著者
前田 楓 橋本 博文
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.271-282, 2021-03-31 (Released:2021-06-30)
参考文献数
26

The practice of Inochi-tendenko is extremely effective in saving lives. Though this practice has been highly featured since the Great East Japan Earthquake on March 11, 2011, the degree to which people recognize its effectiveness remains low, and very little empirical analysis has focused on the psychological barriers to its practice. Using a newly developed paradigm of a supposed sediment-disaster dilemma, we show that emotional judgment in system 1 decision-making is a key psychological determinant of the hesitation to practice Inochi-tendenko. We also attempt to experimentally demonstrate one possible way to control such emotional judgment. We believe our findings have implications for disaster-prevention education and discuss possible concrete ways to provide education on the practice of Inochi-tendenko based on these findings.
著者
橋本 摂子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.141-157, 2009-06-30 (Released:2010-08-01)
参考文献数
37

ハンナ・アーレントの政治論をめぐっては,しばしば,その公/私‐境界の硬直した二分法が指摘される.公的空間からあまりに厳格に自然必然性を抜き去ることによって,社会問題への適用可能性を狭め,政治理論としての価値を損なっているのではないか.本稿はこうしたアーレント解釈に抗し,彼女のおこなった公/私の境界区分を,テクストに沿って精確に描き直す.社会学の文脈にアーレント政治論を配置し,新たな可能性をひらく試みである.アーレントにおける公/私‐境界の区分は言語/非言語‐境界に対応する.彼女は公的領域から言語外在的要素を排除したが,単に2つの領域を分断したのではなく,「事実」という独自の視点から言語/非言語-領域を分離・接合(articulate)させた.そのような公/私-区分は法執行カテゴリーよりも,むしろ理論社会学におけるシステム/環境‐区分に等しい.このことから,アーレントの政治思想は,近年の社会システム理論と強い親近性をもつことが示される.超越的根拠を排した〈政治〉=言論の自己準拠的再生産を通じて創設・保持される「公的空間」は,システム/環境‐差異にもとづくオートポイエーシスとして読み解くことができる.それによって,「複数性」という術語が,生命や真理などの伝統的な政治理念のかわりに立てられた,世界の実在性(reality)に立脚するアーレント〈政治〉の存立根拠であることを明らかにする.
著者
橋本 幸成 水本 豪 大塚 裕一 宮本 恵美 馬場 良二
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.374-381, 2013-09-30 (Released:2014-10-02)
参考文献数
24

発語失行の主な症状の一つであるプロソディー異常は,構音の問題に対する代償反応である可能性が指摘されている(Darley 1969)。本研究では,プロソディー異常が発話の主たる症状であった一発語失行例の症状を分析し,Darley の代償説との関連を探った。    症例のプロソディーの特徴として,発話速度の低下と発話リズムの単調さを認めた。発話速度を評価するために,メトロノームの速度に合わせて発話速度を徐々に上げる課題を実施すると,一定の速度に達した時点で構音の誤りが出現した。発話リズムは単調で,その単調さを分析した結果,方略的にフット(2 モーラ)のリズムで発話している傾向がみられた。症例は自己の発話について「一本調子でゆっくり話さないとうまくいかない」と内省報告しており,上記の分析と合わせて考察すると,本症例の場合,明瞭な構音を得るために方略的にプロソディーを調整しているという説明が妥当と思われる。
著者
橋本 初子
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.p671-696, 1979-09

個人情報保護のため削除部分あり今日、神社に伝来している古文書のなかに、「御奉行所候也」という書止め文言の文書がある。この文書は、様式的には御教書であり、公刊の史料集では、すでに御教書として扱われてきている。しかし、これらの文書はたんなる御教書ではなく、実際には院宣・綸旨として機能していた。本来、院宣は院司奉書、綸旨は蔵人奉書という形式が、いずれも原則であるが、本稿に紹介する「御奉行所候也」の院宣・綸旨は、かかる普通の院宣・綸旨をさらに下位の庁務主典代や蔵人所出納がもう一度奉じて、宛所に伝達するという二段構えの奉書形式である。本来の院宣・綸旨は、官職を帯し、政治機構内に位置しなければもらえなかった。そして官職についていないが、上皇 (天皇) の命令が伝達されねばならない時、本来の院宣・綸旨とは別形態の「御奉行所候也」の形式によって、院宣・綸旨が伝達された。本稿では、従来の古文書学では扱われなかった、この別形態の院宣・綸旨の実態について考察するものである。
著者
ヒル ピーター (訳)橋本 陽子
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.186-209, 2005-02-07

本論は,1989年に「昭和」という時代が終ったあとに生じた,ヤクザ(暴力団)の企業活動の発展を探るものである.平成以降,ヤクザは,彼らの経済環境に大きな影響をあたえた二つの出来事と格闘してきた.その出来事とは,バブル経済の崩壊と1992年の暴対法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)の施行である.バブル崩壊以後の経済不況のもとで,ヤクザは金になる事業を奪われたが,その分他の手段で補った.暴対法は,合法とされたヤクザの行為に新しい規制を加えたため,従来の行為による事業は高くつくことになったが,団員たちは新しい収入源の開拓に向うようになった.とりわけ,バブル経済と暴対法のダブルパンチヘの対応として増えたのが,覚せい剤取引や窃盗団であった.本論は,経済的な困難が長引くと,これまで彼らの世界を安定させてきた組織内あるいは組織間のメカニズムが弱体化するであろうという結論を導く.
著者
橋本 良子 山田 順常 林 進 中島 襄 城戸 国利
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.83-86, 1976-01-01 (Released:2011-10-11)
参考文献数
12
被引用文献数
2

われわれは, 半年前より持続する緑色帯下を主訴として来院し, レ線撮影により腟内に鈴を発見した1例を経験したので報告する. 患児は4才. 全身状態には異常なく, 外陰部は発育正常で外傷はなかったが, 発赤湿潤して悪臭があり, 腟スメアはI°~II°であった. 肛門診で前方に硬い腫瘤を触れ, 腟内に挿入したゾンデの先端に金属様の抵抗があったので, レ線撮影を行なったところ直経約1cmの鈴が描出された. 入院の上, 全麻下に子宮鏡を腟内に挿入して鈴の位置を確認し, 肛門から示指をもって容易に圧出し得た. 幼女の腟内異物は稀で, かつ診断が困難な場合が多いので, 文献的考察を加えて報告した.
著者
橋本 幸士
出版者
西筑摩書房
雑誌
シャ-ロック・ホ-ムズ紀要
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.14-20, 1996-05
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに最も系統的に近いチンパンジーにみられる「妊娠しにくい」形質の進化の解明のため、ウガンダ共和国カリンズ森林保護区に生息する野生チンパンジーを対象に、直接観察によるメスの性行動のデータと、ヒト用妊娠検査キットを用いた妊娠時期の判定とをあわせて分析した。さらに、妊娠検査キットによる妊娠判定を一歩進め、2009年度より尿や糞試料によるホルモン分析の予備調査を行った。
著者
清水 佑輔 ターン 有加里ジェシカ 橋本 剛明 唐沢 かおり
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20208, (Released:2021-10-15)
参考文献数
49
被引用文献数
1

Handicapped people have faced discriminatory attitudes from the non-handicapped. This often deprives them of fundamental human rights and can exacerbate mental illness. Symbolic ableism is one of the key forms of discriminatory attitudes toward the handicapped, and this is regarded as a cause of disagreement with policies to support the handicapped. The propensity of symbolic ableism can be measured by the Symbolic Ableism Scale (SAS; Friedman & Awsumb, 2019), which divides symbolic ableism into four components: individualism, lack of recognition of continuing discrimination, lack of empathy for disabled people, and excessive demands. Although this scale is necessary for understanding people’s attitudes toward the handicapped, it is not available in Japanese. This study was conducted to develop a Japanese version of SAS (SAS-J) and examined its reliability and validity. The result showed that SAS-J was divided into two components (i.e., individualism and lack of recognition of current condition), which is different from the original version. We discussed possible explanations of this difference, the reliability and validity of SAS-J, and future directions of symbolic ableism.
著者
橋本 剛明 唐沢 かおり 磯崎 三喜年
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.76-88, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
29
被引用文献数
4 2

大学生が所属するサークル集団は,フォーマルな組織とインフォーマルな集団の双方の特徴を併せ持った集団であり(新井,2004),本研究はこれを準組織的集団と位置づけた。その上で,サークル集団における成員と集団とをつなぐコミットメントのモデルを探り,検討を加えることを目的とした。具体的には,組織研究の領域における3次元組織コミットメントのモデル(Allen & Meyer, 1990)を基盤に,サークル・コミットメントを測る尺度を作成し,学生205名を対象に調査を行った。その結果,サークル集団におけるコミットメント次元として,情緒的コミットメント,規範的コミットメント,集団同一視コミットメントの3因子が抽出された。さらに,それぞれのコミットメント次元の規定要因に関して,集団がフォーマル集団に近い程度を表す集団フォーマル性との関連を含めて分析を行った。情緒的コミットメントは課題および成員への集団凝集性により規定されており,また,課題凝集性と集団フォーマル性の交互作用が示唆された。規範的コミットメントと集団同一視コミットメントはともに,集団フォーマル性と成員凝集性によって規定されていることが認められた。
著者
森岡 隆 手島 和典 吉嶺 絵利 中谷 正 高橋 佑太 倉持 宗起 橋本 貴朗 林 信賢 中村 裕美子 中溝 朋美 高橋 智紀 若松 志保 楠山 美智子 成田 真理子 油田 望花 川口 仁美 安生 成美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

源兼行ら11世紀半ばの3人の能書が分担揮毫した『古今和歌集』現存最古の写本である「高野切本古今集」について、巻五・巻八・巻二十の完本3巻を除く17巻を復元した。このうち巻一・巻二・巻三・巻九・巻十八・巻十九の6巻は零本・断簡が伝存するものの、他の11巻は伝存皆無だが、各々の書風で長巻に仕上げて展示公開するとともに、それらを図版収載した研究成果報告書を刊行した。なお巻五についても、後に切除された重複歌2首の各々の当初の位置を特定し、復元し得た。
著者
橋本 壽夫
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.222-237, 1991 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7
著者
荒井 國三 浦田 航希 橋本 昌子 蓮元 憲祐 谷山 徹 卯尾 伸哉
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.95-107, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

石川県内の高校生および大学生による医療用医薬品とヘルスケア商品(一般用医薬品,健康食品,サプリメント)の使用実態をアンケートにより調査した.体の具合が悪くなったとき,医療機関に受診しないで健康食品やサプリメントを利用する者が 18.5%(83 名:449 名の健康食品利用者中)いた.さらに,健康食品で病気は治ると,間違って理解している者が 34.5%(654 名)いた.以上より,中高校生に対する「くすり教育」において,医療用医薬品の教育ばかりでなく,健康食品やサプリメントの利用に関する教育を行う必要があると考えられた.