著者
川添 航 坂本 優紀 喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 松井 圭介
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-62, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
20

本研究は茨城県大洗町におけるコンテンツ・ツーリズムの展開に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を目的とした。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている地域である。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを来訪者として呼び込むことに成功した。宿泊業においては,アニメ放映以前までは夏季の家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は夏季以外の1人客の割合が大きく増加するなど変化が生じた。コンテンツ・ツーリズムの導入によるホスト・ゲスト間の関係性の変化は新たな観光者を呼ぶ契機となったことが明らかとなった。
著者
伊藤 正次 嶋田 暁文 荒見 玲子 手塚 洋輔 松井 望 鈴木 潔 関 智弘
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、多元的に分立している国・自治体の行政機関相互の連携・協働の実態を把握し、効果的な連携手法を探究することを目的としている。研究の第3年度目となる平成29年度においては、前年度に引き続き研究会を開催してメンバーの視座の共有を図ったほか、学会の公募企画に応募し、研究成果の発信とピア・レビューの機会を得た。同時に、自治体に対する合同のヒアリング調査を実施した。具体的には第1に、平成29年5月28日に開催された日本行政学会に公募企画「多機関連携の行政学」を応募し、学界への研究成果の発信を行った。同企画では、研究代表者の伊藤正次、研究分担者の松井望、鈴木潔がそれぞれ報告を行い、青木栄一・東北大学大学院准教授を討論者に迎え、討論を行った。第2に、研究会を開催した。まず、日本公共政策学会の開催に合わせ、平成29年6月18日に富山市で通算第6回の研究会を開催した。そこでは、各自の研究分担の内容に関する中間報告を行い、研究全体のとりまとめに向けたスケジュール等を確認した。また、日本政治学会の開催に合わせ、9月24日に九州大学東京オフィスで通算第7回の研究会を開催し、研究分担内容の中間報告とそれに基づく討論を行った。さらに、後述の大牟田調査に合わせ、通算第8回研究会を平成30年3月6日に福岡市で開催し、次年度の研究方針に関する調整を行った。第3に、研究メンバー全員による調査を実施した。平成30年3月5日に大牟田市役所を訪問し、動物園行政、高齢者福祉行政等に関する多機関連携の現状と課題について聞き取りを行った。
著者
松井 剛
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.111-124, 2019-01-17 (Released:2019-01-17)
参考文献数
13

このケースでは,1974年から2015年まで東京の渋谷と原宿で営業した伝説的な雑貨店,文化屋雑貨店に注目する。雑貨とは,どこまでから雑貨であり,どこからが雑貨ではないかという範囲設定が分からない不思議な製品カテゴリーであるが,現在では雑貨店が日本各地で見られるようになった。この日本独自の製品カテゴリーを創造したのが,文化屋雑貨店店主・長谷川義太郎である。長谷川は「雑貨」という概念を通じて,消費者のみならず,ファッション・デザイナーや雑誌編集者など内外のクリエイターに対して,現在に至るまで多大なる影響力を与えてきた。このケースでは,本人によるオーラル・ヒストリーに基づいて,長谷川が文化屋雑貨店を通じて実現した市場創造について見る。
著者
石黒 直隆 猪島 康雄 松井 章 本郷 一美 佐々木 基樹
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

絶滅した日本のオオカミ(エゾオオカミとニホンオオカミ)の分類学上の位置をミトコンドリア(mt)DNAのゲノム解析により明らかにし、両オオカミの起源と系譜を海外の考古資料から調査した。エゾオオカミは、大陸のオオカミと遺伝的に近く、ニホンオオカミとは大きく異なっていた。ロシアおよび中国の古代サンプル143検体を解析したが、ニホンオオカミのmtDNA配列に近い検体は検出できなかった。また、モンゴルのオオカミ8検体および国内の現生犬426検体を解析し、ニホンオオカミのmtDNAの残存を調査したが見つからなかった。これらの結果は、ニホンオオカミはオオカミ集団の中でもユニークな系統でることを示している。
著者
川添 航 坂本 優紀 喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000228, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに近年,アニメーションや映画,漫画などを資源とした観光現象であるコンテンツ・ツーリズムの隆盛が指摘されている.本研究は,コンテンツ・ツーリズムの成立による来訪者の変容に伴い,観光現象や観光地における施設や関連団体,行政などの各アクターにどのような変化が生じたかという点に着目する.研究対象地域とした茨城県大洗町は県中央部に位置しており,大洗サンビーチ海水浴場やアクアワールド茨城県大洗水族館などを有する県内でも有数の海浜観光地である(第1 図).また2012 年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として商店街を中心に町内に多くのファンが訪れるなど,新たな観光現象が生じている地域でもある(石坂ほか 2016).本研究においては,大洗におけるコンテンツ・ツーリズムの成立が各アクターにどのように影響したかについて整理し,観光地域がどのように変化してきたか考察することを目的とする.2.対象地域調査対象地域である大洗町は,江戸時代より多くの人々が潮湯治に訪れる観光地であった.その観光地としての機能は明治期以降も存続しており,戦前期においてすでに海水浴場が開設されるなど, 豊かな自然環境を活かした海浜観光地として栄えてきた.戦後・高度経済成長期以降も当地域における観光業は,各観光施設の整備や常磐道,北関東道,鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の開通などを通じ強化されていった.しかし,2011 年に発生した東日本大震災は当地にも大きな被害をもたらし,基幹産業である観光業や漁業,住民の生活にも深刻な影響を与えた.大洗町における観光収入は震災以前の4 割程度まで落ち込む事になり,商工会などを中心に地域住民による観光業の立て直しが模索されることになった.3.大洗町における観光空間の変容2012 年放映のアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として地域が取り上げられたことにより,大洗町には多くのファンが観光者として訪れるようになった.当初は各アクターにおける対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて様々な方策がとられている.大洗町商工会は当初からキャラクターパネルの設置や町内でのスタンプラリーの実施など,積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れれ,商店街などに多くのファンを来訪者として呼び込むことに成功した.また,海楽フェスタや大洗あんこう祭りなどそれまで町内で行われていたイベントにおいてもコンテンツが取り入れられるようになり,同様に多くの来訪者が訪れるようになった.これらコンテンツを取り入れたことにより,以前は観光地として認識されていなかった商店街や大洗鹿島線大洗駅などにも多くの観光者が訪問するようになった.宿泊業においても,アニメ放映以前までは家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は1人客の割合が大きく増加するなどの変化が生じた.
著者
Audrey STERNALSKI 松井 晋 Jean-Marc BONZOM 笠原 里恵 Karine BEAUGELIN-SEILLER 上田 恵介 渡辺 守 Christelle ADAM-GUILLERMIN
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.161-168, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
23
被引用文献数
2

福島第一原発事故から1年が経過した2012年に福島県内で採集したスズメ目鳥類3種(ヤマガラ,スズメ,カワラヒワ)の成鳥と,シジュウカラの未孵化卵および巣材で測定した放射性セシウム(134Cs および137Cs)濃度から,内部および外部被曝線量率と,それらの合計被曝線量率を推定した.外部被曝線量率が合計被曝線量率に寄与する程度は,生息地の微細環境(例:地表,空中および樹上,巣内)の汚染の程度と,生活史段階(成鳥もしくは卵の各段階)に応じた各微細環境での活動時間の影響を受け変化した.すなわち,シジュウカラの未孵化卵の外部被曝線量率は内部被曝線量率よりも高く,主に巣材の汚染に由来していた.シジュウカラの主な巣材は多量の放射性核種を保持することが知られているコケ類で,外部被曝線量と内部被曝線量率の差は1,000倍以上に及んでいた.さらにシジュウカラの未孵化卵で推定された合計被曝線量率は,野外で測定した空間線量率をはるかに上回っていた.これらの結果は,野生動物に対する放射線被曝の影響を評価するためには,詳細な線量分析を実施することと共に,慎重に対象種の生活史を考慮することで,個体に対する生物学的影響のより適切な評価に繋がるだろう.
著者
松井 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-99, 2013-03-20 (Released:2013-10-17)
参考文献数
35
被引用文献数
5

本論文は,「癒し」という流行語が社会に波及する中で生じた意味創造プロセスを,20年分の雑誌記事タイトル8033件のテキスト分析を通じて明らかにする.特に注目をするのは,マーケティングを通じて新しい言葉が普及する一方で,こうした言葉の流行に乗る形でマーケティング努力の模倣が生じるという相互作用である.またブームが生じた理由を説くメディアの「理屈づけ」が,こうした相互作用を強化する可能性も指摘される.
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
岡田 篤正 植村 善博 東郷 正美 竹村 恵二 吉岡 敏和 堤 浩之 梅田 康弘 尾池 和夫 松井 和夫 杉森 辰次 杉山 直紀 園田 玉紀 梅田 孝行 松村 法行 山田 浩二 古澤 明
出版者
一般社団法人 日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.25, pp.93-108, 2005-06-30 (Released:2012-11-13)
参考文献数
36

The Kameoka basin is located to the west of the Kyoto basin. On the northeast side of the basin, two faults trending the northwest to southeast direction exist along the foot and the former edge of a mountain, respectively. They compose of the Kameoka fault zone with the length of about 13km (Okada&Togo ed.,2000).To elucidate such characteristics as distribution, subsurface structure and activity of those faults, we have carried out seismic reflections (P-waves) and deep drilling surveys across the faults. Volcanic ash and pollen analysis were also performed using core samples obtained by drillings. In this paper, we report the results of these surveys, especially about the characteristics of the concealed faults related to basin formation.By these surveys, three faults were detected along the three sections by the seismic reflection crossing the eastern half of the Kameoka basin, named as Fl, F2 and F3 faults from west to east. All faults incline to the northeast to form the reverse fault type uplifting to the northeast side.The Fl fault is concealed under the alluvial plain of the Katsura River and is an active fault having remarkable displacement of vertical direction to a few hundreds of meters. An accumulation of the displacement in the vertical direction is plainly recognized on the topographical and geological sections.The F2 fault appears in the wide deformation zone on the hanging. wall of Fl fault and is thought to be a subordinate fault of the F1 fault. From the distribution, the F2 fault is corresponded to be an active fault described by Okada&Togo ed. (2000) and identified at former edge of a mountain in the Kameoka basin. In this paper, we will call the Fl fault and the F2 fault as“ the Kameoka fault within the basin”. It is surely distributed about 4.6 km from the Umaji to the Hozu settlements in the southeast direction.Of the Kawarabayashi reflection profile, one reflection layer C has vertical displacement of 65m resulted from the activity of“ the Kameoka fault within the basin”. A pure seam from core samples of the layer is confirmed as so-called Oda Volcanic ash at 420-450ka. Therefore, the average slip rate of the vertical displacement is estimated at 0.15m per thousand of years or less, during the last about 430,000 years.We also found a fault scarplet (relative height 1.5-2.5m) on a low terrace. It seems to be formed by the F2 faulting since about 20,000 years ago. Hence the faulting of“ the Kameoka fault within the basin” since the late Pleistocene is certain, and also there is a possibility of the activity in the Holocene from the existence of the reverse-inclined terrace II at Umaji.Judged from distribution, the F3 fault is corresponding to "the Kameoka fault in the foot of a mountain" described by Okada&Togo ed. (2000). There is no evidence of the F3 faulting during the late Quaternary.
著者
桂 英史 西條 朋行 長嶌 寛幸 布山 毅 松井 茂
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の研究成果としては以下の三点に集約できる。(1) 医療現場での映像表現は自らが持っているありあわせのスキルや機材を活用してやりくりしてブリコラージュしようとする傾向が作品化のプロセスを観察することによってあきらかになった。(2)映画祭への出品など、社会的な報酬を求めるような目標を設定すると、医療従事者や制作支援者も報酬獲得に向けて協調的に行動するようになり、制作した作品がありふれたものになってしまい、もともとあった特異性や独創性が大きく損なわれる傾向になる。(3)都内二カ所のメンタルクリニックにおいて、ワークショップ形式によるアウトリーチプログラムが展開できた。
著者
松井 浩
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.539-545, 1970-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
2

β線放射粒子からなる塵埃の放射能および粒度分布を測定する方法の1つとして, オートラジオグラフィによる方法を検討した。X線フィルムと原子核乾板のβ線に対する黒化特性を比較し, 分布測定上の問題点を調べた。X線フィルムの現像時間および温度の変化に対する黒化径の誤差は, それぞれ±0.1分, ±0.5℃のとき2~3%であり, 無視できる程度であった。線源と乾板の間の隔離層としてライファンを使用した場合50μ (~5mg/cm2) 程度までは核分裂生成物からのβ線に対して黒化径の変化を示さなかった。オートラジオグラフィによるβ線放射粒子の放射能分布および粒度分布決定における誤差, および実用上の要点について考察し, 測定例を示した。
著者
牛垣 雄矢 久保 薫 坂本 律樹 関根 大器 近井 駿介 原田 怜於 松井 彩桜
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.285-306, 2020 (Released:2020-11-10)
参考文献数
34

アクアラインの通行料引下げの結果,高速バスによる東京都心部や川崎・横浜方面への通勤者が増加し,その中にはパーク&ライドを行う人も多い.東京大都市圏郊外としては相対的に地価も安いため,木更津市の人口は増加し,中心市街地から離れた郊外住宅地がその受け皿となっている.市や県など行政の協力・連携のもと,イオンモールなどのショッピングセンターが立地し,周辺ではチェーン店等が集積した.これにより木更津市の買物環境と商業中心性は向上したが,中心市街地の個人商店は厳しい状況にあり,スーパーやドラッグストアが少なく生活必需品が購入しづらい状況にある.その中でイオンによって無料送迎バスが運営され,高齢者の重要な移動手段となっている.木更津市の人口分布や商業は自家用車の利用を前提とした構造となり,イオンとの関わりや更なる高齢化が進展する中で,住民に対する買い物の機会や移動手段の確保が課題となっている.
著者
佐賀 朝 松井 洋子 小野沢 あかね 人見 佐知子 横山 百合子 吉田 伸之 金 富子 吉田 ゆり子 塚田 孝 神田 由築 浅野 秀剛 米谷 博 杉森 哲也 初田 香成 松田 法子 本康 宏史 齊藤 俊江 松田 有紀子 屋久 健二 吉元 加奈美 武林 弘恵 ボツマン ダニエル
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本近世~近代における国内各地や植民地の遊廓の調査を進め、遊廓の開発や社会=空間構造を分析するとともに、一次史料を用いて、遊女屋・貸座敷の経営内部における女性たちへの抑圧と搾取の構造の解明も進めた。その結果、近世後期以降の遊廓の大衆化と全国的普及の過程で女性たちに対する搾取が強化される一方、明治維新に伴う公娼制度の改革を経て、女性たちが多様な手段を用いて搾取や暴力に直接・間接に抵抗し、それが遊廓社会の変容を促していくことも明らかになってきた。継続的な現地調査や研究会と研究者のネットワーク化、「遊廓・遊所研究データベース」の充実により、新しい遊廓研究が現れてきた点も重要な成果である。