著者
山石 季沙 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.121-124, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
4

本研究では、歴史的町並みを有する観光地において、域外資本店舗が画一的な印象を与えるファサード構成要素の状 態を明らかにすることを目的とした。評価構造を把握するため、評価グリッド法を用いた印象評価実験を行った。実験の結果、被験者は観光地景観に「特別感」と「安心感」が感じられたときに景観を「好ましい」と評価することが明らかになった。域外資本店舗による、地区のイメージと合致しない商品の取扱、写真やキャラクターを使用した過剰に内容を演出した広告とその過剰な掲示が、「宣伝が誇大だ」「工夫が感じられない」「安っぽい」と感じられ、これらの評価項目が「特別感」に反する「どこにでもある」という印象形成に寄与していることが明らかになった。
著者
今井 匠太朗 淺田 義和 伊藤 彰 片野坂 俊樹 白鳥 成彦 高松 邦彦 松本 清 森 雅生
出版者
日本インスティテューショナル・リサーチ協会
雑誌
大学情報・機関調査研究集会 論文集 第12回大学情報・機関調査研究集会 論文集 (ISSN:24363065)
巻号頁・発行日
pp.66-71, 2023-11-19 (Released:2023-11-24)

データの可視化や分析の知識はIR担当者に必要な素養の1つである。効果的な意思決定のためには適切に処理されたデータ分析が重要であるが、このような能力に長けた人材は不足しており、IRの普及を困難にしている。この状況を踏まえ、IRで実践的に利用するデータサンプルを提供し、IRスキルの涵養や質向上を目指すプラットフォームを立ち上げる。データサンプルは合成データを配布し利用可能とする。この合成データに基づいたデータ分析のサンプルや教材の配布、またデータそのものの改善等を集約し、 IR人材の育成とその質向上を目指す。本稿では、プラットフォーム立ち上げの背景からコンセプト、将来構想について論述する。
著者
三好 紀子 松本 恵 金井 講治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

自閉症スペクトラム(ASD)は社会不適応に至る症例も多く、その一因として感覚特性の影響、中でも聴覚特性の影響が指摘されている。聴覚特性には「選択的聴覚注意障害」と「聴覚過敏」があり、支援に違いがあるが、臨床的に区別が困難な例が多い。聴覚情報処理障害(APD)は「聴力は正常であるが、聞き取りにくさが生じる」一群で、社会的不適応になる例が散見される。本研究の目的は、心理検査、APDの検査である聴覚検査などを組み合わせることで、ASDの聴覚特性の特徴を詳細に検討し、概念を整理することである。最終的には聴覚特性に起因する社会不適応への支援を検討することが目的である。
著者
小佐野 仁志 松本 浩一 野口 忠秀 草間 幹夫 櫻井 信司
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.136-139, 2005-03-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
14

A 76-year-old man presented with swelling of the right side of the maxilla. Spindle cell sarcoma was diagnosed on examination of a biopsy sample of the right maxillary sinus. We started CYVADIC (cyclophosphamide, vincristine, adriamycin, dacarbazin) chemotherapy. A favorable clinical response was obtained with 4 courses of chemotherapy. Partial resection of the maxilla was followed by 6 courses of CYVADIC therapy, because a small residual tumor was suspected. Histopathological examination revealed no residual tumor cells.Chemotherapeutic intervention appears to have been effective, with no apparent recurrence of lesions at present, 14 years after chemotherapy.
著者
松本 和也
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.24-34, 2006-11-10 (Released:2017-08-01)

本稿は、抽象化された普遍性において読まれてきた受容史に抗い、武田泰淳「ひかりごけ」の精読を通してその歴史性・今日性を論じる試みである。「ひかりごけ」をメタフィクションと捉え直して紀行文における「私」の身振りから"境界(線)の物語"を読み解いた上で、「人肉事件」というモチーフに対する複数の表象を分析し、"脱境界(線)の物語"としての「ひかりごけ」の相貌を取り戻し、その歴史的位置までを論じた。
著者
谷口 圭祐 松本 英樹 金木 健太郎 津野 佑太
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.339-345, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
19

目的:救急救命士の気管挿管病院実習にて患者の個人要因を調査し,直視型喉頭鏡を使用した場合での気管挿管困難予測因子について推論する。方法:麻酔導入時に患者の個人属性,上顎中切歯突出や義歯の有無,小顎,頸椎可動性,3-3-2の法則について確認し,気管挿管施行時に声門視認性(Modified Cormac-Lehane System;MCLS)を記録した。結果:MCLSを目的変数とした重回帰分析では,小顎(β=0.59;p<0.001),頸椎可動性(β=0.19;p<0.001)が有意な正のβを示し,性別が有意な負のβ(β=−0.34;p<0.001)を示した。結論:患者の性別,小顎,頸椎可動性は救急救命士による直視型喉頭鏡下の気管挿管困難との関連が示唆された。簡便な評価法として救急現場における気管挿管困難の予測に活用できる可能性が高い。
著者
木村 雅行 池田 雅和 柴田 英之 池田 祥子 松本 圭介
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.67-74, 2004-09-28 (Released:2017-12-01)
参考文献数
13

To estimate the laxative threshold (LT) and 50% effective dose (ED50) for diarrhea of a galactooligosaccharide (GOS) syrup (43% GOS ; 9.5% lactose ; 18% glucose ; 6.3% galactose ; 24% water), we asked 24 healthy subjects (12 men and 12 women ; age, 20 to 58 years ; weight, 39.0 to 96.0 kg) to ingest 190mL of aqueous solutions containing 5 different amounts (11.7,23.3,46.7, 70.0, 93.3g) of the syrup once every week from a low content to high one. Of the 24 subjects, 16 had diarrhea after ingestion of any test beverage. We estimeted the LT and ED50 of the GOS syrup by using a regression equation between the minimal dose levels (g/kg body weght) of the syrup caused diarrhea and the cumulative incidence of diarrhea. For the entire population, the estimated LT was 0.68 g/kg (0.30 g/kg as GOS) and the ED50 was 1.39 g/kg (0.60 g/kg as GOS). For men, the LT and ED50 were 0.65 g/kg and 1.13 g/kg, respectively, as compared with 0.90 g/kg and 1.50 g/kg for women. An increased frequency of bowel movements seemed to increase the incidence of diarrhea. The other abdominal symptoms reported were borborygmus (88%), flatus (58%), and abdominal distention (46%), all of which were transient, as was diarrhea. We also examined the safety of ingesting daily near amount of LT of the GOS syrup (15 g/person daily as GOS) for 2 weeks in 20 healthy adults. Although this dose increased the occurrence of abdominal gas in these subjects, the prevalence of diarrhea was unchanged as compared with that for the placebo beverage. These results show that the GOS syrup is safe even in repeated intake for near amount of LT.
著者
矢部 充英 藤井 崇 寺井 岳三 松本 政明
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.1047-1051, 2008-11-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
14

心臓ペースメーカー波形と干渉したため,自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)を装着されたが,心室細動であったにもかかわらず作動しなかった症例を経験した。患者は61歳の男性で徐脈のため心臓ペースメーカー(Dual-pacing, Dual-sensing, Inhibeted mode; DDI)を埋め込まれていた。自宅で意識消失し,救急隊による心肺蘇生時にAEDを装着されたが,心室細動であったにもかかわらず作動しなかった。本症例で使用されたAEDは半自動式で,手動で解析し,電気ショックのタイミングを調整できるタイプであるが,ペースメーカー装着患者に対する性能までは保障されておらず,ペーシング波形を患者の心電図と誤認した可能性があった。一般にAEDの心室細動に対する解析アルゴリズムにおいてその感度,特異度は高く設定されているが,AEDと埋め込み型ペースメーカー波形との干渉については不明な点が多い。ペースメーカー装着症例におけるAED使用にあたっては機種によっては電気ショック適応であっても作動しない可能性があり注意を要する。ペースメーカーとAEDの相互作用について,更なる研究と解析アルゴリズムの改訂が望まれる。
著者
小坂 光男 大渡 伸 松本 孝朗 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

【緒言】暑熱順化の形成過程における個体レベルの反応は急性の神経性・亜慢性の内分泌性調節変化に引き続いて器質性変化の誘発がある。この器質性変化と言えども細胞レベルにおいては温度刺激後の比較的早期に誘起される可能性は否めない。温熱生理学的手法に加えて、昨今、がん温熱療法のハイパ-サ-ミア分野で脚光を浴びている温熱感受性・熱耐性に関連の深い熱ショック蛋白(Heat shock proteins:HSPs)の誘導の有無を検索し、暑熱負荷時の生体反応、特に暑熱順化機序を個体および細胞レベルで解析・究明することを研究の目的としている。【方法】ナキウナギ、ラット、家ウサギに熱ショック(直腸温:42℃,15分)や寒冷ショック(直腸温:20℃,30ー120分,平成2年度はさらに筋肉・脳温を42℃,15分間加温負荷)を加え、各種体温調節反応を記録、動物は20時間後 10%SDSーPAGEによって、肝・腎・脾・副腎・脳・筋肉の各組織のcytosol fractionに新しい蛋白質(HSPs)の誘導の有無を検索、一部、HSP 70抗体によるWestern Blotting法によって詳細な分析を加えた。【結果】1熱ショック負荷方法(直腸温42℃に到達時間20ー30分が至適)で多少結果に差異が生じるが、2家ウサギで肝の cytosol fraction に 68KD の HSP の誘導、3ラットでは殆んど全組織で HSPs 70KD の誘導、4ナキウナギでは5例中1例において肝ーcytosol frction で 70KD 誘導、他の組織では HSPs の誘導困難、5寒冷ショックによる Cold shock protein(CSP)の検出に関してはラットの肝の cytosol fraction で 32KD の蛋白質が寒冷ショックによって消失する1例を観察している。6すべての動物の筋肉および脳のcytosol fraction で HSP の誘導はやや困難であるが、熱ショック負荷方の改善筋および脳(被殼)温度を42℃,15分間、直腸温43℃によって陽性の結果を得ており、今後更に検討を行う。【まとめ】熱耐性に関連の深い熱ショック蛋白(HSPs)が暑熱負荷20時間以後には細胞内に誘導される本研究結果は暑熱順化機序解明に光明を与える快挙である。
著者
山﨑 有美 河野 愛未 松本 朋子 大島 達也 山﨑 正夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00084, (Released:2023-11-22)

きんかんを加工し機能性成分である-クリプトキサンチンの含有量を比較したところ, ペーストにより多くのβ-クリプトキサンチンが含まれ, ペーストと麹菌発酵乳飲料を混合しても, -クリプトキサンチン含有量は変化しなかった. また, きんかんペースト添加麹菌発酵乳飲料を65°C 及び 85°Cで殺菌処理したところ, 65°C試験区において多くのβ-クリプトキサンチンが残存することが示された. きんかん由来β-クリプトキサンチン-麹菌発酵乳飲料混合物のβ-クリプトキサンチン腸管吸収能を評価した結果, β-クリプトキサンチン単独区と比較し, 麹菌発酵乳飲料混合区の腸管吸収量は約14倍に上昇することが明らかとなった.
著者
松本 淳 石崎 直人 苗村 健治 山村 義治 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.56-67, 2005-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

【目的】過敏性腸症候群 (IBS) を始めとする便通異常は、有病率が高い。また、心理的異常を伴うことが多く、従来の治療に抵抗するものも多い。今回、IBS患者に対し鍼灸治療を行い、反転法により臨床効果を検討した。【対象及び方法】罹病期間4年以上で半年以上の投薬によっても症状が十分に改善しなかったIBS患者4例に対し、中医学的な弁証に従い鍼灸治療を行った。治療期間 (B期間) は10回ないし20回を1クールとし、無治療期間 (A期間) と交互に繰り返した。便通異常の評価は、排便日誌をもとに、腹痛・腹部膨満感の程度、排便回数、便性状を記録した。また心理状態、quality of life (QOL) についても評価した。【結果及び考察】4例中3例において腹痛、腹部膨満感、QOLがB期間中は軽減し、2例で服薬量が減少した。心理状態には一定の傾向は見られなかった。今回の治療及び無治療期間の経過から、鍼灸治療がIBS患者の腹痛等の症状およびQOL改善に有効な治療となる可能性が示唆された。
著者
伊藤 太一 楠見 淳子 松本 顕
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

近年我々のグループは刺胞動物のヒドラが眠っていることを分子レベルで実証し、これにより、睡眠の起源は動物が脳を獲得するよりも古いことが示された。そこで、次の問いとして、『神経系は睡眠に必須なのか』を検証する。ヒドラでは薬剤処理によって神経系を喪失させることが可能である。この全く動けない『寝たきり』状態のヒドラが眠っているのかどうかを分子レベルで判定し、睡眠には神経系が必須要素なのかどうかを判断する。これは、これまで当然と考えられてきた「睡眠は神経系が担う」という通説に挑む研究である。
著者
野崎 一朗 松本 泰子 山口 和由 清水 有 熊橋 一彦 宗本 滋
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.136-142, 2013-02-01 (Released:2013-03-06)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

症例は23歳男性である.2週間続く腰痛と,その後生じた頭痛で受診した.頭部MRIでは左篩骨洞炎以外に特筆すべき所見はみとめなかった.入院翌日,右同名半盲と項部硬直を生じたことから,腰椎穿刺を施行し,血性髄液をみとめた.出血源検索のための腰椎MRIで,不均一に造影される硬膜内髄外腫瘍をみとめた.腫瘍によるくも膜下出血と診断し,脳神経外科にて腫瘍摘出術を施行された.病理診断は粘液乳頭状上衣腫であり,残存腫瘍に対して術後放射線治療を追加した.脊髄粘液乳頭状上衣腫によるくも膜下出血の頭痛を生じた特異な症例であり,貴重と考え報告した.
著者
髙木智子 松本修治 横田健一 阿部雅弘
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

コンクリートの高所への場内運搬において,圧送行った場合と,バケットを用いた場合のコンクリートの品質変化を比較する目的で,施工中の斜張橋主塔を対象に運搬前後のスランプ,空気量,圧縮強度試験を実施した。また,品質変化が耐凍害性に与える影響として,気泡径分布とスケーリング量を測定した。その結果,コンクリートポンプにより圧送した場合,スランプが低下したことに加え,空気量は増加し圧縮強度が低下した。一方,バケットにより運搬した場合,品質変化は確認されなかった。スケーリング試験の結果,打込み方法によらず場内運搬後のコンクリートが良好な耐凍害性を有していることが確認された。
著者
小野寺 慧 松本 直子 熊谷 章子 星 秀樹 杉山 芳樹 及川 大成 石橋 修
出版者
日本口腔診断学会
雑誌
日本口腔診断学会雑誌 (ISSN:09149694)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-30, 2015-02-20 (Released:2015-06-03)
参考文献数
16

Despite the considerable amount of literature on the positioning of ectopic impacted third molars, few reports have described cases of distal movement in the jawbone. In the present study, we describe our experience in treating a patient whose impacted lower third molar migrated over a 12-year period from the distal region of the second molar to a position inferior to the coronoid process.The patient was a 37-year-old man who first visited our facility in April 2012 with a chief complaint of right facial swelling and pain. Radiography revealed complete inverse impaction of the lower right third molar into a position inferior to the coronoid process, with a cyst-like radiolucent area including the crown spreading to the distal region of the lower right second molar.A radiograph from 12 years earlier showed that the lower right third molar was horizontally impacted distal to the lower right second molar. We therefore concluded that this lower right third molar had migrated apically over a 12-year period due to being displaced by the coronal lesion. Histopathological assessment indicated that the lesion was a dentigerous cyst. It is now 1 year since we performed the surgery and the patient has made good progress without any relapse to date.
著者
吉田 剛 松本 季 冨田 洋介 居村 茂幸
出版者
日本予防理学療法学会
雑誌
日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 第8回 日本予防理学療法学会学術大会 (ISSN:27587983)
巻号頁・発行日
pp.33, 2022-12-01 (Released:2023-06-07)

【はじめに,目的】我々は2003年に,簡便な舌骨上筋筋力の評価指標としてGSグレードを開発し,その後の臨床場面などで幅広く使用されてきた.これは,背臥位で頭部挙上し,顎を引いた位置で保持させ落下の程度を4段階で評価する方法であり,測定信頼性および臨床的有用性について検証済みである.近年サルコペニア嚥下障害という概念が登場したが,フレイル高齢者の嚥下筋が筋力低下していてもそれを簡便にスクリーニングする方法がないのが現状である.現行のGSグレードは抵抗を加える段階がない4段階であるため,筋力の高い対象者の軽微な変化をみることが難しい.また,通常の徒手筋力検査は抵抗を加える段階のある5段階である.そこで,本研究では5段階の修正GSグレードの妥当性を検証し,加えて,修正Gr.4と5の違いを検証し,修正GSグレードの意義を検討することを目的とした.【対象】健常成人29名(男5名,女24名,21.07±0.72歳)を対象とした.【方法】評価項目は,修正GSグレード,頸部可動域(4方向),舌圧,舌骨上筋筋力の実測値として開口筋力,相対的喉頭位置とした.なお,修正GSグレードの抵抗は約10mmhg程度とした.本研究では(1)修正GSグレードの妥当性検証,(2)修正Gr.4と5の各群とその他の項目との関係を検証した.(1)では開口筋力の実測値と修正GSグレード評価の結果の分析を行い,(2)ではGr.4とGr.5の2群に分け,2群の差を Mann-WhitneyのU検定により検証した.有意水準は5%とした.【結果】(1)開口筋力はGr.4群は6.65±1.70(kg),Gr.5群は9.26±2.50(kg)と有意差を認め,基準関連妥当性が高かった.(2)Gr.4群は,頸部回旋可動域が有意に小さく,舌圧ではGr.4群は29.94±11.10(kPa),Gr.5群は39.31±10.26(kPa)と舌圧も有意に低かった.相対的喉頭位置はGr4.は0.35±0.03,Gr5は0.39±0.03とGr4.で喉頭位置は有意に上昇していた.【考察】今まで健常レベルと考えてきたGSグレード4の中には,修正GSグレードでは4と5の人が混在しており,健常若年者でも判別可能であった.舌圧基準値は30kPaがボーダーであり,修正Gr.4群はボーダーラインにあると考えられた.また,Gr.4群は頸部回旋可動域が低下し,舌圧も低いことから,舌骨上筋筋力には頸部筋緊張や舌圧も影響していると考えられた.サルコペニア摂食嚥下障害の嚥下筋の筋力低下を示す指標として舌圧が用いられているが,修正GSグレードで評価できる可能性があり,地域在住高齢者のフレイル予防に対しても,舌骨上筋筋力低下を早期に発見するツールになると考える.今後は高齢者や脳卒中者を対象に臨床的有用性について検討していく必要がある.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守した.研究対象者には書面及び口頭にて説明し書面にて同意を得た.また,データはすべて匿名化して扱い個人情報の保護を徹底した.なお,本研究は高崎健康福祉大学倫理審査委員会の倫理審査の承認を受けている(高崎健康大倫理第2011号).
著者
藤後 栄一 村松 歩 水野(松本) 由子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.203-214, 2023 (Released:2023-09-13)
参考文献数
40

目的:本研究の目的は,看護学生を対象とし,瞑想を中心とするマインドフルネス呼吸法の効果について,カオス解析を用いて脈波の特徴を抽出することとした.方法:看護学生20名(21~22歳)をランダムに振り分け,マインドフルネス実施群(Mi群)10名とマインドフルネス非実施群(nMi群)10名とした.10日間を実験期間とし,1日目,5日目,10日目の脈波を測定した.脈波から算出したアトラクタを視覚的に評価し,両群間の安静閉眼・暗算課題時の最大リアプノフ指数を比較した.最大リアプノフ指数は,交感神経活動の賦活によって増大する.結果:実験10日目のアトラクタの形状は,Mi群は変化が少ないのに対し,nMi群は変化が複雑であった.Mi群の最大リアプノフ指数は1.7以下で推移し,nMi群と比較し有意に低値を示した.結論:実験10日目のMi群のマインドフルネス実践後に交感神経系が抑制されたことが示唆された.カオス解析を用いた信号処理によりマインドフルネス呼吸法の特徴を評価できる可能性がある.