著者
藤本 隆宏 延岡 健太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.43-55, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
30

企業間の競争力差の内実を根本から解明するためには,経営戦略論と技術・生産管理論の連携が望ましいが,現実には空隙が生じている.これを埋める一策として,「組織能力」概念を中核においた「長期継続的なデータ収集に基づく定量的・定性的実証分析」が有効だと論じる.例として,筆者らが20年以上続けてきた「自動車製品開発国際比較調査」を示し,組織能力の具体的中身や発生過程の動態を理解するには,長期間の測定や定点観測が不可欠だと主張する.継続は力である.
著者
武井 明 鈴木 太郎 土井 朋代 土井 準 富岡 健 廣田 亜佳音 泉 将吾 目良 和彦
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.742-756, 2017-11-01 (Released:2019-08-21)
参考文献数
27

高機能の自閉症スペクトラム障害(ASD)患者が成人後に示す就労状況については十分検討されていない。そこで,今回われわれは,児童青年期から経過観察できた高機能のASD患者が示す成人後の就労状況を明らかにするための調査を行った。対象は18歳以下で当科を初診した高機能のASD患者のうちで,成人後も通院を継続している56例(男性21例,女性35例)である。調査時の平均年齢は24.1歳で,経過観察期間は平均9.3年であった。DSM-IV-TRによる診断では自閉性障害8例(14.3%),アスペルガー障害19例(33.9%),特定不能の広汎性発達障害が29例(51.8%)であった。最終学歴は高校卒業以上が39例(69.6%)を占めていた。併存症状は初診時に56例全てに認められ,最も多かったのは不登校で48例(85.7%)であった。一方,成人後の併存症状は32例(57.1%)に認められ,最も多かったのはひきこもりで15例(26.8%)であった。成人後の就労状況では,就労している者が15例(26.8%)(正規雇用は5.4%),就労支援事業所などに通所している者が17例(30.4%),無職者が24例(42.8%)であった。また,就労している者では併存症状を有している者が有意に少なかった。以上の結果から,成人後まで通院を継続しているASD患者では,知能が高くても正規雇用され自立した生活を送ることのできる者はきわめて少ないことが明らかになった。また,併存症状の有無が転帰に影響を与える可能性が示唆された。したがって,通院を継続している高機能のASD患者に対しては,青年期以降も切れ間のない継続した支援が成人期まで必要であると考えられた。
著者
山口 敬之 松岡 健 八桁 純 笠原 次郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 = Journal of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.57, no.663, pp.141-147, 2009-04-05
参考文献数
22
被引用文献数
2

In the present study, a dynamics model of an inflow-drive valve for pulse detonation engines (PDEs) is proposed, in which system the inflow of the valve periodically drives the valve piston. Since the inflow-drive valve needs no energy source to drive the piston, the mass flow rate divided by the valve mass is relatively large, and the response time for the mass-flow-rate change can be short. Moreover, the inflow-state condition for the stable valve operation is not restricted. The two-cylinder three-fluid type inflow-drive valve was fabricated. The maximum mass flow rate for one valve was evaluated as 6.3g/s, in which system the mass of the piston, the spring constant, and the supplied pressure were 3.8kg, 9800N, and 1.0MPa, respectively. The total mass flow rate using propellant was evaluated as 12g/s. The PDE system was constructed by using these inflow-drive valves. This system was stably operated in the frequency of 17.52Hz.
著者
片岡 健
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.158-172, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

本研究では,土佐国の長宗我部氏の市町であった岡豊新町を復原した.従来の研究成果を踏まえ明治期地籍図の地筆を基に,天正期『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の記載面積を使用して比定地の地割を再検討した.さらに,同時代史料により岡豊新町周辺の河道を復原して比定地との整合性を検討した.『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の比較によると,『長宗我部地検帳』の測量精度は高い.そこで,地籍図に示される地割のみでなく,天正期以降に地割が再施工された可能性を考慮して,地筆ごとの面積に基づいて屋敷地レベルで比定した.本稿の手法は,発掘成果のない状況で精緻な景観復原を可能にし,さらに,文献史料を基に地割の存続した時期を検討する一つの可能性を示すものである.検討の結果,岡豊新町西部分は定説より南に存在するという新しい復原案を示すことができた.岡豊新町の東町の地割は16世紀後半の景観を反映しており,それが明治期まで残存していた.
著者
高山 正伸 二木 亮 阿部 千穂子 松岡 健 江口 淳子 陳 維嘉 長嶺 隆二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100438, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 股関節疾患のみならず膝関節疾患においても股外転筋力の重要性が指摘されており,なかでも中殿筋は特に重要視されている。中殿筋の筋力増強運動として坐位での股外転運動(坐位外転運動)を紹介している運動療法機器カタログや病院ホームページを散見する。しかし坐位における中殿筋の走行は坐位外転の運動方向と一致しない。坐位においては外転ではなく内旋運動において中殿筋は活動すると考えられる。本研究は①坐位外転運動における中殿筋の活動性は低い,②坐位内旋運動における中殿筋の活動性は高いという2つの仮説のもと,坐位外転運動と坐位内旋運動における中殿筋の活動量を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は下肢に既往がなく傷害も有していない20~43歳(平均29.6歳)の健常者14名(男性9名,女性5名)とした。股関節の運動は①一般的な股屈伸および内外転中間位での等尺性外転運動(通常外転)②坐位での等尺性外転運動(坐位外転),③坐位での等尺性内旋運動(坐位内旋)の3運動とし,計測順序はランダムとした。筋電図の導出にはTELEMYO G2(ノラクソン)を使用しサンプリング周波数1000Hzで記録した。表面電極は立位にて大転子の上方で中殿筋近位部に電極間距離4cmで貼付した。5秒間の等尺性最大随意収縮を各運動3回ずつ記録した。筋の周波数帯である10~500Hz以外の帯域をノイズとみなしフィルター処理を行った。5秒間の筋活動波形のうち3秒間を積分し平均した値を変数として用いた。統計解析は有意水準を5%としFriedman検定を行った。多重比較についてはWilcoxon符号付順位検定を行い,Bonferroniの不等式に基づき有意水準を1.6%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者にはヘルシンキ宣言に基づき結果に影響を及ぼさない範囲で研究内容を説明し同意を得た。【結果】 通常外転積分値の中央値(25パーセンタイル,75パーセンタイル)は149.5(116.0,275.0)μV・秒で坐位外転のそれは127.5(41.8,204),坐位内旋のそれは219.5(85.1,308)であった。Friedman検定の結果3運動には有意差が認められ,多重比較の結果坐位外転は坐位内旋に対して有意に活動量が劣っていた(P=0.0054)。通常外転と坐位外転にも中央値に違いがみられたが統計学的な差は認められなかった(P=0.0219)。通常外転と坐位内旋にも有意差を認めなかった(P=0.124)。最も大きな筋活動量が得られた被験者の数は通常外転4名,坐位外転1名,坐位内旋9名,逆に最も筋活動量が小さかった被験者の数は通常外転3名,坐位外転10名,坐位内旋1名であった。MMTの方法に類似している通常外転によってその他の2運動を正規化すると坐位外転の中央値は76.9(31.2,102.3)%,坐位内旋のそれは119.2(86.9,183.7)%であった。坐位外転では筋力増強運動に必要な筋活動量40%を下回る被験者が4名(14.9~31.2%)みられ,100%を超える者は3名だけであった。一方坐位内旋においては40%未満の被験者はみられず,9名の被験者が100%以上であった。最小値は69.7%であった。【考察】 股関節は球関節のため肢位によって筋作用は変化する。股関節が屈伸中間位のとき矢状面でみた中殿筋の走行は大腿骨長軸と概ね一致しており同筋は外転作用を有する。しかし股関節が屈曲位となる坐位では走行が大腿骨長軸と一致せずむしろ直角に近くなり,中殿筋の作用は外転ではなく内旋になる。本研究結果では通常外転と坐位外転に有意差を認めなかったが,効果量を0.5,有意水準を0.016,検出力を0.8に設定すると48名のサンプル数が必要で我々のサンプル数は不足している。差がないと結論付けることには慎重であるべきである。この状況下においても坐位外転と坐位内旋には有意差が認められた。本研究結果は坐位外転運動が中殿筋の筋力増強運動として非効率であることを明らかにした。加えて坐位内旋運動では通常の外転運動と同等以上の筋活動が得られることも明らかとなった。この傾向は前部線維で強くなり,後部線維では異なる結果をもたらすと予想される。どの運動によって最も大きな筋活動が得られるかは被験者によって異なっていた。その原因として坐位における骨盤の肢位が影響していると考えられる。骨盤が後傾すればするほど中殿筋の走行はより大腿骨長軸と一致する。多くの被験者に関しては坐位内旋運動で高い中殿筋の筋活動が得られたが,一部にそうでない被験者もみられた。骨盤が後傾することによって内旋運動における筋活動は低下し,逆に外転運動における活動が増加すると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究によって中殿筋に対する誤った運動指導は是正されるであろう。
著者
高橋 理 片岡 健司 小島 央士 浅見 雅之
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. D, A publication of Industry Applications Society (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.128, no.11, pp.1291-1297, 2008-11-01
参考文献数
4
被引用文献数
6 13

Once the break-down of the train schedule occurs, the crew schedule as well as the train schedule has to be modified as quickly as possible to restore them. In this paper, we propose an algorithm for automatically modifying a crew schedule that takes all constraints into consideration, presenting a model of the combined problem of crews and trains. The proposed algorithm builds an initial solution by relaxing some of the constraint conditions, and then uses a Taboo-search method to revise this solution in order to minimize the degree of constraint violation resulting from these relaxed conditions. Then we show not only that the algorithm can generate a constraint satisfaction solution, but also that the solution will satisfy the experts. That is, we show the proposed algorithm is capable of producing a usable solution in a short time by applying to actual cases of train-schedule break-down, and that the solution is at least as good as those produced manually, by comparing the both solutions with several point of view.
著者
盛屋 邦彦 長岡 健 山本 文 小野田 哲弥
出版者
産業能率大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今年度の研究作業としては主に昨年度後半から学習ポートフォリオシステム(CoCoCo)を試験的に実際の授業に適用した。適用した授業は昨年度から合計すると全部で7科目となった。その中から学生の利用ログを用いて学習の分析を行った。その結果、学生がポートフォリオ(レポート)を作成する上で、みずからが考えなければならないものについては、他の学生のポートフォリオを参照する傾向があることをみいだした。このことはCoCoCoがゆるやかな(学生間の関係が強くない)協調学習の環境として効果的に働いたものとして評価できる。このことについては学会への発表および論文としてまとめた(経営情報学会春季全国研究発表大会、産業能率大学紀要)。またCoCoCoシステムについては改良を行い、応答時間の改善を図り、システムの利点や機能・アーキテクチャについて、実際の開発に携わった学生が学会にて発表を行った(CIEC PC Conference学生論文賞受賞)。CoCoCoについての学生側からの意見についてはアンケートを実施することで収集し、現在の学生が(1)どのような環境で学習をするのか適切か?(2)電子ポートフォリオはどのように形成されるか?(3)今後、システムとしてどのような機能を入れるべきかについて分析・考察した。その結果、電子ポートフォリオは学生みずからの過去の内容、及び他の学生の内容を参照するという点でCoCoCoのようなSNSを利用することは効果的であることが再確認された。また機能的には、現時点での学生の考え方をリアルタイムに教員ヘフィードバックできる機構が必要であることがわかった。今後は、このリアルタイムでの教員へのフィードバック機能として、アンケート機能をCoCoCoに付加していくことを検討している。また、より学生間の関係が強い、いわゆるグループワークに適した環境も追加していくことを考えている。
著者
片岡 健
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-16, 2013 (Released:2013-07-18)
参考文献数
41

本研究では,土佐国黒岩城下町とその給人の名請地の構造を,名請高による属性別,国人領内の小村別に分析した。その結果,市町の構造は,商農分離および商農未分離の市町名請人の屋敷地が,部分的にまとまりを有しつつ混在していた。1町以上の耕地を名請する市町名請人は,商業活動の充実から耕地を集積した可能性もある。給人屋敷地の構造は,最上位層の給人屋敷地が土居に近接していた。この要因は,豊臣政権に臣従して以降,分国規模での検地および城割りの実施にみられるように長宗我部氏の大名権力が向上し,これに伴い国人領主片岡氏が国人領内で権力を上昇させたためとも考えられる。黒岩城下町の給人の名請地構造は,名請地が小村黒岩を中心に展開しており,生産物の輸送負担および耕作の移動負担が効率化されていた。黒岩城下町の給人屋敷地および名請地には,国人領主のプランである,前者への階層性の明示,後者への生産性の上昇という志向が一律には貫徹していなかった。給人屋敷地の構造は,黒岩城下町の給人の名請地が黒岩城下町に比較的近い国人領の一部に限定されていた国人領主片岡氏の地域権力としての実態に規定されていた。
著者
辻 寛之 田岡 健一郎
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、フロリゲン活性化複合体の機能を明らかにするためにイメージングと生化学的手法の両面から研究を進めている。まずフロリゲン活性化複合体の極めて高精細な分布を明らかにするために超解像度イメージングを試みた。しかしHd3aプロモーターでHd3a-GFPを発現するイネでは発現量が弱いため高感度な観察が困難である場合が多かった。そこで、維管束特異的で強力なプロモーターでHd3a-GFPを発現するイネを作成し、その茎頂メリステムを観察する実験系を作出した。また、一分子イメージングに適したmNeonGreenとフロリゲンHd3aの融合タンパク質を発現するイネを作成している。並行して、フロリゲンによる核内の状態変化を観察するために、H2B-GFP発現系統の茎頂メリステムの核内の超解像度観察を行った。その結果、H2B-GFPは核内でも核膜周辺に集まる蛍光があり、細胞層依存的に特徴的な核内微小構造を形成することが明らかとなった。フロリゲン相互作用因子の同定のために、イネ培養細胞へのFAC発現ベクター導入と共免疫沈降実験のための条件設定を行った。また、転写メディエーターがフロリゲン直接相互作用因子である可能性を酵母2ハイブリッド法で検証した。シロイヌナズナの28種の構成因子のうち、クローニングできた13種(うち3つは遺伝学的に花成に関与することが知られている)について、Hd3aとの相互作用を調べた。しかし、有意な結合は観察されなかった。また、フロリゲン活性化複合体の重要な構成因子であるフロリゲン受容体14-3-3タンパク質についても解析を行った。茎頂メリステムのプロテオーム解析から14-3-3タンパク質が茎頂メリステムに高蓄積していることが明らかになり、またその機能欠損が花成遅延を引き起こすことが明らかとなった。
著者
大熊智子 増市 博 吉岡 健
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.1(2006-NL-171), pp.61-66, 2006-01-13

Lexical Functional Grammar(LFG),Head Phrase Structure Grammar(HPSG) などの句構造文法を用いたパーザでは、入力された自然言語文に対し、f(unctional)-structureやminimal recursion semantics(MRS)などの統語意味構造を出力する。このプロセスを逆に辿ることによって、つまり統語意味構造を入力することによって同じ文法を用いて自然言語文を出力として得ることができる。パーザに用いられた文法をそのままジェネレータに適用することが可能である。LFGに基づく処理系であるXerox Linguistic Enviroment(XLE)やHPSGの代表的な処理系LKBも、ジェネレータ機能を有している。このような生成技術が適用される応用として代表的な研究は、中間木を利用した翻訳システムがあるが、最近注目を集めている「言い換え」に対しても生成技術を適用できる可能性は高い。これ以外にも、QAシステムや対話システムなど、生成技術は様々な言語処理アプリケーションに適用可能な基礎技術である。ところが、実際には解析用の日本語文法をそのまま生成に適用しようとすると、解析の段階では問題にならなかった事柄が顕在化する。本研究では、我々が研究開発を進めてきた解析用文法を用いて生成を行う際の課題を分析し、それを解決するための手段について提案する。さらに文の生成実験を行ってそれらの妥当性について検証した。その結果、例外ルールの付加と語彙の選択という二つの手法を用いて、解析用文法を生成に適応させる手法を提案し、両者が解析成功率の向上に寄与することを確認できた。
著者
磯村 達也 村上 亜弥 犬塚 恭子 川口 美佳 佐藤 恵美子 中村 郁朗 岡 寛 KP White 西岡 健弥
出版者
The Japanese Society for Clinical Rheumatology and Related Research
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.130-136, 2014

目的:London Fibromyalgia Epidemiology Study Screening Questionnaire (LFESSQ)は6問からなる英語の質問票で,一般集団を対象とした疫学研究において,線維筋痛症患者をスクリーニングするためにWhite KPらによって開発された.LEFSSQを日本の臨床現場に導入するため,言語的妥当性を担保した日本語版を作成した.<br>方法:日本語版の作成は,開発許可を取得後,言語的な妥当性を担保した翻訳版の開発において標準的に用いられる手順(①順翻訳,②逆翻訳,③パイロット調査)に沿って実施した.この手順を通し,原作と同等の内容が反映された,日本人にとってより自然な文章表現である翻訳を目指した.内容の同等性については,適宜,原作者に確認した.<br>結果:①順翻訳:日本語を母国語とする2名の翻訳者が,それぞれ日本語に翻訳し,協議を通して一つの翻訳案を作成した.②逆翻訳:英語を母国語とする独立した翻訳者が,英語に逆翻訳した.その後,原作者や専門医との協議を経て,日本語暫定版を作成した.③パイロット調査:6名の日本人成人男女を対象に面接調査を行い,結果を踏まえ,日本語暫定版の文章表現の妥当性を検討した.参加者は,6名中4名が女性,平均年齢は50.0歳であった.調査の結果,質問票の分かりやすさ,及び表現や内容の正確な理解は,全体として問題はなかった.<br>結論:一連の作成手順と検討を通し,言語的妥当性を担保した日本語版LFESSQを作成した.
著者
谷岡 健吉 山崎 順一 設楽 圭一 竹歳 和久 河村 達郎 平井 忠明 高崎 幸男 雲内 高明
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.1074-1083, 1990-08-20
被引用文献数
51 1

アモルファスSe(a-Se)を主成分とする光導電ターゲットを強い電界で動作させると, アバランシェ(なだれ)増倍作用により, 極めて高い感度が得られることを見出した.a-Seターゲットに240Vの電圧を印加した場合, 青色光(B光)に対する量子効率(単位入射光子数当たりの出力電子数, 以下η)が10となり, 従来の阻止型ターゲットを用いた光導電型撮像管の感度の理論限界(η=1)をはるかに上回る高い感度が得られた.このときの暗電流は0.2nAと小さかった.また, アバランシェ増倍に伴う残像, 解像度等の特性劣化は認められなかった.試作管を実装したカラーカメラでは, 被写体照度180lx, レンズ絞りF4の条件で, 従来のスタジオカメラの標準撮像時(2000lx, F4)とほぼ同等の良好な画像が得られた.
著者
竹岡 健一
出版者
日本独文学会
雑誌
ドイツ文学 (ISSN:24331511)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.41-57, 2022 (Released:2023-08-06)

Unter den Werken von Karl Aloys Schenzinger ist „Anilin“ (1937) weniger bekannt als „Der Hitlerjunge Quex“ (1932), das als ein Beispiel typisch nationalsozialistischer Literatur gilt. Aber wenn man den Blick auf die Gesamtauflage innerhalb der Jahre 1933 bis 1944 richtet, findet man sie in umgekehrter Position. „Anilin“ wurde mit der Auflage von 920.000 fast dreifach mehr als „Der Hitlerjunge Quex“ verkauft und gehört zu den Topsellern der NS-Zeit. In diesem Sinne ist gerade „Anilin“ ein repräsentatives Werk, sowohl für Schenzinger als auch für die NS-Zeit. Trotzdem blieb das Werk bisher in der Forschung über die Literatur in der NS-Zeit außer acht. Vielleicht waren seine technologischen Themen in bezug auf die deutsche Chemie oder die deutsche Farbenindustrie nicht in die Kategorie der sogenannten nationalsozialistischen Literatur einzuordnen, zu der hauptsächlich Propaganada-, Kriegs- und Blut-und-Boden-Literatur gehören. In diesem Sinne sollte der Hinweis von Tobias Schneider Beachtung finden, dass die mit der Überschrift wie „Literatur in Nazi-Deutschland“ oder „Literatur im Dritten Reich“ versehenen Forschungen ihren Gegenstand eng begrenzten, und dass die „NS-Literatur“ als die „Literatur im Dritten Reich“ erst durch solche Forschungen etabliert wurde. Natürlich bedeutet das nicht, dass „Anilin“ bisher nicht betrachtet wurde. Es gibt zwar verschiedene Hinweise auf die Beziehung zwischen dem Werk und dem Nationalsozialismus. Aber dabei wurde das Wesen des Werks nicht klar formuliert, weil die historischen Tatsachen der im Werk auftretenden Chemiker, chemischen Industrien und deren Erfindungen oder Entdeckungen nicht genau in Betracht gezogen wurden. Nach der Meinung des Verfassers ist dieses Werk keine einfache Geschichtsschreibung. Der Kern des Werks liegt in der Beschreibung der Zeit des Dritten Reichs am Ende der Geschichte. Ein klarer Beweis dafür ist, dass die Handlung in bezug auf das Anilin im sechsten Teil zu Ende kommt. Der beachtenswerteste Punkt des Werks ist also der siebte Teil, der extra hinzugefügt wurde, obwohl er dem Titel nach eigentlich entbehrlich ist. So wird in dem vorliegenden Aufsatz durch die genaue Betrachtung dieses Punktes klargemacht, dass dieses Werk nicht ein populärwissenschaftlicher Roman, sondern ein Roman mit starkem politischem Charakter ist. (View PDF for the rest of the abstract.)
著者
和嶋 浩一 井川 雅子 矢崎 篤 三田 雅彦 住井 裕 木津 真庭 小飼 英紀 鈴木 彰 藤岡 健 野本 種邦
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.764-772, 1988-07-10 (Released:2011-09-07)
参考文献数
10

The purpose of this study was to clinicaly evaluate the efficacy of an antianxiety Etizolam (Depas®) on temporomandibular joint disorders. The subjects were 33 patients (10 males and 23 females, average 34 years 5 months) with myogeneous complaints. Etizolam was administered in a daily dose of 1.5 mg (0.5 mg × 3 times), and all subjects didn't take any other treatment for 2 weeks.1. The efficacy rate of all subjects was 76%.2. As a result of analysing efficacy according to chief complaints, the efficacy rate was a high 100% for a group suffering from stiff neck and shoulder, 92% and for a group with opening pain at the TMJ.3. As a result of analysing improvements of each sign and symptom, the efficacy rate was a high 92 % for headache, a high 88%, 81%, and 80% respectively, for tenderness of the temporal muscle, masseter muscle, and sternocleidomastoid muscle, and a high 84% for mouth opening pain.Statistically significant differences (p<0.01) were found in the above signs and symptom between before and after treatment.4. The efficacy rates of joint sound and trismus were a low 43% and 40%, because some cases of joint sound and trismus were caused by the internal derangement of the TMJ, and generally, internal derangement of the TMJ doesn't respond to drug treatment.5. Side effects were observed in 3 cases, such as slight sleepiness.6. It is suggested that Etizolam is a usefull drug for treatment of temporomandibular joint disorders, except in cases of chronic internal derangement of the TMJ
著者
羽岡 健史 森下 由香 内藤 祐貴 大西 新介 奈良 理 高橋 功
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.785-791, 2014-10-15 (Released:2015-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

肥満細胞の活性化により惹起される種々のアレルギー症状と急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)の同時発症はKounis症候群と呼ばれている。我々はガベキサートメシル酸塩gabexate mesilate: GM)の投与後にアナフィラキシーと冠攣縮性狭心症を呈した症例を経験したので報告する。症例はアルコール性慢性膵炎と糖尿病の既往のある72歳の女性。心窩部痛を主訴に当院に救急搬送され,慢性膵炎急性増悪と診断された。単純CT撮影後にウリナスタチン50,000単位を投与。次にGM 100mgの投与を開始してから8分後,気分不快,呼吸苦,顔面紅潮,喘鳴が出現した。まもなく意識レベルがJapan coma scale(JCS)100に低下し,ショックを呈したため,アナフィラキシーショックと考え,アドレナリン0.1mgを2回静脈注射した。またアドレナリン投与前から心電図モニター上,ST上昇が見られ,12誘導心電図ではII,III,aVFでST上昇,I,aVL,V1~V4でST低下,心臓超音波検査で左心室下壁の壁運動不良の所見が認められたため,ニトログリセリン(スプレー)を舌下投与した。気管挿管,ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム100mg,クロルフェニラミンマレイン酸塩5mg,ファモチジン10mg投与後に冠動脈造影を実施したところ,冠動脈に有意な狭窄を認めず,冠攣縮性狭心症と診断された。同日,心電図変化は改善し,アナフィラキシー症状も消失し,翌日には抜管した。狭心症の再発はなく,慢性膵炎急性増悪に対する治療のみを行ってから第17病日に自宅退院となった。Kounis症候群はアレルギー反応等の過敏性反応に伴って肥満細胞から放出される炎症メディエータの作用でACSが引き起こされることで生じる病態で,アレルギー反応に対する治療とACSに対する治療を並行して行うことが推奨されている。重篤なアレルギー症状を呈する症例では,ACSの併発も念頭において治療・観察をする必要がある。