著者
奥野 達矢 岩田 哲 早川 浩史 宮尾 康太郎 梶口 智弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.184-190, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
13

血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)は稀な節外性B細胞リンパ腫であり,特異的な所見に乏しいため診断に苦慮することが多いが,急速な経過を辿るため診断の遅れは致命的となる。IVLBCLの診断に有用な所見を検索することを目的に,当院で診断されたIVLBCL患者10例について臨床像を検討した。最多の症状は発熱で8例にみられ,次いで呼吸器症状(咳嗽,喀痰,呼吸困難感)が7例にみられた。血液検査所見では血球減少を10/10例,高LDH血症を9/10例に認め,動脈血液ガス分析ではPaO2低下を6/7例に認めた。画像検査所見上は7例に肝脾腫がみられ,9例に胸部異常陰影がみられた。これらの所見は治療により改善した。IVLBCLにおける肺病変の合併頻度はこれまでに報告されている以上に高い可能性が示唆される結果であり,原因不明の呼吸器症状,低酸素血症でもIVLBCLを鑑別に挙げる必要があると考えられる。
著者
早川 倫子 片山 美香
出版者
岡山大学教師教育開発センター
雑誌
岡山大学教師教育開発センター紀要 (ISSN:21861323)
巻号頁・発行日
no.10, pp.139-151, 2020-03-20

本研究は,養育者の子育てにおける「歌う行為」に着目し,養育者の立場からその可能性について検討することを目的とした。パイロットスタディとして実施した3名の子育て中の母親への質問紙調査およびグループインタビュー調査を通して,母親の「歌う行為」の様相を探り,子育てにおける有用性について検討した。<br/>その結果,「歌う行為」には,子どもがある行動をとることへの意欲を高めたり,否定的な気持ちを好転させたりする感情の切り替え手段としての有用性のあることが示唆された。言葉だけで伝えるよりも,子どもが好きな歌や多様な音声表現を用いた方が,子どもに受け入れられやすいこと,音楽的な特性自体が子どもの感情に響きやすいことも示された。また,「歌う行為」には,了解可能なメッセージを共有し,親子が楽しく養育行動を進める触媒と成り得る可能性が見出された。
著者
松田 賢一 片山(池上) 礼子 東 成美 酒井 賀乃子 中野 眞一 玉村 壮太 早川 隆宏 伊達 彩香 高居 恵愛
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.29-38, 2020
被引用文献数
2

<p>36本の5年生'ルビーロマン'ポット栽培樹を用いて,満開後54日目(ベレゾーン以降の13日目)から収穫(満開後90日)までの間,満開後54~63日(54日区),63~72日(63日区),72~81日(72日区)と81~90日(81日区)の4つの生育ステージに分け,全日光環境制御型温室で9日間の低温処理(昼28°C/夜20°C)を行った.低温処理以外の期間は高温室(昼35°C/夜27°C)で育成した.また,全期間(満開後54~90日)に低温(低温区:昼28°C/夜20°C)と高温(高温区:昼35°C/夜27°C)の両対照区も設けた.低温処理後の果房の着色の変化は,63日区が最も大きく,その次が72日区であった.収穫果粒の着色は,低温区が最も濃く,54日区と高温区が最も薄かった.このことから,'ルビーロマン'では,満開後63日から80日の間は低温に対する感受性が高いことが示唆された.遺伝子発現解析の結果,低温区より高温区の<i>VlMybA1-2</i>,<i>VlMybA1-3</i>の発現レベルが高かった.一方,63日区と72日区の<i>VviF3′H</i>と<i>VviF3′5′H2</i>の発現が低温区と高温区よりも有意に高かった.これらの結果から,成熟後期の温度変化に起因する'ルビーロマン'果粒のアントシアニン蓄積量の増減は,<i>VIMybAs</i>の発現の量的変化によりもたらされたのではなく,別の制御要因が関与する可能性が示唆された.</p>
著者
山本 晴彦 早川 誠而 岩谷 潔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.31-44, 1998-05-30
被引用文献数
9

Meteorological disaster was caused by heavy rainfall during typhoon 9709 in northern part of Yamaguchi Prefecture and western part of Shimane Prefecture. At Fukuga area in Abu town, the amount of preciptation from July 26 to 28 was 922 mm, and amount of preciptation on July 27 was 606 mm. The farmland was flooded because of the flood of the Ohi and the Zoumeki rivers by increased water. A farm pond collapsed four places at Mutsumi village. At Aso and Era Farm ponds, rice plants were buried by earth and sand because of bank collapse. The loss of money in the agriculture of Yamaguchi Prefecture due to heavy rainfall with typhoon 9709 exceeded 6.6 billion yen.
著者
早川 博文
出版者
農林水産技術情報協会
巻号頁・発行日
vol.16, no.10, pp.21-24, 1993 (Released:2011-03-05)
著者
河村 隆 梅崎 健夫 水谷 俊明 早川 典 石井 大悟 志賀 信彦
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.183-191, 2014 (Released:2015-04-27)
参考文献数
14

閉鎖性水域における富栄養化の原因物質の一つである水中のアンモニア態窒素を吸着できる天然ゼオライトをパルプに担持させたゼオライト機能紙を用いた水質浄化対策を提案した.本対策は,ゼオライト機能紙とジオシンセティックスを用いて作製した簡易浄化ユニットを,富栄養化が問題となっている湖沼の流入河川に繋がる小規模な水路などに設置するものである.本文では,簡易浄化ユニットの適用性を検討するために,ゼオライト機能紙の流水に対する耐久性試験と簡易浄化ユニットの小型模型にアンモニア態窒素を含む水溶液を通水させる吸着試験を実施した.それらの結果に基づいて,簡易浄化ユニットを用いた富栄養化対策としての適用が期待されることを明らかにした.
著者
早川 歩
出版者
お茶の水女子大学心理臨床相談センター
雑誌
お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要
巻号頁・発行日
no.18, pp.57-66, 2017-03-01

心理臨床家訓練として重要なものの一つに,ケースカンファレンス(以下,カンファレンスと表記)がある。\しかし,訓練としてカンファレンスに参加する訓練生がカンファレンスをどのように体験しているかの研究\は十分に行われていない。したがって本研究では,心理臨床家の訓練生がカンファレンスをどのように体験\しているのかを明らかにすることを目的として,訓練課程修了後1~2 年目の心理臨床家に対して半構造化\面接を行った。KJ 法による分析の結果,大きく分けて,【臨床的な見方・考え方の蓄積】の機会になる,【ケ\ースに他者の視点を入れることによる気づき】が得られる,【取り組みや考えの評価をされる】場である,【発\表者とケースを尊重し,応援する姿勢が発表者を支える】場であるという4 つの意味合いがあり,自信や経\験の少なさといった訓練生の特徴が,体験の背景にある要因の一つであることが明らかになった。
著者
服部 尚道 黒岩 俊之 早川 正 吉住 陽行
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.275-281, 2012 (Released:2013-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

京急蒲田駅付近連続立体交差事業における高架橋築造工事では,営業線直上に高架橋を構築するため,移動式直接高架施工機とハーフプレキャスト(以下,HPCa)工法を組み合わせた直接高架工法を適用した。移動式直接高架施工機は,基礎杭打設と部材架設が行える施工機である。HPCa工法は工場製作のプレキャスト部材を現地で組み立てラーメン高架橋を構築する技術で,梁とスラブに適用した国内2件の工事実績がある。本稿では,柱に初めてHPCa工法を適用した本事業における,工法選定理由,HPCa工法の概要,工事概要および施工概要について報告する。