著者
松永 武 小林 健介
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.31-44, 2001 (Released:2010-02-25)
参考文献数
56
被引用文献数
4

The prophylactic use of stable iodine is one of the protective measures during a nuclear emergency. In order to know the resultant radiation dose to the thyroid gland and the effectiveness of iodine prophylaxis in the case of Japanese, a sensitivity analysis was performed for related physiological parameters for Japanese. As a result, the variances in the deposition efficiency of radioactive iodine aerosol in the respiratory tract due to changes in the respiratory parameters were found rather small between the standard Caucasian and Japanese. The changes due to the radioactive iodine aerosol size were more significant, suggesting the importance of understanding the physico-chemical status of aerobic radioiodine released in a nuclear emergency. Concerning the metabolic parameters of iodine, the result of the sensitivity analysis based on an iodine metabolic model showed that the most critical parameters are those which describe the transport of stable and radioactive iodine from the blood compartment to the thyroid gland. Accordingly, a confirmation of the transport model and the related parameters for Japanese are essential to clarify the effectiveness of iodine prophylaxis to reduce thyroid gland exposure of Japanese. (This work was performed under the auspices of the Science and Technology Agency of Japan.)
著者
大久保誠也 小林 正人 本多 武尊 眞鍋秀聡 青木 輝人 柿下 容弓 小松原 頌之 西野 哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.20, pp.25-32, 2007-03-05
被引用文献数
7

本稿では,2006年11月18日にUEC(電気通信大学)で開催された,第1回UECコンピュータ大貧民大会(UECda-2006)の概要を報告する.大貧民は,日本で広く行なわれているトランプ・ゲームのひとつである.本大会は大貧民をプレイするコンピュータ・プログラムを対戦させる大会である.以下では,本大会の概要,本大会で採用した大貧民のルール,大会規模,使用したプログラム,および決勝戦の結果について述べる.In this talk, we give a summary report of the First UEC computer DAIHINMIN championship (UECda-2006) held at UEC (The University of Electronic-Communications) on November 18, 2006. DAIHINMIN is one of the most popular card game played in Japan. In this championship, computer DAIHINMIN engines compete against each other. We present the outline of the championship, the adopted rules, number of participants, used programs, and the result of the final match.
著者
小林 正子 竹本 泰一郎 田原 靖昭 田川 宜昌 東郷 正美
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衞生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.309-316, 1995-11-30
参考文献数
13
被引用文献数
12
著者
三木 文雄 小林 宏行 杉原 徳彦 武田 博明 中里 義則 杉浦 宏詩 酒寄 享 坂川 英一郎 大崎 能伸 長内 忍 井手 宏 西垣 豊 辻 忠克 松本 博之 山崎 泰宏 藤田 結花 中尾 祥子 高橋 政明 豊嶋 恵理 山口 修二 志田 晃 小田島 奈央 吉川 隆志 青木 健志 小笹 真理子 遅野井 健 朴 明俊 井上 洋西 櫻井 滋 伊藤 晴方 毛利 孝 高橋 進 井上 千恵子 樋口 清一 渡辺 彰 菊地 暢 池田 英樹 中井 祐之 本田 芳宏 庄司 総 新妻 一直 鈴木 康稔 青木 信樹 和田 光一 桑原 克弘 狩野 哲次 柴田 和彦 中田 紘一郎 成井 浩司 佐野 靖之 大友 守 鈴木 直仁 小山 優 柴 孝也 岡田 和久 佐治 正勝 阿久津 寿江 中森 祥隆 蝶名林 直彦 松岡 緑郎 永井 英明 鈴木 幸男 竹下 啓 嶋田 甚五郎 石田 一雄 中川 武正 柴本 昌昭 中村 俊夫 駒瀬 裕子 新井 基央 島田 敏樹 中澤 靖 小田切 繁樹 綿貫 祐司 西平 隆一 平居 義裕 工藤 誠 鈴木 周雄 吉池 保博 池田 大忠 鈴木 基好 西川 正憲 高橋 健一 池原 邦彦 中村 雅夫 冬木 俊春 高木 重人 柳瀬 賢次 土手 邦夫 山本 和英 山腰 雅宏 山本 雅史 伊藤 源士 鳥 浩一郎 渡邊 篤 高橋 孝輔 澤 祥幸 吉田 勉 浅本 仁 上田 良弘 伊達 佳子 東田 有智 原口 龍太 長坂 行雄 家田 泰浩 保田 昇平 加藤 元一 小牟田 清 谷尾 吉郎 岡野 一弘 竹中 雅彦 桝野 富弥 西井 一雅 成田 亘啓 三笠 桂一 古西 満 前田 光一 竹澤 祐一 森 啓 甲斐 吉郎 杉村 裕子 種田 和清 井上 哲郎 加藤 晃史 松島 敏春 二木 芳人 吉井 耕一郎 沖本 二郎 中村 淳一 米山 浩英 小橋 吉博 城戸 優光 吉井 千春 澤江 義郎 二宮 清 田尾 義昭 宮崎 正之 高木 宏治 吉田 稔 渡辺 憲太朗 大泉 耕太郎 渡邊 尚 光武 良幸 竹田 圭介 川口 信三 光井 敬 西本 光伸 川原 正士 古賀 英之 中原 伸 高本 正祇 原田 泰子 北原 義也 加治木 章 永田 忍彦 河野 茂 朝野 和典 前崎 繁文 柳原 克紀 宮崎 義継 泉川 欣一 道津 安正 順山 尚史 石野 徹 川村 純生 田中 光 飯田 桂子 荒木 潤 渡辺 正実 永武 毅 秋山 盛登司 高橋 淳 隆杉 正和 真崎 宏則 田中 宏史 川上 健司 宇都宮 嘉明 土橋 佳子 星野 和彦 麻生 憲史 池田 秀樹 鬼塚 正三郎 小林 忍 渡辺 浩 那須 勝 時松 一成 山崎 透 河野 宏 安藤 俊二 玄同 淑子 三重野 龍彦 甲原 芳範 斎藤 厚 健山 正男 大山 泰一 副島 林造 中島 光好
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.526-556, 2005-09-25

注射用セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の下気道感染症に対する早期治療効果を評価するため, ceftazidime (CAZ) を対照薬とした比較試験を市販後臨床試験として実施した。CZOPとCAZはともに1回1g (力価), 1日2回点滴静注により7日間投与し, 以下の結果を得た。<BR>1. 総登録症例412例中最大の解析対象集団376例の臨床効果は, 判定不能3例を除くとCZOP群92.0%(173/188), CAZ群91.4%(169/185) の有効率で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。細菌性肺炎と慢性気道感染症に層別した有効率は, それぞれCZOP群90.9%(120/132), 94.6%(53/56), CAZ群93.3%(126/135), 86.0%(43/50) で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。<BR>2. 原因菌が判明し, その消長を追跡し得た210例での細菌学的効果は, CZOP群89.5%(94/105), CAZ群90.5%(95/105) の菌消失率 (菌消失+菌交代) で, 両群間に有意な差はみられなかった。個々の菌別の菌消失率は, CZOP群91.1%(113/124), CAZ群90.8%(108/119) で両群問に有意な差はみられなかったが, 最も高頻度に分離された<I>Streptococcus pneumoniae</I>の消失率はCZOP群100%(42/42), CAZ群89.5%(34/38) で, CZOP群がCAZ群に比し有意に優れ (P=0.047), 投与5日後においてもCZOP群がCAZ群に比し有意に高い菌消失寧を示した (P=0.049)。<BR>3. 投薬終了時に, CZOP群では52,4%(99/189), CAZ群では50.3% (94/187) の症例において治療日的が達成され, 抗菌薬の追加投与は不必要であった。治療Il的遠成度に関して両薬剤間に有意な差は認められなかった。<BR>4. 随伴症状の発現率はCZOP群3.9%(8/206), CAZ群5.0%(10/202) で両棊剤間に有意な差はなかった。臨床検査値異常変動として, CAZ群に好酸球増多がCZOP絆より多数認められたが, 臨床検査値異常出現率としては, CZOP群31.6% (65/206), CAZ群32.2% (65/202) で, 両群間に有意な差は認められなかった。<BR>以上の成績から, CZOPは臨床効果においてCAZと比較して非劣性であることが検祉された。また<I>S. pneumoniae</I>による下気道感染症に対するCZOPの早期治療効果が確認された。
著者
小林 宏行 武田 博明 渡辺 秀裕 太田見 宏 酒寄 享 齋藤 玲 中山 一朗 富沢 麿須美 佐藤 清 平賀 洋明 大道 光秀 武部 和夫 村上 誠一 増田 光男 今村 憲市 中畑 久 斉藤 三代子 遅野井 健 田村 昌士 小西 一樹 小原 一雄 千葉 太郎 青山 洋二 斯波 明子 渡辺 彰 新妻 一直 滝沢 茂夫 中井 祐之 本田 芳宏 勝 正孝 大石 明 中村 守男 金子 光太郎 坂内 通宏 青崎 登 島田 馨 後藤 元 後藤 美江子 佐野 靖之 宮本 康文 荒井 康男 菊池 典雄 酒井 紀 柴 孝也 吉田 正樹 堀 誠治 嶋田 甚五郎 斎藤 篤 中田 紘一郎 中谷 龍王 坪井 永保 成井 浩司 中森 祥隆 稲川 裕子 清水 喜八郎 戸塚 恭一 柴田 雄介 菊池 賢 長谷川 裕美 森 健 磯沼 弘 高橋 まゆみ 江部 司 稲垣 正義 国井 乙彦 宮司 厚子 大谷津 功 斧 康雄 宮下 琢 西谷 肇 徳村 保昌 杉山 肇 山口 守道 青木 ますみ 芳賀 敏昭 宮下 英夫 池田 康夫 木崎 昌弘 内田 博 森 茂久 小林 芳夫 工藤 宏一郎 堀内 正 庄司 俊輔 可部 順三郎 宍戸 春美 永井 英明 佐藤 紘二 倉島 篤行 三宅 修司 川上 健司 林 孝二 松本 文夫 今井 健郎 桜井 磐 吉川 晃司 高橋 孝行 森田 雅之 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 宏 高橋 健一 大久保 隆男 池田 大忠 金子 保 荒川 正昭 和田 光一 瀬賀 弘行 吉川 博子 塚田 弘樹 川島 崇 岩田 文英 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 宇野 勝次 八木 元広 武田 元 泉 三郎 佐藤 篤彦 千田 金吾 須田 隆文 田村 亨治 吉富 淳 八木 健 武内 俊彦 山田 保夫 中村 敦 山本 俊信 山本 和英 花木 英和 山本 俊幸 松浦 徹 山腰 雅弘 鈴木 幹三 下方 薫 一山 智 斎藤 英彦 酒井 秀造 野村 史郎 千田 一嘉 岩原 毅 南 博信 山本 雅史 斉藤 博 矢守 貞昭 柴垣 友久 西脇 敬祐 中西 和夫 成田 亘啓 三笠 桂一 澤木 政好 古西 満 前田 光一 浜田 薫 武内 章治 坂本 正洋 辻本 正之 国松 幹和 久世 文幸 川合 満 三木 文雄 生野 善康 村田 哲人 坂元 一夫 蛭間 正人 大谷 眞一郎 原 泰志 中山 浩二 田中 聡彦 花谷 彰久 矢野 三郎 中川 勝 副島 林造 沖本 二郎 守屋 修 二木 芳人 松島 敏春 木村 丹 小橋 吉博 安達 倫文 田辺 潤 田野 吉彦 原 宏起 山木戸 道郎 長谷川 健司 小倉 剛 朝田 完二 並川 修 西岡 真輔 吾妻 雅彦 前田 美規重 白神 実 仁保 喜之 澤江 義郎 岡田 薫 高木 宏治 下野 信行 三角 博康 江口 克彦 大泉 耕太郎 徳永 尚登 市川 洋一郎 矢野 敬文 原 耕平 河野 茂 古賀 宏延 賀来 満夫 朝野 和典 伊藤 直美 渡辺 講一 松本 慶蔵 隆杉 正和 田口 幹雄 大石 和徳 高橋 淳 渡辺 浩 大森 明美 渡辺 貴和雄 永武 毅 田中 宏史 山内 壮一郎 那須 勝 後藤 陽一郎 山崎 透 永井 寛之 生田 真澄 時松 一成 一宮 朋来 平井 一弘 河野 宏 田代 隆良 志摩 清 岳中 耐夫 斎藤 厚 普久原 造 伊良部 勇栄 稲留 潤 草野 展周 古堅 興子 仲宗根 勇 平良 真幸
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.333-351, 1995-07-31
被引用文献数
2

新規キノロン系経口合成抗菌薬grepafloxacin (GPFX) の内科領域感染症に対する臨床的有用性を全国62施設の共同研究により検討した。対象疾患は呼吸器感染症を中心とし, 投与方法は原則として1回100~300mgを1日1~2回投与することとした。<BR>総投与症例525例のうち509例を臨床効果判定の解析対象とした。全症例に対する有効率は443/509 (87.0%) であり, そのうち呼吸器感染症432/496 (87.1%), 尿路感染症11/13 (84.6%) であった。呼吸器感染症における有効率を疾患別にみると, 咽喉頭炎・咽頭炎19/22 (86.4%), 扁桃炎17/18 (94.4%), 急性気管支炎53/58 (91.4%), 肺炎104/119 (87.4%), マイコプラズマ肺炎17/19 (89.5%), 異型肺炎5/5, 慢性気管支炎117/133 (88.0%), 気管支拡張症48/63 (76.2%), びまん性汎細気管支炎17/19 (89.5%) および慢性呼吸器疾患の二次感染35/40 (87.5%) であった。<BR>呼吸器感染症における細菌学的効果は233例で判定され, その消失率は単独菌感染では154/197 (78.2%), 複数菌感染では22/36 (61.1%) であった。また, 単独菌感染における消失率はグラム陽性菌48/53 (90.6%), グラム陰性菌105/142 (73.9%) であり, グラム陽性菌に対する細菌学的効果の方が優れていた。呼吸器感染症の起炎菌のうちMICが測定された115株におけるGPFXのMIC<SUB>80</SUB>は0.39μg/mlで, 一方対照薬 (97株) としたnornoxacin (NFLX), onoxacin (OFLX), enoxacin (ENX) およびcipronoxacin (CPFX) はそれぞれ6.25, 1.56, 6.25および0.78μg/mlであった。<BR>副作用は519例中26例 (5.0%, 発現件数38件) にみられ, その症状の内訳は, 消化器系18件, 精神神経系13件, 過敏症3件, その他4件であった。<BR>臨床検査値異常は, 490例中49例 (10.0%, 発現件数61件) にみられ, その主たる項目は, 好酸球の増多とトランスアミナーゼの上昇であった。いずれの症状, 変動とも重篤なものはなかった。<BR>臨床効果と副作用, 臨床検査値異常の安全性を総合的に勘案した有用性については, 呼吸器感染症での有用率422/497 (84.9%), 尿路感染症で10/13 (76.9%) であり, 全体では432/510 (84.7%) であった。<BR>以上の成績より, GPFXは呼吸器感染症を中心とする内科領域感染症に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
瀬尾 和大 小林 啓美
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.23-36, 1980-03-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1

It has been frequently said that seismograms obtained in Tokyo contain rather long-period components in themselves. Authors pointed out the importance to make clear extensive and deep underground structure of the Tokyo Metropolitan area, based on the experience on simultaneous observation of earthquake ground motions under the different kinds of geological conditions.In this paper, results on the seismic prospectings in the southwestern part of the Tokyo Metropolitan area were presented. Outline of the interface between sedimentary layers and the uppermost layer of the earth's crust was shown in the form of “time-term”, along the line stations from Yumenoshima, Tokyo to Enoshima, Kanagawa. The length of this line was almost 50 kilometers long.From the distribution of those time-terms, it was made clear that the interface mentioned above changes its depth more remarkably and rapidly, in comparison with those which obtained in other parts of the Tokyo Metropolitan area by many researchers. Most of all, Enoshima and its vicinities were confirmed to be situated on the boundary which distinguishes inner sedimentary zone of the Kanto Plain from outer outcrop zone of firm substratum.From these results, the mechanism of formation and propagation concerning rather long-period earthquake ground motions can be expected to be elucidated.
著者
小林 映子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.961, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
4

妊婦への解熱鎮痛剤の使用について,NSAIDsは流産との関連性を示唆する報告や,胎児動脈管早期閉鎖との関連性によって妊娠後期は禁忌とされ,注意喚起されている.一方でアセトアミノフェンは,より安全性が高いとされ使用経験は多く,欧米では妊婦の半数以上に使用経験があるといわれている.妊娠後期の使用における胎児動脈管への影響との因果関係は認められていないとされているが,ヒトでの研究から胎盤を通過し長期間胎児の血液循環に残るとされる.近年,注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)との関連を示唆する多数の前向きコホート研究の結果が示され,欧米で大きな話題となった.さらにメタ解析によっても胎児曝露との有意な関連性を示した.妊婦の医薬品使用による胎児へのリスク評価については,倫理的視点から介入試験ができないことにより,観察研究の結果に情報が限定されるため正確な評価が難しい.ADHDやASDとの関連性に関するこれまでの研究も,ほとんどが母親の自己申告情報に基づくものであった.そこで今回,子宮内での胎児のアセトアミノフェン曝露による影響を明らかにする目的で,出生時の臍帯血漿中濃度と児の疾患診断との関連性について前向きコホート研究を実施した.特に,本研究は以前の研究で指摘されてきたエビデンスとして用いる上での制限や方法論的懸念に対応すべく研究デザインが設定された.その結果,ADHDおよびASDのリスクに有意な正の相関が確認され,用量反応性も認められたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Dathe K. et al., BJOG, 126, 1560-1567(2019).2) Ystrom E. et al., Pediatrics, 140, e20163840(2017).3) Masarwa R. et al., Am. J. Epidemiol, 187, 1817-1827(2018).4) Ji Y. et al., JAMA Psychiatry, 77, 180-189(2020).
著者
小林 由佳 井上 彰臣 津野 香奈美 櫻谷 あすか 大塚 泰正 江口 尚 渡辺 和広
出版者
公益財団法人 産業医学振興財団
雑誌
産業医学レビュー (ISSN:13436805)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.225-250, 2021 (Released:2021-01-01)
被引用文献数
1

多様化する産業保健上のニーズに応える能力として、産業保健専門職のリーダーシップが注目されている。本稿では産業保健専門職がリーダーシップをさらに向上させ、活動を展開していくための指針となる考え方を提案することを目的とし、リーダーシップ研究の文献レビューから産業保健専門職のリーダーシップにふさわしい概念を検討し、活動事例による例示を行なった。文献レビューでは、これまでの変遷から、近年提唱された「権限によらないリーダーシップ」に着目し、適応型および共有型リーダーシップの産業保健専門職への適用の有用性を掘り下げた。さらに事例検討から、両リーダーシップは産業保健専門職が日常的に発揮できるものであり、課題解決に有効となり得ることが示された。
著者
井上 紳 牧野 睦月 太田 秀一 酒井 哲郎 斉藤 司 小林 洋一 小川 玄洋 松山 高明
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.268-274, 2010 (Released:2011-02-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1

心房細動の発生機序は,期外収縮の連発が心房受攻性を刺激することで誘発された機能的リエントリーであると考えられている.先行する期外収縮連発の機序としては肺静脈壁左房筋袖細胞からの撃発活動が有力視されており,一方の機能的リエントリーの基質としては左房後壁周囲の心筋構造の不均一性が想定されている.そのため,それぞれが高周波通電治療の対象になっている.肺静脈壁左房筋袖は4本の肺静脈で囲まれた左房後壁を構成する心房筋と発生学的に同一とされているものの,近年の遺伝子学的検討から本来の心筋組織とは異なる肺原基の中胚葉起源説が提唱され,潜在的自動能の保持や短い不応期など,心房のほかの部分とは電気生理学的性質が異なることが示唆されている.長い肺静脈筋袖は心筋配列が複雑だが,顕微鏡的観察では肺静脈末梢側で徐々に心房筋袖細胞が小型化し,その先端では洞結節細胞に類似したものがみられる.機能的リエントリーの基質が存在する左房後壁周囲に関しては,心内膜面の肉眼的観察では櫛状筋が目立つ右房と異なり全体が白く平滑で,僧帽弁前庭部と後壁や天蓋部との境界が不明瞭である.それに対し,心外膜面の肉眼的観察では肺静脈開口部周囲を冠静脈洞筋束やMarshall筋束,Bachmann束,一次および二次中隔が取り巻き,きわめて複雑な構造を示すことがわかる.特に冠静脈洞筋束は冠静脈洞内径の2~3倍の広さで分布しており,機能的リエントリーの発生に関与すると思われる.加齢とともに間質線維化や脂肪浸潤により組織不均一性は亢進するが,左房周囲の心房筋線維化には心房の発育・分化に伴うapoptosisも関与していることが予想される.現在の非薬理学的不整脈治療は,肺静脈心房筋袖や左房周囲の大循環系静脈筋袖の付着部をアブレーション・隔離することが主流であり,組織多様性の軽減がその本質と考えられる.
著者
小林 健二
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.35, pp.55-80, 2009-02-27

劇中に登場する独武者の素性を解明する作業を通して、能《大江山》が酒呑童子諸本の中でも香取本「大江山絵詞」に拠って作られていることを確認し、その独武者が能《土蜘蛛》にも登場することから、能の世界で頼光物として連作されたことを考証した。さらに、「大江山絵訶」絵巻は室町将軍のもとで作成され、その周辺に伺候していた観世座の者によって《大江山》が作劇された可能性について考察した。By clarifying Hitorimusha's identity who appears in the Noh “Oeyama”, this paper proves that this Noh was created by Katoribon of “Oeyama-ekotoba” among various kinds of Shutendoji-monogatari's manuscripts. Since this Hitorimusha also appears in the Noh “Tsuchigumo”, I examine that these Nohs were written as series of Raiko-mono in the world of Noh. Then I consider that the picture scroll of “Oeyama-ekotoba” was made under the patronage of Ashikaga shogun, and there is a possibility that a certain person of Kanze school who was around Shogun composed the Noh “Oeyama”.
著者
河野 吉久 松村 秀幸 小林 卓也
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.206-219, 1994-07-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
18
被引用文献数
3

人工酸性雨の長期暴露実験を行うため, ミスト型降雨装置に代わる半自動走行式の雨滴落下型人工降雨装置を開発・製作した。本装置は, 直径約1mmの雨滴を発生し, 有効降雨面に対して1時間当たり2.5mmの降雨強度で運転が可能である。また, 降雨量の分布や繰り返し精度は10%以下であった。この降雨装置を用いて, 1991年から1993年の3年間に合計46種類の樹木を対象に人工酸性雨の暴露実験を行った。用いた人工酸性雨の組成は, 硫酸, 硝酸, 塩酸イオンの当量濃度比が5: 2: 3となるように, これら3種の酸を脱イオン水に混合して人工酸性雨原液を調製した。人工酸性雨原液を, 脱イオン水で容量希釈して, 人工酸性雨 (SAR) とした。SARの設定pHは, 5.6 (対照区), 4.0, 3.5, 2.5, および2.0であった。なお, SARは, 1週間に20mm (2.5mm×8hr) を3回の割合で暴露した。SARのpHが2.0の場合には, 供試したすべての樹種の葉に壊死斑点などの可視害が発現した。11種類の針葉樹の中では落葉性のカラマツだけがpH2.5以下で落葉したことから, 針葉樹の中ではカラマツが最も感受性であると考えられた。しかし, pH3.0以上のSARを3あるいは4ケ月間暴露しても針葉樹には可視害の発現は観察されなかった。SARのpHが3.0では, 常緑広葉樹14種のうち7種, 落葉広葉樹21種のうち14種に可視害が発現した。また, 落葉広葉樹の7種は, pH2.0の暴露終了時点でほとんど落葉し, 3種は枯死した。しかし, 常緑広葉樹の場合には, pH2.0でも全葉が落葉したり枯死した樹種はなかった。サクラ属のソメイヨシノやアンズは, pH3.0のSAR暴露によって, 早期落葉や壊死斑点部分が穿孔状態となった。しかし, 供試した46種には, pH4.0のSARを3あるいは4ケ月間暴露しても可視害の発現は観察されなかった。これらの可視害発現状況を指標にした場合, 広葉樹よりも針葉樹の方が酸性雨に対して相対的に耐性であった。また, 広葉樹の中では, 常緑広葉樹よりも落葉広葉樹の方が相対的に感受性であると考えられた。
著者
小林 信一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.247-260, 1992-10-15
被引用文献数
7

本論文は、若者の科学技術離れの問題の文化的、社会的背景を明らかにしようとするものである。オルテガは「科学技術文明が高度に発達すると、かえって科学技術を志向する若者が減る事態が発生する」と議論した。これが今日の我が国でも成立するか、成立するとすればそれはどのようなメカニズムによるのかを実証的に検討することが本論文の目的である。このために、まずオルテガの議論を、科学技術と文化・社会の連関モデルとして実証可能な形に定式化した。これを実証するために、世論調査や高校生を対象とする意識調査のデータをログリニア・モデルなどの統計的な連関分析手法で注意深く分析した。その結果、オルテガの仮説は今日の我が国でも概ね成立することが明らかになった。また、短期的な実証分析の結果を外挿的なシュミレーションによって超長期に展開する工夫を施し、その結果がオルテガの文明論的な議論と整合的であることを確認した。分析結果は、オルテガの指摘した逆説的事態は必然的に発生するものであることを示している。
著者
得丸 定子 小林 輝紀 平 和章 松岡 律
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.411-419, 2006-06-15
参考文献数
32

「いのち教育」を展開するための基礎的知見を得るために,大学生を対象に「死の不安に関する多次元的尺度(MFODS)」を用いて,「死と死後の不安」についての意識調査を行い,結果として以下のことが得られた.(1)因子分析では「死と死後の不安」について5因子抽出された.この因子分析結果は,因子数や因子の内容共に,MFODSが開発されたアメリカでの調査及び追試の結果とは異なった.原因としては,宗教や文化的慣習の相違が挙げられる.この相違は「いのち教育」を実践する場合,宗教や慣習を考慮した展開が重要であることを示している.(2)信仰している宗教の有無については,本調査でも約60%の学生が無宗教と回答していた.「いのち教育」は宗教や慣習行事と深い関係があり,実践に際しては宗教や慣習は考慮する必要がある.日本の場合,無宗教と信仰心がないこととは別のことであり,初詣をする,おみくじを引く,お墓参りをするなどの宗教的慣習行動をとっている.このことは「いのち教育」展開の導入として,意味は大きい.(3)「宗教観の低い」学生は「死後の自分の世界と肉体に対する不安」因子が低く,「死体に対する不安」因子が高かった.「宗教観が低い」学生は目に見えない世界やことについて価値を置かない結果と考えられる.(4)性別と「死と死後の不安」の関係では,女子学生が男子学生に比べてすべての5因子で高い結果を示した.これは歴史的・文化的背景を含んだジェンダーバイアスとも考えられる.男子学生には「死と死後の不安」が少ないことではなく,むしろ男子学生には無意識的に表現が抑圧されているだけに精神的ストレスが大きいことが考えられる.(5)抽出された「死と死後の不安」5因子は,「いのち教育」を展開する際の内容の提示と考えられる.今後「死と死後の不安」5因子を「いのち教育」の授業内容として具体的に展開する研究や実践がなされることが期待される.
著者
新城 拓也 清水 政克 小林 重行 濱野 聖二 岡野 亨 中村 宏臣 石川 朗宏 関本 雅子 槇村 博之 本庄 昭 神戸市医師会 在宅医療懇談会
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-113, 2014 (Released:2014-02-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

【目的】本研究の目的は, 神戸市内の医師が感じている, 在宅医療に関する困難・負担感の実態を調査することである. 【方法】神戸市内の医療機関を対象に, 2013年7月に質問紙を発送した. 【結果】神戸市内の医療機関1,589施設に発送し, 899施設から返答を得た (返答率 57%). 主調査項目に対して, 返答のあった807施設(51%)を解析対象とした. そのうち, 在宅医療に対する困難・負担感は「かなり感じている」(30%), 「少し感じている」 (31%)であった. 困難の決定因子として, 医師の年齢が80歳以上(P=0.05), 在宅医療に関しての困難として「特定の医療処置」(P=0.036), 「他医療機関・介護職との連携」(P=0.002), 「時間と人員の確保」(P<0.001)が分かった. 【結論】過半数の医療機関で在宅医療に困難・負担感を感じていることが分かった.