著者
峯島 宏次 岡田 光弘 佐藤 有理 竹村 亮
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

近年、論理学や人工知能、認知科学など様々な分野で、図形やグラフ表現に基づく推論の研究が進められている。特にオイラー図は、論理推論の補助手段としてインフォーマルに用いられてきたが、1990年代から現代論理学による体系的研究が始められた。本研究ではオイラー図に対する自然な操作を自然演繹を基に形式化し、その図形推論体系の特徴についてヴェン図との比較も含め、論理学及び認知科学の観点から議論する。
著者
井田 茂 佐藤 文衛 渡部 潤一 河合 誠之 玄田 英典
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

太陽系外の惑星(系外惑星)の発見数は750個以上、ケプラー衛星望遠鏡による候補天体も2300個以上となり、惑星および惑星系の性質についての統計的議論が始まっている。本研究では主星の組成(重元素比)によって惑星系がどう変わるのかを調べた。惑星軌道進化のN体シミュレーションおよび惑星の衝突流体シミュレーションを行う一方で、その結果を組み合わせたモンテカルロ計算を行なった。重元素比が高い主星のまわりでは重元素が多いので、巨大ガス惑星が複数形成され、軌道不安定をおこして、軌道離心率が跳ね上げられることがわかった。また、視線速度法サーベイ観測を推進する一方で、アマチュアや学生を巻き込んだトランジット・フォローアップ観測ネットワークを組織し、理論・観測の両面から追及した。
著者
佐藤 慶太
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、カントの概念論の固有性を明らかにするために、「概念」の取り扱いに関してカントがカント以前の哲学者とどのように対決し、どのようにそれを乗り越えていったのかを検証した。研究は、『純粋理性批判』の「純粋理性の誤謬推理について」、および「純粋悟性概念の図式論について」に焦点を絞って行った。「誤謬推理」章を取り上げた研究に関しては、『哲学』第60号掲載の論文と、11月に行われた日本カント協会第34回学会のワークショップでの発表において、その成果をまとめている。この研究において明らかとなったのは、カントの概念論における「徴表(Merkmal)」の重要性である。上記の論文および研究発表において示されたのは、「徴表」という概念に着目して「誤謬推理」章を読解すると、カントの「概念論」の固有性のみならず、カントの形而上学構想の変遷の意味を理解する手掛かりも得られる、ということである。そのほか、カントの論理学講義の内容と、『純粋理性批判』との関連の明確化も併せて行ったが、この点でも意義があったといえる。「図式論」を取り上げた研究の成果は、9月に行われた実存思想協会・ドイツ観念論研究会共催シンポジウムにおいて発表することができた。この発表においては、カントの「図式」がデカルト以来の近世哲学における「観念」をめぐる論争の系譜に位置づけられること、またこのような系譜への位置づけおこなうことではじめて、「図式論」章の役割が明確になることを示した。また上記の二つの研究を含む課程博士論文「カント『純粋理性批判』における概念の問題」を京都大学に提出し、11月24日付で学位を取得した。
著者
佐藤 勝則
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は、スイスをフィールドとして、アルプス・ヨーロッパにおける空間秩序意識の形成について考察した。博物館としては、チューリヒ国立博物館、ベルン市立博物館、バーゼル市立博物館、サンクト・ガレン修道院歴史博物館を訪ね、誓約同盟スイスにおける地域空間秩序に関する、対照的な都市空間秩序形成に関する三類型を確定することができた。第一類型:チューリヒは、都市空間のスプロール化を特徴とする商工金融複合都市、第二類型:ベルンは中世都市空間秩序の化石化を特徴とする文化・政治都市、第三類型:バーゼルは、旧城塞・ライン河貫流によって規定されたメッセ(大市)国際商業・金融(BIS)都市。日本やアジア諸国には、基本的に第一類型のチューリヒ型のスプロール化された都市空間秩序しかない。北京も清朝時代の胡同を解体することで、政治文化都市としての性格を一掃させつつある。バーゼルは、ロッテルダムからバーゼルまでを同一の河川船舶で連結できる城塞を有するメッセ都市(大市特権神聖ローマ皇帝マキシミリアン賦与)であること。ベルンは1218年に神聖ローマ皇帝フリードリヒII世から認可された帝国自由都市形成の基盤が、湾曲するアーレ河に囲まれた台地状の地形によって決定されており、旧市街の街わりを維持してきた街区共同体(水くみ場=噴水)の強固な残存が中世都市を化石化したこと。歴史的には、自由農民、自治都市市民層主導の誓約同盟自治のスイスが、神聖ローマ帝国から分離後も、特に前方オーストリアにおいては、バーゼル八人衆がハプスブルク家による地域統合を支持していたことによってその伝統的空間秩序を規定していたことが明らかになった。
著者
佐藤 喜和 湯浅 卓
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.101-107, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
46
被引用文献数
13

ヘア・トラップによる非侵襲性サンプリングおよび遺伝マーカーを用いた個体識別による捕獲再捕獲法に基づく個体数推定がクマ類を対象に広く実施されるようになり,日本でも各地でこの手法の適用に向けた試行錯誤が進められている.この方法には,動物を捕獲する必要がない,捕獲を伴う方法よりも広い範囲でサンプリングが実施できる,生け捕りに比べ偏りのないサンプリングが期待できる,遺伝マーカーによる標識であるため消失する心配がないなどの利点がある.このように理論的には高い可能性を秘めた方法であるが,方法の全体像を理解することなく安易に導入しても,信頼できる個体数は推定できない.日本の実情に,より適した方法論を再検討して行く必要がある.そこでヘア・トラップを用いた個体数推定法を行うための手順,すなわちトラップの構造,調査地の選定とトラップの配置,サンプリング,DNA分析による個体識別,および個体数推定に用いるモデルについてそれぞれ整理し,注意すべき点とともにまとめた.
著者
佐藤 雅彦 高橋 玄 渡部 英 根上 直樹 斎藤 徹也 山田 正樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1039-1043, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は36歳,男性.平成19年5月より嘔吐あるも自然に軽快した.同年10月再び嘔吐あり水分摂取も不可能となり入院精査となった.内視鏡検査では胃前庭部に約10cm大の粘膜下腫瘍が認められ,上部消化管造影では同部に境界明瞭な陰影欠損があり造影剤の通過は不良であった.腹部CTでは胃の前庭部に嚢胞性病変が認められた.絶飲食後の内視鏡検査で腫瘍は6cm大にまで縮小し,同時に施行した腫瘍穿刺では無色漿液性の液体を吸引し,細胞診はclassI,アミラーゼ19,588IU/l,CEA 253.9ng/ml,CA19/9 184716.0U/mlと異常高値を呈し,異所性膵,胃嚢胞などを疑った.症状の増悪軽快を繰り返し,また悪性疾患の合併も否定できず同年12月に手術を施行し,病理検査は胃の異所性膵であった.胃の異所性膵によって前庭部での狭窄をきたした症例は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告した.
著者
岩崎 靖士 佐藤 知美 清水 壮一 中村 修三 高橋 伸
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1951-1954, 2008 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は34歳,男性.黒色便,眩暈を主訴に当院受診した.採血上貧血を認め,緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ,ファーター乳頭の口側2cmの十二指腸下行脚に約2cmの潰瘍を有する隆起性病変を認め同部より出血をきたしていた.内視鏡的に止血できず,受診後2日目に腫瘍核出術を行い止血しえた.病理組織学的所見で十二指腸粘膜下にHeinrichI型の十二指腸異所性膵を認めた.潰瘍底には小動脈および拡張した毛細血管が認められた.十二指腸粘膜下腫瘍からの出血に対して保存的治療で止血しえない症例では外科的治療を行う必要があると考えられた.異所性膵は一般に無症状に経過することが多く,手術摘出標本や剖検時に指摘されるものがほとんどである.今回,十二指腸異所性膵により出血をきたした稀な症例を経験したため報告する.
著者
藤村 玲子 佐藤 嘉則 難波 謙二 太田 寛行
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.211-218, 2011-07-30
参考文献数
29
被引用文献数
2

森林をはじめとする植物-土壌生態系では、光合成による一次生産と微生物による有機物分解のバランスが成り立ち、豊かな生物相が維持されている。しかし、火山噴火というイベントはこの生態系を壊してリセットしてしまう。新たに生じた火山灰などの火山砕屑物や溶岩に住み始める生物は、肉眼では見えない微生物である。本稿では、三宅島2000年噴火火山灰堆積物に住みつく微生物について、2003年から6年間にわたって調査してきた結果を紹介する。まず、調査初年時に採取した火山灰堆積物の細菌密度の測定結果では、すでに1gあたり10^8の高いレベルに達していた。直接試料から抽出したDNAの16SリボソーマルRNA遺伝子を解析した結果は、Leptospirillum ferroxidansやAcidithiobacillus ferrooxidansといった独立栄養性の鉄酸化細菌が優占する細菌群集構造を示した。供試火山灰堆積物にはCO_2吸収活性があり、十分に高いニトロゲナーゼ活性も検出されており、これらの活性は鉄酸化細菌に由来することが推察された。2009年の調査においても、三宅島雄山上部の火山灰堆積物は酸性状態に維持され、鉄酸化細菌の優占が続き、化学合成無機独立栄養代謝が中心の微生物生態系であることが示唆された。以上の結果をもとに、火山灰堆積物に形成される微生物生態系のエネルギー代謝と初成土壌への有機・無機物質の蓄積について推察する。
著者
佐藤 博 滝野 隆久 中田 光俊
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

がんの浸潤・転移に重要な役割を果たすMT1-MMPの新規基質の探索を行い、その生理・病理的意義を解明した。その結果、膜タンパクの切断・シェディングに特にユニークな活性を見出した。例えば、MT1-MMPによるセリンプロテアーゼ阻害因子Hepatocyte Growth Factor Activator Inhibitor-1の切断はプロテアーゼ活性化カスケイドを始動させ組織破壊を引き起こす。我々はその状態をプロテアーゼストームと名付けた。
著者
加藤 正夫 佐藤 乙丸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.61-65, 1969-02-01

放射性物質の壊変エネルギを利用して発電する試みは,かなり昔から研究されてきたが,その歴史的な発展について概説した後,熱電気変換装置を用いるアイソトープ発電器の原理,構造,使用アイソトープの特性,熱電気変換方式などについて述べ,最後にこの発電器の安全性,経済性,用途などにふれた.
著者
佐藤 知己
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.55-68, 2008-03-31

It is known that Ainu has two types of compound noun constructions: the “modifying construction” and the “pseudo-modifying construction”. However, the term “modifying construction” from the outset contradicts the so-called “syntactic atomicity”of words, one of the most basic principles of word formation in general linguistic terms. Here, I suggest that among the compound nouns with the modifying construction, some are compound nouns exceptional in their construction, formed, as it were, directly from phrases (i.e. “phrase-word” by Bloomfield), while others are words containing a kind of verbal noun converted from the corresponding intransitive verb, formed, in turn, through “object-incorporation”. This assumption is supported by the fact that the number of compound nouns with the modifying construction is not so large in the lexicon as a whole (so, exceptional and marginal)and also supported by the fact that examples of the compound nouns with the modifying constituent “subject+transitive verb” are extremely few: the pattern “subject+transitive verb”is usually not possible as an intransitive verb with noun incorporation in Ainu, and therefore cannot be used as a verbal noun of the first member of a compound noun.
著者
冨田 正彦 広田 純一 隅田 裕明 佐藤 嘉倫 結城 史隆 八木 宏典
出版者
宇都宮大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

低水準ながら高度な生態学的平衡が長期に亙って維持されていた地域生態系が、開発行為によって急変革を余儀なくされている典型例として南アジアの天水田地域の最近の潅漑開発地の村落を選び、その(1)域生態系の構造、特にその自然構造、生産構造および生活構造の相互関係構造(2)潅漑開発に伴う地域生態系構造の変化と、随伴する系要素間の不整合の発現状況(3)前項の不整合の解消過程などを、導入潅漑開発の仕様・機能と併せて調査し、地域生態系に発現した不整合の潅漑開発機能との関係づけを目的として昭和62年に第1次調査を実施した研究の第2次調査である。第1次調査は主として試・資料収集、ヒアリング等により(1)、(2)を実施したが、(3)不整合の解消過程については現象のトレ-スに依る他ないので、観察集落を設定し、現地研究者の協力のもとに経過記録を続けて本年の第2回調査に至ったものである。調査は現地での学際討論を重視して全員が行動を共にし、平成元年8月1日〜9月20日に実施された。調査地域はインドのタミルナドゥ州アランタンギ地区(エガプルマル-村)とネパ-ルのテライ地方チトワン地区(モハナ村)である。タミルナドゥ州調査は昭和62年が本調査で今年は補足調査のため実調査日程は10日間で、Grand Anicut Canal(GAC)の第11支線水路系を選んで行政的なGAC管理と地域農民の水管理との補完関係とその結果としての用水供給実態を把握するとともに、その受益農村のサンプルとして同支線20番スル-ス受益地のエガプエウマル-集落(Egaperumalur Eri)を選んでGAC受益区域に入る以前の50年前にさかのぼって現在までの集落の経済、社会構造の変化を調べた。用水管理実態調査の方法はおもに各関係行政部局からの資料、記録デ-タの収集と、システム各部位の操作・管理責任者からの現地でのヒヤリングによった。エガプルマル-集落調査は集落に保管されている記録類の収集・解続が主で、集落の古老と現在の役員農民の協力のもとの実施した。なお、これらの全てにはコインバト-ル農科大学(Sivanappann教授他)の調査協力を受けた。テライ平野調査は昭和62年度は予備調査的段階に留まっていて、今回が実質的な本調査であったため30日間の実調査日をかけて約600haの受益水田面積を対象として5年前に完成しているPancha
著者
小島 昭 佐藤 義夫 上野 信平 古川 茂 上石 洋一 白石 稔 OZAWA Tatuki NOBUSAWA Kunihiro 信沢 邦宏
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

炭素繊維が示すプランクトン集積機能、産卵促進機能を確認し、既存魚の再生産促進システムの開発を行った。(1)淡水(榛名湖)で着卵効果を確認(群馬高専) 榛名湖に各種炭素繊維編織品製人工藻を設置し、それへの産卵及び着卵現象を調査した。解析因子(水深、人工藻場の種類、形態、形状、岸からの距離等)と藻場の様子、固着微生物の観察、水質、藻場遊泳魚の種および数の確認を行い炭素繊維による再現効果を確認。(2)炭素繊維へのメダカの優先的産卵の確認(群馬高専) 実験室内水槽に炭素繊維製及び各種プラスチック製人工藻を設置し、メダカによる藻への産卵状況を調査した。メダカは炭素繊維藻と人工藻とを明確に識別することを確認した。(3)榛名湖でのワカサギの生育場の確認(群馬高専)(4)海洋での再生産可能な人工藻場の構築(東海大学) 駿河湾内に炭素繊維編織品製人工藻を3500本設置した人工藻場を構築。魚のい集機能、魚類群集の構造、系の形成が見られ、産卵場および幼稚仔の成育場機能を確認。(5)炭素繊維への貝類捕集による水質浄化現象の確認(東海大学) 清水湾内に炭素繊維品製人工藻を設置。人工藻に多数の貝類が固着し、水質浄化を確認。(6)既存魚再生促進用炭素繊維製人工藻の耐久性評価(群馬県繊維工業試験場)(7)ワカサギの着卵材としての炭素繊維の検討(群馬県水産試験場) 各種炭素繊維編織品で作製した着卵材を赤城山覚満川に設置。炭素繊維編織品の形状、構造、密度などによって、遡上するワカサギの着卵数、孵化数の差を検討。
著者
益子 幸江 佐藤 大和 峰岸 真琴 降幡 正志 岡野 賢二
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、強調の機能をイントネーションがどのように表すことが可能かを、タイプの異なる複数の言語について、音響音声学的データに基づいて検討した。言語タイプとして、音の高低を用いる声調言語と高低アクセント言語、音の強弱を用いる強弱アクセント言語を取り上げた。声調言語ではイントネーションは通常は用いられないのに対し、他のタイプの言語ではイントネーションが用いられることがわかった。また、発話における声調のピッチパタンは声調ごとの典型的なパタンからの逸脱(調音結合)では説明できず、声調の組合せからなる形態統語論上の単位に付与される動的パタンと考えられることが明らかになった。
著者
佐藤 信枝
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.1, pp.47-58, 2001

本研究では, 両職種が業務を協働する領域である身辺介護業務に焦点を当て, 両職種それぞれの周囲の人間関係に伴う社会的支援, 職場を離れた日常の生活苛立ち事, 職場環境での苛立ち事の実態を調査し, その構成要素と職種別の特性を明らかにすることを目的とした。調査対象の選定は, 1997年の国民衛生の動向から老年人口18.9%以上の都道府県, 施設規模が利用者数50名以上の100施設, 看護職と介護職を対象とした。年齢層, 職種経験年数などの特性, 身辺介護業務ストレスに影響する要因とソーシャルサポートとの関連を検討した。すべての年齢層で日常苛立ち事が職場環境苛立ち事に有意差があった。職場環境上で生じる心理的な影響を緩和していくためにはソーシャルサポートが必要である。生活出来事の多い20歳代には何らかの適切な社会的支援の必要性があることが示唆された。介護業務ストレス要因の因果関係では, ソーシャルサポートによって日常苛立ち事が緩和されているという結果であった。年齢層別比較では, 20歳代と同様に40歳代でも情緒的サポートや評価的サポートを必要としていたことからも, 今後は, サポートのタイプ別による介入方法の検討が必要となると考える。
著者
宮堀 真澄 澤井 セイ子 佐藤 怜 鈴木 圭子 三浦 正樹 Masumi MIYAHORI Seiko SAWAI Satoru SATO Keiko SUZUKI Masaki MIURA 介護福祉学科 秋田大学教育文化学部 秋田大学 介護福祉学科 介護福祉学科
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.8, pp.31-39, 2003

本研究は、特別養護老人ホームに働く介護職員を対象に行った社会的スキルの結果から、今後の介護福祉士現任教育のあり方を考察したものである。調査の結果、(1)介護職員は総体的に利用者の表出行動などから、感情や態度を判断するスキルを高く評価していた。しかし、自分から表現をすることは総体的にできていないといえる。(2)若い世代の介護職員は比較的、社会的スキルの評価は低い結果であった。(3)資格では、訪問介護員が「感情コントロール」において介護福祉士より高く評価していた。(4)介護職員の社会的スキルの構造を明らかにするため因子分析をした結果、『伝達因子』・『解読因子』・『表出因子』・『感情統制因子』の4因子が抽出された。これらのことから、人間関係の学習は、継続して教育され、実践の場において活用されてこそ意義があると考える。したがって、介護福祉士の専門性を高める意味でも社会的スキル・アップの研修の場が必要であると考える。