著者
山崎 美樹 伊藤 裕久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.267-273, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2

現在のJR吉祥寺駅周辺市街地(東京都武蔵野市)は、近世に成立した新田集落のもつ短冊形地割が街区・街路形態に継承されており、近代以降の市街化過程の基盤となった。本稿では近世における短冊形地割の成立過程と、近世から近代へと引き継がれた短冊形地割の空間的特徴を具体的に明らかにすることを目的とする。そこで同時期に開発された旧吉祥寺村・西窪村・下連雀村を対象とする。寛文期の開発された三村は1657年に起きた明暦の大火後の住民移転による新田開発という歴史的経緯から、間口20間×奥行8間の奥行の浅い屋敷設定など、他の武蔵野の新田集落とは異なる共通性が見られる一方で、吉祥寺村では本宿(集落)と野田(耕地)と呼ばれる二種類の短冊形地割など、地域的な特徴があることが、寛文期の地割の復原的考察から明らかになった。また西窪村・下連雀村では、近世の間に人口増加へ対応するために、短冊形地割の間口が二分割され、宅地へと変換されていった。
著者
齋藤 雅史 伊藤 毅志
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2023-GI-49, no.14, pp.1-6, 2023-03-10

人間を超えるレベルの将棋 AI が出現して,プロ棋士はそれを学習に利用するようになって久しい.将棋 AI がプロ棋士の棋譜に与えた影響について,将棋AIを用いてプロ棋士の定量的分析を行ってきた.その結果,将棋 AI との一致率が高くなることが判明した.一方,中盤以降の拮抗した局面における平均損失は変化がないことが確認された.本研究では,同様の分析をレーティング上位の 9 名(トッププロ棋士)について行い,全体のプロ棋士の結果と比較した.その結果,プロ棋士全体の順位戦の棋譜の結果に比べて,トッププロ棋士の定量的データが有意に高いことが示された.
著者
岩井 博司 大野 恭裕 伊藤 裕進 遠藤 達治 小牧 克守 石井 秀司 盛岡 幸恵 芋縄 啓史 清川 知美 原田 剛史 廣田 則幸 山内 孝哲 宮武 利行 青木 矩彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.439-445, 2004-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
21
被引用文献数
5

症例は38歳, 男性. 10年前に近医にて糖尿病を指摘され, 5年前からメトホルミンとインスリンによる治療をうけていた. 2002 (平成14) 年8月以降, 当院で2型糖尿病, 糖尿病性腎症 (曲中クレアチニン値0.95mg/dl) と糖尿病性網膜症に対して治療を行っていた, 2003 (平成15) 年4月5日, 自殺目的でメトホルミン105錠 (26.25g) と睡眠薬を多量に内服しアルコールを多飲した. その後, 悪心, 嘔吐, 上腹部痛と意識障害が出現したため受診した. 高乳酸血症 (178.9mg/dl), 血中尿素窒素値 (128mg/dl) と血中クレアチニン値の上昇 (118mg/dl), anbngapの開大 (58.8) および代謝性アシドーシス (pH 7.219) の所見より乳酸アシド-シスおよび急性腎不全と診断し, 持続的血液濾過透析 (continuous hemodialysis filtration: CHDF) を施行した. 糖尿病に対してはインスリン療法を行った. その後, 血中クレアチニン値の低下と血糖値の改善を認め退院となった. 以上, 自殺目的でメトホルミンの多量内服後に乳酸アシドーシスと急性腎不全を発症した2型糖尿病患者の1例を報告した. この症例より, メトホルミンによる乳酸アシドーシスに対する治療には, 循環動態を安定に保てるCHDFを選択すべきであると考えた. また, 自殺目的でメトホルミンを多量に内服することがないように, 服薬状況の確認が必要であると考えた.
著者
岩﨑 雄斗 和泉 潔 伊藤 祐輔 植田 一博
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.389-408, 2015-09-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
36
被引用文献数
2

The purpose of this research is to experimentally clarify the influence both of mar-ket factors related to market conditions and of investors’ individual factors related tocognitive tendency on their investment behavior; for this purpose, we conducted an ex-periment using an experimental market in which participants were asked to buy and sellstocks whose prices were controlled. Specifically, we analyzed generalized linear mod-els where each of three behavioral indicators related to investment (the ratio of trendfollowing trading, the extent to which a participant took risks, and disposition effect)was a response variable and both market factors (market trend and volatility) and in-vestors’ individual factors (risk attitude and degree of proficiency) were explanatoryvariables, so that we could identify whether or not the explanatory variables explainedeach response variable. Five professional traders and 11 personal investors participatedin this experiment. As a result, the following three things were clarified: First, it wasaffected not by market factors but by their risk attitude whether they followed markettrends or not; second, the extent to which they took risks was affected both by marketfactors and by their degrees of proficiency; finally, disposition effect was affected onlyby degree of proficiency, which meant that professional traders could avoid dispositioneffect.
著者
伊藤 まゆ 三樹 美夏 林 浩孝 新井 隆成 鈴木 信孝 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.111-118, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

コラーゲン含有飲料の 1ヶ月間摂取による顔面皮膚の変化を,計測機器による指標を使って予備的に検討した.61 名の健常女性(年齢 25–68,34±8 歳)を対象とし,文書による同意を得た後,コラーゲン 5 g 飲料/日摂取群(30 名)と 10 g 飲料/日摂取群(31 名)に無作為に割り付けし,摂取前と後 1 週目と 1ヶ月目の顔面(両頬部)皮膚水分と下眼瞼の皺数を測定した.皮膚水分と皺数に関して,改善した反応例と変化がない無反応例に分類したところ, 10 g 摂取群では 5 g 摂取群より高い 5 割の反応率が得られた.反応例は無反応例より摂取前において皺数が多く皮膚水分が低いこと,皺数は 1 週間目から有意な改善をみることが示された.また本飲料が安全であることも示された.今後,皮膚の異常性状例を対象にして,コラーゲン 10 g/日を,1 週間あるいは 1 ヶ月月間投与する二重盲検試験により有効性を評価する研究の必要性が示された.
著者
貝沼 重信 山本 悠哉 伊藤 義浩 押川 渡
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.497-503, 2011-11-15 (Released:2012-04-21)
参考文献数
12
被引用文献数
9 12

鋼構造物を腐食による致命的損傷に対して,安全に供用するためには,部材・部位レベルの腐食環境を定量的に把握した上で,その経時腐食挙動を評価することが重要になる.本研究ではFe/Ag対で構成されるACM型腐食センサーを用いて,降雨の影響を受ける無塗装普通鋼板の経時腐食挙動を評価するための方法を提案することを目的とした.そのために,無塗装普通鋼板を用いた大気暴露試験を行った.また,試験体の表裏面における腐食環境と平均腐食深さの関係を定量評価するために,それらの腐食環境をACM型腐食センサーによりモニタリングした.
著者
髙橋 あすみ 土田 毅 末木 新 伊藤 次郎
出版者
一般社団法人 日本自殺予防学会
雑誌
自殺予防と危機介入 (ISSN:18836046)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.67-74, 2020-09-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
27

本研究では自殺関連語を検索する者の援助要請行動を促しやすいインターネット広告の内容を検討した。広告は基本的内容に加えて、見出しに直接的メッセージ(相談してください)か共感的メッセージ(つらかったですね)のどちらかを含め、説明文に相談手段と支援者情報を組み合わせて8種類を作成した。6種類の自殺関連語を検索した結果として広告一つがランダムに表示されるようにGoogle広告を設定した。広告のリンク先ページからボタンをクリックすると電話相談窓口へ発信することができた。ボタンクリックの有無を従属変数、広告の要素を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った結果、見出しは共感的メッセージよりも直接的メッセージの方が約1.6倍、見出しが共感的メッセージの場合には相談手段を説明に含んだ方が約1.2倍、ボタンクリックの割合が高くなった。すなわち、自殺の相談を促す広告には直接的メッセージと相談手段を含むことが望ましい。
著者
淺見 貞晴 高瀬 麻以 工藤 正美 田中 美江子 ザーリッチ 陽子 徳丸 剛 伊藤 敬市 土屋 輝幸 飯島 勝矢 菊谷 武 丸山 道生
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.17-23, 2022-04-30 (Released:2022-08-31)
参考文献数
19

【目的】インフォグラフィックの手法を用いた資料を製作することで,嚥下調整食学会分類を西東京市内の在宅ケアスタッフに普及する.【方法】インフォグラフィックの製作は,東京大学高齢社会総合研究機構(以下,IOG)の「多職種協働による食支援プロジェクト」の一環として,西東京市で2019 年4 月に開始された.プロジェクトチームは,市内の医療系専門職,市役所職員,IOG 特任研究員により構成された.制作にあたっては,ステークホルダーである在宅ケアスタッフに嚥下調整食学会分類普及のためのニーズや課題をヒアリングし,それをもとに,インフォグラフィックの内容を決定した.インフォグラフィックを印刷する媒体は,移動の多い在宅ケアスタッフがいつでも手に取って見られるよう,クリアファイルを選択した.クリアファイルの使い方を伝えるため,西東京市のYouTube チャンネルに解説動画をアップロードした.その後,西東京市内6 施設104 名の在宅ケアスタッフに,クリアファイルの有用性についてアンケート調査を行った.【結果】インフォグラフィックには,1)問題提起と背景,2)嚥下調整食学会分類の使用が推奨される理由,3)嚥下調整食学会分類の説明を内容として含めた.アンケートでは,86 名の食支援に携わる在宅ケアスタッフのうち,85.5% が当資料を今の業務で使う機会があると回答し,92.8% が今後の業務の中で使いたいと回答した.【結論】インフォグラフィックを用いた資料は,在宅ケアスタッフへの嚥下調整食学会分類普及に有用である可能性が示唆された.
著者
伊藤 誠 須藤 哲也 高橋 暁史 原 崇文 岩野 龍一郎
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.143, no.5, pp.398-404, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
22

In this study, a direct drive in-wheel system is proposed as a high power density system for reducing the intermediate parts, such as a speed reducer by increasing the torque. We propose a design strategy to show that multipolarization and the improvement of the gap magnetic flux density can effectively increase the power density. A Halbach array magnet rotor that combines the main electrode magnets and spoke magnets with the core is adopted as a technique for improving the gap magnetic flux density. We compare the Halbach array type rotor to the conventional SPM type rotor by using both of magnetic circuit calculation and FEM analysis. Moreover, the actual sized in-wheel motor prototype with the developed Halbach array magnet rotor is fabricated and measures the no-load induced back EMF. The measured no-load induced back EMF agrees well with the analyzed waveform.
著者
伊藤 虹児 和穎 朗太
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.18-28, 2023-04-30 (Released:2023-04-30)

地球上で屈指の微生物多様性を有する土壌では,土壌微生物群集が物質循環(生物地球化学的サイクル)を駆動し,その活動が植物への養分供給や気候調節といった生態系サービスを可能にしている。これを保全し,精緻に制御・予測するためには,土壌環境と微生物群集を併せた理解が不可欠である。しかしながら,バルク土壌を均質とみなした従来のアプローチでは土壌が本質的に内包する不均質性を見落とす可能性がある。そこで本稿では,先ず土壌環境中の不均質性の源である3 つの重要な要素;固相成分(母材,有機物,有機無機複合体),団粒構造と階層性,土壌孔隙を概説する。次に,これらの要素が生み出す不均質性と土壌細菌群集構造の関係性,また生態学的フレームワークを基にした土壌細菌群集の生態に関する研究例について紹介する。複雑な微生物群集構造と微生物ハビタットとしての微視的土壌環境を高解像度に解析できるようになった現在,土壌の微生物生態および微生物の駆動する陸域の物質循環の理解を格段に深化するチャンスが訪れており,将来的に土壌プロセスの理解の精緻な予測および持続的農業を支える土壌管理への基礎になることが期待できる。
著者
中山 祐一郎 梅本 信也 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.332-338, 1997-01-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19

オオバコの種内変異を調査するため, 京都市北東部の8集団かち得た系統を供試し, 同一条件下での栽培実験を行なった。さらに, 生育地の環境を調査して, 種内変異と生態分布との関連を検討した。1) オオバコの形態には著しい遺伝的変異が認められ, 普通型と minima 型の2型が識別された。普通型では, 葉は大きく斜立し, 葉脈数は5で, 花序は長く, 斜立~直立し, 1蓋果は3~7個の大きな種子を結ぶ。minima 型では, 葉は小さく傾伏し, 葉脈数は3で, 花序は短く, 傾上し, 1蓋果は4~10個の小さな種子を結ぶ。2) 普通型は, 畦畔や農道, 路傍, 未舗装の駐車場, 社寺林の林床などに生育していた。minima 型は神社や仏閣の境内に限って生育していた。3) minima 型の生育地である神社の境内は, 薄暗く, 土壌中の窒素とリンの含量が普通型の生育地より低く, 維管束植物の多様度指数が低く, また毎日掃き掃除が行われるなど, 普通型の生育地とは環境条件や管理様式が顕著に異なっていた。そのため, minima 型はストレスや撹乱の質と程度に関して普通型とは異なった環境に生育していると考えられた。オオバコの種内2型はこのような生育地の環境条件の違いに適応し, 住み分けているものと推定された。
著者
伊藤 光平
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.29-42, 2023 (Released:2023-04-01)
参考文献数
96
被引用文献数
2

ヒトは用途に応じて複数の建造環境を使い分けながら1日の大半を建造環境内で過ごしている。近年,「建造環境の微生物叢 (MoBE)」の網羅的な解明が進んでいる。建造環境では,屋外環境などの一部やヒト自体が微生物の供給源となり多様な微生物が持ち込まれ,独自の微生物生態系が構築されている。その動態は,季節などの自然要因のみならず,換気,建材,設計手法などの人的要因によっても変化する。本論文では初めに,ヒト,環境,微生物における相互作用や関係によって生じるMoBEの構成要因を説明する。次に,建造環境における薬剤耐性菌の発生プロセスと感染症拡大につながるリスク要因を評価する。さらに,都市化に伴いヒトが多様な微生物に曝露する機会が減少することによって生じる免疫発達への影響など,MoBEが与えるヒトの健康への影響についても議論する。以上の通りMoBEの重要性が明らかになりつつある一方で, 複雑性の高いMoBEから一貫した特徴を検出するためには解決すべき課題が多くある。MoBEの複雑性が高いのは,微生物の発生源が無数に存在し,同時にヒトの活動,建築設計や屋外の土地利用など多様なパラメータが存在するからである。さらに,MoBEを解明するための生物学的実験・解析手法にはいくつかの技術的な制限がある。MoBEを人為的に管理することで健康,快適性,生産性等を向上させるためには,さらなる研究が必要である。
著者
角谷 侑香 山口 暢俊 伊藤 寿朗
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.602-610, 2017-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
89

1991年に遺伝学的な解析によって,がく,花びら,おしべ,めしべという4つの花器官は3つのクラスの遺伝子の組み合わせ「ABCモデル」によってつくられることが報告された.その後の研究により,これらの3つのABC遺伝子がどの組み合わせではたらくのかを決める分子的なメカニズムが明らかになっている.さらにABC遺伝子がはたらき始めるための上流の仕組み,およびABC遺伝子が制御する多種多様なイベントと複雑な下流のネットワークの一端もわかってきた.この解説では,近年の研究から見えてきたABC遺伝子が花をつくるための仕組みと順序,およびそこから見えてきた今後の課題を述べる.
著者
伊藤 義徳 金築 優 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.97-108, 2001-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、認知心理学において注目されている自動的処理と統制的処理という概念が、認知行動療法(CBT)に及ぼした影響について展望するとともに、この概念を積極的に取り入れることが、さらなる臨床心理学の発展に寄与する可能性について考察を行った。自動的処理と統制的処理は、人の認知過程において、意識しないままに行えてしまう活動と、子細に注意を払いながら行う活動があるという事実に着目した理論である。感情の喚起により統制的処理が阻害され、相対的に自動的処理が優位になるという相互の関係性があり、特に感情情報に対する処理過程は、感情障害のメカニズムを説明するモデルにおいて重要な役割を担っている。また、処理の二過程理論は認知・社会心理学の幅広い分野で応用されており、臨床領域においても、さまざまな応用が可能であると考える。こうした他分野の知見を積極的に臨床活動に応用してゆくことが、認知臨床心理学の役割であると考える。
著者
伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ1999論文集
巻号頁・発行日
vol.1999, no.14, pp.177-184, 1999-10-15

将棋のような複雑な問題解決では,先読みしきれない膨大な局面に対する論理的思考を補うために,人間は経験に基づく直観や大局観を利用した思考をしている.本研究では,将棋におけるある局面において,人間がどのように考えて,次の一手を決定していくのかを詳細に調べて,人間の直感的思考のメカニズムを明らかにしていく.心理実験の結果,アマチュア5級程度になると,すでに上級者と同様の思考過程(将棋対局者スクリプト)を辿れることが明らかになった.また,上級者になるほど大局的に局面を見ることが出来るようになり,注目すべき箇所への言及が多く,深い先読みを行う以前に,有力な指し手であることが感じ取れるようになっていることがわかった.
著者
伊藤 潔志
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学キリスト教論集 = St. Andrew's University journal of Christian studies (ISSN:0286973X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.85-112, 2015-03-23

The purpose of this paper is to examine and elucidate the distinctive features of the religious aspects of Ludwig Wittgenstein's philosophical thought. Few people generally regard Wittgenstein as a religious thinker, but research has been carried out on his views on religion and attempts have been made to apply his philosophical thought to theology. Wittgenstein's philosophical thinking is commonly divided into two phases ─ the early phase and the later phase ─ and even as it showed a certain consistency, it also underwent considerable transformation. Accordingly, in the early and later phases of Wittgenstein's philosophy there are both elements that are the same and elements that are markedly different. In this paper I will look at the early phase of Wittgenstein's philosophical thought, picking out certain ideas about religion that run throughout Wittgenstein's philosophy and elucidating the distinctive features of such ideas. Wittgenstein held that language has limits, and that accordingly there are also limits to thought. Further, he held that since language and the world exist with and through one another, the world also has limits. Accordingly, it is impossible to speak anything regarding what exists beyond the limits of language, and impossible to speak anything that lies outside the world. This means that though it is possible to speak of things when they have to do with facts, it is not possible to speak of things when they have to do with values ─ since values lie outside the world. Thus, it is not possible to speak things like religion, faith, revelations, and God (they are `unspeakable'). Nevertheless, Wittgenstein argues, even though it is not possible to` speak' these things, it is still possible to `show' them. According to Kierkegaard, `showing' is a particular state of affairs, and to `show' is a way of indirectly `speaking' something. We might perhaps call this showing a `religion of silence.' Wittgenstein was a philosopher who worked out a religion of silence, a religion that exists on the other side of the limits of language, thought, and the world.