著者
原 正浩 長山 英太郎 印藤 昌智 森出 智晴 菩提寺 浩 坂東 敬介 稲童丸 将人 岡本 征仁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.578-583, 2018-08-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
12

目的:病院前救護における脳内酸素飽和度(tissue oxygen index。以下,TOI)の上昇に影響を与える要因を明らかにする。方法:2015年9月1日〜2016年1月31日の間,心肺停止傷病者に対しNIRO-CCR1を用いてTOIを測定した。結果:データが取得できた109症例でTOI上昇を従属変数としたロジスティック回帰分析を行い,「発症目撃あり,応急手当あり,気管挿管あり,薬剤(アドレナリン)投与あり,医師同乗あり,胸骨圧迫交代あり,胸骨圧迫比率」は1より大きなオッズ比を示し,「男性,心原性,初期波形VF,除細動あり」は1を下回るオッズ比であったが,いずれも統計学的に有意な結果とはならなかった。結論:TOIに与える要因として気管挿管やアドレナリン投与にTOIを上昇させる可能性があり,除細動に胸骨圧迫中断を反映してTOI上昇が得られにくい可能性が示唆されたが統計学的に有意な結果とはならなかった。TOIに与える影響やその先にある心拍再開の期待値などを確立するためには,さらなる臨床研究が望まれる。
著者
森 泰規
出版者
日本庭園学会
雑誌
日本庭園学会誌 (ISSN:09194592)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.28, pp.28_23-28_28, 2014 (Released:2018-10-08)

『作庭記』は、以下のように書く。「石をたてんにハ、まづおも石のかどあるをひとつ立おおせて、次々のいしをバ、その石のこはんにしたがひて立べき也。」しかし、石はものを言わない。ものをいうはずのない石の求めに従え、とは、読者に何を伝えようとしているのか。そこで、たんに新解釈を提示するのではなく<経営課題に置き換えて理解したら別の意味で参考になるのではないか>という考えに基づき、結果として<まったく別のものに置き換えて考えることで、かえって新しい光を当てる>ことをめざした。本稿は、新解釈の提案ではなく、あくまで「石のこはん」という記述を経営戦略の課題と重ねて、考察を提示するものである。
著者
清水 充 野田 勉 山野 哲夫 山田 明男 森田 茂
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.215-220, 1993-09-10 (Released:2010-03-11)
参考文献数
20

化学的合成品以外の食品添加物31種36品目についてマウスおよびラットにおける急性経口毒性試験を実施し、以下の結果を得た。1) 投与量が5.0g/kg以下の用量で動物の死亡が認められた試料はパルマローザ、ボアドローズ、茶抽出物、キラヤ抽出物、ヒノキチオールの5品目であった。これらのうちキラヤ抽出物およびヒノキチオールのLD50値はいずれも2.0g/kg以下であった。2) キラヤ抽出物を経口投与したマウスでは腺胃および小腸粘膜に浮腫、出血がみられた。3) ヒノキチオールを経口投与したマウスでは間代性および強直性痙攣がみられた。4) 上記以外の試料では動物の死亡は認められなかったが、観察期間終了の剖検ではクチナシ黄色素投与による肝臓の肉眼的変化が観察された。
著者
柴田 俊子 奥住 祥恵 篠原 有由子 森田 文子 光永 知和子 嶋本 圭 大音 清香 井上 賢治
出版者
日本視機能看護学会
雑誌
日本視機能看護学会誌 (ISSN:24333107)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.28-31, 2023 (Released:2023-11-22)
参考文献数
3

目的:A病院における夜間・休日の救急患者電話対応の業務の統一化を図るためにマニュアルを作成し評価を行う。 方法:調査期間:2020年3月~ 7月 対象:看護師が電話対応をした66件 方法:電話対応アンケートに記載されたアンケート内容を収集分析。 結果:電話総数66件のうちマニュアルを参照しなかったのは57件(86%),マニュアルを参照したのは9件(14%)だった。この9件の内訳は手術後の症状3件,アトロピン硫酸塩水和物に対する副作用2件,病状2件, ボトックス®注射1件,クレーム1件だった。 考察:マニュアルを作成することにより病棟では関わらない処置の確認や医師への連絡が簡便になり,病棟看護師の電話対応の統一や看護師の不安の軽減に繋がった。夜間や休日は病棟看護師に他部署の役割が求められる為,定期的にマニュアルの見直しや,追加修正等を行う必要がある。
著者
金子 健二 金広 文男 森澤 光晴 三浦 郁奈子 中岡 慎一郎 原田 研介 梶田 秀司
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.853-864, 2010 (Released:2012-01-25)
参考文献数
42
被引用文献数
7 6

The development of cybernetic human HRP-4C is presented in this paper. The word “Cybernetic Human” is a coinage for us to explain a humanoid robot with a realistic head and a realistic figure of a human being. HRP-4C stands for Humanoid Robotics Platform-4 (Cybernetic human). Standing 158[cm] tall and weighing 43[kg] (including batteries), with the joints and dimensions set to average values for young Japanese females, HRP-4C looks very human-like. This paper introduces the project overview, the design process, mechanical features, and electrical features with specifications of HRP-4C.
著者
大西 新介 小野寺 良太 杉浦 岳 高橋 宏之 近藤 統 岡本 博之 大城 あき子 清水 隆文 森下 由香 奈良 理
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.469-474, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
8

目的:消防覚知段階の情報から墜落外傷のトリアージが可能か検討する。方法:2003年4月からの4年間に当院へ救急搬送された墜落外傷症例を導出コホート,検証コホートに分けて後方視的に調査した。まず墜落高の重症外傷(ISS≧25)予測能についてROC解析を行った。次に重症予測にかかわる因子の多変量解析を行い,スコアリングを作成し検証した。結果:導出コホート111例において墜落高の重症予測能はAUCが0.65であり,墜落高の閾値は4mとなった。多重ロジスティック解析では高所,高齢,受傷時の意識障害が独立した重症予測因子であった。それぞれの因子を1点としたスコアリングを用いるとAUCが0.76となった。検証コホート128例においてもAUCは0.77であった。結論:墜落外傷においては,墜落高だけではなく高齢,受傷時の意識障害の情報を付加することでより正確なトリアージが可能となる。
著者
森 悠貴 橋本 和宗 井上 博夏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.23-00011, (Released:2023-11-20)
参考文献数
11

This paper proposes a novel path planning algorithm designed for efficient lunar water exploration. The proposed algorithm leverages a Bayesian network-based sensor model in combination with the RRT* algorithm. It is well-known that water is highly likely to be present in permanently shadowed regions (PSRs). However, during exploration within these regions, the rover must escape to illuminated areas within a limited time to recharge its battery. Therefore, it is crucial to develop a path planning algorithm that ensures both timely battery recharging and efficient water exploration. To address this challenge, we first introduce a sensor model based on a Bayesian network for the neutron spectrometer. Subsequently, we propose an algorithm that utilizes this sensor model and the RRT* algorithm to effectively explore water on the lunar surface. The paper provides a numerical simulation, using real data about time-variant illumination areas and time-invariant PSRs on the lunar surface, to illustrate the effectiveness of the proposed algorithm. The results reveal that the algorithm accurately and efficiently detects water under realistic illumination conditions.
著者
森木 秀一 井村 進也 伊藤 勝 松崎 則和 藤原 慎 伊藤 恒平
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1417-1421, 2009 (Released:2010-06-18)
参考文献数
10

スリップ率の変化率に基づく全輪駆動車のためのスリップ率制御手法を提案する。本制御手法によれば,目標スリップ率が最適値よりも大きく設定されており,スリップ率が最適値を超えた場合であっても,スリップ率の増加が自動的に抑制される。本制御手法をモータアシスト4WD車両に適用した結果を示す。
著者
森 博 牧野 安子 杉江 晶子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-6, 1993-04-01 (Released:2019-07-01)

MS-Windows3.0は,パソコンにとって新しいプラットフォームであり,現在パソコン界の主流OSであるMS-DOSの種々の欠点をカバーするものとして期待されている.ところが米国での成功とは裏腹にわが国においては思ったほどの普及をみせていない.日米におけるハードウェアとソフトウェア環境の違いが主要な原因と考えられるが,それらの環境が整えばわが国においてもWindowsはパソコンの標準的プラットフォームの有力な候補の一つとなりうると考えられる.それまでの間はWindowsと既存のDOSアプリケーションは共存していかなければならないが,両者の親和性についての調査はあまりない.そこで現在まだ広く使われている16ビットパソコンを使い,DOSアプリケーションとして代表的なワープロと表計算ソフトウェアのDOSおよびWindows上でのベンチマークテストを行なった.その結果,実行スピードの点においては予想外に差がでなかったが,EMSメモリーを要求するDOSアプリケーションでは,種々の問題点が存在することが明らかになった.
著者
桑原 恵介 金森 悟 鈴木 明日香 渋谷 克彦 加藤 美生 福田 吉治 井上 まり子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.544-553, 2023-09-15 (Released:2023-09-30)
参考文献数
26

目的 本邦の公衆衛生専門職大学院は疫学,生物統計学,社会行動科学,保健政策・医療管理学,産業環境保健学を基本5領域に据えて教育を行ってきたが,その現状と課題に関する知見は乏しい。そこで,帝京大学大学院公衆衛生学研究科を教育活動事例として,公衆衛生学修士課程(Master of Public Health, MPH)での教育の現状と課題,改善案をまとめることとした。方法 MPH教育の目標と授業科目の記述には,帝京大学大学院公衆衛生学研究科2022年度履修要項を参照した。課題と改善案は,同研究科での各領域の担当教員から意見を抽出し,要約した。活動内容 疫学では問題の本質を定式化して,データを収集・評価し,因果効果について推定できるように,討議を含む講義が行われきたが(計8科目),新たな公衆衛生課題への応用や技術革新へのキャッチアップの担保が課題である。生物統計学ではデータと統計学を理解し,解析を実践するための講義・演習が行われてきた(計9科目)。課題としては学生の理論の理解と講義難易度の設定,新しい統計手法の教材不足が浮かび上がった。社会行動科学では人間の行動を理解し,課題解決に向けて行動するための講義・演習・実習が行われてきた(計8科目)。課題としては,様々な行動理論の限られた時間内での習得,多様なニーズとの乖離,実践で役立つ人材育成が示された。保健政策・医療管理学では世界や地域の課題を発見・解決するために,政策や医療経済的視点も交えて講義・演習・実習を行ってきたが(計19科目),グローバル人材の輩出や行政実務者の入学不足,合理的・経済学的思考やマクロ経済的変化の認識の不足が課題である。産業環境保健学では産業・環境による影響と対策を法律・政策も含めて理解するための講義・演習・実習を行ってきた(計9科目)。課題としては最新技術や環境保健,社会的に脆弱な集団等のテーマの充実が挙げられた。結論 帝京大学でのMPH教育の振り返りを通じて,時代に即したカリキュラム編成,多様な学生,求められる知識・技能の増加,実務家の実践力醸成といった課題に対処していくことが,次世代の公衆衛生リーダーの育成に向けて重要であることが示唆された。こうした課題を解決していくために,公衆衛生専門職大学院での教育内容を全体像の視点から定期的に見直し,改革を行う不断の努力が求められよう。
著者
岩崎 凌 森 直樹 上野 未貴
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3C3J902, 2019 (Released:2019-06-01)

近年,人工知能による小説や漫画,アニメ,漫画といった創作物を対象とした研究が大きな関心を集めている. 創作物理解や自動生成といった試みは非常におもしろいものではある反面,そもそも人の創作物理解は高次の知的活動であり,どういったタスクであれば計算機が創作物を理解したといえるのかを定義することさえ難しい. 人の創作物の中で,特に漫画を工学的に扱う分野をコミック工学という. この分野では,日々様々な研究が報告されているが,多くはコミックの持つ画像を対象としており,ストーリーといったコミックの意味を自然言語から解析しようとする研究は少ないのが現状である. その一因としては,上で述べたような意味理解のためにどのようなタスクを設定すればよいか非常に難しいということが挙げられる. 更にデータセットが十分にデータを持っていないこともコミック工学の実験を制限する要因となっているため, Data Augmentation による解決を試み,今後の人工知能による創作物理解の可能性を示すという立場で結果を解析する.
著者
森山 学
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.625, pp.709-714, 2008-03-30 (Released:2008-10-31)

The purpose of this study is to clarify the theories of body culture for Le Corbusier and Pierre Winter, his collaborator, and the relation between them and their architectural theories. This paper deals with Le Corbusier's theory in the 1930's. He proposed a daily exercise for health in the Radiant City (1930) and a solution to a problem of a spectator sports in the 100,000-seat stadium (1936). Furthermore he expressed his profound understanding about life. This is an underlying thought of his projects for the space of body culture.
著者
竹峰 秀祐 高田 光康 山本 勝也 松村 千里 藤森 一男 渡辺 信久 中野 武 近藤 明
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.55-60, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

In this study, an analytical method for perfluorinated compounds (PFCs) in granular activated carbon (GAC) was investigated. The investigation of analysis was conducted by using GAC which adsorbed PFCs from artificial waste water containing PFCs of known amount. As results, it was confirmed that Accelerated solvent extraction (ASE) method using acetone as the solvent was appropriate for the extraction of PFCs in GAC.PFCs in used GAC samples, regenerated GAC samples, and a new GAC sample were analyzed by using the investigated method. The concentration of PFCs in the regenerated GAC was decreased by more than 99.9% compared with the used one. PFCs in GAC may transform and/or desorb at regeneration processes.
著者
野々木 宏 安田 康晴 今井 寛 太田 祥一 小澤 和弘 木下 順弘 小林 誠人 高階 謙一郎 森村 尚登 山野上 敬夫 山村 仁 脇田 佳典 横田 順一朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.800-805, 2019-08-15 (Released:2020-10-26)
参考文献数
15

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)の発症から再灌流療法までの時間を短縮するためには,病院前12誘導心電図記録の病院への事前伝達が有効であり,ガイドライン勧告がなされている.ガイドライン勧告の実践がなされているか救急隊による12誘導心電図記録と伝送の実態を把握するため,全国地域メディカルコントロール(MC)協議会251団体へのアンケート調査を実施した.回答率は96%で救急隊による12誘導心電計を搭載しているのは82%と高率であったが,全車両に搭載しているのは28%と低率であった.12誘導心電計を搭載している196団体のうち,電話による病院への事前伝達を行っているのは88%と高率であったが,伝送しているのは27%と低率であった.本アンケート結果から,ガイドライン勧告の実践を実現するためには,12誘導心電計の搭載とともに,地域MC協議会を中心とした救急隊と病院群との連携,プロトコル作成や心電図検証が必要であり,それには救急医とともに循環器医の地域MC協議会への関与が必要であると考えられる.
著者
吉村 理希 岩尾 洋英 金森 健彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集 2017 (ISSN:13431846)
巻号頁・発行日
pp.23E-4, 2017 (Released:2020-01-23)

Fuji Television has developed the equipment “SDI-Hyper” which can be transmitted the carrier of one transponder (36MHz) or IP at high speed (960Mbps) via HD circuit. This equipment is useful in site diversity of SNG and transmission of 4K, file.
著者
堀籠 啓太 伊藤 聖学 大河原 晋 相川 利子 今田 悟 宮澤 晴久 下山 博史 高雄 泰行 下山 博身 渡部 晃久 森下 義幸
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.77-83, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
18

症例は61歳, 男性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全により, 週3回の血液透析 (HD) 中であり, 透析後半に頻回の血圧低下を起こしていた. 身体所見や心胸郭比, 循環血液量モニタリングからは適正な体液の状態と判断していた. 本人の同意を得たうえで, 脳内局所酸素飽和度 (rSO2) のモニタリングを行った. HD中のモニタリングでは, HD開始120分後まで緩徐に平均血圧が低下した際, 右前額部において脳内rSO2の低下が観察された. 脳内の虚血性病変を疑い, 核磁気共鳴画像を撮影したところ, 右内頸動脈の高度狭窄が確認された. 単一光子放射断層撮影では安静時の脳血流は保たれていたため, 手術には至らず, 現在も経過観察中である. HD患者の脳内rSO2のモニタリングは脳内虚血性疾患の診断に寄与する可能性がある.
著者
森 将 岸上 靖幸 伊藤 泰広 金 明 森部 真由 柴田 崇宏 稲村 達生 上野 琢史 山田 拓馬 竹田 健彦 宇野 枢 田野 翔 鈴木 徹平 小口 秀紀
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.182-188, 2021 (Released:2021-05-10)
参考文献数
23

症例は35歳,妊娠35週3日.吐血によるショックバイタルと意識障害の事前情報で当院に救急搬送された.消化管出血はなく,舌咬傷と口腔内出血がみられ,血圧182/130mmHg,尿蛋白定性は4+であった.胎児心拍数は70-100bpmと胎児徐脈を認めた.子癇による痙攣後の意識障害と,舌咬傷による口腔内出血,痙攣に伴う低酸素血症による胎児機能不全と診断した.ニカルジピン塩酸塩,硫酸マグネシウム投与後に母体循環動態,胎児心拍数は改善した.MRIではPRESの所見を認め,意識障害が遷延するため,緊急帝王切開を施行した.分娩後,意識障害,PRESの所見は改善し,血圧も安定し,術後11日目に退院となった.児は日齢18で退院となり,その後,発達に異常はみられていない.子癇では母体治療により児の状態改善も期待できるため,妊婦の意識障害では,常に子癇を鑑別に挙げることが重要である.また,舌咬傷による口腔内出血を吐血と誤診する可能性も念頭に置く必要がある.
著者
高取 千佳 謝 知秋 森山 雅雄 三宅 良尚 香坂 玲
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.34, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

国内の中山間地域では、人口減少・農業従事者の高齢化に伴い、耕作放棄される農地が増加し、獣害や生物多様性の低下などの環境面、景観面への悪影響が課題となっている。将来の農地の活用方針を定める上では、現状の耕作放棄地の分布状況の把握方法の定量化、およびその立地条件の把握が不可欠である。そこで、本研究では、三重県松阪市櫛田川流域を中心に、農地の生産、耕作放棄地の分布状況調査及び立地条件の把握、リモートセンシングデータの活用による自動化についての検討を行った。第一に、農地の管理労働量について統計資料の調査、農林業の管理者の把握およびヒアリング調査を基に、農地単位面積当たりの労働力・コストの算出、耕作放棄地の把握を行った。第二に、Sentinel-2のリモートセンシングデータを基に、合成開口レーダ及び光学センサの年間の変化量を分析し、耕作放棄されている箇所の自動的な把握を行い、ヒアリングによって得られた管理労働量および耕作放棄地との比較分析を行った。第三に、以上のデータに対し、平野部から中山間部に至る農地の管理労働量に、立地条件(地形・水系・集落や道路からの距離等)が与える影響について明らかとした。
著者
田村 誠朗 北野 将康 東 幸太 壷井 和幸 安部 武生 荻田 千愛 横山 雄一 古川 哲也 吉川 卓宏 斎藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 角田 慎一郎 細野 祐司 中嶋 蘭 大村 浩一郎 松井 聖 三森 経世 佐野 統
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.450-455, 2017 (Released:2018-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

症例は65歳女性.X-17年に間質性肺炎合併多発性筋炎と診断されステロイド薬が開始.X-8年に関節リウマチを合併しタクロリムス(Tac)が併用となっていた.X年2月上旬から全身倦怠感と高血圧が出現,さらに血液検査で,血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,LDH高値,高クレアチニン血症を認めたことから,血栓性微小血管障害症(TMA)と診断.TMAの原因としてcalcineurin inhibitor(CNI)腎症を疑い,Tacを中止し血漿交換を開始した.以降,破砕赤血球は消失し,血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検を施行.その結果はTMAの病理組織像であった.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比較し低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非定型的であった.後に抗PL-7抗体が陽性であることが判明.本症例は強皮症の診断基準は満たさなかったが,同抗体陽性例では強皮症を合併したとする報告がある.すなわち潜在的な強皮症素因を背景にCNI腎症が重篤化した可能性が示唆された.抗PL-7抗体陽性の患者にTacを投与する際はTMAの発症に十分留意する必要がある.