著者
倉澤 茂樹 立山 清美 岩永 竜一郎 大歳 太郎 中谷 謙 横井 賀津志
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.34-41, 2019-04-01 (Released:2019-04-01)
参考文献数
14

日本の診療データを使用してASD の診断年齢を種別に検討した.結果,解析対象者(7,779 名)の診断年齢は平均7.3±4.3 歳,最頻値3.0 歳,中央値6.0 歳であった.性比は3:1 であり男性に多かった.ASD の診断年齢に関して,全ての種別において性差は認められなかった.アスペルガー障害は他の種別と比べ,いずれも診断年齢が高く,診断される時期に明確なピークは示されなかった.年別の比較では,小児自閉症のみ早期に診断される経年変化が認められた.本研究は,アスペルガー障害の早期診断を可能にするためのシステムおよびツールの開発,小児自閉症に対する適切な早期の介入方法の開発およびサービス供給の必要性を示すものである.
著者
金子 真美 平野 滋 楯谷 一郎 倉智 雅子 城本 修 榊原 健一 伊藤 壽一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.201-208, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

一般人の音声障害に関する音声治療については多くの報告があり,高いエビデンスレベルのものもある.しかし歌唱者の音声障害に対する音声治療については国内外で報告は少なく,現時点で確立された手技もない.今回われわれは歌唱者の音声障害に対し音声治療を行い,症状に一定の改善を認めた.対象は声帯結節,声帯瘢痕,声帯萎縮,過緊張性発声障害のいずれかと診断され,音声治療を施行した歌唱者9例(男性5例,女性4例,平均年齢53.3歳)である.口腔前部の共鳴を意識した音声治療を施行し,効果をGRBAS,ストロボスコピー,空気力学的検査,音響分析,自覚的評価,フォルマント周波数解析で評価した.治療後,音声の改善は個人差があるものの全例で認められ,MPTやVHI-10,GRBASで有意差が認められた.また,歌唱フォルマントもより強調されるようになった.歌唱者の音声障害に対する音声治療は一定の効果が期待できると考えられた.
著者
海部 健三 竹野 遼馬 三田村 啓理 高木 淳一 市川 光太郎 脇谷 量子郎 板倉 光 石井 潤 荒井 修亮
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-82, 2019-07-28 (Released:2019-09-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1

ニホンウナギは重要な水産資源だが,現在個体群は減少し,環境省および IUCN によって絶滅危惧種に区分されている.個体群を回復させるための対策が求められているが,その生育城である河川や沿岸域の環境をどのように回復すべきか,知見は限られている.本研究では成育場である河川や湖沼,沿岸域の環境の回復策に資することを目指し,福井県久々子湖において,超音波テレメトリー手法を利用して,ニホンウナギ 10 個体の行動を追跡した.超音波発信機を挿入した個体を放流した後,全ての個体が測位可能範囲内で測位された.明け方(4:00-6:00)および昼(6:00-18:00)に測位された個体は少なかったが,夕方(18:00-20:00)および夜(20:00-翌4:00)にはほぼ全ての個体が測位された.位置が確認された時間の長さは個体ごとに大きく異なり,最も短い個体で 0.3 時間,最も長い個体で 102.3 時間,平均は 16.5 時間であった.調査期間全体の湖岸エリア(水際から 50 m 以内)と沖エリア(水際から 50 m 以遠)の滞在時間比と面積比を個体ごとに比較した結果,6 個体で有意差が検出された.このうち 4 個体は湖岸エリアの滞在時間比が大きく,2 個体は沖エリアの滞在時間比が大きかった.湖岸エリアに滞在しなかった 1 個体を除き, 9 個体について湖岸を石積み護岸エリア,ヨシ帯エリア,コンクリート護岸エリアに分けて,各エリアの滞在時間 比と面積比を比較したところ,全ての個体で有意差が検出された.このうち 7 個体では石積み護岸エリアの滞在時間が最も長く,ヨシ帯エリアの滞在時間が最も長い個体と,コンクリート護岸エリアの滞在時間が最も長い個体が,それぞれ 1 個体ずつ見られた.湖岸を利用する個体については石積み護岸を選択する傾向が見られたが,沖および湖岸の利用は個体ごとにばらつきがあり,一定の傾向は確認されなかった.
著者
海部 健三 竹野 遼馬 高木 淳一 市川 光太郎 脇谷 量子郎 板倉 光 平江 多績 猪狩 忠光 三田村 啓理 荒井 修亮
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.83-92, 2019-07-28 (Released:2019-09-10)
参考文献数
27
被引用文献数
5

鹿児島県水産技術開発センターの所有する人工池(21.2 m × 36.0 m,水深1.1 m)において,間隙を持つ石積み,および,間隙が埋められた石積みを作成し,超音波テレメトリー技術を利用してニホンウナギ 8 個体の行動追跡を試みた.砂泥底の実験池内に直径約 1 m,高さ約 0.7 m の円錐型に,石積みを6 基設置した.石積みのうち 3 基に関しては,実験開始 9 日後に砂泥を用いて石材の間隙を塞ぎ,その 26 日後に砂泥を除去した.行動追跡実験の供試個体としてニホンウナギ 8 個体を用い,ピンガーを腹腔に挿入して実験池に放流した.8 台の受信機を用い,個体ごとに 1 時間単位で二次元カーネル密度推定を行い,実験期間中のニホンウナギの存在位置を推定した.間隙のある石積みに定位する個体が確認されたが,定位する環境は個体ごとに異なるだけではなく,同一個体であっても,利用環境は時間の経過と環境改変とともに変化しうることが確認された.また,石積みの間隙を砂泥で埋めることによって,定位環境としての石積みの利用は激減した.複数個体が同一の石積みを利用することは少なく,個体の侵入によって,別の個体の石積みの利用が制限される可能性が示唆された.さらに,実験中にニホンウナギが砂泥に潜る行動が観察され,実験期間中には巣穴と考えられる構造が確認された.既往研究によれば,石の間隙が砂泥で埋まる要因として,土砂供給の減少と流量の安定化が考えられる.ダムなどの河川横断構造物が土砂供給の減少と流量の安定化の要因の一つとされており,ニホンウナギの生息環境の改善のためには,これらの問題に対する適切な対処が必要と考えられる.
著者
石倉 秀次 伊藤 嘉昭 宮下 和喜 伊藤 佳信
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.135-139, 1957-06-30 (Released:2017-07-19)
被引用文献数
1 1

In 1955 and 56,observations were conducted on the root aphids injurious to upland rice and the ants attending these aphids in the upland rice fields in Shozima city near Tokyo. The root aphids concerned were Rhopalosiphum prunifoliae, Anoecia corni and Tetraneura ulmi and the species mentioned first was more dominant than the others in June and July. Six species of ants were found in the field studied and four species, Lasius niger. Crematogaster sordidula osakensis, Pheidole fervida and Tetramorium caespitum jacoti, were observed attending the aphids. In a few cases when the soil was loose and light or there was any tunnel worked by mole cricket, the aphids seemed to go under soil without any help of ants, but there was a close positive correlation between the number of aphids and ants found in sampled soils taken at random in the fields. This correlation was observed till the middle of the season. Some ants were observed carrying the apterous female and nymphs of Rhopalosiphum prunifoliae into their hole, indicating their important role in assisting the migration of aphids from soil surface to the subterranean habitat. The frequency distribution of the numbers of both aphids and ants were not random but strongly contagious. The variance (s^2) of the average number of aphids was found to increase proportionately to their population density as shown in Fig. 1. Thus the frequency distribution of aphid numbers can be transformed into normal one if the actual numbers are changed into log_10(x+1).
著者
小倉 希美
出版者
岩手大学語文学会
雑誌
岩大語文 (ISSN:09191127)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.42-48, 2014-07-05
著者
石倉 佑季子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、非英語圏国である日本および韓国において、大学の国際化戦略として用いられる英語コースがどのように各国の高等教育の文脈に受容、浸透、発展したのかを明らかにし、非英語圏国における英語コースの持続可能かつ有効な枠組みの構築を図り、今後の大学の国際化の政策や戦略への示唆を提示することを目的としている。
著者
村井 雄司 青木 裕美 田中 睦 首藤 かい 近藤 有紀 倉重 圭史 疋田 一洋 安彦 善裕 齊藤 正人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.509-517, 2014-11-25 (Released:2015-11-25)
参考文献数
63

生体を覆う上皮は,重層や角化および上皮間の緊密な結合により病原体が生体に侵入することを防ぐ物理的防御機構と,抗菌ペプチドを発現することにより病原体の付着を抑制する化学的防御機構を有している。活性型ビタミンD3 の生理活性は,カルシウム代謝調節による骨リモデリングのみならず,上皮細胞の分化誘導や,免疫調節に関わっていることが明らかになっている。本研究では活性型ビタミンD3 をヒト角化上皮細胞株(HaCaT 細胞)に添加することによる,抗菌ペプチドの発現変化を明らかにすることを目的とした。HaCaT 細胞は,活性型ビタミンD3 添加により抗菌ペプチドであるhBD-1, hBD-2 およびLL-37 mRNA と,それぞれのペプチドの有意な発現上昇を認めた。しかしhBD-3 は変化を認めなかった。本結果から活性型ビタミンD3 は角化上皮の化学的防御機構に寄与し,これを増強すると考えられた。また発現上昇を認めた抗菌ペプチドは,齲蝕原因菌や歯周病菌に対しても抗菌作用を有するため,良好な口腔環境維持するうえで活性型ビタミンD3 の存在が重要である可能性が示唆された。
著者
宮﨑 義之 倉田 有希江 古賀 裕章 山口 智 立花 宏文 山田 耕路
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.63-69, 2016-02-15 (Released:2016-03-29)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

本研究では,食酢の体調調節機能の解明を目的として,各種果実酢のヒスタミン放出抑制活性について検討した.まず,山ブドウ,ハスカップ,ブルーベリー,ザクロを原料とする4種類の果実酢がラット好塩基球様白血病細胞株RBL-2H3のヒスタミン放出に及ぼす影響を検討したところ,各果実酢がヒスタミン放出抑制活性を有することが明らかとなり,特にザクロ酢で極めて強い活性が認められた.そこで,Diaion HP20を用いてザクロ酢中の生理活性成分のクロマト分離を試みた結果,50% EtOH溶出画分に強いヒスタミン放出抑制活性が認められた.さらに,本50% EtOH溶出画分を液-液抽出によって分画し,ザクロ酢には水溶性の異なる複数のヒスタミン放出抑制成分が存在することを明らかにした.また,各画分のヒスタミン放出抑制活性がPVPPで処理することによってほぼ完全に消失したことから,ポリフェノール化合物が主要な活性成分であることが示唆された.これらの結果から,ザクロ酢にはヒスタミン放出抑制に寄与する複数のポリフェノール成分が存在し,他の食酢と比較して強い抗アレルギー作用を発揮する可能性があることが示唆された.
著者
倉石 忠彦
出版者
信州大学人文学部
雑誌
内陸文化研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.61-79, 2001-03-30
著者
河村 功一 古丸 明 米倉 竜次 KAWAMURA Kouichi KOMARU Akira YONEKURA Ryuji
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2010-04-01

ブルーギルの定着成功における遺伝的要因の役割を形態・遺伝子解析と飼育実験に基づくQst-Fst解析により推定した。集団解析において日本における多くの集団の定着成功の理由として、母集団とされる琵琶湖集団の遺伝的多様性の高さが挙げられた。Qst-Fst解析の結果から適応形質における集団間の相違は遺伝的浮動よりも自然選択の影響を強く受けており、ブルーギルの定着成功において適応形質における遺伝的多様性の高さが重要である事が明らかとなった。To elucidate the role of genetic factors crucial to the invasion success of bluegill sunfish in Japan, morphological and genetic analyses were performed, together with Qst-Fst analysis in rearing experiments. Population analysis suggested that invasion success in many populations of Japan was mainly due to high genetic diversity of their founder population in Lake Biwa. Qst-Fst analysis revealed that difference in adaptive characters among populations was caused by natural selection, rather than genetic drift. Sustenance of high genetic diversity in adaptive characters was considered to be important in the invasion success of bluegill in Japan.
著者
小関 武史 深貝 保則 玉田 敦子 坂本 貴志 武田 将明 松波 京子 川名 雄一郎 長尾 伸一 屋敷 二郎 福島 知己 福田 名津子 逸見 竜生 坂倉 裕治 隠岐 さや香 飯田 賢穂
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

18世紀西洋の啓蒙は、科学、技術から政治思想に至る広範な領域で、19世紀以後の知の原型を与えたと考えられてきた。また20世紀後半以後の「近代」批判に対しては、啓蒙の現代的意義が主張されてきた。他方近年の啓蒙研究は、膨大な資料の丹念な発掘と読解、あるいはデジタル化などの新技術に基づき、当時のテクストを時代の文脈の中に位置づけ、多様で複雑な知の在り方を明らかにしてきたが、現代思想における近代批判や啓蒙の再評価に応える統一的な像を提起するには至っていない。本研究は啓蒙研究の現段階の方法と成果を総合し、「浮動する知の境界」という視点から多方面の貴重資料の分析を行い、啓蒙の知の総合的な解釈を試みる。
著者
倉田 実 川平 敏文 入口 敦志 岡田 貴憲 高見 純 邱 春泉 木越 俊介 神作 研一 西村 慎太郎 恋田 知子
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.55, pp.1-16, 2019-06-24

●メッセージ牛はどこに連れていかれたか――『枕草子』から――●エッセイ足で稼ぐということ――伊藤栄治資料をめぐって――●トピックス・ぷらっとこくぶんけん――多摩学術文化プラットフォーム――・企画展示「本のかたち 本のこころ」・展示室特設コーナーの利用について・ないじぇるリポート――AIR・川上弘美さんとのWSから――・バチカン図書館所蔵マレガ文書から広がる国際的協働と日本近世文書の国際的活用・絵巻の旅――日本古典籍セミナー――・2019ホノルル国際共同研究会と日本古典籍セミナーの開催・TEXT AND TEXTUALITY IN JAPANESE COURT POETRY――AAS 2019 デンバー 研究発表――・国文学研究資料館基幹研究「アーカイブスと地域持続に関する研究」・シンポジウム「松代藩・真田家の歴史とアーカイブズⅢ」・第16回日本古典籍講習会(平成30年度)・〈新収〉臼田甚五郎旧蔵資料の紹介・閲覧室だより・総合研究大学院大学日本文化研究専攻の近況●表紙絵資料紹介『小易(こやす)の本地』
著者
北村 千寿 吉岡 孝 石倉 秀樹 森脇 秀俊
出版者
島根県立畜産技術センター
雑誌
島根県立畜産技術センター研究報告 (ISSN:18821030)
巻号頁・発行日
no.41, pp.17-19, 2010-03

2009年8月までに収集した黒毛和種の枝肉記録36,871件を用いて枝肉重量及び脂肪交雑基準値の育種価を推定した。推定した育種価を用いて2008年1月から2009年12月までに島根県内市場に上場した子牛の父牛(種雄牛)と母牛(繁殖雌牛)の平均育種価を求めた結果、父牛が母牛に比べて枝肉重量及び脂肪交雑基準値ともに高かった。枝肉重量育種価のバラツキは父牛が母牛に比べて大きく、脂肪交雑基準値育種価のバラツキは、母牛が父牛に比べて大きかった。繁殖雌牛の母方祖父牛の生年別平均育種価は、1989年以降(平成)生まれが1988年以前(昭和)生まれに比べて枝肉重量、脂肪交雑ともに高かった。2009年3月の島根中央子牛市場名簿から求めた繁殖雌牛の父牛、母方祖父牛及び曾祖父牛の平均年齢は、それぞれ21.3才、28.4才、34.3才であり、2009年3月のM県、2009年9月のT県及びO県の子牛市場名簿から求めた平均年齢に比べていずれも高かった。