著者
中嶋 蘭 三森 経世
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.71-76, 2013 (Released:2013-04-28)
参考文献数
17
被引用文献数
36 34

抗MDA5抗体は皮膚筋炎特異的抗体であり,同抗体陽性例は筋症状が少なく,高率に急速進行性間質性肺炎を併発し予後不良であること,高フェリチン血症・肝胆道系酵素上昇を伴うなど特徴的な臨床像を呈する.抗MDA5抗体陽性患者と陰性皮膚筋炎患者の治療前血清サイトカインを比較したところ前者では有意にIL-6, IL-18, M-CSF, IL-10が高値を示し,IL-12, IL-22は低値を示した.これらのことから,抗MDA5抗体陽性例においては単球・マクロファージの異常活性化が病態の背景に存在すると考えている.抗MDA5抗体陽性例は一旦酸素投与が必要な呼吸不全状態になると極めて救命率が低いため,診断後可及的速やかに治療介入が必要であると考えられる.ステロイド大量療法・シクロスポリン内服・シクロホスファミド間歇静注療法(IVCY)の3剤を併用した強力免疫抑制レジメンを用いることで,同抗体陽性例の予後が改善した.特に疾患活動性を反映することが報告されている血清フェリチン値は,IVCY投与約2週後に低下する傾向を認め,IVCYが同抗体陽性例の治療においてキードラッグとなることが示唆された.
著者
合屋 将 中野 泰 十九浦 宏明 高木 雄亮 渡邊 紘章 松田 能宣 角甲 純 笠原 庸子 小原 弘之 森 雅紀 中山 健夫 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.261-269, 2023 (Released:2023-12-25)
参考文献数
12

【目的】進行性疾患患者の呼吸困難に対する高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の有効性を検討する.【方法】MEDLINE, Cochrane Library, EMBASE, 医中誌Webを用いて文献検索を行った.適格基準は,呼吸困難に対するHFNCの効果を評価した無作為化比較試験であること,18歳以上の低酸素血症を伴う進行性疾患患者を対象としていること,対照群が通常の酸素療法もしくは非侵襲的陽圧換気であるもの,とした.集中治療室患者,人工呼吸器からの離脱後は除外とした.【結果】6件が採用された.短期介入を検討した2件で,HFNC有効1件,通常酸素有効1件であった.長期介入を検討した2件で,HFNC有効1件,有意差なし1件であった.運動負荷時の介入を検討した2件で,HFNC有効1件,有意差なし1件であった.【結論】低酸素血症を伴う進行性疾患患者の呼吸困難に対してHFNCは有効である可能性がある.
著者
中島 美里 森 将輝 板口 典弘
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
pp.42.6, (Released:2023-12-06)
参考文献数
27

The present study aimed to investigate whether the laws of isochrony and homothety hold for Japanese characters by measuring handwriting movements using a liquid crystal display tablet. The law of isochrony means that handwriting time is constant regardless of handwriting size. The law of homothety means that the time required for each character is consistent regardless of the overall time required during continuous handwriting. The twenty-two participants made three shapes, four hiragana characters (Japanese phonetic alphabets),and four kanji characters (Chinese characters) on a tablet at various sizes and speeds. Total handwriting time was longer when character size increased for all character types. This result suggests that the law of isochrony does not hold for Japanese character types. When the characters were written sequentially, the partial handwriting time ratio was indefinite and, varied by character. This result suggests that the law of homothety might not hold for some characters. In summary, this study suggests that the spatiotemporal dynamics of handwriting in Japanese differ by character.
著者
森本 桂 岩崎 厚
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.177-183, 1972-06-25 (Released:2008-12-18)
参考文献数
11

1) マツノザイセンチェウの最も有力な伝播者は,マツノマダラカミキリである。 2)大矢野町の枯損本から羽化したマツノマダラカミキリは, 71%がこの線虫を持っており,また1頭当りの持っている線虫数は平均3,146頭,最高8,783頭であった。 3)マツノザイセンチュウは,耐久型幼虫の形で,マツノマダラカミキリの体表面や上翅裏面に付着しており,また気門(特に腹部第1気門)の中には塊状になってはいっている。 4)この耐久型幼虫は,マツノマダラカミキリを高湿度に保つか,水に浸すと虫体から容易に離脱する。試験管による個体飼育では, 2~3週目に線虫落下の山がある (20°C, 93%RH)。 5) 野外では,耐久型幼虫はマッノマダラカミキリの羽化脱出から産卵を始めるまでの間に, 80%以上が虫体から落ちるものと思われる。 6) マツノマダラカミキリの後食部で,耐久型幼虫は脱皮を行ない,マツ樹体内へ侵入することができる。 7) 枝の一部を,羽化脱出直後のマツノマダラカミキリに後食させると,健全なマツでも枯れてしまい,その枯死木から多数のマツノザイセンチュウが検出できる。 8) 1939~'41年にまっくいむしの激害地から採集されたマツノマダラカミキリの標本から,マツノザイセンチュウの耐久型幼虫を検出できたので,当時のマツ枯損にもこの線虫が関係していたものと思われる。
著者
森 真誠 深井 貴明 山本 啓二 広渕 崇宏 朝香 卓也
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-59, no.7, pp.1-8, 2022-09-06

近年,爆発的に増加するデータを処理するために,多くのソフトウェアが利用されている.これらを共用 HPC システム上で利用する需要はあるものの,現在の共用 HPC システムはユーザが管理者権限を使用 (以後,root 化) できず,これらソフトウェアの導入に多くの労力を要する.また,システムレベルの最適化も root 化ができないため共用 HPC 環境では困難である.一方で共用 HPC 環境で単に root 化を許可すると,ハードウェアへの恒久的な変更などセキュリティや運用上で問題ある操作を防げない.また,ユーザのジョブがシステムの設定を変更できるため,ジョブの実行毎に設定変更の影響を取り除くためのマシン再起動が必要となるものの,再起動処理には多くの時間を要する.仮想計算機を用いるとこれらを解決できるものの,仮想化処理による性能劣化があり HPC システムには適さない.本研究では,上記課題を解決しユーザの root 化を可能とするシステムを提案する.提案システムは軽量なハイパバイザによって (1) ハードウェアの恒久的な変更を防ぐ機能と (2) ジョブ実行後マシンの再起動なしにシステムを既定の状態へ戻す機能を提供する.本手法を富岳と同系統システムで評価するため,Arm プロセッサで動作する軽量ハイパバイザ MilvusVisor と上記 2 つの機能を設計および実装した.本実装による実験の結果,メモリ性能における性能劣化について 2% 以下で上記機能を実現できることを確認した.
著者
森㟢 仁美 東 江里夏 竹中 基 室田 浩之
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.9, pp.2069-2075, 2020-08-20 (Released:2020-08-21)
参考文献数
16

68歳,男性.登山中にオオスズメバチのものと思われる土中の巣を踏み,スズメバチに約50カ所を刺され,アナフィラキシーショックとなった.ドクターヘリが要請され,刺傷約1時間半後にアドレナリン筋注等でショック状態を脱した.刺傷約3時間半後に救急搬送され,救急科より当科を紹介された.刺傷部には紅斑および皮下出血を認め,肝障害,腎障害を認めた.刺傷約15時間後に急速に横紋筋融解症と多臓器不全を生じ,他院に転院し集学的治療が行われたが,刺傷約36時間後に多臓器不全で死亡した.ハチ刺症で臓器障害を来した報告例を検討し,刺傷数や刺傷部の所見,クレアチンキナーゼ値などが重症化の指標となりうると考えた.
著者
富森 一馬 合田 祥悟 松本 悠 金城 綾美 丸藤 哲 瀧 健治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.541-546, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
16

目的:救急搬送されたカフェイン中毒患者を調査し,診療に役立てることを目的とした。方法:患者の年齢,性別,服用内容,服用目的,推定内服量,症状,検査所見,治療内容,転帰を診療録で後方視的に検討した。結果:調査期間中に13症例が搬送され,中毒原因は市販の眠気防止薬が11例と大半を占め,自殺企図が11例,推定摂取量は8g(中央値)である。推定摂取量と搬入時臨床症状,重症度,検査所見(血圧,脈拍数,呼吸数,体温,K値,乳酸値)の間に関連を認めず,搬入時検査所見は重症度で差を認めなかった。多くは軽症で経過観察で寛解したが,カフェイン半減期を過ぎた遅発性に痙攣と心室細動に至った症例を各々1例認め,人工呼吸,血液透析,経皮的心肺補助装置を使用した。転帰は全員軽快退院した。結論:カフェイン中毒患者の多くは軽症であるが,推定摂取量および搬入時検査所見から重症度を予測できず,遅発性に重篤化する症例もあり注意が必要である。
著者
藤森 隆史 竹中 ゆかり 仲村 佳彦 江藤 茂 三渕 拓司 吉村 健清
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-5, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
16

血液の絞り出しおよび穿刺部位の違いが血糖値に与える影響を検討した。①非絞り出し群と絞り出し群,②指腹で穿刺した群(指腹群)と爪脇で穿刺した群(爪脇群)をそれぞれ2群間で比較した。①の血糖値は非絞り出し群が113(83 〜303)mg/dl,絞り出し群が116(89〜275)mg/dlであった。その差は5.0(−45 〜20)mg/dlで,絞り出しにより有意に血糖値は上昇した(p<0.001)。②の血糖値は指腹群が116(87 〜162)mg/dl,爪脇群が116(82 〜170)mg/dl であった。その差は−1.0(−28 〜14)mg/dlで,有意差を認めなかった(p=0.151)。穿刺部位の違いが血糖値に与える影響はないが,絞り出しにより,血糖値は有意に上昇した。絞り出しを避けるまたは絞り出しにより血糖値が上昇することを考慮した上でのブドウ糖溶液投与プロトコールの作成が望まれる。
著者
和佐野 喜久生 湯 陵崋 劉 軍 王 象坤 陳 文華 何 介均 蘇 哲 厳 文明 寺沢 薫 菅谷 文則 高倉 洋彰 白木原 和美 樋口 隆康 藤原 宏志 佐藤 洋一郎 森島 啓子 楊 陸建 湯 聖祥 湯 陵華 おろ 江石 中村 郁朗
出版者
佐賀大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本学術調査は農学及び考古学の異なる専門分野から、東アジアの栽培稲の起源に関する遺伝・育種学的研究および中国の古代稲作農耕文化の発祥・変遷・伝播についての中国での現地調査、考古遺物・文献・資料の収集とその研究解析、現地専門家との討論を行うことであった。これまでの3回の海外調査によって、多くの研究成果を得ることができた。研究代表者の和佐野がこれまでに行った古代稲に関する調査は、中国の長江のほぼ全流域、黄河の中下流域、山東半島、遼東半島および海南島の中国全土にわたるものとなった。また、調査・測定した古代稲の実時代は、新石器時代の紀元前5,000年から前漢時代までの約5,000年の長期間に及び、その遺跡数も18カ所になった。稲粒の粒大測定は、大量にあるものからは約100粒を任意抽出し、それ以下のものは全粒を接写写真撮影によって行った。また、中国古代稲の特性を比較・検討するために、韓国の2カ所および日本の14カ所の古代遺跡の炭化米の調査も並行して行った。以上の調査結果に基づいて、次のような結論を得ることができた。(1)紀元前5,000年ころの気温は現在より2度は高かったこと、および北緯30度周辺に位置する城背渓および彭頭山遺跡文化(紀元前6,000-7,000年)の陶器片および焼土中に多くの籾・籾殻・稲わらの混入が発見されたことから、紀元前6,000-7,000年頃には北緯30度付近に稲(野生か栽培されたものかは分からない)が多く生育していたと考えられる。彭頭山遺跡の籾粒は6ミリ前後のやや短粒であった。(2)古代稲粒の大きさ・形の変異の状況および稲作遺跡の時代的新旧の分布状態から、東アジアの稲作は、長江の下流域・杭州湾に面した河姆渡および羅家角両遺跡を中心とした江南地方に、紀元前5,000年以上溯る新石器時代に始まったと考えられる。(3)長江の中流域には、紀元前6,000-7,000年の城背渓および彭頭山遺跡から稲粒が発見されているが、稲作農耕の存在を証拠づけるものがまだ発見されていないこと、河姆渡および羅家角両遺跡と同時代の紀元前5,000年頃の稲作遺跡が存在しないこと、中流域に分布する多くの遺跡が紀元前3,000-4,000年のものであること、などから、稲作は下流域から伝播したものと考えられる。(4)長江の最上流域の雲南省の稲作遺跡は紀元前1,000-2,000年の新しいものであり、稲粒も粒が揃った極端な短円粒であること、さらには、雲南省の最古の稲作遺跡である白羊村遺跡の紀元前2,000年頃には、黄河流域からの民族移動の歴史があること、などから、稲作のアッサム・雲南起源説は考えられない。アッサム・雲南地域は、周辺地域から民族移動に伴って生じた稲品種の吹きだまり(遺伝変異の集積地)の可能性が強いことを提唱した。(5)黄河の中下流域の前漢時代の古代稲は、長大粒で日本の現在の栽培稲とは明らかに異なるものであったが、淮河流域の西周時代の焦荘遺跡の炭化米は、九州の弥生中期の筑後川流域のものによく類似した。(6)山東半島の楊家圏遺跡(紀元前2,300年)の焼土中の籾粒は日本の在来の稲品種によく類似したが、遼東半島の大嘴子遺跡の炭化米は短狭粒で、韓国の松菊里遺跡(紀元前500年)、あるいは日本の北部九州の古代稲粒のいずれとも異なるものであった。このことから、稲作が朝鮮半島の北から内陸を南下したとは考えられない。(7)山東半島の楊家圏遺跡、松菊里遺跡(紀元前500年)、および日本の北部九州最古の稲作遺跡・菜畑遺跡のやや小粒の古代稲粒は、浙江省呉興県の銭山漾遺跡の炭化米粒の中に類似するものがかなり見られた。このことは、日本への最初の稲作渡来が江南地方から中国大陸の黄海沿岸に沿って北上し、山東半島から韓国の西海岸を南下しながら北部九州に上陸した可能性を示すものである。森島、湯および王は、雲南省と海南島の野生稲の現地調査を行い、中国の野生稲の実態を明らかにした。佐藤は河姆渡遺跡の古代稲の電子顕微鏡写真撮影によって、同遺跡の稲が野生稲の特徴である芒の突起を有すること、さらに小穂の小枝梗の離層が発達していることを確認した。藤原と湯は、江蘇省青浦県の草鞋山遺跡(紀元前3,400年)周辺を発掘し、当時の水田遺構の確認および稲のプラントオパール分析を行い、当時の稲作の実態を明らかにした。樋口、白木原、高倉、菅谷および寺沢は、それぞれの専門から研究を行い、現在報告書の成作を完了した。厳、蘇、陳、何および劉は、新石器時代の稲作文化および古代民族移動に関する報告書を作成した。
著者
森永 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.49-62, 2023-03-30 (Released:2023-11-11)
参考文献数
59
被引用文献数
1

本論文は,日本教育心理学会第64回総会において発表された個人研究と2021年7月から2022年6月までに発行された『教育心理学研究』の掲載論文の中から,教育社会心理学分野に該当する研究の動向についてまとめた。また,2019年から2022年6月までに発行された『教育心理学研究』の掲載論文の中で,参加者の性別がどのように扱われているかについて,ジェンダーの視点から検討した。その結果,以下の5つのカテゴリーを見出した。(1)研究の目的上いずれかの性別に偏らざるを得ないもの,(2)参加者の性別が記載されていないもの,(3)「方法」において参加者の性別が記載されているが,関連した分析や考察がされていないもの,(4)性別を統制変数として扱っているもの,(5)性別に関連した分析と考察がされているもの。(2)と(3)のカテゴリーが大半を占めていたが,ジェンダーの視点をもった研究やそうした研究に発展する可能性のあるものが,カテゴリーを越えて存在していた。最後に,教育心理学におけるジェンダーに関連した研究の重要性を示唆した。
著者
小森 美紗子 十代田 朗 津々見 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.409-414, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
12

本研究では全国の温泉地を対象とし、量的変化及び観光振興上の課題を整理した上で、宿泊者数の変化パターンによる分類を行い、宿泊機能の変化や取組みの特徴が温泉地の盛衰とどのように関係しているか、を明らかにすることを目的としている。結論の概要は次の通り。1)全体の半数以上が宿泊者数が減少しており、全国上位の温泉地も集客に悩んでいる。個性づくり、新たな価値づけ、温泉地全体を考える視点、雰囲気作り等が温泉地の課題として常に指摘されている。2)93温泉地の宿泊者数の増減から、再生温泉地17か所、衰退温泉地18か所を抽出した。3)宿泊施設軒数、平均室数、最低単価平均を用いたクラスタ分析により、宿泊機能によって4タイプに分類した。その変遷を見ると、宿泊者数の増減に対応して宿泊機能を変化させる温泉地は少ない。3)再生温泉地である土湯温泉の特徴は、宿泊者数が減少から増加に転じた時期に、温泉地に関する提言を行う記事が多く、さらに温泉地内の連携や協力が必要であるという論調が全国的に先駆けて見られた点である。
著者
橋本 亮太 安田 由華 大井 一高 福本 素由己 山森 英長 武田 雅俊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.69-75, 2010 (Released:2017-02-16)
参考文献数
17

自閉性障害やアスペルガー障害などの広汎性発達障害は,対人的相互作用の質的な障害,コミ ュニケーションの質的な障害,限定された反復的で常同的な行動・興味・活動などによって特徴づけられるものである。広汎性発達障害は,遺伝因子と環境因子との相互作用が重要な役割を果たしている多因子疾患と考えられている。しかし,広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は,60-90 %といわれており,統合失調症の約 50 %と比較して遺伝因子が強く,その遺伝率は,90 %とされている。遺伝因子の研究では,自閉症スペクトラム障害関連症候群,連鎖解析,関連解析,染色体異常と CNV(コピー数変異)解析,遺伝子発現解析,中間表現型解析がなされており,これらの解析技術の進歩が著しい。 その結果,2003 年にX染色体上にある Neuroligin3 と Neuroligin4 遺伝子が自閉症の原因遺伝子として報告され,続いて 2006 年に 22 番染色体上の SHANK3 遺伝子が報告された。さらに,新たにできたDNA の変異のうち CNV(copy number variant)と呼ばれるゲノムの一部の領域の欠失や重複が,孤発性の自閉症では多いことが報告された。2008 年には,この CNV の全ゲノムサーチにより,2 番染色体の Neurexin 遺伝子が関連することが見出され,興味深いことに,Neuroligin と相互作用することから注目を浴びている。これらの遺伝子群は,すべてシナプスにて機能する分子であり,広汎性発達障害では,シナプス機能の障害があることが示唆される。本稿では,広汎性発達障害の遺伝子研究の歴史と最新の知見に加えて,今後の方向性について概説したい。
著者
森下 遊
出版者
日本測地学会
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.29-39, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
19
著者
江木 盛時 西村 匡司 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-32, 2011-01-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

【背景】重症患者の発熱は頻繁に生じ,外表クーリングや薬物による解熱処置が日々行われている。しかし,発熱を解熱すべきか否かに関する治療指針は存在しない。【方法】発熱と解熱処置が患者予後に与える影響に関してsystematic reviewを行った。【結果】発熱あるいは解熱処置が患者予後に与える影響を検討した研究は,27文献存在した。これらの文献から,以下のような見解を得た。(1)発熱の発生は,重症患者の死亡率増加に関与する。(2)感染症合併患者では,発熱が死亡率低下に関与する可能性がある。(3)発熱に関する観察研究で解熱処置の情報を含めて解析したものはない。(4)積極的に解熱処置を行うことで,患者予後が悪化する可能性がある。【結語】重症患者の発熱を解熱すべきであることを示す根拠は乏しく,一概に解熱処置を行うことは推奨されない。この分野の知見を深めるために,十分なpowerの大規模多施設前向き観察研究を実施する必要がある。
著者
原田 利宣 森 典彦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.11-16, 1998-07-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
6
被引用文献数
4

今日, 自動車の銘柄数は国内だけで100を超えるようになったが, そのフロントマスクデザインはいくつかの系統のデザインに棲み分けされている。そこで, 本研究は, その棲み分けに影響を与える要因を究明することを目的としている。まず, Shepherdらのヒトの顔の認知に関する研究と同様なことを, 自動車のフロントマスクに対して行った。その結果, ヒトは自動車のフロントマスクをヒトの顔と同じようにとらえ, 輪郭(ボディのシルエット), 目(ヘッドランプ), 鼻(ラジエターグリル), 口(バンパーのエアインテーク形状)の順で注目度が高かった。また, ヒトが自動車のフロントマスクをみたとき, 犬系や猫系などの動物の顔をプロトタイプとして想起していることが推察され, それらプロトタイプの種類がデザインの棲み分けの一要因となっていることが推察された。さらに, ラフ集合理論により, 犬系, 猫系のプロトタイプを想起する要因となる形態要素の集合を抽出した。その集合は, 犬系, 猫系の顔の特徴を抽象化した形であることが推察された。
著者
楠 貴光 歳森 大輝 伊藤 翼宙 大沼 俊博 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.67-74, 2022 (Released:2022-12-23)
参考文献数
10

In this study, the area where the iliac muscle and psoas major muscle are visualized on the surface was examined using ultrasound imaging system. The site where the iliac muscle was visualized on the surface was 0–1 cm lateral at 1 cm below the anterior superior iliac spine (ASIS), 0–2 cm lateral at 2 cm below the ASIS, 1–2 cm lateral at 3 cm below the ASIS, 2–3 cm lateral at 4 cm below the ASIS, 2–4 cm lateral at 5 cm below the ASIS, 3–4 cm lateral at 6 cm below the ASIS, 3–4 cm lateral at 7 cm below the ASIS. The psoas major muscle was not visualized on the surface. This result suggests that the activity of the iliac muscle can be examined using surface electromyography.
著者
矢野 伸裕 横関 俊也 萩田 賢司 森 健二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1217-I_1227, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では,自転車利用者に対し,これまで自転車歩道通行可規制によって歩道を通行していた道路において,同規制の撤廃により歩道通行が禁止され車道を通行するように交通ルールが変更になった場合を想定した聞き取り調査を行い,ルール変更後に道路のどの位置を通行するつもりであるか,またその理由についての回答を得た.その結果,ルール変更後も歩道を通行すると回答した者が多数を占め,その理由として車道通行に対する危険感が指摘された.その危険感をもたらす原因として,交通環境,道路環境,個人特性の各側面が見出された.その他の歩道通行理由として,経路の問題(遠回りの回避)や柵のため車道から移動できないことなどが指摘された.自転車利用者の諸特性の多様性の観点から受容度の高い自転車通行空間整備の対策について論じた.