著者
小林 憲正 遠西 寿子 坪井 大樹 酒井 貴博 金子 竹男 吉田 聡 高野 淑識 高橋 淳一
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.39-46, 2008-03-31

炭素質コンドライトや彗星中に種々の複雑有機物が検出されていることから,地球外有機物が生命の誕生に重要な役割を果たした可能性が議論されている.隕石・彗星中有機物の起源としては,分子雲中の星間塵アイスマントル中で宇宙線・紫外線エネルギーにより生成したとするモデルが提案されて いる.われわれは模擬星間物質に重粒子線を照射することにより高分子状の複雑有機物に結合したアミノ酸前駆体が生成することを見いだした.このような高分子状結合型アミノ酸は遊離アミノ酸と比較して宇宙環境で安定であること,円偏光照射によりアミノ酸エナンチオ過剰を生じうることなどが わかった.これらの知見をもとに生命の起源にいたる新たな化学進化シナリオを提案する.
著者
林 裕晃 西原 貞光 小沼 洋治
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.545-553, 2012-05-20 (Released:2012-05-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Due to accidents of the nuclear power plants in Fukushima prefecture, a lot of radioisotopes were diffused into the environment. They adhered onto the surface of the X-ray detector (imaging plate; IP) and many black spots were seen on the medical images. The process to count them is important to evaluate the degree of contamination and/or removal. In this study, we aimed to develop a counting method for black spots. Based on the analysis of the medical images having black spots, we summarized that areas affected by the certain black spots were limited to the eight pixels surrounding the most intensive pixel. The newly developed counting method was applied to these nine pixels (3×3 pixels) and selection rules were based on the following two information: 1. differences between the digital value of the most intensive pixel and those of the surrounding eight pixels, and 2. total summation of the digital values in the nine pixels. The estimated image based on our method showed a good concordance with the original image. Therefore, we summarized that our counting method is a powerful tool for estimating numbers of black spots.
著者
中村 正人 松田 佳久 高木 征弘 今村 剛 はしもと じょーじ 山本 勝 大月 祥子 小郷原 一智 林 祥介
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

欧州の金星探査機Venus Expressにより得られた観測データを金星探査機「あかつき」のデータ解析システムで分析するとともに、大気大循環・放射輸送・雲物理・大気化学の数値シミュレーションを行い、大規模風系の維持と大気物質の循環のメカニズムを探った。これらの成果をもとに、残された問題点を洗い出し、2015年に改めて周回軌道投入を目指す「あかつき」の観測計画の最適化を進めた。
著者
小林 久幸
出版者
帝塚山大学
雑誌
帝塚山大学短期大学部紀要 (ISSN:13459732)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57-67, 2001-02-01

シドニー五輪2000男子サッカー競技のアジア地区最終予選1999年開催の日本代表U-22チーム出場4試合(99U22)を収録したVTRから, サッカー試合中のインプレーとアウトオブプレー時間の比率およびアウトオブプレーの要因別出現回数・所要時間とその比率などを検討した。結果は以下の通りである。(1)ロスタイムを除いた試合時間90分におけるインプレーとアウトオブプレーの1試合当り平均時間(比率)では, 99U22は52分50秒(58.7%)対37分10秒(41.3%)である。(2)インプレーの1試合当りの出現回数および1回当りの持続時間では, 99U22は約127回, 24.9秒である。(3)アウトオブプレーの1試合当りの出現回数および1回当りの所要時間では, 99U22は約137回, 16.3秒であり, 日本は約65回(47%), 15.4秒である。(4)アウトオブプレーの1試合当りの要因別出現回数の比率では, 99U22は比率の高いものから順にTH41%(56回), FK26%(35回), GK17%(23回), OTH11%(15回), CK6%(9回)である。(5)アウトオブプレーの1試合当りの要因別所要時間では, 99U22の最も長いのはFKの9分49秒, 次いでTHの8分56秒, OTHの7分48秒さらにGKの7分15秒であり, 最も短いのはCKの3分21秒である。(6)アウトオブプレーの要因別1回当りの所要時間では, 99U22は所要時間の長いものから順にOTH 32.3秒, CK 23.7秒, GK 19.1秒, FK 16.7秒, さらにTH 9.6秒であった。なお, この順位と出現回数の比率の順位とはほぼ逆の様相である。(7)アウトオブプレーの時間区分別の生起率では, 99U22の最も多いのは10&acd;20秒の42%であり, 次いで10秒未満の29%である。(8)日本と対戦チームとのアウトオブプレーの比較では, 日本のTHの1試合当りの出現回数31.8回・23.2%は対戦チームの24.3回・17.7%よりも多い(P<0.05)。日本のGKの1試合当りの出現回数7.5回・5.5%は対戦チームの15.3回・11.1%よりも顕著に少なく(P<0.001), 1回当りの所要時間では日本のGK 21.7秒は対戦チームの17.9秒よりも明らかに長い(P<0.01)。
著者
林 里香
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.91-97, 2008-03

本稿は、日本語集中講義において行われた他者紹介の活動実践を振り返り、考察することを目的としている。近年、他者紹介の活動は、第二言語習得の現場だけではなく、コミュニケーションスキルの講習や大学の口頭表現演習などでもよく行われている。今回、筆者は韓国の大学で、日本語集中講義の第1時限目の授業として他者紹介の活動を行ったeこの活動を計画した経緯や授業実践を振り返り、他者紹介の活動が教室内でどのような意義をもつのかを検討し、考察を加えた。他者紹介の活動は、①学生間の助け合いが生まれる、②授業担当者が学生の日本語能力と学習への参加態度を把握することができる、③学生が情報収集・選択と発表の手順を理解することができる活動である。そしてこの活動は、それだけでなく、学生と教師がそれぞれ持っ「確信」(beliefs)(岡崎1999)の歩み寄りを促し、教室を「you世界」(佐伯1995)である学習共同体へ導く基礎作りができる活動であることが明らかになった。
著者
小林 丈芳 跡部 紘三 松川 徳雄 福岡 登
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.21-30, 2001-03-31

原子力・放射線教育の在り方を考えていくために,地域の生活環境が青少年の原子力等の知識やイメージにどのような影響をもたらすかを明らかにする目的で,徳島県と原子力発電所のある福井県敦賀市の中学生・高校生を対象に「エネルギー・原子力等に関するアンケート調査」を行なった。その結果,彼らの原子力・放射能・放射線に対する知識やイメージ等に関して次の点が明らかになった。現代社会において,徳島県の生徒は「火力」,敦賀市の生徒は「原子力」を最も重要なエネルギー資源と考えているのに対し,21世紀の社会では両地域の生徒共に「太陽熱・太陽光」を重要であると考えている。(2)同地域の生徒の多数が原子力・放射能・放射線についての知識をマスメディアから得ている。徳島県の生徒は「中学校」,敦賀市の生徒は「博物館・展示会」「家庭」から得たと回答した割合が高い。(3)原子力・放射能・放射線の知識に関して,徳島県の生徒は「原子爆弾」,敦賀市の生徒は「原子力関連施設」や「核燃料」に関連した用語や知識の回答が多い。また,敦賀市の生徒は,原子力等に対して「危険」とイメージする傾向にある。(4)エネルギー資源として女子は「太陽熱・太陽光」を重要であると考えている。また,原子力等の知識やイメージにおいて,男子は「危険」,女子は「原子爆弾」「有害」「恐い」「レントゲン」などを回答する傾向にある。これらの要因として,男女の知識量や感性の違い,胎児への悪影響に対する意識の違いなど教科教育以外の要因が考えられる。(5)(2)(3)より,知識の習得に関して,徳島県の生徒は中学校における平和学習,敦賀市の生徒は自治体や企業による啓発活動の影響を強く受けているものと考えられる。
著者
小林 秀紹 小澤 治夫 樽谷 将志
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.113-118, 2006

本研究の目的は小学生(高学年児童)の体格・体力に関連する要因として栄養、運動および休養に関する生活状況を取り上げ、さらに運動・スポーツに対する意識を考慮したモデルによる諸要因の関連を明らかにすることであった。首都圏の小学校に通学する高学年児童(小学4〜6年生男女232名)を対象に体格・体力の測定および生活状況・意識等の調査を行った。体格・体力に関与する栄養、運動、休養および運動・スポーツに対する意識等の要因を明らかにするために、探索的因子分析ならびに構造方程式モデルを適用し、包括的な関係を検討した。本研究が対象とした首都圏の高学年児童の体格および体力は標準的で歩数の点から比較的活動的な集団であった。体格・体力の構成概念は「体格・基礎体力」と「体力」に分離され、体格と体力の未分化が窺えた。運動・スポーツに対する意識は「積極性」と「消極性」に大別され、多くのものは積極的な意識を運動あるいはスポーツに対して抱いていた。子どもの生活状況と体力構成要素との関係において、睡眠を中心とした休養に関する生活状況と歩数に代表される運動量が体格・基礎体力を形成することが明らかとなった。また、体力の水準に応じた運動・スポーツに対する意識のあり方を検討する必要があると考えられた。
著者
林 勇吾 三輪 和久 森田 純哉
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.604-619, 2007 (Released:2009-04-24)
参考文献数
20
被引用文献数
14

In this study, we investigated effects of having different perspectives in solving collaborative tasks. A simple reasoning task was given to several pairs of participants, each of whom discussed their views with their partner. Protocol analysis was performed to reveal how people exchange information with a partner who has a different perspective to achieve successful collaboration. In the experiment, we controlled participants′ perspectives, where the appearance of visual images was manipulated based on Gestalt psychological theory. Three conditions were set up: (1) the distributed-view condition, where one of two different perspectives was presented separately to each of the participants in a pair; (2) the dual-view condition, where two equivalent perspectives were presented together to both participants; and (3) the single-view condition, where only a single perspective was presented to both participants. The protocol analysis showed that the pairs in the distributed view condition who reached to solution engaged in the task with complementary interactive manners. On the other hand, the protocols of the pairs who could not reach solution showed that one of the participants shifted his⁄her perspective towards the opponents′ perspective. It is also argued that the problem solving in collaboration of pairs with different perspectives is performed through insight processes.
著者
小林 孝二 大垣 直明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.608, pp.127-134, 2006
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to consider on the houses of Ainu people drawn in early modern period (mid18c-late19c). So far the studys of the houses (Chise) of Ainu people has been superficial. We know that there are the drawn materials concerning Ainu people and their cultural elements in early modern period. So, we carried forward this study by following steps. At first, we collected the drawn materials concerning the houses of Ainu people. Next, we extracted the materials which were trustworthy. At last, we analyzed about the characteristics of the houses of Ainu people. We made it clear that there were various forms and various structures in the houses of Ainu people drawn in early modern period (mid18c-late19c).
著者
内藤 正典 チョルズ ジョシュクン 間 寧 足立 典子 足立 信彦 林 徹 関 啓子 矢澤 修次郎 CORUZ Coskun ジョシュクン チョルズ ショシュクン チョルズ ルーシェン ケレシュ CEVAT Geray RUSEN Keles
出版者
一橋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は、過去30年以上にわたって、ドイツを始めとする西ヨーロッパ諸国に移民してきたトルコ人を対象に、彼らがヨーロッパに生活する上で直面する社会的・文化的諸問題とは何であるのかを明らかにした。本研究の成果として特筆すべき点は、移民を受け入れてきたホスト社会(あるいは国家)が発見した移民問題と移民自身が発見した移民問題との間には、重大な認識上の差異が存在することを実証的に明らかにしたことにある。トイツにおいて、トルコ系移民の存在が移民問題として認識されたのは、1973年の第一次石油危機以降のことであり、そこでは、移民人口の増大が、雇用を圧迫するという経済的問題と同時に、異質な民族の増加が文化的同質性を損なうのではないかという文化的問題とが指摘されてきた。他方、トルコ系移民の側は、ホスト社会からの疎外及び出自の文化の維持とホスト社会への統合のあいだのジレンマが主たる問題として認識されていた。この両者の乖離の要因を探究することが、第二年度及び最終年度の主要な課題となった。その結果、ホスト社会側と移民側との争点は、ホスト国の形成原理にまで深化していることが明らかとなった。ドイツの場合、国民(Volk)の定義に、血統主義的要素を採用しており、血統上のドイツ国民と単に国籍を有するドイツ国民という二つの国民が混在することが最大の争点となっているが、ドイツの研究者及び移民政策立案者も、この点を争点と認識することを回避していることが明らかとなった。このような状況下では、移民の文化継承に関して、移民自らホスト社会への統合を忌避しイスラーム復興運動に参加するなど、異文化間の融合は進まず、むしろ乖離しつつあるという興味深い結果を得た。さらに、研究を深化させるために、本研究では、ドイツ以外のヨーロッパ諸国に居住するトルコ系移民をめぐる問題との比較検討を行った。フランスでは、トイツのような血統主義的国民概念が存在せず、国民のステイタスを得ることも比較的容易である。しかし、フランス共和国の主要な構成原理である政教分離原則(ライシテ)に対して、ムスリム移民のなかには強く反発する勢力がある。社会システムにいたるまでイスラームに従うことを求められるムスリム社会と信仰を個人の領域にとどめることを求めるフランス共和国の理念との相克が問題として表出するのである。この現象は、移民を個人として統合することを理念とするフランスとムスリムであり、トルコ人であることの帰属意識を維持する移民側との統合への意識の差に起因するものと考えられる。即ち、共和国理念への服従を強いるフランス社会の構成原理が、それに異論を唱える移民とのあいだで衝突しているのであり、そこでは宗教が主要な争点となっていることが明らかになった。さらに、本研究では多文化主義の実践において先進的とされるオランダとドイツとの比較研究を実施した。オランダの場合は、制度的に移民の統合を阻害する要因がほとんど存在しないことから、トルコ系移民の場合も、比較的ホスト社会への統合が進展している。しかし、オランダの採る多極共存型民主主義のモデルは、移民が独自の文化を維持することを容認する。そのため、麻薬や家族の崩壊など、オランダ社会に存在する先進国の病理に対して、ムスリム・トルコ系移民は強く反発し、むしろ自らホスト社会との断絶を図り、イスラーム復興運動に傾倒していく傾向が認められる。以上のように、ドイツ、フランス、オランダの比較研究を通じて、いずれの事例も、トルコ系移民のホスト社会への統合は、各国の異なる構成原理に関する争点が明示されてきたことによって、困難となっていることが明らかにされた。本研究は、多民族・多文化化が事実として進行している西ヨーロッパ諸国において、現実には、異なる宗教(イスラーム)や異なる民族・文化との共生を忌避する論理が、きわめて深いレベルに存在し、かつ今日の政治・経済においてもなお、それらが表出しうるものであることを明らかにすることに成功した。
著者
紅林 幸子
出版者
訓点語学会
雑誌
訓点語と訓点資料 (ISSN:04546652)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.30-62, 2003-03
著者
林 康裕 宮腰 淳一 田村 和夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.62, no.502, pp.61-68, 1997
参考文献数
26
被引用文献数
14 5

We have revised the distribution of the peak ground velocities (PGV) in the Hanshin area during the 1995 Hyogo-ken Nanbu earthquake. The original PGV distribution was based on only the damage of residential houses, but the damage of the other types of buildings is also considered in the revision. In addition, we have refined the resolution of PGV in many cho whose area is broad. Evaluated PGV distribution has good correspondence with observed records and evaluated ground motions in the main shock except for the liquefied area like reclaimed land or the cho in which the PGV level drastically changes. On the other hand, the PGV in Nishinomiya city is not less than 60% of that in the Kobe city.
著者
矢野 健二 小林 直彦 堀田 順平 清水 明生 松崎 泰裕 谷沢 智史 山下 静雨 吉田 幸二 鈴木 雅人 市村 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.703, pp.1-5, 2005-02-26

インターネットの普及と相俟って遠隔教育は, 企業社員教育や学校教育の場において, 試用から実用の段階に入ろうとしている. これらの教育の対象は論理・科学技術分野である. 学問・教育には, 論理や科学分野以外に芸術・体育・技能等の分野がある. この分野の遠隔教育は現在実用期に入ろうとしている論理・科学分野の次にくる次世代遠隔教育と言えよう. これらでは感覚的な事柄が重要視されるため, その遠隔教育においては, 質問事項のメモ及びその意思伝達が困難である. そこで筆者は, 質問事項のメモ及びその意思伝達を容易にするために, 疑問や質問を思いついたときの前後の環境を保存し, 学習者のコンピュータにアイコン画像を表示, 後にその環境を復元・共有し, 質問・疑問の連想を支援するシステムの設計と実装方法を報告する.
著者
阿部 美哉 キサラ ロバート スワンソン ポール ハイジック ジェームズ 石井 研士 林 淳
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本調査の研究目的は、宗教現象を研究対象とする研究者によって、日本人の宗教行動と宗教意識に関する全国規模の世論調査を行うことであった。また調査に際しては、海外で行われる同様の調査との比較が可能となるように留意する必要があった。こうした条件のもとで調査を実施したが、完全な国際比較調査とはならなかった。その主たる理由は、海外の調査の問題数の多さにあった。海外での調査は政治、経済、社会生活全般の問題を含んで宗教の問題が設定されており、こうした大規模な調査は費用の点で困難であった。宗教に関する質問だけを取り出すことは有意味ではない、そこで海外の調査で意識されている宗教団体に主眼を置くこととした。日本においても新聞社をはじめ一般的な宗教意識に関する世論調査はあっても、宗教団体を主とした調査は行われていない。また、オウム真理教事件の後、宗教団体に関する世論調査の重要性は増していると判断した。質問には当然ながら、一般的な日本人の宗教意識と宗教行動に関するものも含めた。さらには調査期間中に収集してきた、戦後に実施された宗教に関する世論調査の結果と比較、もしくは総合的に読み解くことによって、従来指摘されてきたこととは異なった事実を明らかにすることが可能となった。こうした分析の結果、近年日本人は宗教団体に対する批判的な態度を強めているにも関わらず、実際にはほとんど接触の機会を持っていないことが明らかになった。神社や寺院に初詣やお盆の時に行く機会はあっても、それらは濃密な接触として意識されてはいない。人生における重大な問題に関しても、神職、僧侶、神父や牧師、新しい宗教の教祖や信者に相談している日本人は数パーセントに過ぎない。宗教団体としての活動には、伝統宗教だけでなく、キリスト教や新しい宗教にも関与している形跡は見られなかった。それにもかかわらず、新しい宗教団体に対するイメージは極めて悪く、日常生活における具体的な接触の欠如とは裏腹に、メディアによるオウム真理教や法の華三法行をはじめとした事件報道が、日本人の宗教団体に対する評価に大きな役割を果たしていることが分かった。
著者
奈良林 直 島津 洋一郎 辻 雅司 辻 雅司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

スイスにおける原子力熱エネルギー供給システムの詳細調査を踏まえ、住民の要望や地域の要求を満たすシステムについての概念形成を地域住民と共同で検討し、北海道内3000世帯の中都市に原子炉からのエネルギー供給システムの検討を実施した。可燃性毒物としてガドリウムとエルビアを酸化ウランに混入することにより、10年間燃料交換なしで運転できる炉心が構成できること、1℃/5kmの温度降下で長距離熱輸送が可能なこと、神経・知能系を取り付けた原子炉機器による予兆検知実験とその解析シミュレーションを実施し、ポンプ、バルブ、炉内機器の異常検知が可能であることを明らかにした。