著者
加藤 裕治 カトウ ユウジ Yuji KATO
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
no.13, pp.115-121, 2013-03-31

本稿では、イギリスの産業遺産—特に世界遺産でもある7つの遺産が—日本の旅行ガイドブックとインターネット上の個人ブログにおいて、どのような情報や関心に基づき、その遺産が紹介されているかを見ていく。観光のまなざし論では、ある対象が観光地として認知され、イメージ形成されていく過程において、メディアの影響が大きいと論じられてきた。海外にある遺産の認知やイメージ形成には、特にこうしたメディアの影響が大きいと考えられる。また近年は、インターネットによる個人的な情報発信が盛んになり、遺産の観光地化のプロセスにおいて、旅行ガイドブックと異なる情報や関心で観光地が紹介されている可能性が高い。こうしたメディア環境の変化が観光のまなざしに与える影響を考察するためには、各メディアにおける情報発信の視点や関心の違いを対比し、各メディアの役割について考えていくことが必要である。
著者
加藤 克
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.123-132, 2017

生物学標本の蓄積は,当該種の形態的,地理的分布の歴史的変遷に貢献するが,古い時代に採集された標本には,採集データが付属しない場合があり,有効に利用できないことがある.本研究では,採集年次不明の山階鳥類研究所所蔵ヤマゲラ<i>Picus canus</i>標本(YIO-23324)を対象に,付属ラベルの利用年代の考察と採集者のフィールドノートの記載情報を利用してその採集年次情報の復元を試み,研究資源としての標本価値の向上を目的とした.この結果,標本の旧蔵機関である帝国大学で利用されていたラベルの付属から1885年以前の採集標本であること,ラベルに記載されている「ブラッキストン」という採集者名と日本の鳥学の近代化に貢献したThomas Blakistonのフィールドノートの照合から,1881年5月にBlakistonによって採集された標本である可能性が高いことを示した.この結果を援用することで,山階鳥類研究所に所蔵されている帝国大学旧蔵標本のうち,採集年次が判明しない標本の一部についても19世紀収集標本であることを裏付ける情報を整理した.以上の結果に基づき,古い標本を利用した研究の健全な遂行の上では,コレクションヒストリーの解明と,標本情報の再検討研究の継続が必要であることを提言した.
著者
工藤 紗希 小島 慎一郎 佐久間 博子 町田 明子 杉本 諭 丸谷 康平 伊勢崎 嘉則 室岡 修 大隈 統 加藤 美香 小林 正宏 三品 礼子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2246, 2009

【目的】<BR> 近年では在院日数の短縮化に伴い、介護老人保健施設(老健)を経て在宅復帰されるケースが増加している.一方在宅復帰した者の中には、機能低下により在宅生活が困難となり、施設入所となることも多い.従って通所者の在宅生活の継続、入所者の在宅復帰を目標とした際に、在宅生活に必要なADL能力及びバランス能力を把握することは、理学療法を進める上で重要であると考えられる.本研究の目的は、通所・入所者のADL自立度の違いを明らかにし、その違いをバランス能力に焦点を当てて分析することである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は通所リハサービス利用者及び老健施設入所者のうち本研究に同意の得られた高齢者247名(男性75名、女性172名、平均年齢79.1±8.8歳)で、通所者188名、入所者59名であった.疾患の内訳は、脳血管疾患95名、神経疾患20名、整形疾患87名、内部障害27名、その他18名であった.ADL自立度の評価にはFIMの運動項目を、バランス能力の評価にはBerg Balance Scale(BBS)を用いた.なおFIM下位項目のうちの階段昇降は、運動能力の違いに関わらず使用している者が少ないため、階段を除く12項目の合計(FIM12項目合計点)及び各下位項目の素点を用いた.BBSは合計点及び14の下位項目を用いた.分析方法は、まず通所者と入所者のFIM12項目合計点及び下位12項目の得点の違いをMann-Whitney検定を用いて分析し、有意差のみられた下位項目の分布と臨床的意味合いをもとに、各下位項目を良好・不良の2段階に分類した.次に抽出されたFIM下位項目を独立変数、利用状況(通所・入所)を従属変数として、Stepwise法による判別分析を行った.更に判別分析により最終選択された下位項目を従属変数、BBS下位項目を独立変数とし、Stepwise法による重回帰分析を行い、バランス能力との関連について分析した.<BR>【結果および考察】<BR>FIM12項目合計点の中央値は通所者78点、入所者61点、BBSは通所者44点、入所者27点であった.Mann-Whitney検定の結果、FIM12項目合計点、FIM下位12項目のうち食事と移動を除く10項目に有意差がみられ、判別分析ではトイレ動作と浴槽への移乗が最終選択された.この2項目が良好と判断される境界点は、トイレ動作は6点、浴槽への移乗は5点であった.重回帰分析によるBBS下位項目との分析では、トイレ動作では着座、リーチ、起立、浴槽への移乗では一回転、リーチ、タンデム立位、車いすへの移乗が最終選択された.以上より、在宅復帰の可否にはトイレ動作が修正自立、浴槽への移乗が見守りで可能であることが関連し、このような動作の獲得には、着座、起立、リーチ、一回転、タンデム立位、移乗動作のようなバランス能力の向上が重要であることが示唆された.
著者
加藤 千枝
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.47-60, 2014-09-30 (Released:2017-02-04)

GC(ゲーテッド・コミュニティ)とは居住境界線を明確に示すコミュニティの形態である(Blakely & Snyder,1997=2004)。本研究ではSNS上のGCの分類を行い,非GCとの比較・検討をすることで,オンライン上のGCの可能性と限界を整理し,考察することが目的である。先行研究を踏まえ,SNS上の151のGCを分析した結果,「知人同士のやりとり」「見知らぬ者同士のやりとり」「個人利用」「完全非公開」の4点に分類することができた。さらに,限定的ではあるが青少年99名の自由記述から,SNS上のGC・非GC共に他者とやりとりすることでカタルシス効果が得られた。しかし,非GCでは相手に打ち明けることで関係が変容・崩壊してしまう恐れのある話題についても,打ち明けることが可能なので,そのような点がGCとの差異として見出されたと考える。
著者
篠原 欣貴 加藤 良平
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-11, 2021-01-31 (Released:2021-05-20)
参考文献数
13

【目的】 組織風土の病院に勤務する職員の定着・離職に与える影響を明らかにし,その関係性を説明する理論を構築する。【方法】大分県内の病院職員(医師,看護師,理学療法士,ソーシャル・ワーカーなど)に対して半構造化インタビューを行った。そして,インタビューによって得られたデータからカテゴリー及び下位概念を生成し,各カテゴリー間の関係性について分析を行った。【結果】27名の半構造化インタビュー等をもとに,3つのメインカテゴリー(職員同士の人間関係,仕事のやりがいと教育や生活への支援,尊重の風土)を導き出した。【考察】本研究から,職員同士の人間関係と仕事のやりがいと教育や生活への支援が尊重の風土と結びつくことによって働きやすい環境が整い,その結果,職員の離職率の低下と定着率の高さにつながることが示唆された。
著者
髙松 俊介 宮川 誠一郎 佐藤 久弥 鈴木 航 西澤 剛 中村 雅美 梅田 宏孝 崔 昌五 加藤 京一 中澤 靖夫 池田 純
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.549-555, 2014 (Released:2014-06-20)
参考文献数
13

The hamate bone, one of the carpal (wrist) bones, has a large uncinate process protruding from the palm side. In sports such as golf and tennis, the hamate bone can break if is subjected to a high external force, such as from the handle of a racquet or club. At our hospital we take X-ray images of the hamate bone from two directions: an axial image through the carpal tunnel and an image at the base of the hamate hook (conventional method). While the conventional method makes it easy to create images of the base of the hamate hook, the patient may suffer pain during image-taking because the hamate bone is pulled to cause radial flexion. We therefore investigated a method of imaging that would create three-dimensional computed tomography (3DCT) images of the base of the hamate hook in which the patient would only have to only rotate the wrist externally and elevate the fore-arm without any radial flexion. Our results suggest that it is possible to obtain images of the base of the hamate hook as clear as those acquired using the conventional method with the patient in a comfortable and painless position taking images at an external rotation angle of 50.3° and a forearm elevation angle of 20.3°.
著者
加藤 善子 Kato Yoshiko カトウ ヨシコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
no.1, pp.117-128, 1996-03

本稿は、文部省『学生生徒生活調査』(昭和13年)を手掛かりに、当時の学生の音楽趣味がどのようなものであったかを考察するものである。音楽は、昭和初期学生の多くが挙げる趣味であった。明治以来、音楽は文学などと同様、旧制高校をはじめ学生文化の中には成立しなかった趣味であったが、昭和初期に増加したのである。明治後期から昭和にかけて、学生の社会的構成の変化から新中間層出身の学生が増加したことや、学生数の増加や寄宿制度の廃止などにともなう学生文化の多様化がその一因であった。学生の出身階層や出身家庭の経済状態との関連をみると、スポーツは旧中間層出身の学生と、音楽と読書は新中間層出身で家庭が裕福な学生とそれぞれ関連が強く、スポーツと音楽の間に映画と美術鑑賞が位置する。また、多くの学生は、楽器などを積極的に演奏することはなく、レコードやラジオから流れてくる音で音楽を楽しんでいたことが、当時の資料や記録から推測される。音楽は都市新中間層出身の学生に結びっいた、バンカラ主義とも教養主義とも異なるところで発生した新しい趣味だったと考えられるのである。
著者
杉原 俊一 鈴木 康太 八反田 葉月 松村 亮 三浦 いずみ 田中 敏明 加藤 士雄 棚橋 嘉美 宮坂 智哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】今後の介護予防・日常生活支援総合事業では,元気な高齢者と二次予防事業対象者を分け隔てることなく,高齢者のニーズに応じた介護予防の取り組みが求められ,リハビリテーション専門職(以下リハ職)による互助活動を支援する仕組み作りが重要となる。そこで本研究では,二次予防事業終了者の自主体操グループにアセスメント訪問を実施し,今後の互助活動のリハ専門職の関与について検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は,T区地域包括支援センターが後方支援している自主体操グループ参加者のうち(10グループ),リハ職によるアセスメントを実施した4グループ28名(平均年齢76.4±6.1歳,69~86歳)とした。調査項目は生活空間の評価としてLife space assessment(LSA),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J,cut-off値26点),ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力の体重比(下肢筋力),Timed Up And Go Test(TUG),開眼片脚立位時間(片脚立位),CS-30とした。更に携帯型加速度計(AYUMIEYE,GE社製)により,垂直・側方・前後方向の体幹部の加速度の二条平均平方根(root mean square,以下RMS)を算出し,RMSを歩行速度の二乗値で除して正規化した後,TUG,片脚立位,CS-30との各指標の関連性についてピアソンの相関係数を求め,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】LSAは70.5±26.7点,MoCA-Jは20.7±4.4点,下肢筋力は31.9±12.4%BW,TUGは7.1±1.6秒,片脚立位は17.8±9.6秒,CS-30は16.5±4.2回で,MoCA-Jでは参加者の86%が,下肢筋力及び片脚立位では50%以上が転倒リスクのcut-off値以下であった。加速度との関連性は前後方向のRMSで相関を認めず,上下及び左右方向のRMSでTUG,CS-30,片脚立位時間で有意な相関を示した。</p><p></p><p></p><p>【考察】対象者の多くがMoCA-JによるMCIのスクリーニングでcut-off値以下を示し,生活機能において多面的な低下が危惧されることから,MCIの早期発見に向けたリハ職による関与の必要性が示唆された。LSAの結果より町内レベルの外出を行う対象者を含む場合,TUGやCS-30のみでは,転倒スクリーニングは困難な可能性が考えられた。一方,TUG等の各評価指標と歩行加速度については関連性を認めており,多様な参加者のアセスメントには,鋭敏に転倒リスクを捉えうる可能性がある加速度歩行指標の組み合わせが必要と考えられる。</p><p></p><p></p><p>【理学療法の意義】リハ専門職による互助活動の包括的な訪問アセスメントによる介護予防データの蓄積により,各地域における介護予防のスクリーニング法の確立に繋がる可能性がある。</p>
著者
須藤 茂 阪口 圭一 松林 修 鎌田 浩毅 加藤 完 山本 隆志
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山.第2集
巻号頁・発行日
vol.29, pp.S253-S265, 1984

Temperature measurements of the lava of 1983 in Miyake-jima in the Ako district were started fifty days after the eruption and have been continued since then. The following three kinds of temperature data have been obtained (Fig. 2). 1. Temperatures at 20 cm depth along a graveled temporary road on the clinkery surface of the lava using mercury and alcohol thermometers. 2. Temperatures at 0.5 to 2.5 m depth in iron pipes inserted into the clinker layer using thermocouples and mercury thermometers. The pipe holes were distributed along the temporary road and at scattered stations on the surface of the lava. 3. We drilled a borehole (DH-1) which penetrates through 5.5 m-thick lava into the previous ground. Temperature was measured at 10 points in the hole using thermocouples. For comparison, similar measurements in the Awabe district were made in pipes with depths up to 2.5 m (Fig. 3). These pipes were buried in the holes dug into the massive part of the lava for electric poles. The temperature data at 20 cm depth and in the pipe holes (Figs. 5-10) indicate that isothermal surfaces in the clinker layer are very complicated. This complexity is explained by rising plumes of hot vapor irregularly present in the lava field. The vapor is produced by degassing process in the massive part of the lava and comes up through newly formed cooling joints. Once a cooling joint is formed, the temperature of the massive part of the lava around the joint fell rapidly because a gas plume effectively transports the heat from the massive part to the surface. But the rate of temperature decrease varies greatly from one station to another. New plumes were formed sporadically and the temperatures of the new plumes were much higher than the decreased temperatures of the older plumes. Some older plumes died out because degassing process ended or the joints were self sealed by sublimates. It is necessary to arrange a number of observation stations and to add stations timely in order to reveal a cooling history of aa lava like the lava of 1983 in Miyake-jima. Around a plume, a convection cell was identified in the clinker layer (Figs. 16-18), which is similar to a hydrothermal convection system usually found in geothermal areas. The change of the temperature-depth profile of DH-1 with time (Figs. 11, 12) clearly shows that the lava heated the underlying previous ground. The peak shape of the profile has become broader and the depth of the maximum temperature has steadily fallen. The change of the temperature-depth profile also suggests that the upper clinker layer prevented rainfall from effective cooling of the massive part of the lava for the first 250 days. During that time, raindrops were evaporated in the clinker layer and did not reach the massive part below the clinker layer. Difference of cooling rate between Awabe lava and Ako lava may be due to the difference of the thickness of the clinker layers (Figs. 15, 19).
著者
安東 悟央 橘 剛 加藤 伸康 有村 聡士 浅井 英嗣 新宮 康栄 若狭 哲 加藤 裕貴 大岡 智学 松居 喜郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.13-17, 2018-01-15 (Released:2018-02-16)
参考文献数
8

非常に稀で,手術施行例の耐術例はほとんど報告がない,先天性心疾患姑息術後の肺動脈瘤の合併症例を経験した.症例は40代男性.肺動脈閉鎖症兼心室中隔欠損症に対して一歳時にWaterston手術を施行されたが,その後当時としては根治手術が困難と判断され,NYHA class I度のため数十年間近医で経過観察されていた.労作時の呼吸苦増悪を認め他院を受診,肺炎と心不全の疑いで入院加療されたが,胸部CT検査で95 mmの右肺動脈瘤を認め,切迫破裂も疑われたため外科的加療目的に当科紹介となった.入院時,右胸水と右肺の広範な無気肺を認めた.胸水ドレナージを施行(800 ml)した.胸水は漿液性で胸背部痛など認めず血行動態は安定していた.切迫破裂は否定的であったものの95 mmと巨大な瘤径であり,利尿薬および抗生剤治療を数日間先行し,準緊急的に右肺動脈瘤に対して瘤切除および人工血管置換を施行した.術前NYHA I度であったことから,もともとの吻合部径や末梢の肺動脈径にならい24×12 mm Y-graft人工血管を用いてcentral shuntとして肺動脈を再建した.PCPS装着のままICU入室,翌日離脱した.術後4日目に人工呼吸器離脱,術後38日目に退院となった.現在術後一年になるが,NYHA class I度で経過している.Waterston術後約40年後に発症した巨大肺動脈瘤に対し手術を施行し良好な結果を得たので報告する.
著者
内田 茂博 玉利 光太郎 横山 茂樹 川上 照彦 加藤 浩 山田 英司 有馬 信男 山本 哲司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.442-448, 2011-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

【目的】本研究では,術前の身体・精神的機能が人工膝関節置換術後2週の運動機能にどう影響しているかを明らかにすることを目的として縦断的に調査を行った。【方法】変形性膝関節症と診断され人工膝関節置換術が施行された38名(平均年齢75.0 ± 6.1歳)を対象とし,術前の身体・精神的機能および術後2週のTimed Up and Go test(TUG)を計測した。交絡因子の影響を取り除くため,得られたデータは重回帰モデルを用いて分析した。【結果】術後2週の運動機能であるTUGを予測する因子として,術前の安静時痛,自己効力感,交絡因子である非術側膝伸展可動域が抽出された。【結論】術前の自己効力感,安静時痛および非術側膝伸展可動域は,術後早期の運動機能指標であるTUGの予測因子であることが示唆された。
著者
今井 明 鈴木 ひろみ 渡辺 晃紀 梅山 典子 塚田 三夫 中村 勤 松崎 圭一 加藤 開一郎 冨保 和宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.572-578, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

脳卒中の自然経過を検討する目的で,生命予後と死因について調査し,AHAによる報告と比較した.対象は1998年4月から1999年3月に脳卒中を発症し,栃木県内で登録された5,081人である.発症から5年9カ月までの死亡の有無と,死因簡単分類で死因を調査した.生存率はKaplan-Meier法で算出した.脳卒中全体の5年生存率は62.3%であり,病型別の5年生存率は,くも膜下出血54.9%,脳出血57.9%,脳梗塞62.8%であった.死因の観察では,すべての病型で1位を脳卒中,2位を循環器系の疾患が占め,3位はくも膜下出血と脳出血では悪性新生物,脳梗塞では呼吸器系の疾患が占めた.くも膜下出血と脳出血では原疾患による急性期死亡が多く,75歳以上の脳梗塞では肺炎による死亡が多かった.AHAの報告によると,脳卒中の5年以内の致死率は男性47%,女性51%であり,栃木県の致死率は男性38.5%,女性36.7%とアメリカの報告より低かった.脳卒中の生命予後の改善には,急性期治療の充実と慢性期脳梗塞の肺炎に対する対策が重要と考える.