著者
上田 凌大 今井 啓輔 山田 丈弘 猪奥 徹也 長 正訓 崔 聡 徳田 直輝 山本 敦史 加藤 拓真
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.303-309, 2023 (Released:2023-07-25)
参考文献数
21

【背景および目的】中大脳動脈水平部開存型の内頸動脈閉塞症(ICOPM)に対する急性期血行再建術(EVT)の成績と転帰関連因子を明らかにする.【方法】2014年5月から2021年7月にEVTを実施した511例中,ICOPM例を対象とし,背景因子と時間指標,治療内容,手術成績を検討した.対象を転帰良好群(3カ月後mRS 0–2:G群)と転帰不良群(同3–6:P群)に分類し,比較した.【結果】対象は36例で年齢85歳,NIHSS 17.5点,発症–来院時間200分,穿刺–再開通時間(P2R)84.5分(中央値),術中血栓移動9例,有効再開通32例であった.G群は13例でP群と比較しP2Rが短かった.【結論】EVTを受けたICOPM例は36例で,有効再開通32例,転帰良好13例と成績不良ではなかった.転帰良好例ではP2Rが短かったが,ICOPMは複雑な病態であり,P2R短縮が転帰改善に直結するとはいえない.
著者
加藤 克
出版者
札幌博物場研究
雑誌
札幌博物場研究会誌
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.1-23, 2020-03-26

『大正日日新聞』は、大正デモクラシー期に活躍したジャーナリスト鳥居赫雄(素川)が1918(大正7)年8月末に発生した大阪朝日新聞筆禍事件(白虹事件)で朝日新聞社を引責退社したのち、翌年11月に創刊した新聞である。新聞社設立に際して社長となった貴族院議員藤村義朗男爵、出資者である大阪の銅鉄商勝本忠兵衛と鳥居の協力によって創刊された『大正日日新聞』であったが、経営者間の不和、放漫経営、対立する朝日新聞社、毎日新聞社による圧力もあり、創刊の翌年7月には経営が破綻した。新聞社が短命であったために社史などは全く残されておらず、その設立から解散に至るまでの経緯は鳥居の下に集まっていた新聞記者たちによる鳥居の評伝や回顧録[伊豆 1952, 1962, 1965; 新妻 1969; 日本新聞協会 1976, 1977; 冨田 2017など]や当時の朝日新聞社社長村山龍平の伝記[朝日新聞社大阪本社社史編集室 1953、以下『村山伝』と表記]、『朝日新聞社史』[朝日新聞百年史編集委員会 1991、以下『朝日社史』と表記]などに基づいている。ただし、評伝の大部分は新聞社設立から30年以上経過した時点での記憶に頼っているため内容には異同があり、個々の事象の前後関係も明確ではない部分がある。朝日新聞社の社内用資料として清水[1964]が『大正日日新聞』についてまとめた資料も、その多くは鳥居の評伝を執筆した記者からの聞き取りに基づいており、『朝日社史』の記述も同様の傾向があると考えられる。また、主要な出資者である勝本忠兵衛の「人となりがわからない」[冨田 2017]とされることや、「編集局の陣容は、まさに超一流だったが、残念ながら経営陣に人を得ず」[内川 1967]と評価されたり、鳥居の「理想的な新聞」を勝本が「一つの企業と考えていたに過ぎ」なかった[伊豆 1965]と評価されていることなど、新聞社経営に理解、能力を持たない勝本の存在が経営者間の対立の理由の一つとされていることも、残された情報が鳥居や新聞社視点からのものに偏っており、かつその記述の目的がジャーナリスト鳥居素川を顕彰するためであることに由来していると考えられる。これらの点から考えて、『大正日日新聞』に関する従来の歴史的経緯の理解は、新聞社設立に関わった当事者全員の実際の考えや行動に基づくものではない可能性がある。 本稿は上記の課題に対して、白虹事件から『大正日日新聞』創刊前後までの期間における、これまでその存在が知られていなかった鳥居と勝本を中心とする関係者の書簡群(1)を利用して、新聞社設立に至る経緯、鳥居と勝本の考えや行動の実態を把握する。そして、従来とは異なる観点からその経緯をみたときに、これまでの理解が十分であったのか否かを確認したい。これにあわせて、『大正日日新聞』に関係してこれまで全く名前が挙がることがなかった、書簡の宛先である北海道帝国大学教授八田三郎のキーパーソンとしての役割についても示すこととしたい。
著者
加藤 尚武
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.11-16, 1999-09-13 (Released:2017-04-27)
被引用文献数
3

日本国憲法13条の求める「個人としての尊重」「個人の尊厳」は、クローン人間を生むことを否定しているから、刑法によってそれを禁止すべきであるという意見を批判することが、本稿の目的である。核移植で加藤尚武のクローンを作れば、そのクローンは加藤尚武と年齢も生育環境も歴史的環境も異なる。オリジナル人間とクローン人間は完全に識別可能である。もしも遺伝的にDNAがひとしい人を生むことが、禁止の対象になるなら、当然、一卵生双子の出産も禁止すべきである。クローン人間禁止論者は、クローンとオリジナルが明確に識別可能でもDNAが同じなら個体性を侵害している、自然的な同一DNA個体(双子)の出生は違法ではないが、人為的に同一DNA個体(クローン)を生むことは違法であると主張する。
著者
田中 克典 加藤 鎌司 山本 悦代 大庭 重信
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では果実形質が選抜されていたことを検討するために,果肉色(CmOr)や果実の酸味(CmPH)に関連する遺伝子についてDNAマーカーを開発するとともに,それらのマーカーを用いてメロン種子遺存体を分析した.分析により,メロン種子遺存体の解析によって,近世の商業都市である大坂城・城下町ではメロン仲間の選択において酸味や果肉色に好みがあったこと,それらのメロン仲間が日本在来のマクワやシロウリと関連があることを示していたことがわかった.今後,作物への嗜好と選抜との対応,これに関わる社会や政治的背景を研究するため,これらDNAマーカーを幾つかの時代のメロン種子遺存体に適用する.
著者
川上 治 古池 保雄 安藤 哲朗 杉浦 真 加藤 博子 横井 克典 都築 雨桂
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
15

目的:脳梗塞後はじめて発作を発症した場合,てんかんと診断できるか検討するため,有事率とそのリスク,非誘発性発作の再発率等について多数例を後ろ向きに調査した.方法:当院に入院した脳梗塞急性期(transient ischemic attack;TIAを除く)患者2071名を対象に,けいれん発作発症例を抽出した.年齢,性,皮質病変,Oxford分類,MRIでの深部白質病変等を評価項目とした.結果:脳梗塞発症後,急性症候性発作(acute symptomatic seizure;ASS)は43例で過半数は発症当日であった.非誘発性発作(unprovoked seizure;US)は,100~300日でピークとなるがその後も増加を続け,5年間で73例であった.ASSのリスクは,皮質病変・total anterior circulation infarction;TACI(Oxford分類),USのリスクは,皮質病変・TACI・partial anterior circulation infarction;PACI(Oxford分類)・deep and subcortical white matter hyperintensity;DSWMH(グレード3・4)・75歳未満(多重ロジスティック回帰法)であった.再発性USは,US群74%,ASS群9%と有意にUS群で高かった.初発より抗てんかん薬(antiepileptic drugs;AEDs)を投与すると有意に再発率が減少した.非誘発性発作の重積発作発生率は,AEDs投与群19.6%,非投与群34.3%と有意にAEDs投与群が少なかった.結論:脳梗塞慢性期に初発発作を発症した場合は,てんかんと診断できる.AEDsは,US再発およびてんかん重積状態の予防に有効であり初発USより投与開始を検討する必要がある.
著者
加藤 康幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.2323-2326, 2020-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
4

新興ウイルス感染症が発生した場合,医療機関には,院内感染を防止しながら,その時点で最善と考えられる医療を患者に提供する役割がある.「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」は,2020年3月に公表されて以降,改訂されてきた.行政機関と医療機関をつなぐコミュニケーションのツールとしても一定の役割を果たしたと考えられる.
著者
脇本 健弘 佐々木 博史 平山 涼也 望月 俊男 Eagan Brendan 結城 菜摘 舟生 日出男 久保田 善彦 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.309-324, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
38

本研究は,タンジブル人形劇によるマイクロティーチング支援システム「えでゅーすぼーど」の教師の専門性向上への有効性を検討したものである.本研究では,教員養成課程において実施された「えでゅーすぼーど」を用いたマイクロティーチングにおける学生の談話を分析した.学生は3回のマイクロティーチングに取り組み,2回目に「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングを体験した.学生の談話をEpistemic Network Analysis により分析し,特徴的な変化を抽出し,さらに質的な分析を行った.その結果,「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングでは,教師役の学生が児童役の学生の学習を深めるとともに,授業を円滑に進めるために即興的な働きかけを行っていたことが示された.
著者
佐藤 清貴 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.352-357, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
参考文献数
48
被引用文献数
1

脳保護を目的とした全身低体温療法は1955年から行われている. 体温30℃以下での脳外科手術が多くの症例で行われたが, 循環合併症が多く, 1970年頃から行われなくなった. 1987年, 軽度低体温の脳保護効果が実験的に示され, 1990年頃から臨床応用された. 脳動脈瘤手術, 頭部外傷, 脳梗塞, 蘇生後脳症などで軽度低体温管理が行われ, 2001年以降大規模臨床試験の結果が発表された. 心停止後の蘇生後脳症, 新生児低酸素脳症では有効性が確認されたが, 脳動脈瘤手術, 頭部外傷ではnegativeの結果であった. 脳温の低下は脳保護的に作用することは明確であるが, 全身の体温低下は感染, 出血など合併症の原因となり, 最終的な予後を必ずしも改善しない. 現在のところ, 短期間の軽度低体温は蘇生後脳症などで適応となる. 脳局所の温度下降が可能となれば, さらに有効な治療手段となる可能性がある.
著者
伊藤 佳之 加藤 俊夫 毛利 智美 入山 拓平 深谷 良 重盛 恒彦 伊藤 智恵子
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.60-64, 2009 (Released:2009-01-05)
参考文献数
8

糞線虫流行地域での生活歴を有し,成人T細胞白血病ウイルスキャリアでもある56歳男性に見られた糞線虫大腸炎の1例を報告する.この症例は,左側結腸に優位であるが,全大腸にわたって直径5∼10mmの頂部に陥凹を有する丘状発赤がみられるという特異的な内視鏡像を示した.同様の内視鏡所見を示したのは文献上1例が報告されているのみで,本例は大腸病変の内視鏡診断上有意義な所見と考えられる.
著者
加藤 明広 堀江 亮太
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.143, no.4, pp.397-405, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
25

In this study, as a basic investigation for EEG-based visual image reconstruction, we investigated whether EEG signal features reflect shapes and colors of simple visual images which subjects viewed and whether the features can be discriminated. First, we investigated how the shapes and the colors are reflected in event-related potentials (ERP), the event-related spectrum perturbations (ERSP), and the inter-trial phase synchronization (ITC). The results showed statistically significant differences in ERP among the colors and ERP, ERSP and ITC among the shapes depending on time periods, frequency bands and electrodes. Second, based on the results, we explored learnable input data sets. Then, learnability for discriminating the shapes were shown in EEG waveforms on 100ms time periods in single trials at all channels and phase of time frequency analysis on the limited time-frequency domain and electrodes. Finally, we investigated whether two discriminators using LSTM and CNN discriminate the shapes from the learnable data for each subject. Then, it was found that accuracies of discrimination of the shapes were over a chance level with all the learnable data sets, subjects, and discriminators. We concluded that the distinct shapes can be discriminated from EEG signals by exploring appropriate features of input signals for discriminators.
著者
加藤 尚吾 加藤 由樹
出版者
AI時代の教育学会
雑誌
AI時代の教育論文誌 (ISSN:24364509)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-6, 2020 (Released:2021-09-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

LINEのグループトークのメンバーが返信を待たせる側と待つ(待たされる)側の双方の立場に置かれているときに,それぞれの立場においてメンバーのネガティブ感情の発生の有無によるメンバーのLINEに登録されている「友だち」及び「グループ」の数の差を比較した。その結果,調査票で設定した多くの状況で,ネガティブ感情が発生する人のほうが発生しない人よりも「友だち」及び「グループ」の数が多かった。続いて,上述の結果をふまえてネガティブ感情が発生する人に注目し,ネガティブ感情の発生のタイミングと「友だち」及び「グループ」の数との関係を分析した。その結果, 主に既読状態で返信を待つ状況においてネガティブ感情の発生までの時間の長さと「友だち」及び「グループ」の数に正の相関がいくつか認められた。
著者
加藤 貞武 倉田 邦夫 杉沢 慶彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.315-318, 1965-07-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
5

99Moを親核種として得られる99mTcは, その半減期およびガンマ線エネルギーから, すぐれた生体内診断用核種の1つと考えられるが, 半減期の関係から, 使用直前に製剤化し, 試験されなければならない。本報では, まず99Mo-99mTc generatorの取扱いについて述べ, ついでTcO-4液およびTc2S7コロイド液の注射用製剤の製法および試験法について報告する。これらを実験動物に静注して体内分布を経時的に追跡した結果, TCO-4液は胃に, Tc2S7コロイドは肝に選択的に集積された。
著者
河合 一武 山本 大 加藤 朋之 高藤 順
出版者
Japanese Society of Science and Football
雑誌
Football Science (ISSN:13495623)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.52-60, 2018 (Released:2023-03-30)
参考文献数
28

Are there few junior soccer players (Aged 12 or Younger) competing at middle level who were born between January and March? When does the RAE (Relative Age Effects) start in school year at middle level soccer players? "Middle level" means they are the second highestlevel players with techniques and skills after junior players of Japan Professional Football League. This research was to clarify whether or not the RAE about the month of birth could be realized in middle competition level, and when the RAE could be started in school year. There were few junior soccer players in the 3rd, 5th and 6th grade in school year competing at middle level who were born between January and March. Furthermore, there were many junior soccer players the 6th grade in school year competing at middle level who were born between April and June. The results suggest that the RAE started in the 3rd grade in school year (9 years old) and became the maximum effect in the 6th grade in school year (12 years old). It has also been shown that the circumstance that makes players stop (give up) playing soccer occurs in the third grade of the elementary school.
著者
加藤 真人 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_285-II_301, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
37

土木計画や公共政策には,言論の自由が保障された条件の下で弁証法的議論が繰り返される必要があるが,これらを侵害する恐れのある社会心理現象を指す概念に「ポリティカル・コレクトネス(PC)」が挙げられる.本研究ではPCを「“原則的には必ずしも正しくはないが,時世上は正当である”と社会的に認識されている,他人に押し付けることを前提として用いられる価値規準」と定義し,その基本的特徴を把握するためのアンケート調査を実施した.分析の結果,「自分の価値規準を持ちつつも抽象的な論理や理屈に固執せず,謙虚であるような態度」を持つことがPC度の低減につながる可能性が示唆され,その方策として事実情報提供法やコミュニケーション法といった心理的方略が有効であることが示唆された.

1 0 0 0 OA 価値相対主義

著者
加藤 新平
出版者
京都大学 (Kyoto University)
巻号頁・発行日
1977-03-23

新制・論文博士