著者
佐々木 貴教
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では、地球型惑星の大気および表層環境について、その形成と初期進化を理論的手法によって議論する。初年度に初期金星大気の進化についての結果が得られたので、前年度からはより一般的な地球型惑星に着目して研究を進めた。近年発見が相次いでいる太陽系外の地球型惑星、および巨大な地球型惑星(スーパー地球)について、その系の特徴が木星・土星の衛星系の特徴と類似している点に注目し、巨大ガス惑星周りの衛星形成についての研究を行った。具体的には、惑星形成モデルを衛星形成に適応することにより、木星・土星の衛星系(ガリレオ衛星・タイタン)の形成過程を計算した。計算の結果、衛星形成環境の違いから、木星・土星の衛星系の特徴の違いが自然に説明されることが明らかになった。また近年注目されている原始惑星系円盤内での氷境界の移動について、その表式を惑星形成モデルに組み込み、様々なパラメータの下で形成される地球型惑星の特徴について見積もった。その結果、氷境界の移動を考慮すると極めて水に富んだ地球型惑星しか作ることができないことが示唆された。以上の結果は、太陽系やスーパー地球系の形成過程の違いにも重要な示唆を与えており、今後一般的な地球型惑星の形成・進化の議論が大きく進むことが期待される。また巨大ガス惑星周りに形成される周惑星円盤の特徴を議論することで、原始星周りに形成される円盤についても新たな知見が得られている。これも地球型惑星の形成環境を議論する上で非常に重要な結果である。以上の成果について、複数の論文および学会において発表を行った。
著者
佐々木 緑
出版者
関西国際大学
雑誌
教育総合研究叢書 (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.3, pp.97-107, 2010-03

自律学習の重要性が唱えられ中,多くの大学で学生を自律学習者へと導く試みが行われている。学習法や学習計画の立案と見直しの重要性を解く講座や演習であったり,学生が自主的に利用できる学習施設などの提供である場合が多い。しかしながら,十分な学力および学習習慣が身についておらず,かつ自律学習指導を受けていないような学生が入学してくる大学の現状では,個々のプログラムを散発的に提供するだけでは,真の意味での自律学習者を養成することは難しい。複数のプログラムや取り組みを体系的に組み立てる必要があり,また,学習者が互いに学び合いながら,学習に対する動機付けや学習動機が継続的に強化されるような環境作りも必要である。本稿は,関西国際大学教育学部英語教育学科における自律学習促進の取り組みとその効果について報告し,体系的な自律学習支援のモデルを提供することを目的としている。
著者
大墳 聡 佐々木 信之 長谷川 貞夫 原川 哲美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.100-108, 2010-02-01

小型の振動モータ6個1組を体の任意の部位に装着し,振動によって点字情報を読み取る体表点字の研究を行っている.本論文では,はじめに背中と上肢での振動モータの弁別距離を測定した.その結果,2点で弁別できた距離でも3点では弁別できないことが分かった.そして振動による点字の読取りを考慮したときに背中では12cm,上肢では20cmの間隔が必要であることが分かった.体表点字におけるモータの駆動パラメータは振動継続時間T_m,点字1マス内振動間の休止時間T_s,マス間振動休止時間T_nの3種類がある.本論文では,これらパラメータと点字読取りの関係を明らかにするために,3人の被験者にて背中と上肢でそれぞれのパラメータを変えて単語の読取りの測定を行った.測定から現在の読取りは,1マス0.7〜1.6秒であった.また各振動パラメータの特徴を解析した.そして誤った振動パターンを解析することで,点字マスの真ん中の点に関する振動が誤りやすいことを確認した.
著者
ウォン 裕子 佐々木 倫子 堀口 純子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、ヴァーチャル映画討論会の参加者の多文化・多言語意識を「言語の社会化」の観点から分析・考察することである。下記の4点が主な結果である。1)活動の理論的枠組みと協働的学習活動設計の有効性が検証された。2)これまでのCMC活動の問題点を5つの新たな方法により改善した。3)「言語の社会化」の視座からCMCの実際使用実態を明らかにした。4)参加者の多文化・多言語意識に変容が見られた。
著者
島永 和幸 佐々木 常和 岡田 芳男 島永 嵩子
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.207-222, 2007 (Released:2009-06-17)
参考文献数
22

目 的:産業経済から知識創造経済への経済構造の変化のもとで,企業価値創造の推進力としての研究開発マネジメントが大きく注目されている。中国において研究開発の重要性に対する認識が高まりつつある中で,製薬企業は他業種に比べて積極的に自主開発を行っている。しかしながら,実証的な研究はほとんど行われておらず,その実態はブラックボックスになっている。そこで,中国の製薬企業を対象に研究開発マネジメントに関する実態調査を実施し,企業の属性ごとに研究開発戦略や研究開発従事者のマネジメントに差異がみられるかを明らかにすることを目的とする。対象と方法:2006年に中国において実施した質問票調査の分析を行った。中国の製薬企業2,393社を対象に,地域別,取扱い商品別,規模別に約1,500社をそれぞれ比例抽出し,計270票の有効回答を得た(回答率18.0%)。分析にあたって,主成分分析を用いて中国の製薬企業の属性を明らかにし,主成分得点の結果からクラスター分析を行う。クラスター分析によって得られた中国の製薬企業の類型ごとに,組織的なマネジメント,創造性を発揮する環境づくり,専門能力の向上,およびモチベーションの刺激についてどのような差異がみられるのかを分析した。結 果:中国の製薬企業の類型化を試みた結果,3つのパターンが見出された。研究開発の実績や志向性の高低によって,研究開発マネジメントに差異がみられる。考 察:現在の中国において,研究開発の実績が低く,かつ志向性が弱い企業が最も多く,全体の45.6%を占めている。製薬企業では,マネジメントの基盤づくりやチームワーク方式,成果主義などを重視している現状が明らかとなった。
著者
佐々木 節 DOUKAS JASONANDREW DOUKAS Jason
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度までに高次元時空の回転パラメーターが一つの回転ブラックホールに関する性質がほぼ解明できた。そこで、今年度は複数の回転パラメーターを持つ高次元時空の回転ブラックホールの分析を集中的に行った。この解析は、現在稼働し始めているLHCなどの高エネルギー加速器実験での高次元時空理論に基づくブラックホール生成理論の検証にとって、極めて重要な意味を持つ。まず、5次元時空におけるde Sitter(またはanti-deSitter)空間中の回転ブラックホール上のスカラー場の波動方程式の一般表式を導いた。そして、それを変数分離し、その角度成分が角運動量は2つの自由度があるにも関わらず、1つの回転楕円波動方程式で表されることを示した。そして、回転パラメーターに関して摂動の6次までを解き、連分数法による数値解と比較し、摂動計算の精度を検証した。次に、漸近的逐次法によるブラックホールの準固有振動を求める方法の有効性について、とれまでの成果をまとめ、より統一した論議を展開した。特に、この方法が回転ブラックホールや電荷をもつブラックホールのどちらにも統一的に適用できることを示し、具体的にスピンが0, 1/2, 2を持つそれぞれの波動に対する回転ブラックホールの準固有振動をこの方法で求め、それらが以前に別の方法で求められた4次元回転ブラックホールの答えと一致することを確かめた。これにより、この方法の妥当性とその高次元回転ブラックホールに対する有用性を確認できたことは重要な成果である。以上の2つの成果は現在、それぞれ査読付き学術誌に投稿中である。
著者
關橋 薫 齋藤 宏美 佐々木 有
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-8, 2002-12-25

甘味料ステビア抽出物の安全性試験の一環として,ステビア抽出物およびその代謝物であるステビオールの遺伝毒性をコメットアッセイで評価した。ステビオールはin vitroとin vivoの両方で,ステビア抽出物はin vivoで検討した。in vitroコメットアッセイではヒトリンパ芽球細胞株TK6およびWTK-1を用いた。ステビオールの1000μg/mlでは著しい細胞生存率の低下がみられたことから,生細胞数が70%を下回らない濃度としてラット肝由来の代謝活性化系の有無に関わらず500μg/ml以下で評価した。代謝活性化系の有無に関わらず500μg/ml以下で統計学的に有意なDNA損傷の増加はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下において,ステビオールには代謝活性化系の有無に関わらずin vitroでDNA損傷誘発性はないと考えられた。ステビア抽出物およびステビオールの致死用量は2000mg/kg以上であることから,最高用量を2000mg/kgとしてマウスに単回強制経口投与し,3および24時間後に肝,腎,胃,結腸,精巣でDNA損傷性を検討した(ステビア抽出物では肝,胃,結腸のみ)。ステビア抽出物およびステビオール投与群では,いずれの臓器においても統計学的に有意なDNA損傷の増加はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下において,ステビア抽出物およびステビオールには評価対象としたマウスのいずれの臓器に対してもDNA損傷誘発性はないと考えられた。
著者
小角 卓也 米倉 竹夫 保木 昌徳 佐々木 隆士 山内 勝治 大割 貢
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.963-968, 2005
被引用文献数
1

症例は11ヵ月の男児.10ヵ月検診にて左頚部腫瘤を認め本院紹介された.左頚部に3cm大の境界不明瞭で柔らかい無痛性の腫瘤を認めた.腫瘍マーカーは, NSEが21.9ng/ml軽度上昇し, フェリチンが18.9μg/dlと軽度低下を示した.また, VMA/CREが10.77μg/mg Cr, HVA/CREが17.0μg/mg Crと軽度高値であった.CT・MRI検査では, 左側傍咽頭間隙から胸鎖乳突筋の前方に広がる境界明瞭で均一な腫瘤を認めた.^<131>I-MIBGの集積はなかった.神経原性の腫瘍を疑い, 腫瘍摘出術を施行し, 病理検査にて異所性胸腺と診断された.本疾患は胸腺原基の咽頭嚢からの下降異常が原因で, 本症例も画像検査より左前縦隔に胸腺組織が認められないことから, 左側胸腺の下降異常が原因と推測された.
著者
江口 佳澄 佐々木 晶子 中坪 孝之
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.119-128, 2005-12-25
参考文献数
24
被引用文献数
6

クマツヅラ科の多年生草本,アレチハナガサVerbena brasiliensis Vell.は南アメリカ原産の外来種で,近年全国的に増加傾向にある.河畔域の生態系に対する本種の影響を予測するための基礎として,広島県太田川中流域の氾濫原に成立した群落を対象に,フェノロジー,成長・繁殖様式,種子発芽特性,他の植物に村する影響について,2004年に調査を行った.本種の前年に花をつけた枝の先端部分は春までに枯死したが,春期に株もとから新たな茎葉を伸長させると同時に,前年から残る枝の節から新しい枝を伸長させ,前年の主茎が倒伏すると,新枝が新たな主茎となって開花した.また,接地して砂に被われた節から不定根を伸ばして定着する様子も観察された.秋期の洪水は調査地内の植生に大きな影響を与えたが,本種は,洪水によって倒伏した茎からすみやかに枝葉を伸長させ,短期間に開花に至ることが可能であった.種子発芽には光要求性が認められ,群落内の土壌シードバンク中には多数のアレチハナガサ種子が含まれていた.秋期の増水後には一斉発芽した実生が多数観察された.本種の被度と他の植物の被度との間には負の相関が認められ,またレタス種子を用いた検定により,弱いながら他感物質の存在が示唆された.これらの性質を総合すると,今後,河川流域においてアレチハナガサの勢力が拡大する可能性があり,早期の実態調査と対策が必要と考えられる.
著者
佐々木 達行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1、成熟した社会を担う子どもたちにふさわしい新たな義務教育としての造形教育理念の構想。義務教育としてすべての子どもたちに必要な図画工作・美術科の理念とあり方を考察、構想し、仮説をたてた。2、義務教育としての新たな造形教育理念に基づいた教育課題、活動課題と授業課題の抽出。仮説に基づいて、図画工作・美術科の教育課題を3つの課題要素と6つの活動課題に、また、それぞれの活動課題に対して具体的な授業課題を抽出し、それらをカテゴリーとしてまとめた。3、教育課題と授業課題を実現するための適切なカリキュラム構造の構築。活動課題を骨格、構造としたカリキュラム構造論、「カリキュラムの構造と教育課題」を設定した。4、新たなカリキュラムの骨格、構造を基にしたカリキュラム編成方法の確立。仮説を立てた「活動課題を骨格、構造としたカリキュラム構造論」をもとに、カリキュラムの編成方法を考察する。具体的に、それぞれの活動課題を骨格とした活動課題領域を設定し、それらの領域に対する学年の配当割合と活動/授業内容に対する可能性の考察を行った。5、新たな教育課題、活動課題と授業課題を達成するための教材開発と実践授業研究。教材開発と実践授業研究を行うために、現職の教員による「カリキュラム編成モデル研究開発プロジェクト」チームを組織し(2006.11.1)、カリキュラムを編成するための授業の内容開発研究を行った。6、各学年で開発した教材をカリキュラムとして配列、編成。新たなカリキュラムの編成方法による初等、低、中、高学年、及び中学、第2学年に対し、3つの「課題要素領域」、6つの「活動課題領域」、「表現内容領域」を骨格とするカリキュラムの編成方法を基に、各学年で開発した教材をカリキュラムに配列(題材配列例表)し編成モデルを作成した。7、本研究の研究成果を研究紀要として執筆。研究課題名「造形を通した美術教育の課題とカリキュラム編成方法、及び編成モデルの研究開発」として、仮説を立てた理論と実践研究を組み合わせ、研究成果としてまとめた。
著者
水越 一郎 佐々木 健
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.402-406, 2012-03-15

1 0 0 0 F値

著者
廣田 啓一 佐々木 裕
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, 2000-06-15
著者
佐々木 敬泰 高山 毅 弘中 哲夫 藤野 清次
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.76, pp.127-132, 1997-08-20
参考文献数
5
被引用文献数
1

本稿では,著者らが提案している投機的問合せ処理をマルチトランザクション環境下で高速に行う手法を提案する.投機的問合せ処理とは,ユーザが検索条件を入力する前の検索条件を考慮している間に,投機的に間合せ処理を開始することにより応答時間を短縮するものである.従来の実装方式では,投機のためのプロセス生成を動的に行っていたため、マルチトランザクション環境下において,通信/OSのオーバヘッドの累積が無視できず,応答時間が必ずしも十分短いとはいえなかった.本稿では,プロセスの起動を静的に行うことにより,上記オーバヘッドを低減することで高速化を行う.シミュレーション・プログラムを用いた評価によると,本稿の提案手法では,従来よりも応答時間の短縮が図れることがわかった.This paper proposes a methodology in order to reduce a response time of speculative query processing in multi-transactions environments. The speculative query processing is a technique, we propose to reduce a response time. That is, the DB system starts to process, in parallel some candidate queries corresponding to their distinct selection conditions before a single true selection condition is inputted. This paper proposes an effective algorithm for multi-transactions environments. With the algorithm, it is possible to keep the overheads down on communications and OS, and to reduce a response time. According to our experiments, this algorithm is more effective than the conventional method.
著者
佐々木 ベジ
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.913, pp.115-117, 1997-10-27

買収した上場機械メーカー、フリージア・マクロス社長職も退くはめに。各社の取締役からはずれた今後も、助言・指導はしていくという。 1975年に私が創業した通信販売会社のピーシーネット(東京・千代田区)は、今年9月3日、東京地方裁判所から破産宣告を受けました。同時に、個人として560億円の債務保証をしていた私も破産を宣告されました。
著者
松本 理恵 今井 茂郎 佐々木 なおみ
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1969-1973, 2011 (Released:2012-02-25)
参考文献数
11

症例は68歳,男性.1993年3月浸潤型胸腺腫を伴った重症筋無力症に対し拡大胸腺摘出術,心膜・右肺・左腕頭静脈合併切除を施行した.術後縦隔に放射線照射施行し,外来で定期的経過観察を行っていた.2010年5月近医で胸部X線上異常影を指摘され,当院を紹介受診した.画像検査および生検にて胸腺腫の全身転移(右胸壁転移,多発骨転移,縦隔リンパ節転移,副腎転移,臀筋転移)と診断した.まず仙骨骨転移に対し,放射線照射を行い,続けて全身化学療法を行った.胸壁転移巣のみ縮小したが,他の転移巣は治療に抵抗性であった.胸腺腫の再発は局所進展が主体で,遠隔転移は稀である.また本症例の転移巣はthymoma(TypeB2,B3),thymic carcinomaが混在して存在し,化学療法への反応性も異なっていた.文献的考察を加え報告する.