著者
石原 陽子 中島 徹 富田 幸子 荻原 啓実
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.気管内投与したナノ粒子の体内動態について検討したところ、投与3日目では肺胞腔沈着と肺胞マクロファージによる貪食が、7日目ではI型肺胞上皮細胞や基底膜への沈着や血管腔への移行が認められた。10日目では、I型肺胞上皮細胞、血管腔、肝臓クッパー細胞、嗅球で検出され、沈着部位が広範であることが示唆された。2.ナノ粒子としてディーゼル排ガス暴露実験を行ない、生体影響評価の際の指標を検討した。生理的指標として心拍数、不整脈数、HRV,体温等が、分子生物学的指標としては炎症関連サイトカイン類、ANP,BNP等が選択された。しかしながら、これらの指標と心不全との関連性は、明確ではなかった。3.ディーゼル粒子とその表面を有機溶剤で処理した粒子の炎症性サイトカイン遺伝子発現を指標とした検討では、単位重量当たりの効果は無洗浄粒子に比較して洗浄粒子の影響が強かった。洗浄粒子は無洗浄粒子と比較して単位重量当たりの粒子数が多いことから、この結果には粒子の物理的特性が関与していることが考えられた。4.ディーゼル粒子表面の有機成分の心肺機能と炎症作用について検討したが、心拍数、自律神経、血圧、体温には著しい影響は認めず、気管内投与直後に炎症細胞の軽度な浸潤を認めたが、その影響は速やかに回復した。5.ナノ粒子のリスク評価では、最初の吸入・沈着部位としての肺局所のみならず心臓、神経、脳等への全身影響について、粒子の化学的・物理的特性も充分に考慮して評価する必要があることが示唆された。
著者
櫛引 素夫 北原 啓司
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.79-95, 2005

東北新幹線盛岡-八戸間は2002年12月に開業を迎え、新幹線が青森県に到達した。同区間の利用者は在来線当時に比べて51%増加し、首都圏から青森県内への入り込み客数も大幅に増えて、新幹線開業は経済面で地元に恩恵をもたらしている。しかし、新幹線の経済的効果が及ぶ地域や業種はまだ限定的である上、JR東日本から経営分離された並行在来線の沿線では、運賃の上昇などによって新幹線と並行在来線双方の利用者が伸び悩んだ。高校進学予定者の進路が狭められる不利益も発生している。さらに、新幹線建設費の一部を地元県が負担する建設スキームは、青森県財政の最大の圧迫要因となっている。これらの大きな原因として、整備新幹線構想自体が持つ問題点と、地元側の開業準備態勢の問題が考えられる。2010年度の東北新幹線全通・新青森開業、2015年度の北海道新幹線新函館開業を控え、新幹線によるメリットを最大化し、デメリットを最小化するための対策はますます重要になっている。地域振興のために効果的な対策を講じるには、沿線の鉄道利用実態や新幹線がもたらすとみられる利害を早急に調査するとともに、行政や経済界、NPOなどによる議論や調整の場を設けるべきである。
著者
上園 一知 大矢 俊夫 片岡 朋子 片岡 裕 小原 啓義
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.55-62, 1997-01-16
被引用文献数
2

コンピュータネットワークは国際的な発展を遂げたにも関わらず、コンピュータで同時に扱える文字種は制限されているのが現状である。真の国際化計算機環境を実現するためには、既存の文字コードを超えて全ての文字・言語を同時に混在使用可能であることが必須条件となる。特に出力に関しては、表示される文字図形と文字・文字コードの写像関係が常に言語に依存すると見なされ、更に横書き・縦書きといった文字列の表記方向が混在するために,全世界の文字・言語を全て網羅することは非常に複雑で、一般に不可能と考えられてきた。しかし、世界中の文字・文字コード・正書法を分析した結果、少数の関数で図形決定が可能であり、更にその配置手法が明らかとなった。この関数をハードコーデッドせずに実装することで、全世界の文字廟言語が混在したテキストを単一システムで表示可能となった。
著者
水原 啓暁
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

エピソード記憶に代表される海馬記憶を実現するための動的な皮質間ネットワークが創発するメカニズムを解明することを目的として,脳波とfMRIの同時計測を実施した.海馬記憶に関連する課題として風景写真を観察中の脳波とfMRIの同時計測にもとづき,海馬記憶に関連する皮質ネットワークを同定し,前頭からのシータ波の発生タイミングにおいて,前頭前野内側面,前頭眼野,高次視覚領野および海馬傍回場所領域の反応が発生することを示した.また,神経の振動子ダイナミクスの協調により認知処理に必要な皮質ネットワークが動的に形成されていることを示すために, fMRIの空間分解能で特定した皮質位置での脳波時系列データを再構築する技術を開発した.
著者
近江 隆 北原 啓司
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

大都市圏及び地方中心都市に立地する区分所有集合住宅(マンション)において、所有と利用の不一致、すなわち、所有者の不在化の進行状況、背後にある所有権の流動化、マンションの立地・供給動向、不在者の離散プロセスとその意味等について分析した。調査対象は札幌、仙台、大宮、千葉、名古屋、堺、広島、福岡である。分析結果の概要を以下に述べる。1.大都市圏のベットタウン都市は不在化が抑制され、逆に所有権の移動が激しい。これは中古住宅の流動性の高さ、定住の為の住宅需要が支配的であることを示す。2.地方中心都市では不在化が4割水準に達し、賃貸住宅需要、業務需要マルテハビテーションの需要が大きい。従って、投資的要素が強く、それだけ所有権の移動が抑制されている。3.不在化はオイルショック後に完成した物件で特に進行し、ストックとしての不安定な状態が益々深刻化してゆくと考えられる。4.不在化は立地、建設年代、開発・販売主体等の要因でかなり左右される。但し、これらの作用は地域の市場関係の特殊な条件とも関連し、各々の都市で独自な傾向をもつくりだしている。5.不在・賃貸化した住宅は市場において一定の社会的役割をはたしている。特に、着工レベルの小規模賃貸住宅への偏りが、市場レベルではマンションの賃貸化により、定住可能型と云える中・大規模の需要を吸収している。6.持家政策の中でつくりだされたマンションが、社会的な借家需要に応えるという矛盾を内在させている為、分譲持家としての限界性と共に、借家としても社会的ストックとして位置づけための問題性、要件の欠落と有している。所有者不在とその空間的離散は、マンションの社会的、政策的な位置づけの方向転換を迫る結果を示した。
著者
高橋 庸哉 新保 元康 土田 幹憲 佐藤 裕三 小笠原 啓之 割石 隆浩 神林 裕子 佐野 浩志 坂田 一則 細川 健裕 土門 啓二 松田 聡 本間 寛太 伊藤 健太郎 杉原 正樹 中島 繁登 吉野 貴宏
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

開発してきた雪に関するWebコンテンツの授業での普及を図るために、コンテンツの拡充と共に児童向けワークシート及び教員向け学習プラン集、教員研修プログラムの開発を行った。ワークシートを授業で利用した教員は5段階で平均4.8と高く評価した。教員研修プログラム後に参加小学校教員の45%はこのコンテンツを利用しており、プログラムが有効に機能した。また、コンテンツが授業に役立ったかについて5段階で4.5と答えており、Webコンテンツの内容妥当性も示された。
著者
上原 啓吾
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.161-167, 2005-10

【目的】門脈内に分泌されたGLP-1が肝門脈域における迷走神経感受機構を介してインスリン分泌を促進するか否かを明らかにするために,ラットで生理学的量のGLP-1及びグルコースの門脈内注入による血中のインスリン濃度を選択的肝迷走神経切断および非切断の条件下で測定した。【方法】Wistar系雄性ラットを用い,1)摂食時の動脈血GLP-1濃度を測定,2)摂食後のGLP-1血中濃度に相当する注入量を決定,3)選択的肝迷走神経切断あるいは非切断を行い無麻酔無拘束下に門脈内にグルコース10mg/kg/minを10分間投与,続いてグルコースに加えGLP-1 1.0pmol/kg/minまたはvehicleを10分間並行投与しインスリン濃度を測定した。【成績】摂食15分後の血中GLP-1濃度の上昇は8.6±2.4pmol/lであり,GLP-1 1.0pmol/kg/min門脈内注入はこの変動に相当する上昇をもたらした。グルコース注入中,グルコース濃度はGLP-1注入の有無,迷走神経切断の有無で差を認めなかった。非切断ラットではGLP-1注入3分後からインスリン濃度は有意に増加,GLP-1注入10分間のarea under the curve (AUC)はvehicle注入の約5.4倍であったが,選択的迷走神経切断によりAUCは40%に減少した。【結論】生理学的量のGLP-1門脈内投与は血糖上昇に対するインスリン分泌を増大させたが,選択的肝迷走神経切断によってこの作用は大きく減弱した。摂食時GLP-1の示すインスリン分泌促進に迷走神経機構が関わることが示唆された。
著者
佐藤 健治 溝渕 知司 西江 宏行 中塚 秀輝 佐藤 哲文 水原 啓暁
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

我々はバーチャルリアリティ応用・鏡療法(VR/MVF)を開発し、様々な鎮痛方法でも痛みが軽減しない幻肢痛やCRPS(複合性局所疼痛症候群)患者での鎮痛効果を確認・報告した。当該研究ではVR/MVFの鎮痛効果をより継続させるためVR/MVF治療を音情報に変換し音楽を作成するシステムを開発した。我々はVR/MVF治療では体内に備わる痛みを和らげる機構(内因性オピオイドシステム)が活発になると考えていて、VR/MVF治療中に作成した音楽を家に持ち帰り日常生活の場で聴くことで、体内に備わる痛みを和らげる機構が再び活発となり痛みが和らぐと期待している。
著者
村田 浩平 野原 啓吾 阿部 正喜
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.21-33, 1998-06-25
被引用文献数
6

阿蘇地域におけるオオルリシジミの生息地は, 外輪山内壁と内輪山の標高400∿800mの地域に集中しており, クララの自生している地域に多く生息していることが解った.本種の生息地は, 毎年, 早春に野焼きを実施している草原に限られる.ルートセンサス法による個体数の年次変動の調査の結果, 早春の野焼きを継続している地域では, 本種の個体数が減少することもなく, 逆に早春の野焼きを停止した地域では, 個体数が著しく減少していることが判明した.しかし, 2∿3年のうちに野焼きを再開すると個体数が回復の方向へ推移することがわかった.阿蘇地域の本種が利用する吸蜜植物は, 現在までに8属8種を確認したが, 野焼き停止後数年を経過すると, これらの吸蜜植物ばかりでなく食草であるクララも減少し, ススキ等のイネ科植物の侵入によって生態系が大きく変化していることが観察された.また, 野焼きの停止は, クララの生長を悪化させることがわかった.このことから, 野焼きの停止による生息環境の変化は, 本種の個体数を著しく減少させる大きな要因の1つであると考えられる.早春における野焼きの実施は, 食草であるクララや吸蜜植物を保護し, 本種の生息環境を維持する上で有効な管理法であり, その実施は, 本種が羽化する2∿3カ月前に行う必要がある.また, クララの生育期間中の除草や採草も回避するべき作業であると考えられる.しかしながら, 畜産農家の高齢化や人手不足などから, 野焼きの実施地域は年々減少傾向にあり, 本種の存続には憂慮すべき状態となりつつある.現在, 熊本県, 阿蘇町および白水村によって全国的にも貴重な本種の保護を目的とした条例が制定されており, その内容は, 本種の全ステージの採集を禁止するものであるが, 採集禁止のみによる保護では甚だ不充分で, 野焼きの実施による生息環境の維持管理に意をそそぐ必要があると考えられる.
著者
木村 貴昭 山中 昇 九鬼 清典 林 泰弘 斉藤 匡人 木下 和也 田村 真司 赤城 ゆかり 山本 良一 玉置 かおり 高野 郁晴 保富 宗城 戸川 彰久 山室 日出子 島田 純 藤原 啓次 寒川 高男 神人 崇
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.121-130, 1997-01-01
被引用文献数
2

A comparative study was performed for the purposes of studying the prophylactic effectiveness of an antecedent treatment for Japanese cedar pollinosis with DAREN<sup>®</sup> (emedastine difumarate), an anti-allergic drug. Thirty-five cases (A group) received the drug at 4mg/day at least 2-4 weeks before the day when the pollen began to scatter. Another thirty-nine patients received the treatment after the scattering (B group). A significant inter group difference was observed in the global improvement rate for pollinosis. These findings suggest that DAREN<sup>®</sup> produces a slow, long-acting effect such as the inhibition of the release of chemical mediators. Prophylactic medication seems to be suitable for the treatment of Japanese cedar pollinosis, because sufficient anti-allergic action is obtained a few weeks later. Side effects occurred in 6.9% of all of the cases, but the incidence was lower than with any other anti-allergic drug previously reported.<br>In summary, a prophylactic treatment with DAREN<sup>®</sup> is effective in treating Japanese cedar pollinosis.
著者
植原 啓介 湧川隆次 佐藤 雅明 渡辺 恭人 砂原 秀樹 寺岡 文男 村井 純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.286-296, 2001-02-15
被引用文献数
6

現在の自動車の情報システムは,サービスごとにセンタシステムや通信基盤を含んだ独立したシステムとして構築されており,新たなサービスを始めるためのコストが高い.そこで我々は,安価にサービスを実現するための基盤として,通信部分をサービスから分離したインターネット自動車システムを提案している.本稿では,インターネットを利用した自動車用通信システムを設計・実装した.このシステムは,高速移動する自動車に安定したInternet Protocol(IP)通信環境を提供するため,インタフェース切替え等の新技術を導入している.車載コンピュータのハードウェアおよびインターネット自動車システムを基盤としたアプリケーションソフトウェアを開発し,実走行環境での実験を行った.実験では,複数の無線通信媒体が切り替わる環境において,連続的に安定したIP通信機能が実現できることが分かった.この結果,今回構築したシステムが自動車の情報化に十分利用できることが検証された.In current information systems for automobiles, each service is an independent system including its own communication system.For this reason it is costly to start a new service.In this paper, to realize an afordable service, we propose a new information system called InternetCAR.In this system the communication system and the service has been seperated.This paper describes the design and implementation of a automobilar communication system which utilized the Internet.The system makes use of interface switching and other new technologies to provide stable IP connectivity for automobiles moving at high speeds.On-board hardware and application software based on the InternetCAR system have been implemented and evaluated in an actual situation environment on board a moving car.The experiments proved that it was possible to provide stable IP connectivity in an environment where different wireless communication mediums are constantly being switched.As a result,it can be said that this system has the ability to safely and reliably connect automobiles to the Internet.
著者
原 史明 沼田 雅美 植原 啓介 砂原 秀樹 寺岡 文男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3112-3123, 2006-12-15
被引用文献数
7

ユーザの位置情報に基づき,インターネットを利用した様々な位置情報サービスが実用化されている.しかし,より利便性の高い位置情報サービスを提供するためには,多様な位置測位デバイスに対応することに加えて,多様な位置の表現形式(空間参照系)に対応する必要がある.そこで本論文はインターネット上で汎用的に位置情報を取り扱う機構であるUniversal Location Platform(ULP)を設計・実装する.ULP は位置情報取得・管理機能,空間参照系変換機能,位置情報提供機能を持ち,それぞれの機能ごとに分散化することで規模拡張性を確保する.汎用的に位置情報を記述するため,XML を利用して位置情報を取り扱う.また,多様な位置測位デバイスに対応し空間参照系変換機能によって指定した空間参照系により応答する.さらに,位置測位デバイスを抽象化した位置情報提供インタフェースを実現し,プライバシルールを利用したプライバシ保護機構を持つ.評価として位置情報検索処理時間の測定,位置情報基盤の必要要件に基づく考察を行い,ULP の実用性を検証した.In this paper, we present the design and implementation of Universal Location Platform (ULP). ULP is a location information platform, that has the location collection, location management, and location transform function. ULP separates each functions, and decentralizes on the Internet. ULP realizes the provision of locations that has variety location representations by location transform function, and privacy protection function by access control with privacy rules and the modification of location resolution. In evaluation, we did performance evaluation and verificated the practicality of ULP.