著者
下山 和弘 大芦 治 海野 雅浩 内田 達郎 長尾 正憲 小田切 一浩 山崎 久美子
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.132-140, 1993

高齢歯科患者の主訴と抑うつ傾向との関連を明らかにするために, 東京医科歯科大学高齢者歯科治療部の外来患者 (男性88名, 女性132名, 平均年齢74.5歳) を対象にZungの自己評価式抑うつ性尺度 (SDS) により抑うっ傾向の調査を行った。SDSの質問項目よりQOLの因子と抑うつ感の因子を抽出し, SDSの総得点, QOLの因子得点, 抑うつ感の因子得点と口腔内状況との関連については以前報告した。今回は被検者を主訴により義歯不適合 (上下顎全部床義歯装着者) 群義歯不適合 (その他の義歯装着者) 群, 義歯破折群, 義歯不適合・歯疼痛動揺群歯疼痛動揺 (義歯装着者) 群, 歯疼痛動揺 (義歯非装着者) 群, 心身医学的対応症例群その他の主訴をもつ群に分類し, 上記の3得点について2 (男女別) ×2 (該当する主訴の分類) の分散分析を行った。歯疼痛動揺 (義歯装着者) 群ではその他の群と比較するとQOLの因子得点が有意に低く, SDSの総得点が低い傾向があった。また心身医学的対応症例群ではSDSの総得点および抑うつ感の因子得点が有意に高かった。SDSの総得点は主訴の相違によらず女性が男性よりも有意に高かった。すなわち主訴の相違は男女間の抑うっ傾向の差に影響していなかった。本研究の結果から高齢歯科患者の主訴と抑うっ傾向との問には関連があることが推察された。歯科治療時には顎口腔系における主訴の内容を踏まえたうえで, 患者の抑うっ傾向を含めた精神的身体的な状態の把握が必要であることが示唆された。
著者
間野 勉 大井 徹 横山 真弓 山崎 晃司 釣賀 一二三 高柳 敦 山中 正実
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.39-41, 2008-06-30

日本におけるクマ類の調査研究や特定鳥獣保護管理計画の発展に寄与することを目指して,この特集を企画した.本特集は,日本哺乳類学会2007年度大会で開催されたクマに関する3つの自由集会の成果をまとめたものであり,特定鳥獣保護管理計画の実施状況や,新たな手法として注目されるヘア・トラップ法によるクマ類の密度推定の問題点などを概観する11編の報告と,2編のコメントから構成される.<br>
著者
山崎 沙織 逢坂 裕紀子 岡本 詩子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.45-63, 2012

2009年に制定された「公文書等の管理に関する法律」の要点のひとつは、国の非現用公文書等についての利用請求権を 認め、それに基づく異議申し立てを可能にしたことにある。同法の努力義務規定により、上述の権利とそれに基づく異義申し立ては地方自治体の公文書政策にも反映される見込みだ。そこで、本研究は同法制定後の地方自治体の公文書館についての条例・規則の改訂状況を次の2点から調査した。(1)利用請求権や異議申し立てを認める改訂はあったか。(2)公文書館への意味づけを変えるような改訂はあったか。調査の結果、(1)'新規に条例・規則を制定した自治体を除き、利用請求権や異議申し立てを認める改訂は見られないこと、(2)'公文書館への意味づけは「地域の歴史・教育・文化を振興させる場」と「開かれた行政を実現させる場」に二分されるが、前者が保持される傾向にあり、この傾向が利用請求権成立の困難さに一定の影響を与えていることが判明した。
著者
平松 携 山崎 昌廣 塚本 真紀
出版者
尾道大学経済情報学部
雑誌
尾道大学経済情報論集 (ISSN:13469991)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.113-124, 2005-12

高所において、中・高年者のトレッカーがトレッキング中にどのような心理的変化を示すかについて、トレッキング前とトレッキング後の心理的変化も含めて検討することを目的とした。方法としては、男性3名(60歳代2名、50歳代1名)を被験者として、標高1,440mを出発点として標高3,650m、標高5,000mの3地点で心理検査を行った。検査には、ダウニー意志気質検査8を使用し、その拡散度から下記のような結果を得た。1 被験者2名の開眼時の拡散度を100とした時の閉眼時の拡散度は、標高1,440m、標高3,650mおよび標高5,000mにおいて被験者2名は100を越えた。他1名の被験者の拡散度は、標高1,440m、標高3,650mおよび標高5,000mとも80台で低値であった。2 標高1,440mの拡散度を基準にすると、被験者2名の拡散度は標高5,000mになると高くなり、他1名の被験者の拡散度は、標高5,000mで逆に低くなった。3 トレッキング前とトレッキング後の拡散度は、被験者3名ともトレッキング後が高かった。特に1名は開眼、閉眼ともトレッキング前を拡散度100とするとトレッキング後の拡散度が200を越えた。
著者
山崎 和邦
出版者
武蔵野学院大学
雑誌
武蔵野学院大学研究紀要 (ISSN:13491598)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.69-87, 2006

(1)本稿はまず,虚業とは何か,虚業と実業を分ける基準は何かを考える.虚業なるものについての数々の誤解を検討し,「虚業とは実業の理念にもとるものの一切を言う」という筆者の仮説を検証する.そのためには「実業の理念」なるものを明確にしておかねばならない.よって,まず,わが国における「実業の理念」の変遷を見ていく.江戸の享保年間に始まるわが国の「実業」が西洋からの職業倫理の輸入を経て,いかにして事実と理念の両面から根付いていったかを,歴史的経緯を通じて明らかにする.(2)当初から人をして錯覚に誘導し「瑕疵ある意思決定」をさせて財物を提供させることは刑法上の詐欺罪を構成するが,これとは異なり,虚業は「結果として虚業になってしまう」ということがしばしば起こる.詐欺が虚業と違うところは詐欺には当初から違法性があり,虚業には必ずしも当初からは違法性はなかったという場合が多いということである.真っ当な企業でも或る程度までは行っている商取引上の駆け引きや自社商品の多少の誇張を,その部分だけを拡大して社会通念上の許容範囲をはるかに越えて遂行した結果,虚業となってしまうケ-スは実に多い.したがって,虚業は当初から違法性を持って行うとは限らない.ここが詐欺行為とは厳然区別すべき点の一つである.(3)虚業とは何かを明らかにした後に虚業の類型化を試みる.真っ当な企業がいかにして虚業に陥るかをも検討する.過失によるケ-スも多く,意図した虚業ではないことも多い.しかし,「結果予見義務は結果回避義務とならんで過失概念の重要な要素」となる.(「過失犯の構造」井上正治著,有斐閣,1981年).故意によらない企業行為を過失犯として処罰し得る合理性はどこにあるかという問題は,日本刑法学界及びコ-ポレ-ト・ガバナンスを問う経営学会上の重要課題であるべきである.
著者
遠藤 一夫 山崎 雅彦 葛島 達也 深尾 俊一 横田 広子 中野 貞生
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.79-83, 1997-01-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
28
被引用文献数
3

症例は70歳の男性.内視鏡的大腸ポリープ切除後の経過観察のため施行した大腸内視鏡検査で回腸終末部に腫瘍を認めた.外科的切除した腫瘍は亜有茎性で,大きさ4.5×2.8×高さ2.2cm,病理組織学的に高分化腺癌で,深達度はmであった.極めて稀有な症例と考えられた.回腸癌の早;期発見のためには回腸終末部の観察が重要である.

1 0 0 0 OA 発明の歴史

著者
山崎好雄 著
出版者
清水書房
巻号頁・発行日
vol.火の巻, 1949
著者
原 一雄 山内 敏正 窪田 直人 戸辺 一之 山崎 力 永井 良三 門脇 孝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.4, pp.317-324, 2003 (Released:2003-09-19)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

転写因子で核内受容体であるPPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor gamma)は脂肪細胞の分化に非常に重要な役割を担っており,インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン誘導体の細胞内標的である.PPARγヘテロ欠損マウスにおいては,高脂肪食で見られる脂肪細胞の肥大化·インスリン抵抗性の程度が野生型に比べて抑制されていたことからPPARγは脂肪細胞の肥大化を媒介する倹約(節約)遺伝子であることを明らかとした.ヒトPPARγ2遺伝子の12番目のアミノ酸がProからAlaに置換したPro12Ala多型はチアゾリジン誘導体によるPPARγ転写活性上昇作用が低下していること,PPARγヘテロ欠損マウスの解析結果から,Alaアリル保持者はインスリン抵抗性が軽度であることが予測された.そこで2型糖尿病患者と非糖尿病者を対象に検討を行ったところ,糖尿病群に比してAlaアリル頻度が非糖尿病群で有意に高く,Alaアリル保持者は2型糖尿病の発症リスクが低いことが示された.更に多施設共同研究や,これまでのPro12Ala多型についての報告を集積して解析したメタアナリシスでもAlaアリル保持者が一貫して糖尿病のリスクが低下しているという結果が出ている.そこでPPARγの機能をある程度低下させることがインスリン抵抗性糖尿病の治療となりうることが示唆された.実際にPPARγアンタゴニストを糖尿病モデルマウスに投与すると,インスリン抵抗性が改善したことからPPARγアンタゴニストはインスリン抵抗性を改善する糖尿病の根本的治療法として期待される.しかしながらPPARγヘテロ欠損マウスはeNOSの産生低下,血管弛緩反応の低下による血圧の上昇を示したことから血管に対してはアゴニスト,脂肪細胞に対してはアンタゴニストとして選択的に働く薬剤が理想的であると考えられる.
著者
高木 彰彦 遠城 明雄 荒山 正彦 島津 俊之 中島 弘二 山野 正彦 源 昌久 山本 健児 熊谷 圭知 水内 俊雄 久武 哲也 山野 正彦 源 昌久 山本 健兒 熊谷 圭知 水内 俊雄 内田 忠賢 堤 研二 山崎 孝史 大城 直樹 福田 珠己 今里 悟之 加藤 政洋 神田 孝治 野澤 秀樹 森 正人 柴田 陽一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

公共空間と場所アイデンティティの再編について、地理思想史、理論的研究、経験的研究の観点から検討を行った。研究成果として、『空間・社会・地理思想』10(2006)、『空間・社会・地理思想』11(2007)、『空間・社会・地理思想』12(2008)を毎年刊行したほか、英文報告書として『Reorganization of public spaces and identity of place in the time of globalization : Japanese contribution to the history of geographical thought(10)』(2009)を刊行した。
著者
木村 裕一 田辺 理彦 山崎 信夫 天野 義和 木下 潤一朗 山田 嘉重 増田 宜子 松本 光吉
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.12-20, 2009-02-28

現在,歯根破折の診断において視診を確実にする目的で,ヨード,メチレンブルー,齲蝕検知液などの染色液や電気抵抗値の測定,透過光線試験(透照診),根管内視鏡,実体顕微鏡,バイトテスト,超音波診断法などを併用した報告がなされている.しかしながら,これらの方法は不完全破折や亀裂の場合には客観的ではなく,不正確になりやすいことから,診断にあまり頻繁には使用されていない.本研究の目的は,齲蝕診断に有用なDIAGNOdent^[○!R]を用いて歯根破折の診断への応用の可能性を探ることである.まず,基礎的な研究として破折のないヒト抜去歯根がメチレンブルーによる染色時間と濃度でどの程度のDIAGNOdent^[○!R]値(以後,D値と略す)を示すかを調べた.次に歯根面に切削器具による人工的な溝を作製し,染色液の有無での幅または深さとD値との関係を調べた.そのほかに歯根に圧力をかけて不完全破折を起こし,D値との関係を染色の有無で調べた.さらに,破折部への浸透性を高めるため染色液に含有するエタノール濃度とD値との関係を調べた.統計学的方法は,Mann-Whitney U検定により危険率1%で有意差を検定した.染色時間とD値との関係は5分後までは徐々に増加したが,それ以降はほとんど変化がなかった.濃度との関係では濃度依存的にD値が増加し,10^<-4>%と1%ではD値に有意差があった.染色液の使用,人工的な溝の幅における増大,または溝の深さの増大に呼応してD値は有意に増加した.歯根破折前後を比較した実験では,染色液の有無にかかわらず有意にD値が増加していた.また染色液にエタノールを20%または40%含有させると,有意にD値が増加した.これらの結果より,臨床応用するには染色液とエタノールの口腔内組織への影響などに関してさらなる研究が必要であるが,染色液を併用することでDIAGNOdent^[○!R]により歯根破折の診断がより正確にできる可能性が示唆された.