著者
川原 正博 田中 健一郎 根岸 みどり
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.663-666, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
13

必須金属である亜鉛(Zn)は、脳内では多くはシナプス小胞内に含まれ、神経細胞の興奮と共にシナプス間隙に放出される。このZnは脳神経系の機能発現、記憶学習にとっても重要な働きを持つ。近年、アルツハイマー病、プリオン病、脳血管性認知症などの神経疾患の発症にZnが重要な働きを持つことが明らかになってきた。ここでは、シナプスにおけるZnと疾患関連タンパク質の相互作用、そして神経疾患の発症に及ぼす影響について概説したい。
著者
金田 達也 大谷 誠司 高根 浩 椎木 芳和 林原 正和 大坪 健司
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.187-193, 2011 (Released:2012-04-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

To ensure the proper use of drugs,pharmacists must pay attention to drug incompatibility information.However,drug incompatibilityinformation relating to tablets or capsules in one-dose packages (DII) is not well understood.Therefore,weactively collected DII and shared it with Tottori West District pharmacists and investigated how they currently dispensedone-dose packages as well as their degree of understanding of DII.For sharing,we selected 3 combinations of one-dosepackage including the olmesartan medoxomil(OM)-metformin hydrochloride (MET) combination for which incompatibilityhad actually been reported in our area.Before sharing DII,hardly any of the pharmacists knew about such information inthe package inserts,suggesting that it was not widely available to them.Our sharing of DII enhanced understanding of itfor all combinations.Also,the dispensing of one-dose packages was improved in many hospitals and community pharmacies.This suggestedthat the active collection of DII and its sharing by pharmacists helped ensure proper drug use.However,we should shareDII continuously to achieve a thorough understanding of it and additional methods may be required (for example,makingpresentations at meetings) for this purpose.We should also actively collect DII because the DII in package inserts is insufficientto ensure proper drug use.
著者
朝比奈 滉直 小笠原 正 朝比奈 伯明 石原 紀彰 山上 裕介 秋枝 俊江 望月 慎恭 朝比奈 義明 蓜島 弘之
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.146-152, 2019-06-30 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14

リドカインテープを表面麻酔として使用した浸潤麻酔の刺入時と注入時の痛みをアミノ安息香酸エチルと比較した.さらに知的障害者へのリドカインテープ使用による浸潤麻酔時の外部行動について評価したので,報告する.はじめに,健常成人9名に対してリドカインテープとアミノ安息香酸エチルの表面麻酔効果をVASとカテゴリカルスケールにて評価を行った.次に,知的障害者20名を対象に,浸潤麻酔時に外部行動として体動,発声,啼泣の有無,表情の変化を評価した.健常成人の調査では,リドカインテープ群が刺入時と薬液注入時に「違和感がある」と評価し,「少し痛い」とした者は存在しなかった.アミノ安息香酸エチル群は刺入時に55.6%,薬液注入時に77.8%の者が「少し痛い」と評価した.知的障害者への浸潤麻酔時は,リドカインテープ群は,体動,発声,啼泣の有無,表情の変化において全員が平静を維持したが,アミノ安息香酸エチルでは,平静を維持しなかった者が存在した.1つ以上の項目で不適応行動がみられた者を不適応と判定した場合,リドカインテープ群は不適応が0%,アミノ安息香酸エチル群で不適応が50%であった(p<0.05).したがって,リドカインテープは,浸潤麻酔時に痛みを与えず,知的障害者において浸潤麻酔時の不適応行動を引き起こさず,歯科治療時の適応行動を維持するのに有用であることが示唆された.
著者
三原 正和 片山 善章 伊藤 敬一 中島 伸之
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.334-339, 1984 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16
被引用文献数
5 5

Total of 102 patients who received blood transfusion for their cardiovascular surgery were the materials of this investigation.The incidence of post-transfusion hepatitis in correlation to guanase (guanine deaminase) activity was studied.Diagnosis of post-transfusion hepatitis was made when a patient showed elevation of s-GPT over 100 units in three weeks after surgery. The follow up periods were ranging from three to six months.13 patients were developed post-transfusion hepatitis which accounted 12.7% of incidence. Patients were divided into two groups according to the level of guanase activity. Significantry high incidence was observed in the groups of patients who received transfusion with guanase activity over 2.6IU/L (12.7% VS 64.3%, χ20=18.06>χ20 (1, 0.001)=10.83)The guanase activity in transfusion blood may be feasible as a parameter for the prevention of posttransfusion non-A, non-B type hepatitis.
著者
浅見 泰司 山田 育穂 貞広 幸雄 中谷 友樹 村山 祐司 有川 正俊 矢野 桂司 原 正一郎 関野 樹 薄井 宏行 小口 高 奥貫 圭一 藤田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

あいまいな時空間情報概念の整理、あいまいな時空間情報に既存の時空間情報分析を行った時の影響分析、まわり、となりなどの日常的に使われながらも意味があいまいな空間関係の分析ツールの開発、時空間カーネル密度推定手法の開発、歴史地名辞書の構築と応用分析、あいまいな時間の処理方法の提案、古地図と現代地図を重ねるツールの開発、あいまいな3次元地形情報の分析、SNSの言語情報の空間解析、あいまいなイラストマップのGPS連動ツールの開発、スマートフォン位置情報データの分析、アーバンボリュームの測定と応用、あいまいな敷地形状の見える化などの研究成果を得た。
著者
飯野 久和 青木 萌 重野 千奈美 西牟田 みち代 寺原 正樹 粂 晃智 水本 憲司 溝口 智奈弥 小泉 明子 竹田 麻理子 尾﨑 悟 佐々木 一 内田 勝幸 伊藤 裕之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.171-184, 2013 (Released:2013-09-11)
参考文献数
44
被引用文献数
2 3

【目的】プロバイオティクスを添加していないブルガリアヨーグルトの整腸作用を調べるため,ブルガリアヨーグルトの摂取による糞便中ビフィズス菌増加作用をランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で評価する。【方法】女子学生62名をヨーグルト摂取群(ブルガリアヨーグルトを摂取する群)と酸乳摂取群(ヨーグルトと同じ乳成分からなる乳飲料に乳酸を加えてヨーグルトと同じpHとした酸性乳飲料を摂取する群)に分けた。両群ともに摂取前観察期(2週間),ブルガリアヨーグルトまたは酸乳を1日 100 ml摂取する摂取期(4週間:前半2週間,後半2週間),摂取後観察期(2週間)を設け,糞便中の腸内細菌叢の解析を2週間毎に行い,糞便中ビフィズス菌数を調べた。【結果】試験の除外対象者(過敏性腸症候群様の者,抗生剤の使用者等)および脱落者を除いた女子学生(ヨーグルト摂取群が20名,酸乳摂取群が25名)を評価対象として統計解析した。試験食品を4週間摂取した際の糞便中ビフィズス菌の生菌数は,酸乳摂取群に比較してヨーグルト摂取群が有意に高値となった。【結論】以上の結果より,ブルガリアヨーグルトの摂取によって糞便中ビフィズス菌数が増加し,腸内細菌叢が改善されることが示された。
著者
本山 智洋 Ali Baratov Rui Shan Low 浦野 駿 中村 有水 葛原 正明 Joel T. Asubar 谷田部 然治
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
日本表面真空学会学術講演会要旨集 2021年日本表面真空学会学術講演会 (ISSN:24348589)
巻号頁・発行日
pp.2Ca10S, 2021 (Released:2021-12-24)

GaN系パワー・高周波デバイスのゲート絶縁膜として有望なAl2O3薄膜を低コストな酸化物薄膜形成手法であるミストCVD法により作製し評価した。ミストCVD法で作製したAl2O3薄膜は禁制帯幅など、ALD法で作製したAl2O3薄膜と同等の物性値を示した。またAl2O3/AlGaN/GaNキャパシタの容量-電圧特性から、良好なAl2O3/AlGaN界面が形成されていることが示唆された。
著者
岡 真由美 星原 徳子 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.13-20, 2020 (Released:2021-02-06)
参考文献数
15

超高齢社会において、加齢性斜視であるsagging eye syndrome(以下SES)が注目されている。本研究では、SESの鑑別疾患としてあげられる眼球運動神経麻痺との相違を検討し、画像診断の前に視能訓練士が行うべき病態分析と視能評価について述べた。1.年齢区分別の斜視の種類 年齢区分が高くなるほど共同性斜視が減少し、非共同性斜視(眼球運動障害を伴う斜視とする)が増加した。非共同性斜視のうち、年齢区分が高くなるにつれて増加傾向にあったのは滑車神経麻痺、SES、Parkinson 病関連疾患であった。2.SESと眼球運動神経麻痺における複視の発症様式 SESは滑車神経麻痺および外転神経麻痺よりも発症から初診までの期間が長く、複視の発症日が不明確であった。3.SESと眼球運動神経麻痺の眼位・眼球運動 内斜視を伴うSES は外転神経麻痺よりも斜視角が小さく、わずかな上斜視および回旋偏位を伴っていた。上斜視を伴うSESは下転眼に外回旋がみられた。滑車神経麻痺では健眼固視のとき外回旋が上転眼にみられたが、麻痺眼固視のとき一定の傾向がなく、両者を回旋眼で評価することは困難であることがわった。 高齢者の斜視ではSESおよびその合併例が多い。SESと眼球運動神経麻痺との区別は困難であることから、病歴聴取と患者の観察、回旋偏位の検出が有用であり、むき運動検査と合わせて総合的に評価することが重要である。
著者
吉本 麻美 千葉 哲也 松井 理絵子 渡邉 真巨 五十嵐 麻子 酒匂 啓輔 谷口 亜図夢 戸田 雄 菊池 佑至 松原 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0350, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】近年人工股関節置換術(以下THA)施行後の治療プログラムは、早期離床、早期荷重に移行している。当院では、2週間プログラムを施行し、術後2日目より歩行練習を開始し、歩行自立とともにADL動作の自立を目標に行ってきた。ところで荷重能力の改善は歩行自立にあたり重要な因子と考えられる。今回、荷重能力と股関節外転筋力、歩行能力、ADL動作の関係を検討した。【対象】2003年1月より2004年9月までに当院にてTHAを施行した88例(両側同時THAを除く)を対象とした。平均年齢は63歳、男性6例、女性79例であり、平均体重は55.6kgであり、全例、術後2日目より全荷重が許可された。【方法】術前および術後7日目の荷重能力と股関節外転筋力を測定し、術後の歩行能力、ADL能力を評価した。立位にて術側足底に体重計を設置し、体重に対する比として荷重能力を測定し、背臥位における股関節外転筋の等尺性収縮による最大筋力(Nm/kg)を外転筋力として測定した。T字杖連続歩行400m、階段昇降、床上動作、正座動作、靴下着脱動作については、その自立達成までの日数を各々記録した。なお、荷重能力80%を概ね荷重が可能となった時期と判断し、術後7日目に荷重能力が80%以上となった群(以下、可能群)と80%以下の群(以下、不十分群)に分け、比較検討した。【結果】外転筋力は、不十分群0.28Nm/kgに比し、可能群0.45Nm/kgと有意に可能群で高値を示した(p<0.01)。また、術前の非術側筋力ならびに術側筋力に対する回復率はそれぞれ不十分群35%、53%に比し、可能群71%、85%であり、いずれも可能群にて有意に高い回復を示した(p<0.05)。T字杖歩行は、可能群9.3日、不十分群14.2日、階段昇降は、可能群9.7日、不十分群13日、床上動作は、可能群12日、不十分群15.9日、正座は、可能群11.8日、不十分群15.3日であり、可能群で有意に動作獲得までの期間が短かった(p<0.05)。しかしながら、靴下着脱動作は、可能群9.7日、不十分群10.7日であり、両群間に有意差は見られなかった。【考察】可能群では不十分群に比し、股関節外転筋力の回復が有意に早く、T字杖歩行達成までの期間も有意に短かった。歩行自立と外転筋力の回復が、股関節の安定性をもたらした結果、早期に階段昇降、床上動作、正座動作も可能となり、ADL動作の早期自立が達成できたと考えられる。靴下着脱動作については、荷重能力とは無関係に11日以内に可能となり、2週間プログラムに影響は及ぼさなかった。当院では2週間プログラムを施行してきたが、術後7日目で荷重能力が80%以上可能であれば、T字杖歩行とADL動作の自立が2週間プログラム内でほぼ達成できた。このことから、術後7日目での荷重能力は、T字杖歩行やADL動作自立が2週間以内に達成できる有効な指標の一つと考えられた。
著者
石原 正恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.679, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

ニホンジカの個体数の増加による採食植物の減少と不嗜好性植物の優占、そして生態系への影響が日本各地で問題となっている。生態系を管理していく上で、不嗜好性植物が優占した状態で生態系が安定するのか、それとも不嗜好性とされていた植物種も新たに採食されるようになり植物群落が変化しつづけるのか、を明らかにすることが重要である。 本研究は不嗜好性植物とされてきたオオバアサガラを対象に、京都大学芦生研究林において樹皮はぎ(剥皮)の被害状況と今後の動態を検討した。芦生研究林では2000年ころから採食植物の減少する中、オオバアサガラは分布を拡大してきたと考えられているが、2016年ころから樹皮はぎが見られるようになった。2017年にオオバアサガラ純林2ヶ所(各10m✕15m)で毎木調査を行った。剥皮は調査幹の7割でみられた。剥皮された幹の9割は枯れており、その割合は剥皮されていない幹の約3倍高かった。剥皮された幹では剥皮されなかった幹に比べ多数の萌芽が地際から伸びていた。シカによる樹皮はぎはオオバアサガラ幹を枯死させるが、しばらくは萌芽による再生と樹皮はぎが繰り返され、オオバアサガラが優占した状態が続くと考えらる。
著者
緒方 隆裕 原 正文 松谷 大門 内薗 幸亮 伊藤 平和
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0991, 2008

【目的】当院では野球選手に対して障害の予防と障害の状況を把握するため、肩関節機能・下肢機能・関節弛緩性など全身に関するメディカルチェックを実施している。メディカルチェックによるスポーツ選手の身体的特徴の把握は、スポーツによって骨・関節・筋・腱などの運動器にどのような負担がかかり、どのような障害が発生するかの予想を可能にする。今回、シーズン終了後のプロ野球投手に肩関節メディカルチェックを実施したので結果を報告する。<BR>【方法】対象はシーズンを通して一軍で登板したプロ野球投手24名である。先発投手9名、中継ぎ・抑え投手15名である。肩関節メディカルチェックはシーズン終了後に実施した。肩関節メディカルチェックは当院で実施している肩関節理学所見11項目テストを実施した。11項目のテスト内容は、1)肩甲骨脊椎間距離(SSD)、2)複合外転テスト(CAT)、3)水平屈曲テスト(HFT)、4)関節不安定性テスト(Looseness)、5)インピンジメントテスト(Impingement)、6)過外旋テスト(HERT)、7)肘関節伸展テスト(ET)、8)肘関節プッシュテスト(EPT)、9)外旋筋力テスト、10)内旋筋力テスト、11)初期外転テストとした。<BR>【結果】1)肩甲骨脊椎間距離における陽性は41.5%、偽陽性36.6%、2)複合外転テストにおける陽性は75.6%、偽陽性14.6%、3)水平屈曲テストにおける陽性は82.9%、偽陽性12.1%、4)関節不安定性テストにおける陽性は63.4%、偽陽性14.6%、5)インピンジメントテストにおける陽性は7.3%、偽陽性34.1%、6)過外旋テストにおける陽性0%、偽陽性0%、7)肘関節伸展テストにおける陽性は21.9%、偽陽性2.4%、8)肘関節プッシュテストにおける陽性は19.5%、偽陽性4.8%、9)外旋筋力テストにおける陽性は9.7%、偽陽性21.9%、10)内旋筋力テストにおける陽性は12.2%、偽陽性17.0%、11)初期外転テストにおける陽性は19.5%、偽陽性21.9%であった。<BR>【考察】水平屈曲テスト・複合外転テストはともに陽性率が高く82.9%・75.6%を示しており、これは肩甲上腕関節の可動域低下が示唆された。関節不安定性テストにおいても陽性63.4%を示しており、肩甲上腕関節における安定性の低下が示唆された。偽陽性を含む78.1%に肩甲骨の偏位がみられ、肩甲上腕関節の可動域低下による肩甲胸郭関節の代償運動の影響が示唆された。偽陽性を含む41.4%にインピンジがみられ、腱板筋力低下による影響が示唆された。
著者
道前 洋史 若原 正己
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.33-39, 2007-03-31 (Released:2016-09-10)
参考文献数
52
被引用文献数
1

表現型可塑性は生物が環境の変化に対して示す適応的反応であり、理論的にも適応進化できることが報告されている。この場合、自然淘汰は、個々の表現型ではなく反応基準を標的としているのである。しかし、表現型可塑性を適応進化させる生態的・環境的条件の実証的研究結果が十分にそろっているとはいい難い。本稿では、この問題について、北海道に生息する有尾両生類エゾサンショウウオ幼生の可塑的形態「頭でっかち型」を題材に議論を進め、表現型可塑性について、分野横断的(生態学的・生理学・内分泌学的)なアプローチも紹介する。
著者
西原 正夫 西原 守 山本 俊二
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料試験 : journal of the Japan Society for Testing Materials (ISSN:03727971)
巻号頁・発行日
vol.10, no.90, pp.168-173, 1961-03-15

Compression-creep data for zircaloy 2, Mo-Cu-Zr alloy and 18-8 stainless steel were obtained at room temperature, 250℃, 316℃ (600゜F) and 450℃ for a period of 100 hours. Zircaloy 2 and Mo-Cu-Zr alloy were casted respectively as ingot by the consumable-electrode double-arc melting. The test specimens were machined from a bar obtained from the ingot by forging, and annealed at 700℃ (Zircaloy 2) and 750℃ (Mo-Cu-Zr alloy) for 1 hour in vacuum furnace. The test equipment for compression creep is the conventional tension creep machine with a fixture consisted of two yokes which convert tensile loading into compressive loading. The fixture used is of the similar type to the one developed at the Westinghouse Research Laboratory by M.J. Manjoine. The compression-specimen which has a diameter of 12 mm and an overall length of 36 mm was compressed between two seats, the ends of the specimen and of the seats being ground and lapped. The relative displacement of the yokes was measured by dial gauge extensometer as a measure of the strain in the specimen. For checking the magnitude of instantaneous strain in creep tests, short-time tension and compression tests were made for zircaloy 2 and Mo-Cu-Zr alloy at 316℃ by using the test equipment above-mentioned. The continuous loading was given by moving a running weight sliding on the loading lever arm of the creep machine. Although at room temperature zircaloy 2 and Mo-Cu-Zr alloy have smaller instantaneous and creep strain in comparison with 18-8 stainless steel which displays appreciable creep at room temperature, they tend to have poorer creep resistance at higher temperatures, and the steady-state creep component becomes conspicuous for Mo-Cu-Zr alloy at 316℃ and for zircaloy 2 at 450℃. The creep strength of Mo-Cu-Zr alloy at 450℃ is stronger than that of zircaloy 2 when the stress level is below 17 kg/mm^2. Comparison of tension-creep and compression-creep properties for Mo-Cu-Zr alloy (at 316℃ and 450℃) show that the alloy has poorer resistance in compression than in tension within a certain limit of stress, above which an effect of decrease of stress resulted from the increase of cross-section of a compression specimen would appear. The similar phenomena for S 816 and nimonic 90 at 1600゜F have been reported by L.A. Yerkovich. This difference in creep-resistance may partly be explained by the anomalous variation of the stress-strain relationship in tension and compression. But it should be taken into account as well that the bedding-down of the ends of compression-specimen and the anisotropic effects in the resistance to deformation produced in the process of preparing the test specimen are related to the difference in creep-resistance, although in our experiment the bedding-down of the compression specimen was minimized by lapping the ends of compression specimen.
著者
石原 正仁
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.563-577, 2012-07-31
被引用文献数
1

2008年8月5日に首都圏では多数の積乱雲が発生し,東京都豊島区雑司が谷では局地的大雨による被害が生じた.第1部(石原2012)ではこの日に首都圏で発生した積乱雲群のレーダーエコーの形態を統計的に調べた.この第2部では,この日大雨警報が発せられた地域に発生した積乱雲を対象として,気象庁の3次元レーダーデータを用いて降雨のピークの時刻と量を直前に予測することを試みた.「上空における降水のコア」,「鉛直積算雨水量」,「エコー頂高度」,「雷放電」,「降水セル強度と鉛直積算雨水量の変化」の5つの指標を検討したところ,各積乱雲においてこれらの手法のうちのいくつかには効果が認められたが,効果の程度や有効な手法の組み合わせは降水セルによって異なった.「上空における降水のコア」は雑司が谷に局地的大雨をもたらした積乱雲においては有効であった.
著者
田阪 茂樹 松原 正也 佐々木 嘉三
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

神岡鉱山内「茂住」と,福井県「和泉」は,地震にともなう地下水の変化が観測される可能性があり,本科学研究経費で施設整備した観測地点である。岐阜県における地下水中ラドン観測地点はこれらを合わせて,全体で20箇所の観測点となる。平成10年4月から平成11年9月の観測期間において,岐阜県及びその周辺地域の,岐阜県神岡町「割石温泉」,福井県和泉村「平成の湯」,岐阜県養老町の3つの観測地点で,地震に伴う地下水の湯量・泉温・ラドン濃度の変動の観測データを捉えることができた。平成10年8月7日14時頃から長野・岐阜県境で群発地震が発生した。「割石温泉」観測点で,この群発地震の起こる約8時間前に泉温が約1.0℃低下し,湯量も約3週間前から毎分59から55.6lまで減少した。この観測結果は,降雨の影響ではないかと検討したが,群発地震の前兆現象である可能性が高いと結論される。引き続いて,群発地震で最大のマグニチュード5.4の地震が8月16日3時31分に岐阜県飛騨地方で発生した。この地震発生に伴って,湯量が毎分57から79lに急増し,泉温が1.5℃上昇した。ラドン濃度は地震前の減少傾向から,地震後に増加し始めた。また,地震の前後での湯量データの潮汐解析結果から,地震の前後で潮汐成分の位相と振幅に変化がある事が判明した。これは地殻の体積歪みの変化を意味するものである。割石温泉におけるこれらの観測結果は,過去20年間の湯量観測の結果を確認するとともに,今後の地震予知につながる貴重な観測データであると評価される。
著者
伊藤 謙 宇都宮 聡 小原 正顕 塚腰 実 渡辺 克典 福田 舞子 廣川 和花 髙橋 京子 上田 貴洋 橋爪 節也 江口 太郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = Nihon Kenkyū (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.157-167, 2015-03-31

日本では江戸時代、「奇石」趣味が、本草学者だけでなく民間にも広く浸透した。これは、特徴的な形態や性質を有する石についての興味の総称といえ、地質・鉱物・古生物学的な側面だけでなく、医薬・芸術の側面をも含む、多岐にわたる分野が融合したものであった。また木内石亭、木村蒹葭堂および平賀源内に代表される民間の蒐集家を中心に、奇石について活発に研究が行われた。しかし、明治期の西洋地質学導入以降、和田維四郎に代表される職業研究者たちによって奇石趣味は前近代的なものとして否定され、石の有する地質・古生物・鉱物学的な側面のみが、研究対象にされるようになった。職業研究者としての古生物学者たちにより、国内で産出する化石の研究が開始されて以降、現在にいたるまで、日本の地質学・古生物学史については、比較的多くの資料が編纂されているが、一般市民への地質学や古生物学的知識の普及度合いや民間研究者の活動についての史学的考察はほぼ皆無であり、検討の余地は大きい。さらに、地質学・古生物学的資料は、耐久性が他の歴史資料と比べてきわめて高く、蒐集当時の標本を現在においても直接再検討することができる貴重な手がかりとなり得る。本研究では、適塾の卒業生をも輩出した医家の家系であり、医業の傍ら、在野の知識人としても活躍した梅谷亨が青年期に蒐集した地質標本に着目した。これらの標本は、化石および岩石で構成されているが、今回は化石について検討を行った。古生物学の専門家による詳細な鑑定の結果、各化石標本が同定され、産地が推定された。その中には古生物学史上重要な産地として知られる地域由来のものが見出された。特に、pravitoceras sigmoidale Yabe, 1902(プラビトセラス)は、矢部長克によって記載された、本邦のみから産出する異常巻きアンモナイトであり、本種である可能性が高い化石標本が梅谷亨標本群に含まれていること、また記録されていた採集年が、本種の記載年の僅か3年後であることは注目に値する。これは、当時の日本の民間人に近代古生物学の知識が普及していた可能性を強く示唆するものといえよう。
著者
柏原 正樹 河合 隆裕
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.161-163, 1985-05-17 (Released:2008-12-25)
参考文献数
25