著者
岩田 正美 杉村 宏 岡部 卓 村上 英吾 圷 洋一 松本 一郎 岩永 理恵 鳥山 まどか
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は1)貧困の概念と最低生活費研究を理論的に整理し、2)現代の代表的な低所得層の家計調査からその生活実態を把握し、3)家計の抵抗点による最低生活費の試算と生活保護基準との比較を行った。この結果、1)最低生活費は複数のアプローチで確かめられる必要がある。2)単身者の生活費は、生活基盤費が固定費であり、その他の経費の高低で消費水準が決まる。3)その他の消費水準の抵抗点を利用して最低生活費を試算すると167,224円であった。生活保護基準と比較すると、約2万円強高くなることが分かった。
著者
村上 宣寛
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

小学生用主要5因子性格検査を全面的に改定し、1674名で全国標準化を行った。質問紙は51項目で構成された。ビッグ・ファイブは40項目で、それに問題攻撃性尺度を追加した。信頼性係数は0.68から0.81、保護者の評定と子供の自己評定の相関は0.39から0.56であった。
著者
村上 潔
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.160-172, 2010 (Released:2020-03-09)
被引用文献数
1

本稿は、戦後日本社会において、女性の「労働」のありかたについてなされた最初の論争である「主婦論争」の意味を捉え返し、その課題と、論争が保持していた潜在要素一一現在的な問題の源泉ーーを抽出する作業を行なうものである。「主婦論争」とは、1955年に始まり1970年代前半まで段階的に生起した、「主婦」のありかたーーその立場・役割や労働の評価一ーをめぐる論争である。本稿では、「主婦論争」を内在的に読み解き、主にその対象となる層を念頭におきながら論調を図式的に分類していくことで、①論じられていたことが実際にはどのような現象としてあったのか、②それらはどのような関係を取り結んでおり、いかように力関係を保ってきたのか、③現状の課題と照らし合わせた際、改めて力点を置かれるべき立場はどこにあるのか、を検討した。その結果、従来論争における主要な論点とされてきた「働くべき」vs. 「働くべきでない」という論調の対立構図が、実は同じ(中間層以上の)階層の主婦層を対象とした「選択Jの問題にすぎず、そこからは「働かざるをえない」層の主婦たちの存在が不可視化されていることが明らかになった。そのうえで本稿では、「「地域/生活のための運動や協働を担う」立場の主婦たちと「働かざるをえない」主婦(ならびにその周縁の女性)たちによるこれまでの自律的な実践の成果を確認し、両者の協調的進展の模索にこそが今後の展開の試金石であることを指摘した。
著者
村上 圭子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2-33, 2020 (Released:2021-04-16)

2020年5月、フジテレビ系列で放送されていたリアリティーショー『テラスハウス』に出演中の22歳の女性プロレスラーの木村花さんが亡くなった。SNS上で番組内容をきっかけとした誹謗中傷を受け、自ら命を絶ったとみられている。 そもそもリアリティーショーとは、定義もスタイルも曖昧な番組群である。おおよその共通項からまとめると、「制作者が設けた架空のシチュエーションに、一般人や無名のタレント等を出演させ、彼らの感情や行動の変化をひき起こす仕掛けを用意し、その様子を観察する番組」といった所か。欧米を中心にここ20年で増え、最近は有料動画配信サービスでも提供されている。 しかし、リアリティーショーは誕生当初から、出演者の心を"虚実皮膜"の状態に長時間置くストレス、出演者に葛藤を与えるような仕掛けをする"社会実験"的な側面、視聴者が出演者の様子を"のぞき見"する倫理的課題が指摘され、欧米では多くの出演者の自殺が報告される等社会問題となっていた。近年はSNSの普及で、出演者はより誹謗中傷を受けやすい環境に置かれ、対応の必要性が叫ばれていた。 花さんの死のような痛ましい問題が繰り返されないため、メディア研究の分野では何を考えていくべきか。本稿は1回目として、そもそもリアリティーショーとはどんな番組を指し、なぜここまで発展してきたのか、これまで指摘されてきた課題はどのようなものだったのかを考察する。
著者
千藤 咲 森阪 匡通 若林 郁夫 村上 勝志 吉岡 基
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.169-177, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
28

動物の社会構造解明のためには,個体識別を行い,個体間の相互作用を観察することが必要である.しかし,背びれも体色パターンもない野生下のスナメリでそれを行うことは困難である.そこで,飼育個体を対象に行動観察を行い,個体間関係とその頑強性を明らかにすることを目的とした.鳥羽水族館と南知多ビーチランドで飼育されているオス5個体,メス6個体を対象に,個体同士の社会行動を目視とビデオ録画により,計54日間,437時間観察・記録した.観察された社会行動のうち,背擦り行動についてバウト構造が認められたため,バウト分析を行い,2分以内の背擦り行動を同一バウトとした.水槽内の同居個体の構成が変化することを社会的撹乱とし,撹乱の有無や前後で個体間関係の変化を比較したところ,撹乱がない時に社会行動を行った8ペアのうち3ペアは,長期的に安定した親和的な関係性を示し,この関係性と性別や年齢などの組み合わせには明確な関連はみられなかった.また,これら3ペアには,撹乱の前後で関係性が変化しなかったペア,いったん敵対的に変化しても撹乱翌日には元の関係性に戻ったペアがいた.以上の結果から,飼育下のスナメリには社会的撹乱に対して頑強な,安定した個体間関係を持つペアが存在する可能性が示唆された.
著者
古川 勉寛 藤原 孝之 上條 正義 村上 裕亮
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-15-00008, (Released:2015-07-24)
参考文献数
32

The objectives of this research are to implement the examination and the analysis of the utterances that accompany movements, and to elucidate whether these utterances are likely to be applied as movement-support technology. In the first phase of the field survey, we studied changes in the rate of vocal output with changes in the height of a platform to stand on; then, in the second phase of the survey, we investigated the influence exerted by vocal output or the absence thereof on walking ease and Maximum Walking Speed (MWS). In the analytical study, we observed excitation levels of spinal motor cells in healthy adults using H-wave. It is suggested by the results that (1) the rate of vocalization changes, (2) MWS is not improved, (3) the ease of walking is affected, and (4) the level of stimulation of spinal cord motor cells is increased.
著者
安部 達也 鉢呂 芳一 小原 啓 稲垣 光裕 菱山 豊平 國本 正雄 村上 雅則
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.600-608, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
18
被引用文献数
2

新規下剤には排便回数の増加のみならず,腹痛や腹部膨満感,排便困難といった便秘の諸症状に対する効果も期待される.急性便秘とは異なり,慢性便秘の場合は長期間使用しても耐性や依存性,偽メラノーシスが生じないことも求められる.2012年に処方箋医薬品としては実に30年振りとなるルビプロストンが発売され,2019年のラクツロース経口ゼリーまで合計6種の新規下剤が登場した.慢性便秘症診療ガイドライン2017において最も推奨されている下剤は,浸透圧性下剤と上皮機能変容薬の2種類であり,新規下剤6剤のうち4剤がその2種類に含まれている.前治療がない場合は一般的には浸透圧性下剤が第一選択薬となり,効果がない場合は上皮機能変容薬やエロビキシバットへの変更を検討する.新薬同士の選択は,便秘の病態や重症度,予測される副作用を考慮して行うが,個々の患者との相性は実際に投与してみないと分からないこともある.
著者
江原 英治 村上 洋介 佐々木 赳 藤野 光洋 平野 恭悠 小澤 有希 吉田 修一朗 吉田 葉子 鈴木 嗣敏 金谷 知潤 石丸 和彦 前畠 慶人 西垣 恭一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.39-46, 2014-01-01 (Released:2014-01-31)
参考文献数
15

背景:無脾症患者は細菌感染,特に肺炎球菌に罹患しやすく,時に致死的となる.わが国では2010年より7価肺炎球菌結合型ワクチンが使用可能となり小児での予防効果が期待されている. 目的:7価肺炎球菌結合型ワクチン導入前の時期での,無脾症患者における重症細菌感染症の臨床像を明らかにし,新しいワクチンを含めた今後の対策について検討すること. 対象と方法:1988~2009年までに出生し,当院で治療を受けた無脾症患者のうち,外来経過観察中に重症細菌感染症(髄膜炎・敗血症)を起こした7例の臨床像を後方視的に検討した. 結果:無脾症患者44例中7例(16%)で,重症細菌感染症を認めた.感染症発症時の年齢は3ヵ月~4歳で,7例中5例は2歳未満であった.初発症状は全例が発熱,不機嫌,哺乳不良など非特異的な症状であった.短時間に急速な悪化を呈し,入院時には心肺停止,ショック状態,意識障害などの重篤な症状を認め,死亡率は57%であった.起因菌は肺炎球菌が7例中5例(71%)を占めた.7価肺炎球菌結合型ワクチンが使用可能であれば,予防できた可能性がある例が存在した. 結論:無脾症患者における重症細菌感染症(髄膜炎・敗血症)は,短時間に急速な悪化を呈し,死亡率が高い.早期診断が困難な例が存在し,小児循環器医のみならず,救急外来を含め無脾症患者の診療に関わる全てのスタッフへの啓発と体制作り,および患者家族への教育が重要である.無脾症患者には7価肺炎球菌結合型ワクチン等のワクチンを早期より積極的に接種すべきである.7価肺炎球菌結合型ワクチンの普及により侵襲性肺炎球菌感染症の減少が期待されるものの,ワクチン株以外の血清型の感染が存在し,完全には予防できないことも認識すべきである.
著者
村上 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.242-243, 2016-05-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
6

三角縁神獣鏡は,古代日本の最大の謎の一つである。邪馬台国の女王卑弥呼が,中国魏の皇帝から下賜された鏡100枚にあたるとする説もあるが,すでに500枚を超える出土がある。いつ,どこで,誰がどうやって作ったかもわからない謎の鏡なのである。三角縁神獣鏡に対するこれまでの研究は,裏面の文様の研究が主であり,鏡本来の機能を考察するには至っていなかった。古代鏡に対する材料科学的研究の一環として,三次元デジタイザで形状を計測し,さらに成分調整をした金属粉体を用いた3Dプリンタによって三角縁神獣鏡を精確に復原した。そして,その鏡面が太陽光によって「魔鏡現象」を起こすことを実証することができた。
著者
小池 都 村上 泉子 丹野 修
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.81-89, 2013-06-30 (Released:2014-07-16)
参考文献数
27
被引用文献数
1

We determined skin properties and morphological characteristics in the neck and décolleté in 90 Japanese women aged 22–76 years old, then analyzed age-related changes and differences in those areas as compared to skin of the face. Our results showed that skin in the décolleté had higher water content, as well as lower TEWL and sebum levels as compared to the cheek, with the same tendency seen in the neck, e.g., the sebum-water balance in the skin of the neck and décolleté areas was greatly different from that in the skin of the cheek. Furthermore, in subjects aged 40 years and older, sebum levels and skin color lightness were significantly decreased in the neck and décolleté areas, while wrinkle morphology was also markedly different, suggesting that these areas showed marked alterations in women in their 40s, which may be attributed to the effects of ultraviolet (UV) to change skin elasticity and color. The shape of the neck and lower jaw area was also markedly changed in subjects aged 60 years older, indicating that subcutaneous tissue might exert varying age-dependent effects on lower jaw morphology.
著者
岩本 圭亮 村上 順一 佐野 史歩 林 雅太郎 上田 和弘 小賀 厚徳 濱野 公一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1917-1922, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

症例は44歳,女性.検診の胸部単純X線検査で異常を指摘された.CT検査で後縦隔腫瘍を指摘され,当科へ紹介された.MRIとPET-CTから嚢胞性病変を疑い,胸腔鏡下に後縦隔腫瘍を摘出した.腫瘍は薄い被膜に覆われた単房性嚢胞で,周囲組織との連続性はなかった.嚢胞壁は単層または数層となった丈の低い線毛円柱上皮細胞からなり,エストロゲンレセプター陽性かつプロゲステロンレセプター陽性であったため,Müller管嚢胞と診断した.術後にHorner症候群を認めたが,術後6カ月に改善を認めた.閉経前後の女性における後縦隔嚢胞を認めた場合,Müller管嚢胞の可能性を念頭に置く必要がある.
著者
村上 哲生 服部 典子 舟橋 純子 須田 ひろ実 八木 明彦
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.45-50, 2003-08-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
16

硫酸アンモニウム(硫安;(NH4)2SO4)は,スキー場の雪面硬化剤として,日本では良く使われている.1970年代より,スキー場開発が進められている長良川上流域(岐阜県)の渓流において,窒素汚染の実態を調査した.流域面積の50%をスキー場が占める渓流では,無機態窒素濃度と負荷量は冬季に著しく増加した.即ち,無機態窒素濃度は,降雪のない時期には約0.2mgL-1であったが,冬季には1.2mgL-1に達した.また,年間の無機態窒素負荷量に対する冬季の寄与率は70%と推定された.このような冬季における窒素濃度と負荷量の特異的な増加は,他の対照とした渓流では観測されなかった.硫安が散布されている時期においても,渓流の無機態窒素の90%以上が硝酸態であった.低温環境下でも硝化により,アンモニウムが硝酸に変化しているらしい.
著者
村上 信子
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 = Bulletin of Oita prefectural College of Arts and Culture (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.127-144, 2023-03-22

This study will determine how the fatal shooting of former Prime Minister Abe was reported by the media through witnesses and local journalists. The incident took place on the eighth of July in 2022 in Nara prefecture where Abe was giving a speech in support of local counselors during the national election.This research paper will further explore in detail how the tragic events unfolded from the perspective of the media, and how the news was broken by NHK and other TV news stations. Furthermore how footage from bystanders had an impact on how it was broadcast. To conclude it will examine how the media portrayed Abe in a positive light looking back at his career, and how other similar historical political attacks were covered by news journalists and TV stations in the past.
著者
村上 雅子 原 毅
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.493-500, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
10

メトホルミン(以下Met)は2型糖尿病(以下T2DM)治療に,本邦では従来1回250 mgを1日2-3回内服が多く,同一用量を1日1回内服(以下分1)に変更時血糖動態や有効性の比較検討には乏しい.そこでMet250 mg 2回(以下分2)から500 mg分1に変更時の血糖動態の比較,安全性の検討目的で,入院中T2DM 30例で,Met分2から分1朝又は夕に変更し,各2日毎,計6日間の血糖動態を持続血糖モニターで比較した.24時間平均血糖はそれぞれ,135.1,135.0,134.8,137.4,141.9,141.3 mg/dL,平均空腹時血糖はそれぞれ,121.9,121.4,123.9,125.7,126.2,124.5 mg/dLで,血糖変動幅を含めて有意な上昇を認めなかった.T2DMにおいてMet500 mg分2から分1への変更は,血糖動態の悪化や有害事象もなく有用と考えられた.