著者
上出 直人 柴 喜崇 前田 真治 荻野 美恵子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.130-134, 2005-06-20
被引用文献数
1

進行性核上性麻痺患者に対し, 部分体重免荷トレッドミルトレーニングを含んだ短期集中練習を施行し, 歩行能力への影響を検討した。症例は69歳男性。介入開始時の歩行能力は, 屋内歩行最小介助レベルであった(FIM移動下位項目:4)。介入方法は, 体重免荷装置を用いて, 体重の30%以内を免荷した状態で, トレッドミル上での歩行トレーニングを3〜5分間施行した。トレッドミルの速度は, 症例が耐えうる最大の速度とし, トレーニング回数毎に漸増させていった。全8回のトレーニングを含んだ短期集中練習実施後, 症例の歩行速度, 歩幅は改善を示した。しかし後方易転倒性は変化せず, ADL上の移動能力や転倒頻度については改善しなかった。部分体重免荷トレッドミルトレーニングは, 歩行時の両下肢の協調的なステッピング運動を短期間で向上させる効果を有するが, バランス能力には効果が小さいことが示唆された。ADL上での移動能力の向上につなげるためにはバランストレーニングとの併用が必要であることが示唆された。
著者
上出 直人 山崎 岳之 宮城 しほ 前田 真治 中澤 俊之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.7-13, 2006-02-20
被引用文献数
2

非外傷性不全脊髄損傷患者に対する体重免荷トレッドミルトレーニングの,歩行能力に対する影響を検討した。症例は,観血的治療を施行された不全四肢麻痺患者1例,不全対麻痺患者2例の計3症例で,いずれも術後7日目より通常の理学療法介入を実施した。その後,下肢筋力や歩行能力の変化が,通常理学療法介入開始時と比べて小さくなってきた時点で,体重免荷トレッドミルトレーニングによる介入へと変更した。下肢筋力や歩行能力の変化を検討するため,American Spinal Injury Association Impairment Scale (ASIA), Lower Limb Motor Score (LLMS), Functional Independence Measure (FIM)(移動項目のみ),歩行速度,平均歩幅,歩行率を評価した。その結果,体重免荷トレッドミルトレーニング介入期間内では,ASIAおよびLLMSは変化量が小さかったが,FIMは1(全介助)から5(監視)または6(修正自立)まで改善,さらに歩行速度,平均歩幅,歩行率も向上した。故に,非外傷性の症例に対する体重免荷トレッドミルトレーニングは,麻痺や下肢筋力への影響は小さいが,歩行能力への影響が大きいトレーニングであることが示唆された。
著者
村上 陽三 平松 高明 前田 正孝
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-41, 1994-02-25
被引用文献数
2 12

導入天敵の効果に及ぼす土着天敵の影響を予測する目的で,チュウゴクオナガコバチ未分布地の宮城・岡山両県で,1991年春から2年間にわたってクリタマバチの寄生者複合体について調査を行い,熊本県のチュウゴクオナガコバチ放飼園での結果と比較した。<br>1) 寄生者複合体の構造は地域によって異なり,土着の一次寄生蜂は宮城で3種,岡山で8種,熊本で12種観察され,南に向かうほど種数が増加する傾向が見られた。宮城と岡山での優占種はクリマモリオナガコバチであったが,その優占の程度は異なり,宮城では著しく高く岡山では比較的低かった。熊本ではキイロカタビロコバチとオオモンオナガコバチが優占種であった。また同じ地域でも環境条件の違いによって寄生者複合体の構造が異なった。<br>2) 寄生率は宮城と岡山の間で差は認められず,また寄生者種数との間の相関は見られなかったが,周辺の植生,寄主密度,随意的高次寄生者の影響がうかがわれた。<br>3) 宮城と岡山で優占種であったクリマモリオナガコバチは,終齢幼虫期に高い死亡を受け,終齢幼虫初期密度と死亡率の間には宮城では有意な相関が見られなかったが,岡山では有意な負の相関が認められた。MORRISの方法で分析した結果,岡山では本種は密度逆依存の死亡を受けることが示唆された。<br>4) クリマモリオナガコバチの幼虫と蛹を攻撃する随意的高次寄生者は4種認められたが,そのうちの2種<i>Eupelmus</i> sp.とトゲアシカタビロコバチが岡山と熊本で高い寄生率を示した。これらの随意的高次寄生者の二次寄生が,クリマモリオナガコバチの終齢幼虫期の密度逆依存的な死亡要因となっているものと推察された。<br>5) 以上の結果から,将来クリマモリオナガコバチの近縁種であるチュウゴクオナガコバチが,宮城・岡山両県に導入された場合には,岡山では随意的高次寄生者の二次寄生による密度逆依存的な死亡のために,チュウゴクオナガコバチの増殖に長年月を要するが,宮城ではその作用が弱いので,短期間のうちにヂュウゴクオナガコバチの密度が増加するであろうと予測された。
著者
安井 仁 清水 正啓 山田 明 前田 知行 小林 義典
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.148-152, 1991-01-01
被引用文献数
14

過去18年間に上行結腸癌, 早期胃癌, 直腸癌および残胃癌の消化管領域に限局した異時性4重複癌が発生し, そのおのおのに右半結腸切除術, 幽門側胃切除術, 腹会陰式直腸切断および残胃全摘除術の根治手術を施行しえた75歳, 男性の症例を経験した. 患者はおのおのの手術後, 再発なく社会復帰を果たすことができた. 本症例は当院において長期に経過観察する過程で比較的早期に発見され, すべて根治手術が可能であった. 重複癌発生の特殊要因は認めなかった. 4・5重複癌は臨床例, 剖検例をあわせて本邦で107例報告されているが, このうち消化器に限局したものは15例である. 本邦における剖検重複癌の統計的検討を行った. 重複癌の悪性腫瘍に占める頻度は10年間で倍増しており, かつ4重複以上の高次重複癌が増加する傾向があるので, 術前・術後の他臓器原発癌に対する配慮が重要である.
著者
秋山 一男 三上 理一郎 可部 順三郎 江頭 洋祐 岩田 猛邦 田口 善夫 赤木 克巳 竹山 博泰 羽間 収治 浜野 三吾 河田 兼光 信太 隆夫 三島 健 長谷川 真紀 前田 裕二 永井 一成 工藤 宏一郎 佐野 靖之 荒井 康男 柳川 洋 須藤 守夫 坂東 武志 平賀 洋明 上田 暢男 宮城 征四郎 中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.727-738, 1992
被引用文献数
15

我が国における成人気管支喘息の実態を, 主として患者へのアンケートを中心に調査し, 小児発症群と成人発症群及び成人再発群の3群に分類しその比較を試みた. 1) 成人喘息に占めるそれぞれの頻度は小児発症群11.1%, 成人発症群77.3%, その他11.6% (成人再発群3.7%及び不明) であった. 2) 成人喘息に占める小児発症群は年齢と共に激減し, 一方成人発症群は年齢と共に増加し50歳以後では90%以上を占めた. 3) 小児発症群では男, アトピー型, アレルギー疾患既往・合併症, 軽症例, 夜間外来受診歴, 発作時O_2吸入・人工呼吸歴の頻度が成人発症群に比べて有意に高く, 他方成人発症群では感染型, 薬剤常用者, ステロイド常用者, 重症, アスピリン過敏症の頻度が小児発症群に比べて高かった. 4) 成人再発群は小児発症群と成人発症群との中間に位置する群と考えられた. 5) 以上より発症年齢を基準とする分類法が現時点で臨床上分類が容易かつ曖昧さが少ない点より, 成人にみられる気管支喘息を小児発症喘息・成人発症喘息・成人再発喘息の3群に分類する新しい分類法を提唱した. この分類は今後成人喘息の病因・病態の解明に有用と考える.
著者
大槻 剛巳 中野 孝司 長谷川 誠紀 岡田 守人 辻村 亨 関戸 好孝 豊國 伸哉 西本 寛 福岡 和也 田中 文啓 熊谷 直子 前田 恵 松崎 秀紀 李 順姫 西村 泰光
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.543-552, 2011 (Released:2011-06-24)
参考文献数
73
被引用文献数
1

The research project entitled “Comprehensive approach on asbestos-related diseases” supported by the “Special Coordination Funds for Promoting Science and Technology (H18-1-3-3-1)” began in 2006 and was completed at the end of the Japanese fiscal year of 2010. This project included four parts; (1) malignant mesothelioma (MM) cases and specimen registration, (2) development of procedures for the early diagnosis of MM, (3) commencement of clinical investigations including multimodal approaches, and (4) basic research comprising three components; (i) cellular and molecular characterization of mesothelioma cells, (ii) immunological effects of asbestos, and (iii) elucidation of asbestos-induced carcinogenesis using animal models. In this special issue of the Japanese Journal of Hygiene, we briefly introduce the achievements of our project. The second and third parts and the third component of the fourth part are described in other manuscripts written by Professors Fukuoka, Hasegawa, and Toyokuni. In this manuscript, we introduce a brief summary of the first part “MM cases and specimen registration”, the first component of the fourth part “Cellular and molecular characterization of mesothelioma cells” and the second component of the fourth part “Immunological effects of asbestos”. In addition, a previous special issue presented by the Study Group of Fibrous and Particulate Substances (SGFPS) (chaired by Professor Otsuki, Kawasaki Medical School, Japan) for the Japanese Society of Hygiene and published in Environmental Health and Preventive Medicine Volume 13, 2008, included reviews of the aforementioned first component of the fourth part of the project. Taken together, our project led medical investigations regarding asbestos and MM progress and contributed towards the care and examination of patients with asbestos-related diseases during these five years. Further investigations are required to facilitate the development of preventive measures and the cure of asbestos-related diseases, particularly in Japan, where asbestos-related diseases are predicted to increase in the next 10 to 20 years.
著者
前田 隆浩 中島 憲一郎 高村 昇 山崎 浩則 草野 洋介
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

特定健診受診者1,295人を対象として、動脈硬化に関連することが報告されている遺伝子MTHFR(rs1801133)、HDAC4(rs3791398)、CARKL(rs465563)、Adiponectin(rs1501299)について多型解析を行い、頸動脈内中膜複合体厚(CIMT)と心臓足首血管指数(CAVI)との関連について検討した。いずれの遺伝子においてもCIMTとCAV Iとの間に有意な関連を認めず、ハイリスクアリルの保有数をもとに分類した5群における解析でも有意な関連は認めなかった。しかし、保有数が多いほどC AVI値が上昇する傾向があり、遺伝子多型と動脈硬化との関連が示唆された。
著者
齋藤 俊行 林田 秀明 川崎 浩二 前田 隆浩
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

五島市で実施した健診受診者のうち「40歳以上で10本以上の歯を有する」1053人を対象に分析し、歯周ポケットの深さの平均値と頸動脈の血管の厚み(IMT)、全身の動脈の硬さを示す心臓足首血管指数(CAVI)の関連をみた。その結果、歯周ポケット深さの平均値が1mm増えると、IMTが0.02mm厚くなり、動脈壁が肥厚するリスクが43%増加、さらにCAVIは0.13増加し、CAVIの異常値(8以上)を示すリスクが32%増加していた。また、血中の活性酸素は、歯周病細菌の特にPg菌の血清抗体価と正の相関を示し、活性酸素値の高い者ほど歯周病が悪化しており、酸化ストレスと歯周病の関連性が認められた。
著者
前田 英行
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.355-360, 2007-03-15

少年野球では、(1)ある試合・大会での勝利という、有期限で達成したい目標が明確であり、(2)所属する個性ある子供たちでチーム編成を行い、(3)相手に応じて勝つための作戦を企画実行する、プロジェクトマネジメントが実行されている。年間約50試合の結果が出る非常に短いPDCAサイクルで実行される少年野球のチーム運営から貴重なノウハウと多くの学びが確認された。これらは、ITプロジェクトのマネジメントに有効である。・事例1 K監督は試合中は決して選手を批判しません・事例2 エラーはあたり前のこと、その後どうするかが勝敗を決める ・事例3 少年野球の監督が教える最も大切なことは野球の楽しさです ・事例4 少年野球の監督、この素晴らしい仕事
著者
前田 宗則 小中 裕喜 石川 裕 友清 孝志 堀 敦史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 記号処理研究会報告
巻号頁・発行日
vol.93, no.81, pp.17-24, 1993-09-17

本稿では,循環参照カウント方式(CRC)を基礎とする新しいGCアルゴリズムCRC_<IW>を提案する.CRCは,ポインタによる循環構造も含めた任意の使用不能なメモリブロック(オブジェクト)を回収可能なGC方式であるが,対象言語がコンビネータに制限されること,循環構造を管理するアルゴリズムが逐次的であることという二点により,並列マシン上の一般の高級言語にはそのまま適用できなかった.CRC_<IW>は,各オブジェクトに順序数を与えることで任意の言語に適用可能とし,複数のプロセスによって並列に循環構造を管理するようアルゴリズムを拡張している.さらに,分散メモリを持つ並列マシンにおいてGCによる通信オーバーヘッドを低減するために,参照を3タイプに分けて管理することと各参照に重みを与えることが考察される.
著者
前田 宗則 小中 裕喜 石川 裕 友清 孝志 堀 敦史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [プログラミング-言語基礎実践-]
巻号頁・発行日
vol.93, no.73, pp.113-120, 1993-08-19

参照カウント方式ゴミ集めは,アプリケーションが生成する参照に循環構造が存在しないことを前提とする既に広く知られたゴミ集め技法である.これまでに,循環参照を取り扱えるよう拡張された循環参照カウント方式が提案されているが,アルゴリズム上その方式の適用可能な計算モデルがコンビネータマシンに限定される問題がある.本稿では,オブジェクト指向言語を含めて,参照の循環を任意の時点で引き起こすようなポインタ操作を許す言語に対する循環参照カウント方式ゴミ集めを提案する.さらに本方式は,ゴミ集めの並列処理と重み付き参照による参照複製に関して考察し,並列/分散環境のための基礎を与える.
著者
伊藤 敬 仲居 裕 稲野 俊直 田口 智也 前田 昌調
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.417-423, 2006-09-05
被引用文献数
1

本研究は,微生物間の拮抗作用を利用してアユ冷水病原因菌であるFlavobacterium psychrophilumの増殖を抑制することを目的としている。この研究の一環として,アユ飼育槽内や天然河川から細菌を分離し,F. psychrophilumの増殖阻害活性を測定した。分離した97細菌株において,水槽壁および水中に浸漬したスライドガラス表面から得た菌が,高い割合で活性を示し,中でも7株は強い病原菌の増殖阻害作用を示した。そして,これら7株の簡易性状試験を行なった結果,3株はPseudomonas I/II, 2株はMoraxella属の種と考えられ,残りの2株は同定することができなかった。なお、この同定に関しては16SrRNAの解析について考察した。この7株の各々を配合飼料に20%(v/w)の割合で混合した後,体重あたり3%量の本飼料を稚アユに8日間毎日投与した結果,4株についてはアユの初期減耗がみられたが,飼育4日目以降では,死亡個体はなかった。一方,他の3株については,この初期減耗は見られなかった。
著者
前田 義信 今井 博英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.722-729, 2005-06-01
被引用文献数
8

学校におけるいじめ問題は, 「キレる」子どもや「ひきこもる」子どもの問題と同様, 解決すべき重要な課題の一つである. しかし, いじめの定義はあいまいであり, 社会心理学でもいじめを明確に決定づけることが困難であるため, 現場教師による早期発見が難しい. いじめの背景には子どもと子どもの相互作用があり, 特に中学生の年代では価値をめぐる相互作用により交友関係が形成される. しかし, 一元的な管理主義が支配する学校の中では自由に価値を見出すことが難しく, また集団が群集化することがあり, 群集化の影響が価値を共有できない少数の子どもをいじめのターゲットにしてしまう. 本論文では, 群集化する交友集団における, 価値をめぐった交友関係の形成過程をエージェントベースでモデル化する. そして, モデルのパラメータ値を変化させることで, 価値を共有できない少数のエージェントが発生する条件を明らかにした. 提案モデルによると, 管理を弱くしてエージェントに多様な価値を見出すことが許されるようにすることは, 逆に価値を共有できないエージェントの数を増加させる可能性がある. 我々は, その原因がエージェントの相互作用にあることを調べた.