著者
石田 英實 伊丹 君和 荻原 直道 中務 真人 栗田 祐 久留島 美紀子 山崎 信寿 堤 定美 国松 豊
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

損傷、変形を受けた形態の復元は、人類学や考古学などで非常に重要である。しかし、その作業の主体はマニュアルであり、精度の高い修復には多くの時間と長い作業経験が不可欠であった。そのため本研究では計算機内に3次元構築した変形化石を,形態情報に基づいて客観的に修復.復元するシステムを開発した。特に本研究では、頭蓋骨など左右対称の骨について変形形態の復元手法を開発した。左右対称な骨では,正中矢状面内の特徴点は空間の同一平面上に、その他の左右で対になる特徴点は2点を結ぶ線分が正中矢状面と中点で垂直に交わる位置に、必ず存在する。しかし、土圧などにより化石が変形するとそのような幾何学的関係が失われる。このことに着目して客観的な変形復元を行う方法を考案した。具体的には、化石の3次元表面形状データと解剖学的特徴点の座標を取り込み、特徴点の位置を上述の幾何学的制約を満たすように移動させた。そして元座標から修正座標への非線形写像を薄板スプライン関数によって記述し、それを用いて化石の表面形状全体を変換することにより変形の除去を行った。本手法を応用して、中新世化石類人猿プロコンスルの変形頭蓋骨化石の復元を試み,光造形装置により立体モデルとして実空間に取り出した。化石化の過程で形態が受ける変形は,直方体が平行六面体になるような一種な変換ではなく、部位により歪みの大きさや方向が異なる非線形変換である。しかし、本手法によれば、そのような変形を受けている化石でも、その歪みを除去することができ、本手法の有効性を確認した。このように、CT等から得られるデジタル形状情報から仮想空間内で化石や骨の3次元構築を行い、それを計算機により数理的に復元して立体形状を作成するシステムは、生物の形態分析に必要不可欠な技術であり、当該分野の今後の発展に貢献するものとなる。
著者
浜本 浩 星 岳彦 尾島 一史 山崎 敬亮
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-99, 2010-06-01 (Released:2010-06-01)
参考文献数
12

蛍光灯を用いたトマトの群落内補光について, 早朝2時間, 午前中2時間, 日中9~10時間の補光時間帯が収量におよぼす影響の比較を行った. 午前中と日中の補光を日射200μmol m-2s-1 PPF以下の時に限り行う処理も検討した. 補光は早朝よりも, さらに温度の上がる午前中の時間帯の方が増収効果が高くなった. 日中通して補光する処理はさらに増収効果が高かった. しかし, 午前中と日中日射の弱いときのみ補光する処理は, 同じ時間帯を通して補光するより減収となった. 補光時間の短縮には, 収量を落とさない制御アルゴリズムなど, まだ検討の余地があると考えられた. 続いて, 栽培試験の結果をもとに本研究の補光方式の経済性について検討し, 補光時間は2時間の方が9時間よりも費用対効果が高いが, 2時間照射でも, 実用性向上のためには電力や照明器具のコスト低減が必要であることを示した.
著者
森棟 隆一 熊坂 瑶子 重松 淳 山崎 謙介
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.8, pp.1-5, 2010-02-27

2013 年度より実施される新学習指導要領の共通教科 「情報」 では情報モラル,知的財産の保護,情報安全等に対する実践的な態度をはぐくむ指導を行うことや,コミュニケーション能力や情報の創造力・発信力等を養うこと,情報通信ネットワークやメディアの特性・役割を十分に理解し,安全に配慮し,情報を適切に活用できる能力をはぐくむ指導をより一層重視している.With regard to "ICT Education," the new school curriculum (starting in 2013) emphasizes, a practical and morally correct attitude toward the protection of intellectual property rights. The security of information must be guaranteed. Also, the course should aim at developing communicative ability and creativity in the students. Moreover, the students should be enabled to comprehend the characteristics and roles of each network and medium and should also learn how to utilize them properly. Keeping all these points in mind, we have developed teaching materials which will enable students to learn about the "protection of intellectual property" spontaneously, and which will also enable the teacher to evaluate the effects.
著者
山崎 洋一
出版者
日経BP社
雑誌
日経Internet solutions (ISSN:13476580)
巻号頁・発行日
no.72, pp.96-103, 2003-07

ブラウザ上に表示した文書のコピー操作を制限できる「不正コピー防止ツール」が充実してきた。一般公開しているWebページの無断転載や,社内Webからの情報漏えいを防ぐための製品である。ただし,不正コピーを防ぐための仕組みは製品によってまちまち。その違いによって,導入時にかかる手間に差が出る。中には,ページごとに制限する操作を変えるなど,詳細な設定が可能な製品もある。
著者
荻窪 哲也 日高 宗明 奥村 学 藤田 健一 山崎 啓之 浅生 将英 岩切 智美 佐々木 裕美 児玉 裕文 有森 和彦
出版者
日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.392-399, 2006-05-10
被引用文献数
2 2

In view of the lack of information on the extent to which tea beverages inhibit the activity of human cytochrome P 450 3A (CYP 3A), we investigated their effect on the midazolam 1' -hydroxylation activity of CYP 3A contained in human liver microsomes. "Grapefruit (white)" was used as a positive control, and "Valencia Orange", as a negative control. All the tea beverages tested significantly inhibited the midazolam 1' -hydroxylation activity of CYP 3A in a concentration-dependent manner and inhibition was particularly marked for Katekin 600^[○!R] and Banso-reicha^[○!R] (5.0%, v/v). The potency of the inhibitory effects was similar to that of grapefruit. The inhibitory effects on the activity of CYP 3A were enhanced by preincubation of tea samples (2.5%, v/v) with microsomal fractions for 5 to 30min in a preincubation period-dependent manner. These results suggest that Katekin 600^[○!R] and Banso-reicha^[○!R] contain mechanism-based inhibiting agents. Further, the inhibitory effects on CYP 3A of green tea beverages seemed to be enhanced by catechins with the enhancement depending on the catechin concentration indicated on the label. In conclusion, we found that there were ingredients that inhibited CYP 3A activity in all of the tea beverages, and they were probably catechins.
著者
味呑 翔平 倉園 博樹 山本 寛 星 立人 吉武 晃一 山崎 克之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.444, pp.83-88, 2012-02-16

雪国における道路の除雪作業は,車による交通事故防止の観点から重要な意味を持つ.そのため,効率的な除雪を行うためには,どのエリアにどの程度雪が積もっているかを把握し,必要なときだけ除雪車を出動させる必要がある.そこで本稿では,除雪車の効率的な除雪作業を支援することを目的として,超音波測距センサーを用いた積雪・降雪観測システムを提案する.平成22年12月から平成23年3月の期間において実施した積雪計測実験の結果から,センサーによって積雪量の検出が可能であることを示す.また,本システムでは積雪量から一定時間あたりの積雪量の導出も行い,降雪量も除雪車の出動を判断するためのパラメータとして活用可能であることを示す.
著者
馬庭 瑠美 岩本 麻実子 山崎 雅之 塩飽 邦憲
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.77-87, 2012-07-31 (Released:2012-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

高齢者では身体機能や生活機能が低下しがちであり,栄養の維持改善が重要である。しかし,高齢者での栄養改善効果は,病院での重度な栄養不良患者を対象とした研究が多く,地域での高齢者で栄養改善が有効かどうかの研究は少ない。そこで,自立高齢者を対象とした介護予防プログラム (食・運動習慣改善支援) において,牛乳摂取による栄養と身体機能への効果を検討した。対象は出雲市在住で3か月間の介護予防プログラムに参加した高齢者45名 (平均年齢73.7±5.7歳) で,牛乳介入群22名と対照群23名の2群に分けた。牛乳介入群には,宅配により牛乳を提供し,介入前後に栄養摂取量,運動機能,体格,血液生化学等の調査を行なった。牛乳介入群では,牛乳・乳製品の摂取量が有意に増加し,栄養指数であるBMI,HDL-コレステロール,ヘモグロビンの改善が認められた。一方,対照群では栄養指数の改善は認められなかった。介入による変化量では,牛乳介入群のBMI,アルブミン,HDL-コレステロール,ヘモグロビン,HbA1c,必須アミノ酸/非必須アミノ酸比が対照群に比較して有意に改善した。運動機能では,介入前に対照群の運動機能が不良であり,運動教室の影響が強く現れたために,対照群が介入群よりも運動機能の改善が顕著であった。以上より,良好な栄養状態の高齢者でも牛乳摂取が栄養状態を改善させることが明らかになった。
著者
千坂 武志 山崎 良雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.161-184, 1973-08-31

房総南部には鴨川地溝帯,北条地溝帯(館山と千倉間)など断層による凹地形が発達している。館山市,加賀名部落付近は三方が断層によって囲まれた盆地状の地形をなしている,地上調査とともに電気探査法によって地質構造と地下水の賦存状態を研究した結果について報告する。1.地層の分布と地質構造 西岬累層(中新世)-主にシルトからなり本地域の周辺に分布し,丘陵地をなしている。背斜軸は北西から南東の方向にはしっている。鏡ヶ浦層(鮮新世)-おもに凝灰質粗粒砂岩からなり,平野部に分布している。一般的な走向,傾斜はNW-SE,20〜30°NEの単斜構造をなしている。地層の垂直の厚さは北部および東部で50m以上になっている。沖積層-おもに中粒から粗粒の未固結の砂からなり,平野部に広がっている。平野部を流れる2本の河の周辺で数メートル以上の厚さになっている。2.比抵抗値からみた各層の特徴 西岬累層-30(Ω-m)以下の非常に低い値でシルト質の岩相を示している。鏡ヶ浦層-30から185(Ω-m)で,本地域の鐘ヶ浦層の分布している地域の西端で低い値を示す。沖積層-16〜500(Ω-m)で,平野部の中央及び海岸地域で比較的高い値を示す。3.地下水の賦存状態 西岬累層-主に固結したシルトから成る不透水層で,本地域での水理地質学的基盤岩となっている。鏡ヶ浦層-主にやや固結した凝灰質粗粒砂岩から成る透水層で,採水可能の水を多くもっている。本地域内の深井戸はこの水を利用している。平野部の北及び東側でより多く採水できる可能性が大きい。沖積層-主に未固結の砂からなる透水層で自由地下水を含む。本地域内の浅井戸はほとんどこの水を利用している。平野部を流れる2本の川の周辺に多く自由地下水が含まれる可能性が大きい。
著者
宮崎 知 坂本 嗣郎 桑田 圭司 山崎 芳郎 山崎 元 森本 芳和 貴島 弘樹 種村 匡弘 宮田 正彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.2003-2008, 1993-07-01
被引用文献数
9

過去5年間に上部消化器造影を施行した12,321例を対象とし, 十二指腸憩室の発見頻度, 部位ならびに個数を検討した. また同5年間の良性胆道疾患手術症例467例につき傍乳頭憩室の合併頻度, 憩室径, 胆管径ならびに結石の種類を検討した. 十二指腸憩室の発生頻度は男性4.9%, 女性9.1%であり, 加齢とともに増加した. 憩室の92.2%は十二指腸第II部に存在し, 単発例が95.6%であった. 胆道疾患別の憩室合併頻度は胆嚢ポリープ15.7%, 胆嚢結石15.8%, 胆管結石45.2%, 再発結石87.5%であり, 胆管結石症例は胆嚢結石症例に比べ有意に高かった. 憩室径では胆管結石ならびにレンメル症候群は胆嚢ポリープ症例に比べ有意に大であった. 憩室径 20mm 以上の症例は, 10mm 未満に比べ総胆管径が有意に大であった. 胆管結石症例では憩室合併群は非合併群に比べ色素系結石の頻度が有意に大であった. 以上の成績より傍乳頭憩室 (とくに憩室径が 20mm 以上) は胆汁流出障害, 胆管結石の生成に関与することが推察された.
著者
山崎 麻美 埜中 正博
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.642-649, 2009
参考文献数
19
被引用文献数
1

2000年の「児童虐待の防止等に関する法律」の成立を契機に,わが国でも小児虐待に対する社会的関心が高まってきた.その中で,最も致命的で予後に大きく影響するのが,頭部外傷である.Shaken baby syndrome(SBS:揺さぶられっ子症候群)という言葉が有名になり,虐待による頭部外傷の総称として使われることもあるが,正しくは,non-accidenntal tramatic brain injury(nonaccidental TBI),あるいはinflicted traumatic brain injury(ITBI)である.すなわち,虐待による頭部外傷の受傷機転は,shaken(揺さぶり)だけでなく,直達衝撃(叩く,落とす,投げる),やそれらが複合したものと考えられている.虐待の診断には,打撲痕・熱傷・骨折など全身チェックに加え,頭部MRI検査は有用であり,眼底検査は必須である.半球間裂から円蓋部にかけて,あるいは小脳テントに沿って存在する急性硬膜下出血が最も多くみられる.ITBIの死亡率は15〜38%で,生存者の30〜50%が障害を持ち,正常に回復する率は30%といわれ,その転帰は非常に悪い.自宅に戻った時に繰り返される率は31〜43%である.従来から中村の血腫1型として報告されてきた家庭内の軽微な外傷による網膜出血を伴う急性硬膜下血腫が,虐待の範疇に入るのか,虐待とは別のclinical entityとして考えるのか,いまだ議論のあるところである.