著者
佐々木 結花 山岸 文雄 八木 毅典
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.637-642, 2005-10-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕本邦の多剤耐性肺結核患者の接触者検診と化学予防の現状を検討すること。〔対象と方法〕1998年から2002年の5年間に,本邦の政令指定都市において施行された多剤耐性肺結核患者接触者検診についてアンケートを行った。〔結果〕アンケートの回答は13政令指定都市中9都市(69.2%)であった。過去5年聞に経験された多剤酎性肺結核症例259例中.1998年から2002年までに新規に多剤耐性肺結核が発病した症例は189例であった。189例中潜在性結核ないしは発病者を生じた多剤耐性肺結核患者は33例(17.5%)で,659例の接触者(20.0例/1多剤耐性肺結核患者)が存在した。化学予防を考慮された接触者は58例(8.8%)で,58例中実際に化学予防が行われた症例は41例であった。化学予防を行った症例からの発病はなかった。発病例は13例で,接触者1750例中の0.7%であった。13例中,発病時に問題があったとされた症例は9例で,その問題は,長期の発見の遅れ,入院拒否例からの感染発病,再排菌時発病,感染判明後の化学予防未施行であった。〔結論〕多剤耐性結核菌は,感性菌と同様に接触者に感染発病を生じることが推測され,化学予防など検診事後措置について検討する必要があると考えられた。
著者
佐々木 宰
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.203-215, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
17

多民族・多文化社会における美術教育の特徴的な機能として,「エスニシティの可視化」 と,それを通した「自国の美術文化の創出」というモデルを想定した。アジアの多くの国は多 民族・多文化国家であり,特に東南アジア諸国においては,それぞれの民族集団におけるエス ニシティと,国民としてのナショナリティの二重の帰属意識が求められる。複数のエスニシテ ィをどのようなバランスで扱うかは国の政策によって異なるが,インドネシア,マレーシア, シンガポールでは学校教育を通して民族の文化的な価値観を育成しており,そのために視覚や 触覚を通して感性に働きかける美術教育が一定の機能を果たしていることが確認できた。さら に,エスニシティはもとより国民としての文化的価値観を共有するために,「自国の美術」の 創出が試みられており,その意識形成に対しても,美術教育が機能していることが確認された。
著者
岩瀬 康子 佐々木 利佳 堀川 英世 釈永 清志 山崎 光章
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.214-217, 2012

  グルカゴノーマ摘出後に高度の低血糖が原因の覚醒遅延をきたした症例を経験したので報告する.46歳女性.上腹部腫瘤と耐糖能障害を認めたため,確定診断の目的も兼ねて腫瘍摘出術が施行された.術中経過は安定しており,血糖値は103~110mg/dlであった.術後に覚醒遅延を認めたため血糖値を測定したところ,4mg/dlであった.ただちにブドウ糖を投与し,血糖値が回復すると速やかに覚醒した.術後に神経学的異常所見は認めなかった.グルカゴノーマの周術期には血糖値が大きく変動する可能性があるため,頻回に血糖値を測定する必要がある.グルカゴノーマ摘出後に覚醒遅延をきたした場合は低血糖の可能性を考慮する必要がある.
著者
佐々木 啓子
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.19-29, 2012-02-01

The aim of this article is to present the frame of reference of sociological history on the class culture and the education of the upper middle class in pre-war Japan. In modern societies, feudal statuses are substituted for meritocratic positions by new privileged class, that is, public servants, professions or the managerial class. These positions are acquired by licenses or education but not by one's social origin. Generally speaking, upper middle class city people know the importance of the educational background and give their children higher education which is acquired through their class culture. In this way, their meritocratic positions are inherited to their sons or daughters by hidden cultural capital.
著者
広岡 佑三郎 鈴木 彰 浅沼 信治 黒沢 和雄 阿部 栄四郎 佐々木 喜一郎 桜井 賢彦 河西 朗 松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.198-202, 1984

sallmonella typhimuruin TA98, TA100, TA 1535, TA1537で有機リン系殺菌剤, ジフェニルエーテル系除草剤およびPCNBについて変異原性試験を行なった。<BR>有機リン系殺菌剤ではエスセブン, デス, シュアサイドにそれぞれ変異原性が認められた。また, ジフェニルエーテル系除草剤, MOニップ, X-52およびPCNBにも同様に変異原性が認められた。
著者
小笠原 敏記 佐々木 信也 堺 茂樹 古川 隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1346-1350, 2006
被引用文献数
1

ワークショップ (WS) を通して, 避難上の問題点を明確にし, その対策案に基づいた行動計画を実施するまでの過程を報告して, 自主防災力の意識向上に対するWS効果を検討する. さらに, アンケート調査より平成15年十勝沖地震と平成17年11月の三陸沖の地震で発令された津波注意報に伴う避難の実態を明確にし, 同時に避難行動に及ぼすWSの影響も明らかにする. その結果, 視覚的に理解し易い情報・資料の提供や, 計画を立て実際に歩くという行為, 同じ問題を参加者で考えて行動に移すことができる場がワークショップの重要な役割と言える. しかし, 避難行動の意識向上にWS効果が見られたにも関わらず, 避難行動に及ばない実状が明白となった.
著者
松田 真一 深田 信幸 大石 昌仁 岡 宏明 原 良介 小島 愛 中野 駿 元吉 克明 五十嵐 繁樹 佐々木 裕子 亀山 菜つ子 窪田 和寛
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
pp.26.e4, (Released:2021-03-18)
参考文献数
17

保険請求データベース(DB)や電子カルテ DB 等,日常診療の情報が記録されたリアルワールドデータ(real-world data:RWD)は,薬剤疫学研究における重要なデータ源の一つである.日本において,2018年4月より製造販売後調査の新たなカテゴリーとして,医薬品の製造販売後データベース(製販後 DB)調査が追加された.以降,医薬品リスク管理計画(risk management plan:RMP)において製販後 DB 調査が計画され,製販後 DB 調査の実践が期待されているが,現時点で結果公表まで至ったものはほとんどない.一方,海外においては RWD を用いた DB 研究成果は現時点で多数報告されている.海外と日本では,DB 自体の特性(項目・構造等)の違い,医療環境・慣習の違い等を念頭におく必要はあるが,そのような前提を踏まえて海外 DB 調査論文を精読し,研究仮説,研究デザイン,手法等を吟味することは,日本における製販後 DB 調査の計画・実行・結果の解釈を実践するうえで参考価値があると考えた.本報告の目的は,海外 DB 調査論文の批判的吟味を通じて,DB 調査の特徴や注意点を考察すること,そして,日本における製販後DB 調査の実践に役立つ提言を行うことである.本稿が,今後の製販後 DB 調査を計画・実施するうえでの一助になれば幸いである.
著者
村田 勝 今井 佐和子 佐藤 大介 佐々木 智也 有末 眞
出版者
日本硬組織研究技術学会
雑誌
Journal of hard tissue biology (ISSN:13417649)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.143-147, 2002-03-01
参考文献数
23
被引用文献数
2

我々はリコンビナントBMP(r h BMP-2)アテロコラ-ゲンコラ-ゲンインプラントシステムが骨膜下骨増生に極めて有効であることを報告している。本研究では、骨膜を剥離せず部分的に線状切開を加えた骨膜状にr h BMP-2/コラーゲン複合物を埋入し、骨膜と母骨の細胞組織反応や骨誘導について形態学的に観察することを目的とした。ウイスター系雄性ラット(40週齢)を正常骨膜観察に5匹、切開骨膜上実験のために20匹使用した。全身麻酔科で頭部に皮下切開を加えた。r h BMP-2(10mg)/I型アテロコラーゲン(10mg)複合物を挿入後、1,2,4,8週目に5匹ずつ屠殺し、埋入物入と頭部を一塊として摘出した。脱灰切片作成後、ヘマトキシリン-エオジン染色とエラスティカワンギーソン染色、増殖細胞核抗原(PCNA)抗体による免疫染色を行い光学懸顕微鏡で観察した。正常骨膜には扁平な骨芽細胞層、菲膜化した線維層、脂肪層からなる3層構造が認められた。PCNA陽性細胞率は0.8±4.6%、非切開部で9.3±1.5%であった。2週後、埋入物層に環状の骨形成がみられ、骨膜切開部でのみ母骨と増整骨は新生骨で連続していた。4週後、非切開部骨膜は正常骨膜に類似した構造を呈した。8週後、増生骨の骨髄形成が進行し、骨膜切開部のみに形成された骨架橋は維持されていた。非切開部には骨膜を含む軟組織が介在していた。以上より、r h BMP-2/アテロコラ-ゲンインプラントシステムハ骨膜上で骨増生が可能であり、切開部のみで骨架橋が形成された。また切開部以外の骨膜は非石灰化組織として増生骨と母骨間に介在したことから、骨膜は骨形成能を有する組織境界膜として存在する恒常性機構を有している可能性が考えられた。
著者
鈴木 孝 佐々木 淳
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.145-156, 2019-02-28 (Released:2020-10-06)
参考文献数
25

臨床心理面接にて,カウンセラー(以下,Co.)がクライエント(以下,Cl.)に対して自己開示をする効果が指摘されており,多くのCo. が自己開示を使用している。その効果については実証研究が蓄積されてきた。しかし,どのような自己開示をCl. が求めているか,そしてCo. がその期待にどう応じるのかは明らかにされていない。そこで本研究では,Co. の自己開示について,Cl. の期待とCo. の実際の応答との差異を検討することを目的とした。心理援助職14名(Co. 役)と大学生53名(Cl. 役)を対象に,Cl. がCo. に自己開示を求めた仮想事例を提示し,Co. 役には自身がすると予想する応答を,Cl. 役には自身がCo. に求める応答を回答させた。Co. の気持ちの開示を求めた仮想事例では,傾聴に徹することが両者に共通する応答として見いだされた。一方で,Co. の見立ての開示を求めた仮想事例では,Cl. 役は解決策の開示を期待したのに対し,多くのCo. 役が解決策を提示しないと予想した。Cl. の期待とCo. の応答が異なる点について,面接における時間軸の観点から考察し,Co. に求められる姿勢を論じた。
著者
齋藤 陽子 久世 均 吉村 希至 佐々木 恵理
出版者
岐阜女子大学
雑誌
岐阜女子大学紀要 = Bulletin of Gifu Women's University (ISSN:02868644)
巻号頁・発行日
no.46, pp.83-89, 2017

ICT など教育情報環境の進展に伴って,子どもたち一人ひとりの能力や特性に応じた学びや,子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学びを創造していくためには,子どもたち一人ひとりの学習ニーズに柔軟に対応でき,学習履歴の把握・共有等を可能とするような学習環境と教材の開発が求められる。また,このような教育を行うためには,ICT 活用指導力と教材開発能力を併せ持った質の高い教員が必要となる。そのためには,モデル的な新しい教育の方法の開発・提供や,教員等が創意工夫を生かせる学習環境整備とともに,高度な教材開発能力がある指導的な教員の養成や研修が必要となる。そこで,本学大学院文化創造学研究科が産官学と連携し,教員が学びやすい実践的なデジタルアーキビスト養成カリキュラムと教材開発の融合による新しい教材開発能力養成カリキュラムを開発した。さらに,理論と実践の融合を図る往還的な共同演習(アクティブラーニング)を行うことにより,力量ある,より実践的な教材開発能力の研修を試行したので報告する。
著者
渋谷 友紀 森田 ゆい 福田 玄明 植田 一博 佐々木 正人
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.337-364, 2012 (Released:2014-10-10)
参考文献数
41
被引用文献数
3

In Japanese traditional performing arts, “breathing” is consideredone of the most fundamental techniques. Recent studies reveal that breathing is not synchronized with body action in masters or experts in Kyogen and Kabuki, Japanese traditional performing arts. This result contrasts sharply with the report that, with growing proficiency,breathing becomes synchronized with body actionin sports and Western dances. Bunraku,which is also one of the Japanese traditional performing arts, is a form of puppet theater in which three puppeteers cooperatively maneuver one puppet. Bunraku has thus different characteristics from Kyogen and Kabuki; the body (puppet) that performs actions is different from thebodies (puppeteers) that control the actions. Therefore we can expect to find, in Bunraku, a relation between body action and breathing which is different fromthat in Kyogen and Kabuki. In this paper, we clarified relation between body action and breathing in Bunraku puppeteers and compared it with that found in Kyogen and Kabuki. Two Bunraku puppeteers who were different in career (one puppeteer’s career spanned 31 years while the other puppeteer’s career spanned 13 years)participated in our experiment: We asked them to execute the following three tasks; the first task was to perform basic actions called Kata with a familiar puppet, the second was to perform the same basic actions with an unfamiliar puppet, and the third was to perform an actual Bunraku play both to the music by shamisen and to the narration by Tayu. In order to clarify whether or not a puppeteer’s breathing was synchronized with his body action, we investigated the correspondence between his breathing phases and the puppet’s motions in performance aswell as the periodicity and stability of his breathing by analyzing autocorrelation of and applying Fourier analyses to breathing curves. As a result breathing was found less synchronized with body action for the more experienced puppeteer with 31 years career than for the less experienced puppeteer with 13 years career. When they executed the first and third tasks, in addition, the more experienced puppeteer showed more periodic and stable breathing patterns than the less experienced puppeteer did. These findings are consistent with the previous ones found in Kyogen and Kabuki. On the other hand, a clear difference in breathing pattern between the two puppeteers was not found when they did the second task, which is not necessarily consistent with the finding in Kyogen and Kabuki. Along with the previous findings, the results suggest that a common breathing technique may be used among Japanese traditional performing arts, Kyogen, Bunraku and Kabuki.
著者
吉村 伊保子 佐々木 淳 秋元 博之 吉村 教皋
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.379-384, 1989-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

典型的な先天性筋緊張性ジストロフィーに自閉症を伴っていた症例 (11歳女児) を報告し, その臨床像, CT像, 筋生検 (光顕, 電顕) 所見を述べるとともに, 本例の示す意味について考察した.電顕所見によると, 歪に分葉した中心核と, その周辺部の筋原線維の変性を特徴としていた.本例は, 精神遅滞と脳波およびCT像の異常を認め, 他の剖検例の所見をあわせて考えると, その脳器質障害は明らかである.したがって, 本例は, 自閉症がいくつかの病因をもった器質性症候群であるという仮説を支持する症例のひとつに加えられ得ることを述べた.
著者
佐藤 健二 瀧内 伸 角田 美里 鈴木 龍馬 佐々木 秀明 坂本 直道
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.535-540, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

放射性物質によって汚染された土壌からの放射性セシウムの除去と吸着に関して検討した.除去操作では,汚染土壌として砂試料,除去溶液としてチオ尿素を添加した比較的低濃度の硫酸溶液を用いた.汚染された砂試料1 kgに対し少なくとも0.1 Mチオ尿素を含む1 M硫酸溶液1 Lを用い90℃ で加熱することで除去率80% が得られた.また,チオ尿素を含む硫酸溶液の液量を増やすことで90% 以上,そして除去操作を2回繰り返すことで96% の除去率が示された.本法を実用的のあるものとするために特注のステンレス製除去装置を用い検討した.その結果,基礎的な実験結果とほぼ同様な除去率が得られた.吸着操作では,砂試料から除去した放射性セシウムを含む汚染水,吸着剤としてゼオライトと活性炭を用い検討した.秋田県産のゼオライト2種と市販の活性炭3種を用い放射性セシウムの吸着について検討したところ活性炭へはほとんど吸着されなかったが,ゼオライト2種では共に96% 以上の吸着率が得られた.さらに,放射性セシウムの吸着について振とう時間やゼオライト量を変化させ吸着率への影響について検討すると共にゼオライトをガラス製カラムに入れたフロー式による吸着についても検討した.