著者
中村 誠司 前原 隆 新納 宏昭 森山 雅文 柴田 琢磨 安河内 友世 坪井 洋人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、代表的罹患臓器である唾液腺を解析し、特異なT細胞、B細胞、マクロファージ(Mφ)のサブセットが病態形成に関わっていることを明らかにした。しかし、詳細な病態形成の分子機構や病因は判っていない。そこで、本研究では、従前の研究成果を基盤とし、IgG4-RDの病因を解明し、新規治療法開発の基盤を築くことを目指す。第1にサブセット間の相互作用を解析して病態形成機序を明確にし、第2に発症に関わるT細胞とその認識抗原を同定し、第3に特異なMφを遺伝子導入により誘導したマウスを同定した抗原などで刺激することにより病態を再現する疾患モデルマウスを完成させる。
著者
森井 和彦 福永 智栄 多田 俊史 中村 進一郎
出版者
一般社団法人 日本病院総合診療医学会
雑誌
日本病院総合診療医学会雑誌 (ISSN:21858136)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.214-222, 2023-05-31 (Released:2023-10-19)

がんの治療方針は staging や performance status に基づいて決定されることが多いが,高齢者の場合は平均余命が短く,複数の併存疾患や加齢による脆弱性を認めることがあるため, 高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment;CGA)を行わないで治療を始めるのは危険である。高齢者の脆弱性は日常的診療では拾い上げが不完全であり,CGAでの評価が望ましい。多忙な日常診療ではまず G8 Screening tool で脆弱性の疑われる高齢者をスクリーニングして,該当者に CGA を行うのが効率的である。CGAでは検証されたツールを用いて,instrumental activities of daily living(IADL),併存疾患,転倒,栄養状態,化学療法の毒性の予測,がん以外の要因による平均余命, 薬剤関連の問題,認知障害,うつ病,社会的支援システムの不足などを評価する。近年使用頻度が増えている免疫チェックポイント阻害剤の 有益性・有害性の予測にもCGAが有効かどうかは,今後の課題である。
著者
森勢 将雅
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.9-17, 2022-12-25 (Released:2023-02-01)
参考文献数
24

本論文では,テキスト音声合成の中でも特にEnd-to-End音声合成時代に向けた大規模日本語コーパスROHANを提案する。ROHANは常用漢字すべてを網羅しつつ,日本語文章では出現しにくいモーラを一定数含めるモーラバランスを重視している。オリジナルのコーパス文4,600文を22のサブセットとして構築しており,パブリックドメインのライセンスで公開している点も,本コーパスの特色である。本論文では,ROHANの設計コンセプトと具体的な作成手順を示し,各モーラの出現回数やコーパス文の平均モーラ数などの解析結果を示す。モーラ出現頻度に関するエントロピー,及び音素の拡張エントロピーによる評価から,既存のコーパスよりもモーラ・音素バランスに優れていることも示す。
著者
安達 義輝 小森 貞男 星川 義真 田中 紀充 阿部 和幸 別所 英男 渡邉 学 壽松木 章
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.402-409, 2009 (Released:2009-10-23)
参考文献数
33
被引用文献数
30 34

リンゴを含むバラ科に属する種は自家不和合性を有しているが,多くの種では倍数化によって打破される報告がある.リンゴで同質四倍体品種とその倍数化前オリジナル二倍体品種を用いて,交雑和合性試験および花粉管伸長調査を行った.同質四倍体品種が自家結実性を示し,同質四倍体品種花粉が自家受粉およびオリジナル二倍体品種雌ずいにおいて和合性を誘導した.一方,オリジナル二倍体品種花粉を同質四倍体品種に交配した場合には不和合性を示したことから,同質四倍体品種の自家和合性誘導の原因は花粉側にあることが示唆された.また,自家受粉の花粉管伸長は同質四倍体品種が最も大きく,次いで二倍体,三倍体の順であった.二倍体および三倍体品種の花粉管は雌ずいの倍数性とは無関係に伸長が抑制されるのに対し,同質四倍体品種の花粉管は他家受粉には及ばないが不和合花粉管よりも有意に伸長する中間的な伸長度を示した.交雑試験と花粉管伸長調査の結果から,同質四倍体品種の自家和合性は花粉側にあることが判明した.さらに,倍数化による花粉管伸長度の増大ではなく,自家不和合性機構が打破されている可能性が示された.
著者
森田 龍僊
出版者
密教研究会
雑誌
密教文化 (ISSN:02869837)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.105, pp.1-19, 1974-02-15 (Released:2010-03-12)
著者
馬場 優大 藤生 慎 森崎 裕磨
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.942-951, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
20

我が国において,人口減少と少子高齢化が進行する地方では,地域の機能を維持し,活性化させていくことが課題となっている.こうした中,観光産業はこれらを解決する施策として注目されており,観光産業を発展させていくためには,観光客が抱いた観光地の改善点を把握し,これに即した新たな施策の立案・実施を行う必要がある.そこで本研究では,旅行情報サイトの観光地に関する口コミデータを収集し,深層学習を用いたセンチメント分析を行うことで口コミから観光客のネガティブな感情が伺える文を抽出し,テキストマイニングを行うことで観光地の改善点の抽出を自動的に行うシステムを構築した.また,システムに関して観光の研究を行う専門家へのヒアリングを行うことで得た評価を基に,システムの有意性や改良すべき点を考察した.
著者
佐々木 陽 久保田 史 高橋 亨 梅津 芳雄 成田 榮一 森 邦夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.316-324, 1997-05-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

硫化水素型合成温泉水 (湯花の抽出溶液) を用い木材を長時間煮沸処理すると, 蒸留水で処理した場合よりも, 重量の減少が大きく, 空隙率の高い木材が得られた. その時の抽出溶液を液体クロマトグラフで分析した結果, 針葉樹ではアラビノース, キシロースが, 広葉樹ではキシロースが確認され, いずれも合成温泉水処理した溶液で顕著に認められた. 抽出された糖類は木材の非晶部分であるヘミセルロースが加水分解されたもので, 合成温泉水処理によりさらに分解が進んだ結果と考えられる. スギの100時間煮沸処理では, ホロセルロースが蒸留水の場合約18%, 温泉水の場合22%減少し, また, リグニンはこれらの処理において, 見かけ上前者で18%, 後者で20%増加していることから, 熱水処理によるリグニンの分解溶出は認められなかった. 合成温泉水処理により, 水溶性の非晶部分が加水分解されるため, 水に対する木材の膨潤性が改善され, 寸法安定に優れた木材が得られることが分かった.
著者
金森 耀平 村上 賢 松井 徹 舟場 正幸
出版者
日本微量栄養素学会
雑誌
微量栄養素研究 (ISSN:13462334)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.88-98, 2014-12-15 (Released:2022-12-28)
参考文献数
76

The liver-derived peptide hormone hepcidin is a master regulator of systemic iron homeostatis. Hepcidin binds to an iron exporter ferroportin expressing on the basolateral membrane of enterocytes and induces the internalization and degradation of ferroportin, leading to a decrease in intestinal iron absorption. Various stimuli such as body iron stores, inflammation, erythropoiesis, and hypoxia affect hepcidin expression through the transcriptional regulation. This mini-review summarizes current understandings on the factors affecting hepcidin expression.
著者
小森 貞男
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

リンゴ品種の遺伝子組成を変えずに目的遺伝子のみの改変を行うため、一過的な遺伝子発現によるゲノム編集を可能にする培養技術を開発する。「高頻度にシュートを形成する組織・細胞塊」を用いる方法として①DH個体の葯培養による胚様体の形成、②珠心細胞由来の胚様体の作出、③成長点に由来するカルスからのシュート形成に係る培養技術を開発し、「1細胞からのシュート再分化系」を用いる方法として④プロトプラストからの再分化系を確立し、パーティクルガン法等でRNPを細胞に導入する。①、②、③で得られたキメラ化したシュートは⑤キメラ解除の過程の体系化の実験で対応し、リンゴにおけるゲノム編集個体の獲得方法を確立する。
著者
和田 一郎 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.117-127, 2010-07-07 (Released:2021-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
11

子どもは理科学習において,認識の源泉といえる様々な様態の表象(活動的表象→映像的表象→記号的表象)を有機的に関連付けることによって科学概念を構築している。この際,子どもはこれらの表象を複合的に操作し,相互変換を繰り返しながら事象を把握する表象の変換過程の確立を要求される。このため,そうした学習過程を確立するための教授論的展開に関する検討が強く要請されることになる。そこで本研究では,子どもの表象の高度化を志向した具体的な教授論の構想と授業実践による検証を施すことを主な目的とした。教授論の構想にあたり,筆者らは表象の変換過程において,子どもに内在する表象内容の視詑化の直要性に着目した。これに関わり,まずCheng.M (2008) らが提起する化学の学習における表象の視覚化原理に基づき.表象に関わる視覚化の諸要素.すなわち動作過程,変換過程,分類過程.分析過程.精緻化過程の5つを同定した。その上で,これら5つの視覚化要素を踏まえた教授論的視点を構築し,高校化学(単元:化学反応と熱)を事例に授業実践を施し,子どもの科学概念構築に関わる表象の変換過程の分析を通じて,その視点の有用性を検証した。結果として,子どもの表象内容を教師が適切に視覚化し,デイジタル化を施すことによって,子どもの様々な形式やレベルの表象の結合および表象の相互変換が円滑なものになることが明らかとなった。
著者
森 千香子
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.32, pp.34-43, 2019-08-23 (Released:2020-08-08)
参考文献数
21

This article aims to analyze the transformation of what may be termed the politics of framing the concept of the “migrant-refugee.” The present paper examines the manner in which migrants and refugees are classified by the French administration and perceived by French society in the midst of the European “migrant-refugee crisis.” Three observations are made: (1) the differentiation between legitimate “refugees” and illegal “migrants”; (2) the justification of the exclusion of the latter in the name of guaranteeing protection for the former; and (3) the reconfiguration of the hierarchy of categories in the asylum system. These observations allow us to note several arguments contending that priority must be accorded to the individual rather than to the group and that these are favors granted rather than rights claimed; further, such logic fragments and places individuals in similar situations within a hierarchy. The combination of the aforementioned aspects poses a major challenge to the building of a collaborative and cohesive solidarity movement.
著者
森山 達矢
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.50-62, 2012 (Released:2020-03-09)

本稿は、身体という対象を社会学的に理解するための、認識論と方法論について検討するものである。このテーマについて、ローイック・ヴァカンの身体社会学の根幹をなしている「肉体の社会学」(carnal sociology)を検討する。彼の肉体の社会学は、師であるピエール・ブルデューの反省的社会学を実践するものであり、認識論と方法論とを反省的に問い直す過程において提出されたものである。肉体の社会学の特徴は、「身体の社会学」と同時に「身体からの社会学」となっているということである。「身体からの社会学」が意味していることは、社会学者の身体を、対象を理解する手段とするということである。しかし、ヴァカンは、フィールド・ワークにおける身体性と反省性について十分に検討していない。この点にかんして、本稿は、リチャード・シュスターマンのsomaesthetics(1)の議論を検討する。シュスターマンは、反省-前反省的領域という図式には含みこまれない、感性的な反省の存在を指摘し、この感性的な反省の学術的可能性を論じている。こうした議論から、筆者は、社会学者には、方法論として「感性社会学的反省」が必要であることを主張する。
著者
塩野 剛司 佐藤 ひろゆき 森谷 幸紀 岡本 泰則
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.409-412, 2010-06-15 (Released:2010-06-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

Tsuchi-kabe (called as soil wall or mud wall in English) utilized in Japanese traditional buildings is well known to have the characteristics of humidity conditioning. However, the characteristics have not been well examined. For preparing tsuchi-kabe material, soil, sand and rice straw are well mixed with water and then kept from a few weeks to months to promote fermentation. This aging process that is called as “Nekashi” gives plasticity to the material and is very important to construct tsuchi-kabe. In the present study, effect of “Nekashi” on the characteristics of humidity conditioning was examined. Long period of “Nekashi” enhanced the characteristics in nakanuri-kabe with a smaller amount of clay component.
著者
端 晶彦 弓納持 勉 村田 晋一 近藤 哲夫 奈良 政敏 中澤 久美子 端 圭子 大森 真紀子 加藤 良平 星 和彦
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.126-133, 2006-03-22 (Released:2011-12-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

目的:分葉状頸管腺過形成(Lobular endocervical glandular hyperplasia; LEGH)と悪性腺腫(Minimaldeviation adenocarcinoma; MDA)の細胞学的・組織学的検討を行い, 術前細胞診の意義を検討した.方法:LEGH11例, MDA2例の13例の術前細胞診標本および摘出病理標本を用いて細胞学的・組織学的に検討した.結果: 細胞質の黄色調粘液は, LEGHとMDAとの鑑別には有用ではないが, 胃型形質発現の病変を検出するのには有用と考える. LEGHの細胞診では細胞集塊は平面的な出現形態を示し, 核の重積性はなく, 核小体は目立たない. MDAでは細胞集塊は立体感があり, 核の重積性, 核小体の大型化が認められる. 核内空胞(核内細胞質封入体: Intranuclear cytoplasmiac inclusion(INCI))の出現はLEGHに特徴的な所見である可能性がある. LEGHに腺癌を合併する症例では, LEGH特有の細胞に混じって腺癌が示唆される細胞が認められる場合がある.結論:細胞診検査はLEGHとMDAの検出に有用であり, また両者の鑑別にもきわめて重要である.
著者
宮﨑 友裕 森田 哲夫 木之下 僚太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00166, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
10

本研究では,DMOによる観光満足度調査の際,来訪前の期待度を合わせて収集・分析することで,DMOが自地域の代表的な観光施設の評価・改善点の把握につなげることを試行した.調査では道の駅の各機能について,来訪者の事前の期待度と来訪時の満足度,総合満足度を各5段階で収集した.集計・分析の結果から,「道の駅」来訪者の期待度の強い項目として駐車場・トイレ・物産品販売を得た.道の駅総合満足度を目的変数とした重回帰分析による満足度モデルでは,駐車場の満足度と期待度の差分を有意な説明変数として得た.来訪者は駐車場に関して事前に道の駅の他の機能に比べ強く意識している可能性が示された.期待度が大きい項目では,事前の情報提供の改良等により総合満足度を向上できると考える.
著者
岩村 拡 中森 靖 岩坂 壽二
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency
雑誌
NEUROSURGICAL EMERGENCY (ISSN:13426214)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.179-186, 2020 (Released:2020-12-23)

今後予想される南海トラフ地震や首都直下型地震などの大地震では建物の倒壊現場での医療救護活動が想定され,平時から重機や搬出デバイスを用いて消防と医療チームが連携して訓練を行うことが望まれる.しかし訓練場所の確保が困難であり机上訓練にとどまっているのが現実である. 今回,当院の解体途中の病棟を災害現場と見立てて消防と医療チームが連携して傷病者救出訓練を実施したので報告する.
著者
森 将輝
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.50-58, 2022-09-30 (Released:2022-12-16)
参考文献数
53

When conducting experimental psychology, psychological phenomena are often described in mathematical terms and logic. How practical is the mathematical approach in experimental psychology? This paper aims to explain plain linguistic and mathematical expressions, how psychological phenomena are expressed mathematically in experimental psychology and how mathematical models are constructed, using examples of psychological phenomena related to sensation, perception, and cognition. First, it outlined the perspective, thinking, and utilization of mathematical models in experimental psychology, using some psychological phenomena. Second, it was introduced that several previous studies dealt with spatial properties of perceptual and cognitive phenomena, including the author’s studies. It is hoped that this paper will increase familiarity with and opportunities to utilize mathematical models in experimental psychology.