著者
宇都木 陽介 森山 剛
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.4, pp.1-6, 2009-05-14

日本の伝統楽器の一つである尺八は,無形文化財としてその演奏が録音されているが,特定の奏法を聴くには,専門家が録音を聴いて録音箇所を特定するしかない.従って,初学者はもちろん,ごく一部の専門家以外にとっては,失われているも同然である.本研究では,尺八の演奏音のみから,演奏されている奏法を自動認識し,演奏音にメタ情報を付与することを目的とする.これにより,無形文化の保存及び普及,国内外への発信に貢献できると考える.本報告では,手動で切り出した演奏音に対して,演奏音の音高及びパワー,音色の物理特徴量を算出し,奏法の識別を行う手法を提案する.実験の結果,ユリ,カラカラ,ウチ,オシ,オトシ,ムライキ,スリアゲ,ナヤシの奏法に関して,82% (スリアゲとナヤシを1つに分類した場合は 98%) の高い精度で識別を行えることが示された.Shakuhachi is one of the Japanese traditional instruments, and its performance has been recorded for years for future recovery of the cultural heritage. Yet, in order for beginners to listen to a specific playing method, Shakuhachi specialists need to locate it in a large amount of data. It prevents it from being pervaded to the world and even succeeding to be restored in future. We propose a method of classifying playing methods of Shakuhachi's only from the performance. The method uses basic characteristics in music such as pitch, power, and timber of the sound. Experimental results showed the proposed method classified eight playing methods (Yuri, Karakara, Uchi, Oshi, Otoshi, Muraiki, Suriage, and Nayashi) successfully at the average rate of 82%.
著者
登田 美桜 畝山 智香子 豊福 肇 森川 馨
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.105-120, 2012
被引用文献数
49

自然毒による食中毒発生リスクを効率的に低減させるためには,過去の発生状況およびリスク因子等に基づく重点的なリスク管理が必要である.本研究では,厚生労働省監修の全国食中毒事件録(平成元年~22年版)の自然毒食中毒事例を基に,わが国における中毒発生の傾向を検討した.平成元年以降の22年間を通じて自然毒食中毒の発生件数に経年的な減少傾向は見られず,発生を低減するために予防のための継続的な取り組みが必要であると考えられた.動物性および植物性いずれの自然毒においても主な原因施設は「家庭」であり,食中毒の発生状況および予防策,対応等について消費者向けの広い啓蒙・広報が重要である.また,食品の国際的な流通拡大や地球温暖化による海水温の上昇に伴い,これまで国内で食中毒が発生していない自然毒への対策も重要である.
著者
間瀬 肇 Tracey H. TOM 池本 藍 志村 智也 安田 誠宏 森 信人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_115-I_120, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
6

地球温暖化対策およびエネルギー安全保障の観点から,再生可能エネルギー利用のさらなる進展が必要である.風力エネルギーは風速の3乗に比例して増加するが,経済性の向上には風況の良い場所の選定が重要となる.経済性の目安としては,ハブ高さ80mにおいて年間平均風速が7m/s以上とされている.陸上においては,全国風況データ,500mメッシュで解析した風況マップや風配図が提供されているが,日本沿岸海域においては,詳細な風況・波浪マップはまだ提供されていない.本研究は,今後の洋上風力発電施設の設置場所選定に役に立つように日本沿岸海域の風況・波浪マップを作成し,風と波の概況を把握するものである.
著者
大森 孝一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.118-122, 2017 (Released:2017-07-21)
参考文献数
12

気管や輪状軟骨に悪性腫瘍や狭窄性疾患を生じると,病変の切除後に気道を再建する必要がある。既存の気道再建外科として,気管端々吻合,自己組織の移植などがあるが,術後管理や合併症,複数部位や複数回の手術侵襲,移植片の移動や吸収などの課題がある。1990年代になって組織工学が登場し,臓器再生の三要素は足場,細胞,調節因子とされる。著者らはコラーゲンを足場としポリプロピレンで補強した生体内組織再生誘導型の人工気管の有効性,安全性を検証した上で,輪状軟骨と頸部気管の部分欠損の再建に臨床応用し,現在は実用化のための医師主導治験を実施している。選択基準は既存治療で気管孔を閉鎖できない患者と,悪性腫瘍などで気管切除(気管軟骨の1/2以上かつ3輪以上)が予想される患者である。人工気管は非吸収性材料を使用しているため小児に適応がない。将来的には吸収性材料からなる新規人工気管や軟骨の再生医療技術の開発が望まれる。
著者
森川 裕二
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2010-02

制度:新 ; 報告番号:甲3008号 ; 学位の種類:博士(学術) ; 授与年月日:2010/2/12 ; 早大学位記番号:新5260
著者
緒方 幸代 藤田 孝輝 石神 博 原 耕三 寺田 厚 原 宏佳 藤森 勲 光岡 知足
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.317-323, 1993 (Released:2010-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
5 21 18

健常成人8名に4G-β-D-Galactosylsucrose (ラクトスクロース: LS) をはじめの1週間1g/日, 次いで1週間は2g/日, さらに, 2週後の1週間は3g/日を摂取させ, 少量LS摂取の腸内フローラおよび糞便の性状に及ぼす影響について検討した。その結果, LSの1g/日, 2g/日および3g/日の摂取のいずれにおいても, Bifidobacteriumが有意に増加し, C. perfringensを含むレシチナーゼ陽性ClostridiumおよびBacteroidaceaeの減少が認められた。糞便中のアンモニアおよび硫化物はLS 2g/日, 3g/日摂取で有意に減少した。糞便pHはLS 3g/摂取で低下し, 糞便重量および水分量はわずかな増加をした。以上の成績から, LSの最小有効摂取量は健康成人において1日当り1~2gと判断された。
著者
吉井 千春 森本 泰夫 城戸 優光
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.238-242, 2005 (Released:2007-01-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2

Welder's pneumoconiosis, which is caused by the inhalation of welding fumes, is one of the major pneumoconioses in Japan. The major component of welding fumes is iron oxide. Although welder's pneumoconiosis has been considered to be inert, recent reports revealed the possibility of developing fibrosis. In this article, we demonstrate radiological and pathological features of welder's pneumoconiosis, and also review the mechanisms of developing pulmonary fibrosis. In high-resolution CT (HRCT), typical welder's pneumoconiosis shows fine centrilobular nodules in both lung fields. In some cases, fibrotic changes may be seen in subpleural areas in both lower lung fields. Lung biopsy specimens show numerous hemosiderin-laden macrophages within alveolar spaces associated with mild to moderate interstitial fibrosis. The mechanisms of developing fibrosis can be explained by “overload phenomenon”. Namely, in cases of mild exposure to welding fumes, iron oxides and hemosiderin-laden macrophages locate within air-spaces and may be reduced in numbers by mucociliary transport system. However, in cases of massive inhalation, accumulation of iron oxides and hemosiderin-laden macrophages exceed the capacity of mucociliary transport system. As a result, they invade into the interstitium and cause interstitial inflammation or thickening and eventually pulmonary fibrosis.
著者
伊藤 淳子 東 孝行 宗森 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1528-1540, 2015-06-15

本研究では,発想のテーマに関する知識が乏しいユーザを対象とし,アイディア出しが停滞した際,テーマに関連した単語を提示して新たな連想のきっかけを与え,柔軟性と流暢性を向上させる発想支援システムを提案する.発想のテーマに関連したテキスト情報をウェブ上から事前に収集し,共起度をもとに単語をクラスタに分類する.システムは,ブレインストーミング中のユーザが入力したアイディアに含まれる単語がどのクラスタに含まれるかを検索し,共起度の低いクラスタから単語を選択し,ヒントとして提示する.就職活動に関するテーマを与えヒント提示機能のないシステムとの比較実験を行った結果,提案システムにおいてアイディアの数が1.28倍に増加した.また,実験で得られたアイディアを就職活動の進捗段階に基づき9項目に分類したところ,ヒント提示機能を利用した場合は7.7項目,利用しない場合は6.4項目においてアイディアが得られた.このことから,提案システムに多様な発想を促す可能性があることが確かめられた.
著者
渕田 孝康 森 邦彦 村島 定行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.927-935, 2000-09-25
被引用文献数
10

2次元離散平面上に存在する互いに重複しない一般図形を生成元とする離散ボロノイ図を, 波面法を用いて高速に作成する手法を提案する.波面法は, 離散平面内に一様ダンラムに母点が存在する場合, 母点数によらずほぼ一定時間で離散ボロノイ図を作成するアルゴリズムであり, 一般図形を母点とする場合でも, 全く変更しないで適用可能である.しかし, 一般図形を構成するすべての点を母点とみなして波面法を適用すると, 領域拡大の判定時に重複する領域が多く, 無駄な処理時間を要してしまう.本論文ではこの無駄を省き, 一般図形ボロノイ図をより効果的に波面法で作成するアルゴリズムを提案する.また, 計算機シミュレーションにより, その有効性を確認する.
著者
須田 和代 森 由美子 調 広子 大池 正勝 山本 節
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.151-158, 1992-11-20 (Released:2009-10-29)
参考文献数
24

従来,心因性視力障害患者の視野には管状視野・螺旋状視野・求心性狭窄等の特有なものが検出されることがあるとの報告がされているが,視野とは視覚感度の分布であるという定義に基づくと,その視野には矛盾する点がみられる。我々は心因性視力障害疑いの患者に対しても,本来の概念に基づいて視野検査を行ってきた。その結果,他院から異常視野として紹介された症例も含め,全例正常視野を得,他の器質的疾患を否定する一助に充分なり得た。特有な視野が心因性に限るものではないことから,心因性視力障害疑いの患者に対しては,その心因的要素を取り除くよう配慮し,可能な限り正確に診断できる検査結果を得るべく努力すべきであると考える。
著者
島田 光生 神澤 輝実 安藤 久實 須山 正文 森根 裕二 森 大樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.678-690, 2012 (Released:2013-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

要旨:膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,膵液と胆汁の相互逆流により,さまざまな病態を惹起するとともに胆道癌の発生母地ともなる.本疾患は不明な点が多く,また未だに治療方針も統一されていないのが現状である.今回,日本膵・胆管合流異常研究会と日本胆道学会が合同で,本疾患に対して病態から診断,治療に至るまでの膵・胆管合流異常診療ガイドラインを世界で初めて作成したのでダイジェスト版として紹介する.