著者
吉川 恵次 高橋 将史 行田 祐樹 川井 桂 羽柴 正夫
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.219-228, 2008-04-15 (Released:2009-07-19)
参考文献数
21

症例は58歳,男性。アルコール依存症で某精神病院に入院中。原因不明の心肺停止(CPA)を来した時期は抗酒薬の投与で無症状,安定期にあった。某日,午前 6 時55分,病棟ホールでCPAとなった。CPAの 1 分後から,胸骨圧迫の中断をできる限り少なくした心肺蘇生(CPR)を開始,継続した。卒倒から14分後に初回のAED通電, 3 回目の通電が心肺停止後30分での自己心拍再開に繋がった。転院先病院での低体温療法を併用しない集中治療の後,患者の神経学的所見はCPA前の程度にまで回復,良好な神経学的転帰が得られた。本症例はCPAからAED実施まで経過時間が長い場合でも,適正なCPRが実施されれば脳血流の維持による良好な神経学的転帰が期待できることを示した症例と考えられる。AED心電図では心室細動に対するアドレナリン投与の有効性が示唆された。
著者
田村 誠朗 北野 将康 東 幸太 壷井 和幸 安部 武生 荻田 千愛 横山 雄一 古川 哲也 吉川 卓宏 斎藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 角田 慎一郎 細野 祐司 中嶋 蘭 大村 浩一郎 松井 聖 三森 経世 佐野 統
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.450-455, 2017 (Released:2018-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

症例は65歳女性.X-17年に間質性肺炎合併多発性筋炎と診断されステロイド薬が開始.X-8年に関節リウマチを合併しタクロリムス(Tac)が併用となっていた.X年2月上旬から全身倦怠感と高血圧が出現,さらに血液検査で,血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,LDH高値,高クレアチニン血症を認めたことから,血栓性微小血管障害症(TMA)と診断.TMAの原因としてcalcineurin inhibitor(CNI)腎症を疑い,Tacを中止し血漿交換を開始した.以降,破砕赤血球は消失し,血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検を施行.その結果はTMAの病理組織像であった.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比較し低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非定型的であった.後に抗PL-7抗体が陽性であることが判明.本症例は強皮症の診断基準は満たさなかったが,同抗体陽性例では強皮症を合併したとする報告がある.すなわち潜在的な強皮症素因を背景にCNI腎症が重篤化した可能性が示唆された.抗PL-7抗体陽性の患者にTacを投与する際はTMAの発症に十分留意する必要がある.
著者
吉川 加奈子
出版者
大分県立看護科学大学看護研究交流センター
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-24, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
2

少子高齢化を背景に質の高い看護の提供がより一層求められている。第17回看護国際フォーラムでは、マグネットホスピタルとして認定を受けたメイヨークリニックで、看護教育スペシャリストとして活躍するAbraham博士に、看護師を惹きつける魅力ある病院づくりについて御講演頂いた。本稿では、メイヨークリニックの1)看護実践モデル、2)組織環境、3)人材育成、4)看護管理について、講演の内容を紹介する。様々な立場や役割をもつ看護師が、自律した専門職として成長を遂げながら、質の高い看護を提供し、病院で長く活躍し続けている。今回の講演から、急激な少子高齢化を迎える我が国でも、質の高い看護にむけて魅力ある病院づくりが広がることが期待された。
著者
三橋 明城男 吉川 隆英
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.272-288, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
51

半導体のチップあたりのトランジスタ数は過去50年間,一貫して指数関数的に増加しており,搭載可能な論理的な機能の大規模化,複雑化をもたらしている.この動きに対応するため,論理設計手法も回路図ベースから言語ベースへと進化し,更に設計資産の再利用や標準バスインタフェースの採用などにより設計生産性を上げてきた.同様に,論理機能検証においても主に多様化する機能の検証網羅性と検証作業の生産性の課題が顕在化し,従来の手法では立ち行かなくなってきている.そこで,本稿ではこのような検証の課題を解決するための検証技術や検証メソドロジ(検証の方法論,手順,やり方),標準化の歴史などについて解説する.更に機能やその組み合わせの検証の範囲を越えて,近年重要性が増している非同期回路設計や低消費電力回路設計に伴って発生する新たな論理・回路検証項目や,セキュリティ対応や機能安全標準への準拠など,検証を更に複雑化する検証対象と,その対策についても解説する.また,これまでハードウェアの開発技術がソフトウェア開発技術の進化に追従する形で発展してきた歴史を振り返り,今後の検証技術の発展可能性についても展望する.
著者
町田 英世 工藤 卓 吉川 悟 中井 吉英
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.135-141, 2000-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

心療内科で扱う慢性疼痛症では, 症状に対して器質的病因が特定し得なかったり, 病因に相関しない疼痛が持続することが多い.こうした場合, 治療者側の疼痛の評価はより主観的となり, 病態に対する患者との認知の差が大きくなりやすい.そのため治療にあたっては, 患者が家族や治療者と行うコミュニケーションや相互作用に配慮することが重要になってくる.こうした視点で慢性疼痛を捉えることは, 治療的な相互作用の構成を課題とする短期療法の適応が考慮されるべき点である.今回は, 短期療法の一つといえる「問題の外在化」を用いて治療した慢性疼痛症例をあげながら, 心療内科における心理療法の応用について述べたい.
著者
吉川 恒夫 井村 順一 村井 雅彦
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.3, no.7, pp.218-225, 1990-07-15 (Released:2011-10-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

In this paper, we propose a robust control scheme which achieves trajectory tracking with prescribed accuracy for robot manipulators with bounded unknown parameters. This scheme is based on Lyapunov stability theorem, and the Lyapunov function is constructed using the intertia matrix. Therefore, the control law takes a very simple form which does not include the inverse of the intertia matrix. Moreover, based on the assumption that the dynamic equation can be expressed as a sum of products of unobservable matrices which contain unknown parameters and observable state vectors, this scheme makes the best use of observable states. Due to this we can expect smaller control gains. Finally, the effectiveness of the proposed control sheme is shown by numerical simulations and experimental results using a 2-degree-of-freedom manipulator.
著者
高橋 信弘 吉川 治孝 泉川 桂一 石川 英明
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.7-15, 2017 (Released:2018-05-21)
参考文献数
65

光学顕微鏡で認識可能なほど巨大なリボソームは全ての細胞におけるタンパク質合成すなわち生存に必須である.細胞は,その増殖に必要とする総物質量・総エネルギー量の70~80%をこのリボソーム生合成のためだけに消費する.したがって,リボソーム生合成は,細胞増殖だけでなく,細胞の成長・細胞周期の制御,老化・ストレス応答,癌遺伝子や成長因子の作用にも大きく関わっている.しかし,ヒト細胞のリボソーム生合成過程が数百種類のタンパク質とRNAが関わるあまりにも複雑な過程であり,それを解析する手段が近年まで無かった.プロテオミクスの進展に伴い,タンパク質複合体の単離技術,タンパク質の大規模な同定及び定量化の技術が飛躍的に向上した.そして,ヒト細胞におけるリボソーム合成中間体の構成成分の同定とその機能解析が急速に進み,ヒト細胞リボソーム生合成経路とその制御機構が明らかになりつつ有る.本総説では,解明されつつあるヒトのリボソーム生合成過程とその制御機構について我々の知見を含めて概説したい.
著者
室橋 春光 河西 哲子 正高 信男 豊巻 敦人 豊巻 敦人 間宮 正幸 松田 康子 柳生 一自 安達 潤 斉藤 真善 松本 敏治 寺尾 敦 奥村 安寿子 足立 明夏 岩田 みちる 土田 幸男 日高 茂暢 蓮沼 杏花 橋本 悟 佐藤 史人 坂井 恵 吉川 和幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

発達障害は生物学的基盤を背景とし、社会的環境の影響を強く受けて、非平均的な活動特性を生じ、成長途上並びに成人後においても様々な認知的・行動的問題を生ずる発達の一連のありかたである。本研究では発達障害特性に関する認知神経科学的諸検査及び、社会的環境・生活の質(QOL)に関する調査を実施した。脆弱性と回復性に関連する共通的背景メカニズムとして視覚系背側経路処理機能を基盤とした実行機能やワーキングメモリー機能を想定し、事象関連電位や眼球運動等の指標を分析して、個に応じた読みや書きなどの支援方法に関する検討を行った。また、QOLと障害特性調査結果の親子間の相違に基いた援助方法等を総合的に検討した。
著者
田口 幸洋 広渡 文利 吉川 謙造
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.26, no.138, pp.263-271, 1976-10-30 (Released:2009-12-14)
参考文献数
15

The Fuke mine, situated at about 10 km north of Okuchi city in Kagoshima Prefecture, is one of the gold-silver ore deposits of the epithermal vein type in the Green-tuff region. The ore deposit is considered to be an intermediate type between the gold-silver vein and the base metal vein.The high grade ore in the mine is named "Tozi-kin" in which can be visually recognized the part where fine-grained golds are concentrated. As for the electrum in this ore, mode of occurrence and chemical composition have been investigated by a microscope and EPMA. The results are as follows : 1. The Tozi-kin ore often shows a characteristic banded arrangement from the wall rock to the inner of the ore; Fe-Mg chlorite, drusy quartz with pyrite and hematite, fine-grained quartz with banded sulfides and electrum, and green clay mainly composed of chlorite-saponite mixed-layer.2. Paragenetic sequence of vein minerals may be divided into four stages; First stage: Drusy quartz accompanied by pyrite and hematite. Second stage: Fine-grained quartz characterized by sulfides and electrum. Third stage: Altered minerals. Fourth stage: Barren quartz associated with calcite. 3. Observed ore minerals are electrum, galena, sphalerite, chalcopyrite, pyrite, hematite, hessite, and an unkown Ag-Au telluride.4. Electrum precipitated after the precipitation of sulfides in the second stage.5. The electrum filling intergranular cavities of quartz is irregular and angular in shape, whereas that in sulfides varies from granular to cylindrical, and often amoebic.6. The grain size of electrum is generally less than 50 microns in diameter, but it attains 200 microns in some cases.7. The chemical composition of electrum from the Fuke-honpi vein shows a very little fluctuation among grains as well as in a grain, with an average chemical composition Ag 19.1 wt.%, Au 80.6 wt.%.Some of these properties of electrum such as the homogenity of composition and the relatively coarse grains, are considerably different from those of electrum in the Kuroko ore.
著者
吉川 康夫 熊安 貴美江 飯田 貴子 井谷 惠子 太田 あや子 吉川 康夫
出版者
帝塚山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、スポーツ内で生じるセクシュアル・ハラスメント問題の現状を解明するための最初のアプローチとして、女子大学生のスポーツ領域におけるセクシュアル・ハラスメント認識と経験を調査し、その特殊性を明らかにすることを目的とした。第一に、女子大学生について、セクシュアル・ハラスメントの経験および認識に関する全体的な状況を把握した。第二に、スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメントについての経験や考えに関して女子大学生に対するグループインタビューを行った。第三に、体育系の女子学生とそれ以外の女子学生のセクシュアル・ハラスメント経験スポーツの場とスポーツ以外の場で比較し、両グループの経験および認識の差異を検討した。第四に、上記の調査結果を総合的に分析し、諸外国の調査事例との比較検討も含め、日本のスポーツにおけるセクシュアル・ハラスメントの特徴を女子学生の視点から考察した。体育系女子学生がスポーツの場で経験するセクシュアル・ハラスメントと、体育系以外の女子学生がスポーツ以外の場で経験するセクシュアル・ハラスメントの違いに関して、前者は「身体的特徴を話題にする」「腕や肩にさわる」などの行為を、後者はこれら2項目に加え、「性的なことばや冗談」「性的経験について質問」「からだを眺め回す」などの行為を多く経験していた。両者の認識の違いに着目すると、設定した19項目の行為のうち、17項目について、体育系女子学生(スポーツの場)は体育系以外の女子学生(スポーツ以外の場)よりもセクシュアル・ハラスメントになりうる行為に対して許容的であることが明らかになった。とりわけ、前者が経験する身体接触的行為については、これをセクシュアル・ハラスメントと認識しない学生も多く存在し、指導ゆえに許容される身体接触行為のなかに、同時にセクシュアル・ハラスメントとなりうる契機が存在することもまた、確認された。
著者
高峰 修 飯田 貴子 井谷 惠子 太田 あや子 熊安 貴美江 吉川 康夫
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.16-28, 2009 (Released:2023-06-28)
参考文献数
5
被引用文献数
1

The purpose of this study is to examine the relationships among items of sexual harassment (SH) experienced by female Japanese college students inside of sport settings. Respondents were asked to answer whether or not they had experienced as SH 19 specific male behaviors toward female college students inside of sport settings. Data was collected by questionnaire. The survey was addressed to 4,208 students at 23 colleges, from June to November, 2003, and in October, 2006, and 3,989 students responded. Nine hundred ninety eight female students belonging to intercollegiate athletic clubs, and 477 female students belonging to intramural sport clubs were available for statistical analysis in this study. The experiences of SH inside of sport settings were first compared with respect to two types of sport clubs. Female students reported that they had been physically touched or massaged, or had been told jokes of a sexual nature. Among members of intercollegiate clubs, the percentage of persons who perceived “physical touching” behavior as SH was lower than that among members of intramural clubs. Intercollegiate club members reported their harassers to be instructors employed from outside their universities, while intramural club members reported them to be faculty members and upperclassmen in their clubs. Many female students reported that, when they experienced SH behavior inside sport settings, they shrugged of the behavior, did nothing, or were unable to do anything. Logistic regression analyses were conducted to examine the structure of behavior experienced as SH. Among intercollegiate athletic club members, “persistent sexual advances” as a dependent variable was significantly explained by three variables: “ask female students out to dinner or on a date,” “send e-mail with sexual content,” and “give female students a back/shoulder massage while giving instructions,” while among intramural club members, only “make female students serve tea or perform personal tasks” significantly explained “persistent sexual advances.” Finally, the importance of considering the structure of experienced SH items is discussed.
著者
吉川 大志 金子 里可
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.55-61, 2022-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
20

【目的】脳卒中片麻痺者2例に対する短下肢装具(ankle-foot orthosis:以下、AFO)装着の改善を目的とした工夫について報告する。【方法】症例1(右片麻痺者)は本人用AFO作製時にクイックリングを採用し、面ファスナーシールを足部外側に貼付したことで、リングにベルトを通しやすく、足部の下にベルトが挟まれないようにした。症例2(左片麻痺者)はAFOを床に立てて装着する方法で練習を行い、AFOベルトへの装着番号シールの貼付や手順書を提示し装着手順を視認できるようにした。【結果】症例1は本人用AFO作製後に装着時間が短縮し、AFOの履き易さや愛着が改善した。症例2はAFO自己装着動作を含めた短距離歩行が自立した。【結論】脳卒中片麻痺者に対するAFO装着に対して工夫を行った結果、自己装着の自立度や装着時間、履き易さが改善された。
著者
大和田 隆夫 飯野 久栄 石間 紀男 吉川 誠次
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.147-152, 1978-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
5 5

温州ミカン果汁の主要成分である糖と酸の含量と嗜好との関係を明らかにするため,官能検査を行ない,次のような結果を得た。(1) 消費者に受け入れられる範囲は糖酸比からみると最低は12.5であった。より正確には,適正糖酸比は酸度によって変化し,糖酸比だけでは果汁の嗜好性を説明しきれなかった。(2) 最高嗜好度は糖と酸の相互作用によって変り,両者の関係式6X+8≧Y≧6X+6を満たす糖度(Y)と酸含量(X)のとき最高値が得られた。(3) 100%果汁の大部分は,これらの範囲外に分布するものと推定され,果汁の酸度に応じて糖を加えることにより,より消費者の嗜好に適したものにすることができることを認めた。(4) 天然ジュースに対して砂糖を加えることにより,消費者の嗜好性を高めることができるのは,甘味を適当な強さに上げると同時に,砂糖により酸味をやわらげる効果のあるためであることが明らかになった。(5) 消費者のジュースに対する反応は,酸味の強いものに対しては厳しく,甘味の強いものに対しては寛大であることが明らかであった。
著者
Sinchaisri Tip-Aksorn 永田 伴子 吉川 泰弘 甲斐 知恵子 山内 一也
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.409-416, 1992-06-15 (Released:2008-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
9 12

狂犬病ウイルスCVS株を, 脳内, 眼球内, 鼻腔内, 筋肉内, 皮下それぞれの経路でマウスに接種した後, 中枢神経系におけるウイルスの広がりをアビジン-ビオチン複合体(ABC)法を用いた免疫化学的および病理組織学的手法によって経時的に検索した. 脳内接種と眼球内投与群でのみマウスは致死性感染を生じたので, この2経路において詳細な検討を行った. 脳内接種マウスでは, ウイルス抗原は主に大脳皮質の神経細胞, 錐体細胞, 海馬の顆粒細胞に認められた. 眼球内接種マウスにおいては, 最初に三叉神経節に検出され, 続いて大脳皮質と小脳に広がっていく傾向が観察された. 海馬で眼球内接種の初期では極く僅かの細胞に抗原が認められたのみであった. いずれの経路においても感染マウスの中枢神経系には炎症像もNegri小体も認められなかった. この結果から, 死に至る運動失調や衰弱といった臨床症状は, 炎症反応によるものではなく, ウイルスの神経系機能への直接的な影響に起因することが示唆された. また, 通常の病理組織学的検査や海馬のスタンプ標本の蛍光抗体法では狂犬病の同定ができない症例が存在する可能性が示唆され, 狂犬病を疑われて早期に死亡した患者や屠殺された動物などの検査には, ABC法が有用であると考えられた.
著者
宮本 学 岡部 公樹 吉川 知伸 金子 恵美 緒方 美佳 吉田 幸一 本村 知華子 小林 茂俊
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.213-223, 2023-08-20 (Released:2023-08-21)
参考文献数
26

我々は,災害医療従事者を対象に,災害時のアレルギー患者対応に関するパンフレットや相談窓口など既存のツールの評価,災害医療従事者のアンメットニーズを調査するためアンケート調査を行い,266名から回答を得た.アレルギーに関する情報を得る手段は,平時では電子媒体や講演会が,災害時にはスマートフォンアプリや紙媒体の要望が多かった.アレルギー関連webサイトなど既存ツールの認知度は約10~30%と高くなかった.COVID-19が災害時のアレルギー疾患対応に悪影響があると回答したのは66%であった.73%の災害医療従事者が,災害時アレルギー対応窓口の一本化を望んでいた.また,自助の啓発,患者情報を把握するためのツールを要望する意見も多数みられた.これらの結果から,災害医療従事者に向けたアレルギー疾患マニュアルの拡充を積極的に行う必要があると考えられた.
著者
中井 將人 吉川 明良 舟原 宏子 開 浩一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.307-315, 2021-06-10 (Released:2022-06-10)
参考文献数
29
被引用文献数
1

The criteria for palliative chemotherapy discontinuation have not been adequately systematized. We evaluated the relevance of the neutrophil-lymphocyte ratio, platelet-lymphocyte ratio, prognostic nutritional index, modified Glasgow Prognostic Score (mGPS), and clinicopathological factors as potential factors for chemotherapy discontinuation in patients with recurrent and unresectable pancreatic cancer.We retrospectively analyzed the data of 91 patients who received palliative chemotherapy for recurrent and unresectable pancreatic cancer at Hiroshima City Hospital between April 2014 and March 2018. Factors significantly related to chemotherapy discontinuation were extracted using Coxʼs proportional-hazard model, and a prognostic model was established by combining these factors.The median overall survival was 76 days. Multivariate analysis of the factors revealed that the mGPS (0/1-2) (hazard ratio [HR] = 3.053, P = 0.005), the presence of distant metastatic disease (HR = 2.605, P < 0.001), and the status of recurrent or initially unresectable disease (HR = 2.587, P = 0.013) were significantly associated with the discontinuation decision. One point was assigned to each of these three factors to create the prognostic model. A total score index of 0-3 was used to categorize three prognostic risk groups. The high-risk group (3 points) had a significantly lower overall survival than the low- (≤1 point) (P < 0.001) and intermediate-risk (2 points) groups (P < 0.001).Our study shows that mGPS and this prognostic model can help determine whether chemotherapy should be discontinued in patients with relapsed and unresectable pancreatic cancer.
著者
茂木 伸之 吉川 徹 佐々木 毅 山内 貴史 髙田 琢弘 高橋 正也
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2022-0018-CHO, (Released:2023-09-05)
参考文献数
28

日本では教員の長時間労働や精神疾患による病気休職者数が減少していない状況である.本研究は,過労死等の重点業職種である教職員に該当する義務教育教員の多くを占める公立小中学校教員の公務災害の過労死等防止対策に資する課題抽出を目的として,公務災害として認定された過労死等の負荷業務の特徴について検討した.対象は2010年1 月から2019年3月までに公務災害に認定された全392件(脳・心臓疾患事案146件,精神疾患等事案246件)の内,教員88件(脳・心臓疾患事案52件,精神疾患等事案36件)とした.その結果,脳・心臓疾患の100万人当たりの発症件数は男性が80%を占め,男女の疾患名では脳内出血が最も多かった.精神疾患等は,100万人当たりの発症件数は男性が多く,疾患名はうつ病エピソードが最も多かった.学校別の件数は,脳・心臓疾患は中学校で多く,精神疾患等は小中学校それぞれ半数であった.脳・心臓疾患事案では,負荷業務として「部活動顧問」が最も多く,長時間労働を認定要件とする事案に影響を及ぼした.精神疾患等では,業務による負荷の「住民等の公務上での関係」における保護者によるものが最も多かった.負荷業務である「部活動顧問」,「住民等の公務上での関係」の課題を解決することが,公立小中学校教員の過労死等防止対策のひとつになると考えられる.