著者
安藤 譲二 山本 希美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究では血流に起因するメカニカルストレスである剪断応力の生体作用を明らかにするために、血管内皮細胞の剪断応力の受容機構と遺伝子応答の包括的解析を行った。内皮細胞は剪断応力の強さの情報をATP作動性のカチオンチャネルであるP2X4を介する細胞外Ca^<2+>の流入反応に変換して伝達することが判明した。P2X4の欠損マウスを作製したところ、このマウスの内皮細胞では剪断応力による細胞外Ca^<2+>の流入反応が消失し、引き続いておこる一酸化窒素産生が減弱することが示された。また、P2X4欠損マウスでは正常マウスに比べ血流増加による血管拡張反応が減弱し、血圧が上昇していた。さらに、血流の減少による血管径の縮小反応がP2X4欠損マウスで障害を受けていた。このことから、P2X4を介する剪断応力の受容機構は血流依存性の血管のトーヌスや血管のリモデリングの調節に重要な役割を果たしていることが明らかになった。剪断応力に反応する内皮遺伝子についてDNAマイクロアレイによる包括的解析を行ったところ、動脈レベルの15dynes/cm^2の層流性の剪断応力に対し内皮遺伝子全体の約3%が反応して発現が変化することが判明した。このことは約600の遺伝子が剪断応力に応答することを意味している。また、クラスター解析で得た継時的な遺伝子の反応パターンは単一ではなく、多様であることが示された。さらに内皮遺伝子の応答が層流と乱流で異なることが明らかになった。例えば、層流に対してウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ(uPA)遺伝子の発現が低下するが、乱流では増加することが示された。この場合、層流は転写因子GATA6を介する転写抑制とmRNAの分解促進を、一方、乱流はmRNAの安定化を介してuPA遺伝子の発現を修飾していた。
著者
山本 淳子 大羽 和子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1133-1138, 1999-11-15
被引用文献数
2

The vitamin C content of cucumber and mung bean sprout was markedly decreased in NaCl-treated tissue by storage at 4℃. The ascorbate oxidase (AAO) activity of NaCl-treated vegetables increased according to the NaCl concentration. Increase in AAO activity of NaCl-treated vegetables was a result of the increase to the homogenate when NaCl or other salts were added to the homogenizing buffer. These results suggest that the increase in the amount of free AAO resulted in the decreased AsA content of NaCl-treated tissues.
著者
山本 哲也 高橋 成子 花川 隆 浦山 慎一 福山 秀直 江島 義道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.143, pp.23-28, 2006-06-29

立体運動効果とは、前額平行面内において視軸について回転する2次元の視覚刺激によって、あたかも3次元の物体が運動しているかのように知覚される現象である。これを刺激に用いることによって、奥行き、運動、形態の3つの情報処理を分離することが可能である。本研究では、運動と形態が奥行き知覚に対してどのように寄与するかを明らかにするために、fMRI実験を行った。その結果、MT+、LO、V3Bを含む後頭側頭領域は、奥行きの抽出に重要な役割を果たしていることが示唆された。DIPSM、DIPSAを含む背側頭頂間領域は知覚された3次元物体の運動軌道の計算、V3A、V7、VIPSを含む腹側頭頂間領域は高次領域で高度な処理を行うための情報抽出に関わっていると考えられた。
著者
津山 薫 山本 洋祐 中里 浩一 中嶋 寛之
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.249-258, 2005-06-01
被引用文献数
3 2

The purpose of this study was to examine the effects of dynamic neck muscle training using a cervical extension machine (CEM) on isometric cervical extension strength (ICES) and a cross-sectional area of neck extensor muscles. Subjects were 18 male college judo athletes divided into a control group (n=10) and training group (n=8), respectively. In the training group, dynamic neck muscle training was performed for a 6 week training period, followed by a 10 week training period. There was a detraining period of 12 weeks between the first training period and the second. The ICES was measured at eight angles using a CEM, and the neck muscle cross-sectional area was determined using magnetic resonance imaging. The ICES and cross-sectional area of neck extensor muscles in the training group showed significant increases after the second training period. In particular, the increase in the cross-sectional area was greater in the deepest layer of the neck extensor muscles (rotator, multifidus and semispinaris cervicis muscles) than in the superficial layer (trapezius muscle). In the control group, no significant changes in ICES or cross-sectional area were observed. In conclusion, it was shown that dynamic neck muscle training using a CEM was effective in developing both ICES and the cross-sectional area of neck extensor muscles, especially in the deepest layer.
著者
山本 睦
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、初期国家成立以前のアンデス文明形成期(B.C.2500-50)における権力の生成過程を動態的に捉え、これを理論化したモデルの構築である。本研究では、当該社会の統合の中心とされる祭祀建造物を対象とし、17年度からペルー・ハエン郡にて遺跡分布調査と発掘調査を実施してきた。調査では、長期の建設活動を確認し、コンテクストの確かな土器などの人工遺物と生物依存体(獣骨、貝)などの自然遺物といった充実したデータを獲得した。そして20年度は、前年度までの成果を受けて出土資料の整理・分析作業に重点的に取り組んだ。建築については、作成した図面と測量データを組み合わせ、時期ごとの建設プロセスを明らかにした。また、人工遺物については地点・層位ごとに整理・分析をすすめ、建設活動との対応を明確にした。特に、土器と石器は、先行研究をふまえて分類し、周辺地域との比較分析の基礎を築き、土器編年を打ち立てた。自然遺物は、専門家に種の同定を依頼し、その結果、海岸部より遠隔地にある調査地で、海産種の貝が特に装身具として多く利用されたことがわかった。また、魚類や獣骨の種の同定を通じて当該地域の生業の一端もうかがえた。さらに、土器内壁の依存体の分析ではトウモロコシが検出され、儀礼活動との関連が強く示唆されるなど、物資の流通ルートといった先史アンデス形成期に関する多くの具体的なデータが得られた。これらは、調査地の社会動態と祭祀建造物を中心として展開した地域間交流の実態を実証データから明らかにしつつあるという点において、アンデス先史学のボトムアップに貢献するだけではなく、アンデス文明形成期における権力の生成メカニズムの実証的な解明作業の手がかりとなるものであり、特に重要である。また、日本では主に研究関連文献を収集、渉猟し、今後の研究の基礎を築いた。
著者
山本 俊昭
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、北海道中西部に位置する厚田川にて外来種のニジマスが在来種であるサクラマスおよび在来生物群集に与える影響を評価した。その結果、河床勾配が緩やかであり、かつ標高が高い場所ほどニジマスが侵入する傾向が認められた。一方で、在来種の密度がニジマスの侵入に対して影響は認められず、サクラマスが選好する支流に多く分布していることが明らかになった。すなわち、ニジマスの侵入の可能性は、物理的要因に比べて非物理的要因が強く影響していることが示唆された。
著者
山本 正信
出版者
新潟大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

コンピュータグラフィックス(CG)の分野では,近年ますます実写に近い映像が制作されてきている.これに伴いCG内の人物の動きもリアル性が求められている.人間の動作をリアルに実現するには,実際の人間の動作を真似るのが近道である.人間の動作を測定する装置として,モーションキャプチャ等が市販されている.しかし,これらは人体にマーカーや特殊な装置を装着することが多く,演技者の自然な演技を阻害している.本研究では,カメラからの動画像を使って人体に接触することなく動作を測定する.したがって,過去の俳優の動作も残された映画から復元でき,時間と空間を超えて俳優をCG映像内で共演させることが可能である.本年度の成果は次の通りである.(1)多重拘束に基づく動作測定:正確な動作測定を行うために,従来からの動画像拘束とキーフレーム拘束の他に,シーンから人体に加わる拘束を考慮した.例えば,ドアを開閉するとき手先の動きはドアノブの動きに拘束される.あらゆる拘束を用いることにより正確な追跡を行うことができた.(2)過去の映画から俳優の動作測定:女優として,映画「風と共に去りぬ」からビビアン・リ-(スカ-レット役)が相手役のレスリ-・ハワード(アシュレ-役)を殴打する動作を測定した.一方,男優として映画「フランケンシュタイン」からボリス・カ-ロフ(フランケンシュタイン役)が動き回る動作を測定した.(3)俳優の共演CGの作成:ビビアン・リ-とボリス・カ-ロフが共演するCGを作成した.互いに独立した演技の共演であるため,2つの動作シーケンスの同期が必要になる.動作シーケンスの時間シフト,動作の速度を調整するタイムワープ,動作の強度を調整するモーションワープ等を組み込んだ共演ソフトを作成した.
著者
山本 香代子
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【目的】妊婦や授乳婦への薬物治療や服薬指導に際しては、医薬品の妊婦授乳婦における安全性や、胎児乳児への影響に関する十分な情報が得られないことが多くあり、服薬可否の判断が困難なケースも少なくない。また、すでに安全性や危険性の根拠が示されている医薬品についても、その情報を正確に入手することは容易でなく、解釈に専門的な知識を要することも多くある。そこで本研究では、妊婦授乳婦への服薬指導の標準化を目的として医薬品情報の収集手順や指導方法の確立を行うと共に、その有用性評価を行った。【方法】1.妊婦授乳婦への医薬品情報を収集する上で有用な情報源やその特徴を一覧表にすると共に、調査に必要な確認事項や検索手順をまとめて「医薬品情報調査ツール(妊婦)」、「医薬品情報調査ツール(授乳婦)」を作成した。2.経験が浅い薬剤師5名を対象として妊婦授乳婦への服薬指導に関する模擬テストを実施し、各「調査ツール」の有用性を評価した。理解度や不安度は、評価スケールへの記入とその尺度を指標とした。【成果】各「調査ツール」の有用性を評価した結果、ツールの使用の有無によって調査時間に有意な差は認められなかったが、調査した資料の数は「調査ツール(妊婦)」の利用により5.4±2.3件から7.6±2.4件へ、「調査ツール(授乳婦)」の利用により5.2±2.3件から9.8±2.1件へと、いずれも有意に増加した(p<0.01)。また、収集した情報や服薬指導について、薬剤師自身の理解度や不安度を評価スケールにて測定した結果、各「調査ツール」の利用により、理解度は約10%から約80%へと上昇し、不安度は約90%から約50%へと減少した。本研究において作成した妊婦授乳婦への「医薬品情報調査ツール」を利用することで、経験の浅い薬剤師においても詳細な情報収集が可能となり、妊婦や授乳婦への服薬指導に有用であることが明らかとなった。
著者
山本 健吉
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,DMD素子とイメージャを一体で制御することにより,イメージャ本来の撮像スピードを超える高フレームレートのビジョンシステムを開発し,その有効性をアルゴリズムおよびシステムの両面から検証し評価することを目的としており,実際に振動分布イメージング,広ダイナミックレング撮像,多重フレームストラドリングについてシステムを開発し,その有効性を確認した.
著者
山本 裕二 工藤 和俊 山田 憲政 北原 俊一 平田 智秋 宮崎 真 平川 武仁 木島 章文 奥村 基生 郷原 一寿 門田 浩二 山際 伸一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,様々なスポーツ技能の生成機序を力学系の観点から統合的に理解することを目的とした.その結果,ブランコ漕ぎの協応パタンは振り子の等時性にほぼかなっていること,音に合わせたダンスでは,運動周波数が高い場合でも熟練者は逆相同期を維持できること,卓球では技能水準を切替ダイナミクスのフラクタル次元で評価できること,剣道では二者間距離によって詰め引き速度の相対位相が切り替わること,タグ鬼ごっこでは,学習に伴い両者の詰め引き速度の相対位相が逆相同期になること,サッカーの3対1ボール保持課題における三者の連携パタンは,技能レベルによって環状連結振動子における対称性のホップ分岐理論で予測されるパタンを示すこと,サッカーゲームのパス行動にはベキ則が見られることなどを明らかにした.
著者
山本 卓
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.57-101, 2005-09-01

アラゴンの晩年の傑作のひとつである『死刑執行』の中には、「人間たちの森」という奇妙な言い回しが出現する。この「人間たちの森」とは何か。一人の人間の内面には無数の他者たちの言葉が住み着いている。ロマネスクな空間=「紙=空間」の中では、こうした他者たちの言葉を媒介として、「小説が存在しなくなれば消えてしまうあの変化する我々」(BO, p.132.)が組織化されていく。批評家ル・シェルボニエの言い方を借りるならば、「可能態としての諸人格の宇宙」(BL, p.177.)とでも翻訳できそうな、この不思議な概念の意味するところは、アラゴンの創造の秘密の根底を占める考え方なのである。アラゴンの作品における登場人物たちは「複数への回路」を通って増殖を続けていく。以下では、この「複数への回路」から「人間たちの森」へと至るプロセスについて、さまざまの角度からの検討を試みたい。
著者
鈴木 一臣 入江 正郎 田仲 持郎 山本 敏男
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

インプラント歯科治療における骨の誘導を促すことおよびインプラント上部構造体(クラウン、ブリッジ等)の新規接着材を開発した。チタン製インプラント表面をリン酸化プルラン処理することによって、ラット脛骨に埋移入2週間後でチタン表面に新生骨の形成が促進された。一方、ウレタンジメタクリレートにアミノ酸(シスチン)誘導体を15~20%添加することで、金銀パラジウム合金に対して22.4MPa(SD:1.8)の接着強さを示し、5-55℃熱負荷2万回後においても10%の低下に止まった。
著者
山本 和弘
出版者
大阪市立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度に引き続き、作成した単結晶ダイヤモンド検出器の性能評価を行った。検出器の構造は、4mm×4mm×0.5mmの単結晶CVDダイヤモンドチップの両面に金でメタライズを施して電極としたシンプルなもので、500Vのバイアス電圧をかけて信号を読み出した。ビームテストとして、京都大学化学研究所の電子線型加速器のビームラインにこの検出器を設置して100MeVの電子を照射し、その応答のデータを収集した。主なビームパラメーターは、エネルギー:100MeV、パルス幅:~60ns、強度:10^8~10^9個/パルス、ビーム径:~6mm、繰り返し周波数:15Hzであった。データ収集システムには、COPPERとMIDASを用い、FADCによりダイヤモンド検出器からの波形データを記録した。信号の波形を見ると100ns弱のパルス幅が得られ、照射した電子ビームのパルス幅とほぼ同程度であった。これはT2K実験のビームバンチ間隔580nsよりも十分小さく、この検出器によってバンチごとのビーム測定が十分可能であることが分かった。次に、電子ビーム強度をJ-PARCメインリング(MR)40GeV, 0.6MW相当までスキャンして信号を取得し、同時に取ったシリコン検出器の応答との比を取ってビーム強度に対する応答の線型性を測定した。結果は、ビーム強度の全領域においてほぼ線型性を保っことが確認され、直線フィットからのずれは1~2%以内に納まった。ただし、ビーム強度の上昇に伴ってずれが大きくなる様子も見えたので、この効果を取り入れるために2次曲線でフィットを行うと、そこからのずれは±0.2%に納まった。次に、電子ビームの強度をJ-PARC MR40GeV, 0.6MW相当に設定して40分間にわたり連続照射し、その間の信号の安定性を見た。その結果、大きな信号の変動は見られず、そのずれは1%以内に納まることが確認された。
著者
山本 力 塚本 千秋 西山 久子 赤澤 大史
出版者
岡山大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岡山大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13463705)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.155-166, 2003

以下の報告は、平成14年8月26日に開催された岡山大学教育学部附属教育実践総合センター研修講座の教育臨床部門の分科会「シンポジウム:教育臨床における評価・見立てについて」での報告内容をもとに、発表者がそれぞれに再構成して書き下ろしたものである。シンポジウムのコーディネーターは塚原千秋が行った。そして、まず心理臨床の視点から山本が教育臨床の見立てとは何かについて模索した見解を報告した。続いて専任スクールカウンセラーの立場から西山が米国のスクールカウンセリングをモデルにした評価の仕方を詳しい報告にした。最後に学校でのブリーフセラピーの可能性を探る教師の視点から赤沢が実践的な方法と認識を報告した。This paper is aimed at reporting the matter of symposium on the subject of clinical evaluation and assessment in school setting. The focus of discussion is especially on our needs to evaluate and assess students, personnel, parents, ourselves and "school guidance and counseling program". Each symposist expresses ones views and ideas, which are implemented through their work in school setting, and have to be elaborated in the future.
著者
細川 満子 千葉 敦子 山本 春江 三津谷 恵 山田 典子 今 敏子 工藤 久子 玉懸 多恵子 鈴木 久美子 古川 照美 桐生 晶子 櫻田 和子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.159-165, 2008-12

本研究の目的は、効果的な在宅看護実習を展開するために、学生に実習前に身につけさせたい態度について、教員はどう捉えているか明らかにすることである。研究方法は、北東北3県の教育機関34校に所属する在宅看護実習担当教員を対象に郵送法による無記名式自記式質問紙調査を実施した。調査の結果、13名から回答(回収率は38.2%)が得られた。回答者の臨床経験年数は平均7.0年、教員としての経験年数は平均10.4年であった。実習前に、学生に身につけさせたい態度として293コード抽出され、『対象者の生活様式・価値観にあわせた行動ができる』、『信頼関係形成に向けた行動ができる』、『礼節を重んじることができる』、『学生自身の自立した生活ができる』、『主体的に学ぶことができる』、『医療人としての倫理性を遵守できる』の6カテゴリーとなった。在宅看護実習では、学生は生活者である療養者を援助する者として、『学生自身の自立した生活ができる』ことが基盤となる態度であり、全てのカテゴリーのベースになっていることが考えられた。在宅看護は療養者とその家族の多種多様な生活事象の理解をした上で、健康問題や生活課題をアセスメントし、生活条件やQOLの向上、維持を図る看護について「生活モデル」での援助を展開する必要がある。在宅看護において看護師は訪問者としての立場で支援関係を成立させて、限られた時間で看護を展開するという特徴があるため、『対象者の生活様式・価値観にあわせた行動ができる』ことが重要である。そのためには『信頼関係形成に向けた行動ができる』、『礼節を重んじることができる』態度が在宅看護実習では必須である。また、今後ますます求められる『医療人としての倫理性を遵守できる』ことや、『主体的に学ぶことができる』態度を形成するための教育内容が必要であることが示唆された。