著者
鈴木 雅一 執印 康裕 堀田 紀文 田中 延亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1. 幼令スギ・ヒノキ林を対象に、斜面上部下部の蒸発散量、土壌水分、土壌呼吸量を計測するとともに、流域内の微気象の空間分布計測を行ない、斜面がもたらす不均一さを明らかにするための計測を進めた。1) 植栽された樹木の成長が斜面部位で異なることについて、谷を横断する側線約50mについて、樹高、幹直径、葉窒素含有量、土壌水分、地下水位、土壌溶液水質、土壌窒素量などが調べた。5年生のスギの成長が谷で旺盛であり、尾根部が劣る理由は、尾根部における水ストレスがもたらすものではなく、湿潤な谷部の土壌有機物の分解による窒素の供給が谷部の活発な成長に関わっているという結果をえた。2)レーザプロファイラのデータを用いて植栽された樹木位置と樹高を小流域単位で評価する手法について検討を進め、小流域の全域について樹高の分布が図化された。2. タイ国チェンマイ近郊のドイプイ山に位置するKog-Ma試験地(樹高約30mの常緑林)にある50mタワーにおいて取得された微気象データを解析し、斜面風の形成と樹冠上から林内の気温形成過程、風速鉛直分布の形成過程について、解析した。1)樹冠上から林内の気温形成過程に与える夜間斜面下降風の影響は、夜間に生ずる斜面下降風発生の発生、非発生は大気安定度の指標であるバルクリチャードソン数に関係している。夜間の放射冷却が弱いとき、気温鉛直分布における最低気温は林床近くで生ずる。放射冷却が強くなると、樹冠上部で最低気温が生ずる。そして、更に放射冷却が強くなると樹冠上を吹く斜面下降風が強くなり、再び林床付近で最低気温が生ずるという、3段階の気温鉛直分布形成機構があることが、明らかにされた。2)昼間の風速鉛直分布の形成過程は、夜間に比べて解析が困難であった昼間の風速鉛直分布について、大気安定度と鉛直分布の関係を解析した。
著者
堀口 健雄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は渦鞭毛藻類における眼点の多様性の実体を把握しようとするものである。また,分子系統学的な解析により,渦鞭毛藻類において眼点がどの系統で獲得され,あるいは二次的に消失したのかといった問に対する答えを見いだすことも目標とした。さらに特殊な眼点をもつDinothrix paradoxaについては,その眼点の分裂機構を明らかにつることに努めた。各地から採集した渦鞭毛藻類の眼点の有無を調査した結果,タイドプールに生育するGymnodinium pyrenoidosum,Scrippsiella hexapraecingula,Scrippsiella sp.の3種で眼点の存在が確認された。これらの眼点の微細構造を調べたところ,3種とも葉緑体中に脂質顆粒が並ぶタイプの眼点で,しかも脂質顆粒が2列に並ぶ構造をもっていた。このように脂質顆粒が2列に並ぶタイプの眼点は今まで知られていない。18SrRNA遺伝子の塩基配列を9種類の渦鞭毛藻類について決定し,DDBJのデータベースから取得した25種のデータを加えて分子系統解析をおこなった。その結果,同じタイプの眼点をもつG.pyrenoidosumとS.hexapraecingula が単系統となり,D.paradoxaも上記2種と同じクレードに含まれることが明らかとなった。このことは特殊であるとされるD.paradoxaの眼点も通常の眼点の変形である可能性を示唆するものである。D.paradoxaの眼点の分裂については光学顕微鏡レベルで連続観察をおこなった。その結果,元の眼点は分裂することなく,細胞質内でde novoに眼点が形成されるらしいことが明らかになった。この点については,眼点を包む膜の由来などの問題もありさらなる検討が必要である。
著者
堀田 浩充
出版者
東北大学
雑誌
東北大學選鑛製錬研究所彙報 (ISSN:0040876X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.9-14, 1977-09-30

The details of observations of the photoconductive spectra (0.7 to 2.5 μm) for the natural pyrite crystal are described with some supplements to the experimental results of the previous report. Several sub-peaks have been observed at 77 K near the principal peak of 0.9 eV which is attributed to the interband transition. The sign of dE_G/dT is determined to be negative from the temperature-variation of the peak. Photoconductive decay of the natural pyrite crystal has been observed at 77 K with the 2 μs pulsed white light. Three different life times (τ_j) have been derived from the empirical formula, V=Σ V_jexp (-t/τ_j), which applies to the observed decay curve. Their values of τ_j are about 80 μs, 5 ms and 65 ms, respectively.
著者
古和田 孝之 吉川 隆敏 山本 英人 堀井 洋
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.271-272, 1994-03-07

近年、手書き文字認識の研究が進められ、商品化が盛んに行われている。しかし、不特定多数のユーザを対象にしたシステムの場合、文字データなどのパターン情報だけで高認識率を達成するのは困難である。それを解決する方策として、言語情報を用いた認識後処理技術が必要となる。現在の手書き入力システムの使用シーンを考えると、一般文書の入力よりも、住所、氏名、会社名、商品名など、記入すべき文字列の属性があらかじめ決まっているような形式の入力が主流で、また通常このような入力形式では、一般文書の入力よりも高い認識精度が要求される。このような状況を踏まえ、住所、氏名のように入力属性が限定されている場合の後処理手法の開発を行った。本報告では、その中から、名前に対する認識後処理として、姓名辞書と単漢字辞書を利用し、フリガナ連動処理と単漢字処理を行う手法について述べる。
著者
東 自由里 リム ボン 大津留 智恵子 出口 剛 ジェイ クラパーキ 堀田 秀吾 イアン ホザック 米山 裕
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

当該研究プロジェクトは、最終年度のため、研究代表者及び分担者はそれぞれ次の研究プロジェクトを視野にいれて研究活動を行った。研究代表の東は2005年5月にゲルニカ平和ミュージアム(スペイン)で開催された国際平和ミュージアム学会と国際博物館協会(ユネスコ本部、ICOM)の分科委員会である「公共に対する犯罪犠牲者追憶のための記念博物館国際委員会」(ICMEMO)との共催で行われた国際会議で発表する。ゲルニカではICMEMO委員会の会合も行われ、関連テーマを共有する欧州の特に館長を中心とした歴史博物館関係者たちとの学術的交流をもつ機会を得ることができた。国際会議での発表は、ゲルニカ平和ミュージアムの編集によって著書になることが決定している。3月は在外研究でフランクフルト大学に客員研究院として滞在中の分担者である出口剛司との研究会及びドレスデンの戦後復興事業の視察と資料収集のために、リム、東は渡欧し、現地での研究協力者たちと研究会を行った。ドレスデンは冷戦終結がするまで旧東ドイツ側に属する。そのため、旧西ドイツとは対照的に、最近になってようやく歴史を見直す動きがでてきている。ドレスデン在住のザクゼン記念財団の代表者、創設者でもあるノーバート・ハッセ博士の案内で、ハッセ氏の財団が運営しているいくつかの主要な歴史博物館視察することができ有意義な議論と意見交換を行った。尚、当該研究の研究成果は著書『負の遺産とミュージアム』(文理閣)にまとめることが決定している。また、英文の著書を出版する予定でもある。今年度も、これまでと同様に文献資料では得がたい貴重な学術的交流をフィールド・ワーク及び人的交流を積極的に行ってきたといえよう。
著者
島岡 みどり 蛭田 秀一 小野 雄一郎 堀 文子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本、スウェーデン、中国の老人介護施設において、介護業務従事職員の作業負担とその関連項目について、アンケート調査およびフィールド調査を行った。アンケート調査(日本325人、スウェーデン84人、中国74人)の結果比較において、日本の職員の作業負担とその関連項目の特徴として、中国とともに作業量が多く作業は通常1人で行われ、さらに疲労度や筋骨格系症状が3か国の中で最も高い状況にあることが示された。スウェーデンの特徴としては、作業量は少なく、2人以上で作業を行う機会が多く、就業継続希望も高いが、仕事や待遇への不満は大きかった。中国の特徴としては、日本とともに1人作業および作業量が多く、特に時間外労働をする割合が高いが、仕事や待遇への満足度は高かった。3種類のフィールド調査(勤務中の上体傾斜角、心拍数、歩数の各測定)のうち、座位作業と休憩時間を除く上体傾斜角測定(日本3人で4回、スウェーデン7人が各1回、中国は実施せず)において、日本の介護職員はスウェーデンの職員に比較して、より深い角度寄りの頻度分布を示した(双方とも看護師1人を除く)。心拍数測定(日本24人、スウェーデン6人、中国15人)では、各国とも個人差が大きく、休憩時間を含む勤務時間中の身体活動強度指標(%HRR)の平均値は26%〜27%とほぼ同水準であった。休憩時間を含む勤務時間1時間当たりの歩数の平均値(日本45人各1日、スウェーデン5人で延べ25日分、中国7人延べ30日分)は、日本(1122歩/時間)が最大で、次いで中国(1026歩/時間)、スウェーデン(779歩/時間)の順であった。本研究において、相対的に多くの日本の介護業務従事職員が、高水準の作業負担と疲労の状況を示したことから、各国の状況も参考にしながら、より適切な作業量や作業方法の目安が設定されるべきであると考察された。
著者
佐藤 亨 杉本 秀樹 堀内 悦夫 川合 通資
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.21, pp.6-11, 1984-12-25

直播水稲(やや晩播)の生育相を普通期移植のそれと比較し,とくに根の発達の様相と関連させて明らかにしようとした。移植・乾田直播・湛水直播の3区を設け,それぞれ5月16日(6月23日移植)・6月14日・6月17日に播種し,生育と根群(モノリス法による)の様相を調べた。1.地上部の生育(草丈・茎数)は移植区が大であるが,直播区の初期生長は旺盛で,移植区に対し播種期のおくれをとり戻すような形をとる。2.直播区の根数は生育初期から急速に増加し,その速度は移植区よりはるかに大である。3.乾田直播では初期の根の生長は湛水直播に劣るが、濯水すると旺盛になる。直播区の根群の発達は良好で,土壌の表層に分布が密になる。4.生育後期になると,直播とくに湛水直播区の根および地上部の生育が鈍化し,秋落的な傾向をとる。この生育を旺盛に保つには根の活力を維持することが肝要である。
著者
渡辺 四郎 船川 正哉 馬越 立郎 山本 茂 堀川 武
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
関西造船協会誌 (ISSN:03899101)
巻号頁・発行日
no.141, pp.25-31, 1971-09-30

A unique technique of measuring the stress of propeller blade under service condition was developed, and applied to the stress measurement of a controllable pitch propeller of an actual ship. In this report, the measuring apparatus and methods are mainly stated, outline of which is as follws; The strain gauge wire is connected from the propeller to the steering engine room through the slip-ring on the rudder-horn. The strain gauge wires are loosened between the blade and propeller boss, and the loosened wire is covered for protection from the damage by the water flow. By this unique method, the measuring can be accomplished without extracting and boring of propeller shaft. Adhesion and coating of strain gauges were studied and it was made clear that epoxy type adhesive for strain gauge adhesion and the coating by rubber type bond are best. The flexibility of the rubber type bond is especially effective to overcome the cracks in the coating even after drying. Stress measurement is conducted under the stational sea-going condition and the crash astern test. The obtained records at these tests are shown. According to these records, the double amplitude of oscillating stress of the blades is in the same extent as the mean stress.
著者
奥野 克己 堀内 正樹 宇野 昌樹
出版者
京都文教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、中東・アラブ世界に発した「先発グローバリズム」を支えている人的ネットワークの現状を解明することにあった。エジプト/スーダン、シリア/レバノン、モロッコという3地域をそれぞれハブとする各地に広がるネットワークの様態をフィールドワークによって明らかにし、人・モノ・情報の移動における人々のコミュニケーションのあり方、生きるスタイルの特徴を解明した。その人的ネットワークの析出は、現在展開する近代西洋発のグローバリズムの弊害をも含めた特徴を照射する結果となった。
著者
堀 憲次
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究では、モデル化合物N-formylaziridine及びそのプロトン付加体に関して極限的反応座標(IRC)を含めた詳細な非経験的分子軌道(MO)計算を行い、1-アシルアジリジンの異性化反応機構を理論的に検討することを目的とした。これに関連して、N-formylaziridineと同じくアミド部分を有するアジリジン誘導体、1-(R)-α-methoxy-α-trifluoromethylphenyl-acetyl-(S)-2-methyl-aziridineにおいて実験を行い、MO計算結果と比較検討を行った。その結果以下のことが判明した。(1)強い求核種が存在しない反応条件では、低い活性化エネルギー(38.9kcal mol^<-1>)の遷移状態(TS)を経て反応は進行する。このTSを経る反応は、反応前後でアジリン環の不斉炭素の立体を保持するS_Ni機構であることが、IRC計算により確認された。(2)スキーム1に示す反応では、メチル基ヲ持つC-N結合が選択的に解裂する。このモデル反応えは、28.2kcal mol^<-1>、置換基の無いC-N結合の解裂には、39.8kcal mol^<-1> の障壁があると計算された。両者の結果は良い一致を示している。(3)強い求核種(本研究ではCl^-をモデルとした)によるアジリジン環の開環と線型中間体の生成反応の活性化エネルギー(14.0kcal mol^<-1>)は、S_Ni機構のそれに比べて小さいと計算された。従って、強い求核種の存在下では、線型中間体の生成がS_Ni機構に優先して進行する。しかしながら、カルボニル酸素による2回目のS_N2反応は、高い活性化エネルギーを有する(45.4kcal mol^<-1>)と計算された。この結果は、実測された最終生成物の遅い反応速度と良い一致を示している。
著者
大堀 研
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

地域デザインの一環としての環境政策の形成および展開過程を、岩手県葛巻町、福井県池田町を対象に社会学的・実証的に検討した。社会課程の相違点として、開発政策の有無など初期条件の違いにより、展開される政策内容に違いが出ることが明らかとなった。また、両町に共通の要素として、町の特性を意識した環境政策の展開、柔軟な住民参加手法の採用の二点を把握することができた。
著者
稲積 泰宏 吉田 俊之 酒井 善則 堀田 裕弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1130-1142, 2002-07-01
被引用文献数
29

リアルタイム動画像通信に関するアプリケーションが普及する一方で,ユーザ数やユーザ当りの需要帯域の増大等によって帯域の確保が困難となっていることを背景として,動画像を利用可能なビットレートに再符号化して伝送するトランスコーダの必要性が高まっている.ユーザから見たサービス品質を可能な限り高く保つためには,動画像の空間・時間方向の情報をバランス良く削減する画質評価基準が必要がある.従来のトランスコーダは主に2乗誤差に基づく制御が行われているが,2乗誤差はユーザが視・知覚する動画像品質(主観評価品質)を直接に表しているとはいえない.そこで本論文では,ビデオサーバに蓄えられた動画像(原画像)を指定されたビットレートで再符号化する際に,主観評価品質を最大化するフレームレート(最適フレームレート)の推定手法を提案する.本手法は,多くの主観評価実験による平均オピニオン評点(MOS:Mean Opinion Score)を少数のパラメータを含む関数で近似し,原画像から得られる特徴量を用いて関数のパラメータを推定する.この関数に対して指定されたビットレートを与え,その最大点を求めることによって最適フレームレートを得る.提案法を用いてopen dataに対する最適フレームレートを区間推定した結果,平均誤差4frames/s程度で推定可能なことを確認している.
著者
深沢 克己 齊藤 寛海 黒木 英充 西川 杉子 堀井 優 勝田 俊輔 千葉 敏之 加藤 玄 踊 共二 宮野 裕 坂野 正則 辻 明日香 宮武 志郎 那須 敬 山本 大丙 藤崎 衛
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

当初の研究計画に即して、国際ワークショップと国際シンポジウムを3年連続で組織し、第一線で活躍する合計14名の研究者を世界各国から結集して、キリスト教諸宗派、イスラーム、ユダヤ教などを対象に、広域的な視野のもとで異宗教・異宗派間の関係を比較史的に研究した。これにより得られた共通認識をふまえて、研究者間の濃密な国際交流ネットワークを構築し、研究代表者を編集責任者として、全員の協力による共著出版の準備を進めることができた。
著者
加藤 哲郎 田中 ひかる 丹野 清人 堀江 孝司 小野 一 岡本 和彦 井関 正久 大中 一彌 高橋 善隆 鳥山 淳 島田 顕 許 寿童
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、研究代表者が長年進めてきた現代国家論研究と近年取り組んでいる情報政治研究の結節点で、経済のグローバル化と共に進行する国内政治の国際政治化、国際政治の地球政治化を解析した。モノ・カネ・ヒトが国境を越える「帝国」型グローバル政治の形成と、そのもとで進行する民衆の移動・越境・脱国家化の動きに注目し、既存の概念の変容と新しい課題を実証的な国際比較と歴史的・思想的系譜から考察した。
著者
武田 和夫 石黒 寛 田中 里恵 丸山 純一 笠松 隆志 大川 真 堀 伸二郎
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.280-288, 2002-10-25
参考文献数
7
被引用文献数
2 11

残留農薬の一斉分析に,GC/MS/MSを使用したときの感度及び精度を明らかにし,その有用性を検証することを目的として検討を行った.4種の農産物(ほうれんそう,にんじん,たまねぎ及び玄米)をそれぞれアセトン抽出し,GPCカラム及びグラファイトカーボンカートリッジで精製したものをマトリックス試料とし,35種類の農薬を添加して分析精度の検討を行った.その結果,検出限界はGC/MS (SIM)と比較してほぼ同等であった.各種マトリックスを添加した農薬標準溶液の測定再現性は,0.1 μg/mL及び0.05 μg/mLの濃度においてそれぞれ良好であったが,0.02 μg/mLでは35農薬中20農薬において変動係数が 10% 以上となった.SIM測定では避けられないマトリックス成分による妨害ピークも,GC/MS/MSを使用することによって影響を排除できる例が複数確認された.