著者
木村 迪子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 文学研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:24363316)
巻号頁・発行日
no.47, pp.63-95, 2021-03-29

西本願寺二代目能化・光隆寺知空は承応の鬩牆を契機として西吟教学からの決別を果たし蓮如義に移行したと言われる。近年、これに反論して知空の西吟教学継承を説く動きが顕著である。まず、本稿では主にテキストから検証されてきた知空による西吟教学の継承を、これまで検討されてこなかった明暦三年に行われた知空の講義録二書に注目し、その証左とする。第一に、知空が講義に選んだ『浄土或問』ならびに『仏遺教経論疏節要』が明代の禅僧・雲棲袾宏の注釈を附した和刻本であったことを指摘し、明暦三年時点で知空による西吟教学の踏襲があったことを明らかにする。次に寛文元年刊行の『和讃首書』が当時禅籍にのみ用いられていた頭書形式を踏襲していたことを指摘する。次に、明暦三年の知空の講義録『浄土或問鉤隠』が天和三年刊頭書本『浄土或問』に利用され、またその増補再版に浄土宗西山派の学僧・諦全が補考を附した事実から、元禄期における仏典注釈の交雑化を指摘する。十七世紀における頭書本仏書の流行は重板類板の規制強化を受けて急速に衰えたが、寛文末頃から不遇を託っていた知空は元禄八年の学林再興と共に能化に返り咲き、以後、今度は大坂の書林・毛利田庄太郎らと組んでその仏典注釈板行を行った。こうした積極性、柔軟性は知空に限定されず、十七世紀仏教と宗学への積極的な評価に繋がるものである Chiku was a scholar priest belonging to Buddhism's Shin sect and this paper attempts to re-evaluate Japanese early modern Buddhism byelucidating his annotations of Buddhist commentaries and their development. Of note is that the Zen character found in Chiku's writings is a reflection of his teacher, Saigin. Chiku tried to overcome'承応の鬩牆'by using Zen perspectives derived from the Shin sect. Significantly, it has come to light that a record of Chiku's lectures was used by the annotation published in 1683. Moreover, the book reprinted in 1690 was added annotations by Taizen, a scholar of the Jodo sect. This is proof that at the end of the 17th century, the Buddhist annotations that had been communicated independently by each sect were, in fact,compendiums of various authorities. From the beginning of the 18th century, the publication of Buddhist annotations declined rapidly against the backdrop of tightening publishing regulations. But Chiku's lectures were published by his disciples from bookstores in Osaka. It can be concluded that Chiku's progressive stance also spread to other Buddhists in the early modern period, and that this can be viewed as a positive characteristic of Japanese early modern Buddhism.
著者
崔 瑛 岸田 潔 木村 亮 野々村 政一 井浦 智実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.718-728, 2010

NATMを用いて未固結地山に小土被りトンネルを掘削するトンネル工事区間では,地表面とトンネルが同程度沈下するとも下がり現象が報告されている.沈下の抑制が重要な課題となるこれらの現場では,対策のひとつとしてサイドパイル工が適用され,地表面沈下抑制効果を発揮している.本研究では,様々な施工条件下でのトンネル掘削数値解析を行い,トンネルと地盤が同等に沈下するとも下がり現象について検討を行った.つづいて,とも下がり発生時サイドパイルの地盤沈下抑制効果について数値解析により検討した.解析結果よりサイドパイルは,内圧効果,またすべり線を交差することでせん断補強効果と荷重再配分効果を発揮し,地盤およびトンネルの沈下を抑制できることを確認した.
著者
沢井 勝三 椎野 瑞穂 木村 明彦 五味 敏明 岸 清
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.165-174, 1993
被引用文献数
1

刺鍼の深さを考察するにあたり, 局所における臓器および組織の位置関係を充分把握しておくことは大切である。そのために足の太陽膀胱経を基準とした人体横断解剖標本を作成して, 体表から何mmでどの臓器, 組織に鍼先が到達するかを検索した。前回までは大椎穴 (督脈) より胆兪穴 (足の太陽膀胱経) まで調査した結果を報告した。<br>今回は, 脾兪穴 (足の太陽膀胱経) より気海兪穴 (足の太陽膀胱経) までの5横断面について検索したのでこれを報告する。<br>脾兪穴を基準とした横断面では, 鍼を体表より刺入すると皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を4mmで貫いて, 固有背筋群を30mmで貫き第12胸椎横突起に鍼先が達した。体表より第12胸椎横突起まで39mmを計測した。<br>胃兪穴を基準とした横断面では, 鍼を体表より刺入すると皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を3mmで貫いて, 固有背筋群を28mmで貫き第1腰椎横突起に鍼先が達した。体表より第1腰椎横突起まで36mmを計測した。<br>三焦愈穴を基準とした横断面では,鍼を体表より刺入すると皮膚を5mmで貫き,皮下組織を5mmで貫いて, 固有背筋群を26mmで貫き第2腰椎横突起に鍼先が達した。体表より第2腰椎横突起まで36mmを計測した。<br>腎兪穴を基準とした横断面では, 鍼を体表より刺入すると皮膚を4mmで貫き, 皮下組織を5mmで貫いて, 固有背筋群を32mmで貫き第3腰椎横突起に鍼先が達した。体表より第3腰椎横突起まで41mmを計測した。<br>気海兪穴を基準とした横断面では, 鍼を体表より刺入すると皮膚を4mmで貫き, 皮下組織を5mmで貫いて, 固有背筋群を30mmで貫き第4腰椎横突起に鍼先が達した。体表より第4腰椎横突起まで39mmを計測した。<br>以上の結果を鍼灸医学臨床における深さの立場から考察した。

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著者
木村 春彦
雑誌
Cures newsletter (ISSN:09137181)
巻号頁・発行日
no.3, 1987-05-15
著者
川端 昭夫 木村 吉次
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.69_1, 2017

<p> 本研究の目的は、大正11年から昭和3年まで陸軍戸山学校教官であった大井浩を取りあげ、その欧州体育・スポーツ視察並びに体育論を検討し、また、大正・昭和初期の日本の社会体育促進との関わりについて考察する。主な資料は、「体育と武道」、「研究彙報」、「皆行社記事」、「陸軍大日誌」に収録された論文論説、また陸軍戸山学校関連書籍並びに朝日新聞を調査した。得られた結果を以下に示す。1)大井浩は、欧州諸国の視察の結果、軍隊体育、体育・スポーツ事情について度々報告した。軍隊体育における運動競技(スポーツ)の日本に適した様式による導入、日本における武道精神を含めた武道の普及、国民の軍事予備教育を意図した国民体育、特に青年体育の推進を奨励した。2)欧州諸国の視察報告を通して、日本の社会体育の普及の必要性を提言した。3)欧州諸国における女子体育・スポーツの隆盛を報告して、日本でのその普及を期待した。4)欧州諸国の新しい体操の趨勢や集団体操(マスゲーム)の隆盛を報告し、実際に第2回明治神宮競技大会のマスゲームの部の創設や戸山学校生による集団体操の演技参加を行い、日本で初めての公的なマスゲームの大会を実現した。</p>
著者
玉盛 令子 金澤 寿久 末吉 美紀 木村 佳代 与儀 哲弘 仲田 千賀子 湧川 尚子 貞松 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.699, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】今回、退院前訪問指導実施後、理学療法士(以下PT)が問題点としてアプローチを行った住宅改修箇所が日常生活上有効利用されているか、又、介護者への指導が適切であったのかについて調査を行ったので報告する。【対象及び方法】退院前訪問指導実施後に自宅復帰した脳血管障害症例45名を対象とした。方法は、退院前訪問指導実施時、PTが行った指導内容や住宅改修箇所が的確であったか、又、退院後有効利用されているかを再訪問し調査した。退院後自宅生活に適応し、しているADLが行えている対象者を指導適切群、退院後住宅改修箇所が未使用であったり、住宅改修そのものに不備な点が見られたり、介護者の介助方法の理解不足が認められた対象者を指導不適切群と群分けを行った。そしてADL変化に対しFIM、本人の意欲に対し意欲の指標、介護力に対し介護力スケールと過剰介護度スケールを使用し両群を比較した。【結果】指導適切群は24名で、(FIM平均70. 6点、意欲指標9.3点、介護力スケール17.1点、過剰介護度スケール:過剰であるが5名、過剰でないが19名)であり、指導不適切群は21名で(FIM平均60.1点、意欲指標8点、介護力スケール15.4点、過剰介護度スケール:過剰であるが15名、過剰でないが6名)であった。マンホイットニーの検定の結果、FIMでは有意差が認められなかったが、意欲の指標、介護力スケール、過剰介護度スケールにおいて有意差が認められた。【考察】今回の調査より、指導適切群では、住宅改修箇所が有効利用され、介護度スケールにおいても[過剰でない]を示し、介護者のADL面に対する理解が高く、又、意欲の指標や、介護力スケールの平均値が指導不適切群に比べ高値を示していた。指導不適切群では、住宅改修不足、過剰改修、介助者に対してのセルフケア指導不足があげられた。又、意欲、過剰介護、介護力スケールに有意差が認められ、過剰介護度スケールにおいても[過剰である]を示し、介護者のADL面の理解が低く、結果指導適切群に比べ低値となった。調査より、PT・業者・家族間の改修箇所に関する意見が相違したまま改修工事を着工した例や、病棟内で実際に「しているADL」をそのまま患者の住環境に適応できるものと予測し、PTの住環境に対する確認が不十分なままに自宅退院した結果、家族の過剰介護やADL能力低下を招いていると推測された。【終わりに】今回、退院前訪問指導実施後自宅復帰した症例45名に対し、PTが指導した住環境設定が有効利用されているか調査を行った。結果、PTが病棟生活遂行レベルと自宅生活とを同一化し指導、改修を施行したケースが多くあげられた。今後これらの問題点を再度見直し退院時訪問時に住環境における日常生活にどれだけ適応出来るかについての視点向上が必要だと考えられた。
著者
小林 左千夫 木村 文彦
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2005年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.183-184, 2005-09-15 (Released:2006-04-18)

曲線·曲面を工業的に利用する際に重要である幾何学的な性質の代表例としては、曲率や曲率分布が挙げられる。曲線の曲率を制御する手法については、従来より様々なアプローチによって研究がなされてきている。しかし、どの手法も曲率制御のために大きな制約を与えているので、表現力の点で十分とは言えないものである。そこで本研究では新たな曲線を定義し、曲率分布を制御する手法を提案する。
著者
木村 朗
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.41-47, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
3

医療と福祉分野における理学療法は,障害者に日常生活活動と余暇活動における最大限の自立を促すことを目的にしている。同様に,産業保健での理学療法は職業活動における自立を促すことが目的である。これからは理学療法士が,障害の予防や,真の障害者のリハビリテーションに貢献することが望まれる。すなわち,日常生活活動,余暇活動に加えて,より積極的な職業活動における理学療法の役割を見出すべきである。ただし,わが国において,産業保健領域で働くために必要な資格がある。本稿は,これらの資格に衛生管理者があることを示し,さらに労働衛生コンサルタントがあることも紹介し,産業保健分野において理学療法の実践可能な開業権取得の可能性があることを述べた。これらの受験資格において理学療法士の置かれた立場は,まだ不利な点があり改善すべき課題があることを示した。
著者
木村 知子 藤原 奈佳子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.221-230, 2015 (Released:2016-01-23)
参考文献数
10

病院の看護職員紹介業者(以下,紹介業者)利用が増えているが,紹介時には高額な紹介料が発生している。そこで民間中小病院の看護部長を対象として,紹介業者の利用の実態について質問紙調査を行い,今後の看護職員確保対策のあり方について検討した。 日本病院会会員名簿より抽出した民間中小病院987病院の看護部長に,独自に作成した自記式質問用紙による郵送調査を依頼し,148人(回収率15.1%)分をIBM SPSS Statistic20 for Windowsを用いてχ2検定及びt検定,自由記述はカテゴリー化した。 回答者の所属施設の75.7%が医療法人で,病床数は平均119.4±48.2床で,紹介業者の利用経験ありは66.9%と有意に高かった。自由記載の回答は84人(56.8%),159コードであり,「病院としての紹介業者の利用」「高価な紹介料」「紹介される看護師」「紹介業者へのフラストレーション」「今後の人材確保に向けて」の5カテゴリーとなった。 紹介業者の利用戦術や,ナースセンターの機能強化,看護基礎教育における教育が示唆された。
著者
岡 洋志 犬塚 央 永嶺 宏一 野上 達也 貝沼 茂三郎 木村 豪雄 三潴 忠道
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.947-951, 2005-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

黄耆桂枝五物湯は痺れや痛みに用いられる方剤であるが, 今回我々は同方を投与した29症例において, 有効例が18例で無効例が11例であった。有効群と無効群の自覚症状の違いを解析し, それらが処方決定の指標となると思われた。「寒がり」,「体全体が重い」はこれまでの報告にもみられた症候であり, 今回の検討でも強い傾向と特異性が見られた。さらに,「関節が痛む」,「皮膚が乾燥する」,「怒りっぽい」が無効群に比較して有効群に多く見られた。これらは今後, 黄耆桂枝五物湯を投与する上で特異性の高い使用目標となる可能性がある。
著者
室田 一哉 鈴木 和敏 河野 公昭 桑坪 憲史 村橋 淳一 勇島 要 木村 由香里 長屋 孝司 松永 義雄 山賀 寛
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.26, pp.140, 2010

【はじめに】今回、尺骨神経損傷にて手内在筋麻痺を呈したバレーボール選手の競技復帰に向けた理学療法を経験したので報告する。【症例紹介】16歳女性。右利き。高校バレーボール部所属でポジションはリベロである。競技レベルは全国大会出場レベルである。【現病歴】H21年7月下旬ガラスで右手関節を切り受傷。救急病院へ搬送される。右尺骨動脈・神経損傷、右中・環・小指深指屈筋腱断裂、右環・小指浅指屈筋腱断裂、右尺側手根屈筋腱断裂で緊急手術となる。術後約3週でdynamic splintを装着し、当院へ受診となった。【理学療法と経過】術後3週より伸展ブロック内での自動屈曲運動を開始。術後4週よりMP~DIP関節の自動伸展運動開始。術後5週より手関節~DIP関節屈曲位での他動伸展運動、ブロッキングEx.開始。術後6週より握力・ピンチ力向上のEx.開始。競技動作はMP関節屈曲位でのトス動作を開始。ボールはソフトバレーボールから開始しバレーボール、メディシンボールへと負荷を漸増した。トスは両手から開始し片手で行うなど徐々に難易度を上げて行った。術後8週よりMP関節の過伸展や重量物の把持などの危険な動作以外のADLでの積極的な使用を促し、術後12週でADLでの制限を解除した。アンダーレシーブなど部分的に競技復帰したが、術後14週でMMTはMP関節屈曲2、環・小指外転・内転ともに0であった。筋力低下によりトスやオーバーでのカット動作で環・小指のMP関節を過伸展する危険性を考慮し、環・小指のMP関節伸展制限の装具を作製した。装具を装着しトスやカット動作を反復して行い、動作が安定してきた為徐々に競技復帰した。術後20週でゲーム出場可能となり、レギュラーとして活躍し全国大会出場を決めた。【考察】今回、術後のリスク管理を徹底し競技に即した理学療法を行い安定した競技動作が獲得出来た事と、装具によってMP関節過伸展のリスクが予防出来た事により、競技復帰が可能であった。
著者
松村 翼 鳩山 紀一郎 木村 大地 佐野 可寸志 Faniya SULTANOVA Valentina BARABANSHCHIKOVA
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.A_1-A_7, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
13

本研究は、渋滞下のドライバーに対して適当な副次課題を与えることにより、ドライバーの精神疲労や知覚時間が軽減されるだけでなく、運転のパフォーマンスが向上する可能性にも着目し、ドライバーが運転操作以外の副次課題を行うことの影響を明らかにすることを目的とする。具体的には、渋滞下での運転操作を模した室内実験環境において 15 分間にわたり 4 種類の副次課題を課す実験を行い、その影響を反応遅れ時間や多角的な心理指標によって計測を試みた。結果として、副次課題によって注意レベルに明確な差異は生じない一方、受動的な副次課題は知覚時間を増大させ、能動的な副次課題は短縮させる効果がみられた。また、「会話をする」という能動的な副次課題は、男性のストレス及び疲労は軽減させるが、女性の場合は増大させる可能性が明らかとなった。