著者
林 正樹
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1017-1021, 2008-07-01

情報伝送工学の仕事は,対象を伝送して人に届ける,という図式に則っている.本稿では,廣松渉の哲学を参照し,この図式では人が対象に感動するという状況を説明できないのではないか,との問題提起をしている.そして,今後重要なコンテンツを扱う工学においては,一度旧来の図式を忘れて,物づくりや手仕事を見直すべきではないか,と述べている.
著者
山田 直治 李龍 高倉 弘喜 上林 弥彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.67, pp.509-514, 2002-07-18

WEB上には多種多様な情報が大量に存在するため、利用者の要求に適した情報を収集することが困難になっている。ここでは携帯端末からWEB上に存在する地域情報を収集するために、WEB情報の地域性と記述形式に着目する。既存のキーワード検索では地名の位置情報を考慮していないため、任意の地域的範囲に関する情報を収集することが困難である。また要約情報なのか詳細情報なのかといったWEBページの記述形式を考慮していないため、利用者の要求する情報の詳しさに対応することができない。記憶領域が限られ通信が不安定な携帯端末では利用者の要求する情報のみを提供する必要があるため、これらは大きな問題である。ここでは地名の位置情報を利用してWEBページが着目する地域を特定する。またHTMLタグや品詞の出現度数の特徴からWEBページを目次型、要約型、詳述型の3つのタイプに分類する。最後に利用者の特定の地域に対する興味の深さに基づき、2つの尺度を用いた携帯端末へのキャッシュアルゴリズムについて述べる。Due to the rapid increase of the amount of web pages on the Internet, it is difficult to collect information that satisfies users' queries. This paper focuses on the geographic characteristics and description types of web resources. Keyword based search does not take account of the positional information of geographic names so that it cannot collect web resources on specific region. Furthermore, because a web page is treated without considering whether it contains detailed information or summarized one, the page may not satisfy users' requirements. In this paper, a method to determine the geographic scope and level of details of web pages is developed. Geographic scope is identified with the positional information of geographic names. Level of Details classified web pages into three types, "table-of-contents type", "summary type", and "detailed description type", with HTML tags and frequency of parts of speech. The cache algorithm with these two measures for mobile computing based on users' interests is also described.
著者
林 賢紀 松山 龍彦 新元 公寛
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.96-102, 2006-03-01

本報告はOCLCと米国議会図書館が中心に開発,運用しているオンラインレファレンスネットワークシステムQuestionPointの概要,機能,導入事例,今後の展望をのべる。農林水産研究情報センターでの導入事例では,レファレンスサービスのネットワークを通しての全国展開に加え,レファレンスの受理と回答を通じた国際的なレファレンスサービスの事例についても紹介する。国際基督教大学図書館での導入事例では,外国製システムの日本語の扱いに関する問題点と自館のサービス体制の中での問題についても論じている。
著者
渡辺 真吾 神谷 幸宏 梅林 健太 鈴木 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.135, pp.79-84, 2008-07-10

基地局等の固定インフラを使用せず,端末のみで通信が実現されるアドホックネットワークが注目を集めている.このシステムでは,送信元から宛先までデータパケットを送信するために近隣端末を中継するマルチホップ通信が用いられる.MACプロトコルには無線LANの標準規格であるIEEE802.11DCFが広く用いられているが,この方式は元々シングルホップ通信用に考案されたものであるため,マルチホップ通信には適さないということが指摘されている.この問題を改善しようといくつかの手法が提案されているが,これらの多くはマルチパスフェージングのような現実の無線環境が考慮されていない.よって既存の手法ではマルチパスフェージング環境においてその性能を大きく損なってしまう恐れがある.本稿ではIEEE802.11DCFよりも高効率かつマルチパスフェージングへの耐性を持つMACプロトコルの提案を行なう.
著者
林 正人
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.4-13, 2016-07-01 (Released:2016-07-02)
参考文献数
84
被引用文献数
2 1

近年の情報理論の発展の背景には,量子情報理論の成果がある.本稿ではそのような情報理論に対する量子情報理論の影響に注目し,これまで情報理論の発展に対して量子情報理論が果たしてきた役割について解説する.これにより,近年の量子情報理論の成果がその分野内に閉じたものでないことを説明する.
著者
山本 昌樹 林 省吾 鈴木 雅人 木全 健太郎 浅本 憲 中野 隆
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100444, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】上腕筋は,上腕骨前面下半部に単一の筋頭を有するとされるが,Gray’s Anatomy(2005)においては「2 〜3 部からなる変異が見られる」と記載されている.一方,Leonello et al.(2007)は,「上腕筋は,全例において浅頭と深頭の2 頭を有する」と報告している.我々は,第16 回臨床解剖研究会(2012)において,上腕筋が3 頭から構成されることを明らかにするとともに,肘関節屈曲拘縮との関連について報告した.今回,これら3 頭の形態的特徴と機能について考察する.【対象および方法】愛知医科大学医学部において,研究用に供された解剖実習体15 体24 肢を対象とした.上肢を剥皮後,上腕二頭筋,腕橈骨筋,長・短橈側手根伸筋を展開した.上腕筋を起始部より分離して筋頭を同定し,筋頭の走行や配列を詳細に観察した.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,死体解剖保存法に基づいて実施し,生前に本人の同意により篤志献体団体に入会し研究・教育に供された解剖実習体を使用した.観察は,愛知医科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.【結果】全肢において,上腕筋は,三角筋後部線維から連続する筋頭(以下,外側頭),三角筋の前方の集合腱から連続する筋頭(以下,中間頭),上腕骨前面から起始する筋頭(以下,内側頭)に区分することができた.外側頭は,上腕骨の近位外側から遠位中央に向かって斜めに,かつ,浅層を走行して腱になり,尺骨粗面の遠位部に停止していた.中間頭は,最も薄く細い筋束であり,内側頭の浅層を外側頭と平行して走行し,遠位部は内側頭に合流していた.内側頭は,最も深層を走行し,停止部付近においても幅広く厚い筋腹から成り,短い腱を介して尺骨粗面の近位内側部に停止していた.これら3 頭は,上腕中央部においては,外側から内側へ順に配列していた.しかし肘関節部においては,外側頭と中間頭は浅層に,内側頭は深層に配列していた.また,内側頭の縦断面を観察すると,一部の線維が肘関節包前面に付着する例が存在した.これらの例において肘関節を他動的に屈曲させると,内側頭とともに関節包の前面が浮き上がる様子が観察された.【考察】上腕筋を構成する3 頭は,内側から外側へ配列しているだけではなく,各頭が特徴的な走行や形態を呈するため,それぞれ異なる機能を有することが推測される.上腕筋外側頭は上腕骨の近位外側から遠位中央へ,一方の上腕二頭筋は近位内側から遠位中央へ斜走する.そのため肘関節屈曲時,上腕筋外側頭は前腕近位部を外上方へ,一方の上腕二頭筋は内上方へ牽引すると考えられる.すなわち肘関節屈曲時,外側頭と上腕二頭筋は共同で,前腕軸の調整を行うと考えられる.また外側頭は,3 頭の中で最も遠位に停止し,肘関節屈曲における最大のレバーアームを有するため,肘関節屈曲における最大の力源になることが示唆される.さらに,外側頭は三角筋後部線維から連続するため,三角筋の収縮によって,作用効率が変化する可能性がある.換言すれば,外側頭の作用効率を高めるためには,三角筋後部線維を収縮させた上で肘関節屈曲を行うことが有効であると思われる.内側頭は,肘関節部において深層を走行し,幅広く厚い筋腹を有する.したがって,肘関節屈曲時に収縮して筋の厚みが増すことによって,外側頭のレバーアームを維持または延長し,その作用効率を高める機能を有すると考えられる.また,肩関節の腱板が上腕骨頭を肩甲骨へ引き寄せる作用と同様に,内側頭は,尺骨滑車切痕を上腕骨滑車に引き寄せ,肘関節の安定性向上に寄与すると考えられる.さらに,内側頭が関節包前面に付着する例があることから,肘関節運動に伴う関節包の緊張度を調節する機能が示唆される.換言すれば,内側頭の機能不全によって,関節包前面のインピンジメントや肘関節屈曲拘縮が惹起される可能性が推測される.中間頭は,最も薄く細いため,その機能的意義は小さいと思われる.しかし,上腕中央部においては外側頭と並走し,遠位部においては内側頭に合流することから,外側頭と内側頭の機能を連携する,文字通り‘中間的な’役割を担うと考えられる.上腕筋は,3頭を有することによって,肘関節屈曲における前腕軸の調整,作用効率の向上,肘関節包の緊張度の調節など複合的な機能を担うと考えられる.また,肘関節屈曲に関しては,主として外側頭が機能することが示唆される.【理学療法学研究としての意義】根拠に基づく理学療法を行うためには,とくに筋骨格系に関する機能解剖学的かつ病態生理学的な研究が不可欠である.本研究は,上腕筋の筋頭構成を詳細に観察し,肘関節運動に対する関与について考察を加えたものであり,肘関節拘縮の病態理解や治療の発展にも寄与すると考える.
著者
小林 照明 猿橋 具和 澤田 郁郎 横山 貴大
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.355-364, 2017 (Released:2019-05-15)
被引用文献数
1

The D/V Chikyu greeted 11 years operation in 2016. Chikyu expeditions were always targeted to the most challenging and extreme areas which never experienced before. CDEX has overcome technical difficulties caused by the deep water, high current, high temperature and the deep drilling, and achieved world scientific and technical outcomes. This paper look back the establishment of the CDEX operation scheme from the early stage and the technical experiences of the Chikyu's deep sea drilling for 11 years. CDEX would continue to challenge to the new era of the next 10 years.
著者
小林 美和 山元 修
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.219-224, 2002-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

農業従事者に発症したスポロトリコーシス2例を供覧し, 当科で経験した11例についてまとめた. ガーデニングが流行していることから, 都市部においても, 趣味で土いじりを行う人での発症の増加が予想される. 本症を一種の職業性皮膚疾患として捉えたうえで, 農作業中の感染経路としての外傷予防を, 農家や趣味で農作業を行う人に呼びかけるとともに, 「カビ」による感染症についての啓蒙も必要である.
著者
小林 慶行
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.76-87, 2012-03-30 (Released:2012-06-29)
参考文献数
10

ラニナミビルオクタン酸エステル(イナビル®)(1)は吸入型インフルエンザ治療薬として第一三共で見出され、2010年10月に販売を開始した。その構造上の特徴はノイラミニダーゼ阻害剤・ラニナミビル(2)の側鎖C-9位の水酸基にオクタン酸を導入したプロドラッグという点である。このプロドラッグ化は薬効の劇的な改善を生み、"治療が1回で完結"するという大きな特徴を生み出した。本稿では、ラニナミビルオクタン酸エステル(1)の創製までの道のりと、その薬効プロファイルについて紹介する。
著者
中林 真幸
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-29, 2000-06-25 (Released:2010-02-19)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

Until the beginning of the 1880s, most Japanese silk exports were to France. The French silk market, however, shrank after the French Panic of 1882, while the U.S. market expanded during the 1880s. In the United States, power looms were widely used in the silk industry, so the demand for even-quality silk was rising. Japanese manufacturers had to produce uniform filatures (machine-reeled silk) for export to the United States. Kaimeisha, which was the leading association of silk manufacturers in Suwa district, Nagano prefecture, had been producing silk for the French market and had relied on wholesale merchants in Yokohama for quality control. After the French Panic, Kaimeisha introduced the production system which offered incentives for the re-reeling and inspection of silk, thus succeeding in the production of uniform filatures, which it labeled with its own Kaimeisha trademark. In order to expand business, Kaimeisha obtained financing from wholesale merchants and local banks, which were relatively modern financial institutions.Another silk manufacturers association, Kairyosha, followed suit and introduced a production system similar to Kaimeisha's. This second organization, however, was financed by traditional financial institutions and was managed by a rural moneylender. The moneylender's participation in management was detrimental to meeting the rising level of quality control required in the U.S. market. The moneylender demanded an increase in deliveries of silk by hiring new association members as he profited by lending them money to purchase cocoons and receiving discounts on members' deliveries. The situation was particularly disfavorable to quality control because membership to the association was not steady.
著者
窪田 悠一 大林 一広 冨永 靖敬 田中 有佳子
出版者
日本大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2021-10-07

本国際共同研究の目的は、国内武力紛争(内戦)下の反政府武装勢力(反乱軍)による市民経済の管理・統制のメカニズムとその影響を理論的、実証的に明らかにすることにある。本研究では、反乱軍経済やその影響について、定量的な分析を可能にするデータセットの構築と現地調査を含む事例研究を通して考察する。内戦下の反乱軍は、なぜ、またどのように市民経済に関与するのか、またそうした経済政策や市民経済との関係は紛争の動態や市民の意識や政治社会行動にいかなる影響を及ぼすのかという問いに多角的にアプローチすることで、反乱軍経済だけでなくその領域統治メカニズムの解明に貢献することを目指す。
著者
戸井田 哲也 中林 宣男
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.231-240, 1996-05-25 (Released:2018-04-06)
参考文献数
28
被引用文献数
4

酸による脱灰は象牙質コラーゲンを変性させる場合があり, この脱灰象牙質は乾燥により容易に収縮する. 収縮した脱灰象牙質のモノマー透過性は低いため, そこに樹脂含浸象牙質を生成させることは困難である. 研削面の一部をプロテクトバニッシュで保護した後に接着操作を行い, その接着縦断面を塩酸および次亜塩素酸ナトリウムに浸漬させてSEM観察することは, 樹脂含浸象牙質の生成のメカニズムを理解するのに有効な方法である. この観察法により, リン酸のエッチング時間を延長すると象牙質の脱灰はそれだけ深く進行し, 乾燥による脱灰象牙質の収縮の度合いも大きくなること, リン酸の脱灰力は解離したリン酸の濃度と量に関係することを明らかにすることができた.
著者
林 暲
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.475-476, 1964-06-15

さる3月24日,虎の門の付近に所用があつてタクシーで米大使館にそつた霊南坂を下りかけると坂下の方に車や人が集まつて何やらあわただしい空気である。いそぐままに坂下近くで車をすてて歩きながら聞くともなしに耳にしたところではライシャワー大使が刺されたという。虎ノ門病院に近い目的のビルについて,病院に収容されたこと,傷は脚で全治2週間くらいという話をきかされた。午後1時ごろのことである。夕刊で犯人は精神障害者らしいということを見てやれやれそうかと思つたが,さて問題はそれからであつた。国会会期中のことでもあり,当然本件についての質問が集中しそこに当局の思いつきのような逆行的な答弁の現われる傾向も見られた。新聞,週刊誌などには例によつて患者をすべて野獣視する野放しということばを用い,責任の追求はこれまで精神衛生的施策をなおざりにした厚生当局よりも警察,治安対策の方面に集中し,政府も早川自治相兼国家公安委員長に詰腹を切らせることで当面を糊塗した。また犯人の実態についての確かなことの解らぬままに,変質者,精神異常,分裂病,また精神薄弱といつたよび方がされ,また林髞氏のような非専門家が例のごとき変質者危険論,隔離論を語る始末で,全体として警察行政的な対策のとびだす恐れも十分うかがえたので,3月26日に厚生省精神衛生課長をつかまえて,このさい精神衛生審議会にこの事態についての対策を諮問するなり,あるいは審議会が独自で意見の具申をするようにできまいかと申入れた。とくに厚生省としては犯人の患者の実態,家人が一度精神病院に入院させながらその後家庭看護に終始してきた事情などについてよく調べておくべきであり,犯人の身柄は検察庁におさえられて専門家に見せられないにせよ,家人の協力を得て発病以来の経過をきぎ,家人が最初の入院以后精神病院に不信の念をいだくようになつたらしい事情などを確かめる必要があるといった。課長はいずれの提案に対しても難色があり,どうなるかと思つたが,審議会はともかく4月2日にとりいそぎ開催されることになり,これには厚生大臣も出席するということになつた。
著者
遠藤 雅人 小林 龍太郎 有賀 恭子 吉崎 悟朗 竹内 俊郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.887-892, 2002-11-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
23
被引用文献数
4 4

航空機を用いた微小重力環境下におけるティラピア稚魚(TL : 3-4 cm)の行動観察を行い,近赤外光(発光波長880±40 nm)照射時に正常遊泳する個体について,その姿勢保持機構の解明を試みた。近赤外光照射時に正常遊泳した個体は55個体中,6個体(10.9%)であった。これら正常遊泳個体の腹部側に近赤外光を照射した結果,全ての個体が反転し,背光反射を示した。また,微小重力暴露中の正常遊泳時間に対する背光反射行動を示した時間の割合は74.4±22.5%(n=6)であった。以上の結果から,一部のティラピアは近赤外光を感知し,微小重力下で姿勢保持をしていることが明らかとなった。
著者
林 岳彦 岩崎 雄一 藤井 芳一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.327-336, 2010-11-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
49
被引用文献数
5

欧米では「ecological risk assessment」という用語は「化学物質の生態リスク評価」のことを指すことが多い。その理由は、歴史的に「生態リスク」という概念が元々「化学物質のリスク評価」の中から誕生し発展してきたことにある。本稿ではまず前半において、「生態リスク」という概念が生まれてきた歴史的な経緯についての概説を行う。また、その歴史的な経緯から「生態リスク」という概念が帯びている「行政の意思決定に寄与する」「不確実性の存在を前提とする」「人間活動との兼ね合いを調整する過程の一端を担う」という特徴的なニュアンスについての説明を行う。本稿の後半においては、現在実務レベルで行われている「初期リスク評価」および「詳細リスク評価」の解説を行う。さらに、生態リスク評価における現状の取り組みと課題について「生態学的に妥当なリスク評価・管理へ」「漏れのないリスク評価・管理へ」「総合的なリスク評価・管理へ」という3つの観点から整理を試みる。
著者
坂本 泉 後藤 春彦 髙嶺 翔太 林 廷玟
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.713-720, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究の目的は、地元住民と地域外企業による「地域価値共創事業」の実態とそれを円滑に進めるための体制について明らかにすることである。 はじめに、瀬戸田町における「地域価値共創事業」を概観した。次に、「地域価値共創事業」に対する地元住民と地域外企業の評価を明らかにした。調査の結果から、自治体と地域マネジメント企業が、地域のコーディネーターとして「フィルター」「ハブ」「バッファ」の3つの機能を果たしていることが明らかになった。両者は密に連携を取り、地元住民や地域外企業と良好な関係性を構築する必要がある。今後の「地域価値共創事業」においては、自治体がこのような体制を可能にする原資を提供すること、地域マネジメント企業の存在、さらには事業開始までに十分な準備時間を確保することが必要不可欠である。
著者
倉林 準 持丸 正明 河内 まき子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-36, 2003 (Released:2004-02-27)
参考文献数
9
被引用文献数
80 37

関節中心位置の推定方法は, 特に検証をされないまま用いられてきた. 本研究では, 日本人健常成人男性43名の骨盤部MR画像を用いて, 臨床歩行分析研究会, Davis, Vaughanによる股関節中心位置の推定方法について検証を行った. 推定誤差は股関節中心位置のMR画像からの実測値と推定値の距離で定義した. オリジナルの方法の推定誤差平均値は, 上記3手法で, 順に, 17.1mm, 13.4mm, 32.0mmであった. オリジナルの方法論の数式を変えずに, パラメータのみを日本人男性用に最適化し, 実測可能なパラメータのみで実用的に構成した修正版での推定誤差平均値は, 順に9.9mm, 24.8mm, 19.8mmであった.