の影響を検討した.生肉粒,加熱後の肉粒の粒度を測定した結果,加熱による肉粒の収縮率は牛肉>豚肉>鶏肉であった.さらに粒度測定から,牛肉は,目皿の直径が異なる試料間の粒度の識別がもっともしやすく,また鶏肉は結着性がもっとも高いことが示唆された.試料中の水分の保ちやすさは,解凍試料では目皿の直径が大きい試料の方,加熱試料では小さい試料の方であり,さらに鶏肉>豚肉>牛肉という肉種による差があった.剪断破断歪みおよび凝集性は,目皿の直径が大きい試料ほど有意に大きく,また牛肉は他の肉種より,目皿の直径が異なる試料間での変化率が大きかった.これより,牛肉の物性は,目皿の直径が異なる試料間で識別しやすいことが示唆された.官能検査の結果,目皿の直径が異なる試料間で,切り口の粗さ,硬さ,弾力性および肉粒感は3種の肉ともにある程度識別できたが,識別のしやすさには肉種により差があり,牛肉≧豚肉≧鶏肉であることが分かった.この結果より,肉粒の粒度測定および物性測定による示唆が裏づけられた.肉の粒度を官能的に捉える指標の1つである肉粒感は,肉汁の流出率および解凍試料の保水力の2つの物性値で98%予測できることが分かった.また,2つの肉粒の体積の比が1.2〜1.5以上になると粒度の識別ができると考えられた.
著者
田中 章 今井 英幸 宮腰 政明 伊達 惇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.819-825, 1996-05-25
参考文献数
6
被引用文献数
40

Mallatにより提案された多重解像度解析は, 関数空間を解像度の異なる部分空間列により表現する. 各部分空間は一つ解像度の低い部分空間と, その補空間の直和として表現される. Mallatはこれを直交ウェーブレットとスケール関数を用いて記述した. 本論文は, 離散化された自然画像を拡大する手法として, その画像の多重解像度解析を考え, その各解像度の成分の間に同程度の相関があることを利用して, 本来もとの画像には含まれていない高解像度の成分を推定し, その成分ともとの画像の情報から拡大画像を得る手法を提案する. また, 信号の内挿手法として広く用いられている, 共1次内挿法(bi-linear interpolation)や3次畳込み内挿法(cubic convolution interpolation)と比較を行い, 本手法の有効性を検証する.
著者
室田 保夫 今井 小の実 倉持 史朗 原 佳央理 佐野 信三 竹林 徑一 大野 定利 水上 妙子 鎌谷 かおる 片岡 優子 新井 利佳 蜂谷 俊隆
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

3年間の共同研究の成果を終えて、第一に大きな成果は社会福祉史のみならず近代日本史、大阪の近代史にもきわめて貴重な博愛社の史料整理とその保存が出来たことである。具体的には史料目録(仮)の完成とおよそ90箱にも及ぶ資料の保存である。研究の方では創立者小橋勝之助の日誌の翻刻といった研究が進捗した。そして機関誌の複製の作成、また史料が整理されたことによって研究への道がついた。さらにこの作業をとおして研究仲間同志の博愛社研究についての共有するところが大になったことも付け加えておこう。
著者
花岡 裕都子 花岡 悟一郎 四方 順司 今井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.323, pp.83-90, 2002-09-13
参考文献数
17

本稿においては、IDに基づく暗号系(暗号、鍵配送および署名)における秘密鍵の更新について議論を行い、特に、鍵更新を考慮した場合、IDに基づく暗号系と従来の公開鍵暗号系の通信コストはほぼ等しくなることを示す。つまり、実用的なシステムにおいては、IDに基づく暗号系の最も重要な利点が大きく損なわれることとなる。本研究においては、さらに、IDに基づく暗号系における一般的な鍵更新の手法を提案する。提案方式はいかなるIDに基づく方式に対しても適用可能であり、また、通信コストに関して最適である。基盤となるIDに基づく方式が安全であれば、鍵更新が可能となるよう提案方式を適用しても安全性は維持される。