著者
田村 温美 筒井 英光 伊藤 純子 小原 亮爾 星 雅恵 久保田 光博 矢野 由希子 池田 徳彦
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.269-273, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
15

甲状腺・副甲状腺手術の後出血は1~2%の頻度とされている。頸部は狭い空間であることから,少量の出血でも血腫による静脈潅流障害により喉頭浮腫から気道閉塞に至る可能性がある。このため,甲状腺・副甲状腺手術において後出血は最も緊急性の高い合併症である。当科では,後出血予防の様々な取り組みにより,後出血に対する再開創率は0.5%と好成績であった。しかしながら,手術を行う限り後出血はどうしても一定の頻度で発生してしまうため,発生防止と同時に,早期発見と迅速な対応を行う取り組みが必要である。当科ではその取り組みのひとつとして,頸部マーキングを行っている。ひも1本でできる危機管理をコンセプトにこの頸部マーキングを「東京医大ひも法」と名付けて行っている。「簡便」かつ「安価」で導入可能であること,安全が「見える化」「数値化」することでチーム内での情報共有や早期発見に有用な方法である。ひも法における「マーキングが2cmずれたら主治医コール」は妥当な基準と考えている。
著者
宿院 享 杉本 実紀 池田 俊太郎 久米 新一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.503-507, 2014-11-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17

ICR系妊娠マウス18匹を対照区,2%塩化カリウム(KCl)給与区および5%KCl給与区に割り当てて,KCl給与区では交配後6.5日目から分娩14日後まで2%あるいは5%のKClを添加した飼料を給与し,マウスの体重,飼料摂取量,飲水量,腎臓重量,腎組織と血液成分に及ぼすKCl給与水準の影響を調べた.泌乳マウスでは分娩直後から飼料摂取量と飲水量が急増した.妊娠期と泌乳期のマウスの飼料摂取量にはKCl給与の影響は認められなかったが,KCl給与水準の上昇とともに飲水量が増加し,なかでも5%KCl区の泌乳マウスの飲水量が顕著に増加した.泌乳マウスの腎臓重量は5%KCl区で最大であり,血清KとCl濃度はKCl給与区で上昇した.しかし,泌乳マウスの腎組織にはKCl給与の影響は認められなかった.以上の結果から,KCl給与水準が上昇すると泌乳マウスでは飲水量と腎臓重量が増加し,腎臓に多大な負荷を及ぼすことが推察された.
著者
小郷 直人 池田 哲臣
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 37.4 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.123-126, 2013-01-23 (Released:2017-09-21)
参考文献数
9

移動中継用の700MHz帯FPUはマラソンや駅伝の中継で映像,音声を伝送するために用いられているが,総務省の周波数再編アクションプランにより1.2GHz帯,2.3GHz帯へ周波数を移行することが検討されている.移行先の周波数は現行の周波数より高く波長が短くなることから,中継車屋上にアンテナを設置した際,車両屋上の形状による送信アンテナの放射特性への影響がより大きくなることが懸念される.今回,700MHz帯,1.2GHz帯,2.3GHz帯FPUの送信アンテナ,中継車をモデル化し,それぞれについて解析,比較した.その結果,車両屋上からアンテナ高をとることでその影響を軽減できることがわかった.
著者
古賀 佳代子 木村 裕美 西尾 美登里 久木原 博子 池田 智
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.104-113, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
30

熊本地震の震災関連死に認定された者のうち3割が車中泊を行なっていたことが報告されている。車中泊による影響は,身体のみならず精神的負担も大きく,車中泊が及ぼす影響についての報告は少ない。そこで,本研究は被災就労者を対象に,熊本地震1年後の車中泊者の特性と精神的健康に影響を及ぼす要因を検討する。対象者は,熊本県上益城郡にある工業団地13社の被災就業者460名を対象者とし,車中泊あり群,車中泊なし群の2群に分類し分析した。結果,車中泊あり群は181名(72.7%)を占めていた。車中泊なし群に比べて,アテネ不眠尺度(Athene Insomnia Scale以下AIS),PTSDスクリーニング尺度(Impact of Event Scale-Revised以下IES-R),精神的健康調査票(General Health Questionnaire 以下GHQ 28)が有意に高いことが明らかになった。次に,精神的健康(①IES-R,②GHQ 28)の関連について重回帰分析を行なった結果,IES-R得点には,「身体機能(PF)」,「社会生活機能(SF)」,「不安と不眠」,「車中泊の有無」が,GHQ 28得点には,「活力(VT)」,「回避症状」,「車中泊の有無」,「自覚症状の有無」が影響を及ぼす要因として明らかになった。災害時の就労者の精神的負担は,累積された業務負担の上に課されている。長引く精神的負担は,改善されない可能性が指摘されており,早急に支援対策の在り方について検討する必要性が高いことが示唆された。
著者
橋本 博行 池田 達哉 吉光 真人 清田 恭平
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.70-78, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

バッター液を調製した調理器具の洗浄後,スポンジたわしに小麦粉が残留することがある.このようなスポンジたわしを洗浄に使用すれば,調理器具間で小麦アレルゲンの二次汚染が懸念される.そこで本研究では,バッター液調理後の洗浄方法として,スポンジたわしによるボウルの洗剤洗浄の条件設定を行って調査を行った.繰り返し試行の結果,バッター液10 gを塗布したボウルから,小麦アレルゲンがスポンジたわしを介して別の未使用ボウルへ陽性率約80%で二次汚染した.洗浄・すすぎ操作後のスポンジたわしにはバッター液由来の残留物が認められ,残留率は20%程度であった.残留状態を詳細に観察したところ,グルテン等のタンパク質がスポンジたわしのセル骨格や骨格間に付着し,そのタンパク質にデンプン粒が付着していた.この状態のスポンジたわしに対してすすぎ条件を追加したが,小麦アレルゲンの完全除去は困難であった.このことから,アレルゲン混入リスクを回避すべきアレルギー対応食等の調理施設では,スポンジたわしは小麦を使用した食品調理器具の洗浄用に専用化することが望ましいと考えられる.
著者
鎌谷 宇明 池田 幸 朽名 智彦 飯島 毅彦 吉濱 泰斗 近藤 誠二 代田 達夫 新谷 悟
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.96-100, 2012-12-01 (Released:2013-02-25)
参考文献数
9

Distigmine bromide is an anticholinesterase used to treat urinary retention. We describe a case of decreased serum cholinesterase caused by a usual oral dose of distigmine bromide for urinary retention. An 84-year-old man, who had been received chemotherapy for carcinoma of the lower gingiva, suddenly decreased serum cholinesterase to 21 IU/L in 7 days of administration of distigmine bromide 5mg without clinical symptoms. Serum cholinesterase improved after stopping the administration of distigmine bromide. This case shows that oral surgeons should be aware of the possibility of decreased serum cholinesterase in patients taking distigmine bromide.
著者
池田 耕二 山本 秀美 古家 真優 梅津 奈史 大塚 佳世
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = BULLETIN OF NARAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.7-17, 2021-12-17

株式会社ハーフ・センチュリー・モアが運営しているサンシティ木津ロイヤルケアにて新たにリハビリテーションうららかを開設するにあたり、筆者ならびにサンシティスタッフが共に取り組み、約2年間にわたりリハビリテーション(以下、リハビリ)を実践してきた。今回、これらの振り返りを通して、介護付き有料老人ホームにおけるリハビリの効果や役割、その可能性、課題を考察した。その結果、筆者とサンシティスタッフが共同で取り組んでいる介護付き有料老人ホームのリハビリは、リハビリスタッフと入居者、家族とのコミュニケーションや関係性を基軸に、喜びや安心感という感情表出、全身調整機能や生活リズムの再構築、集団リハビリというコミュニティ、環境変化からくる多様な効果や役割が総じて、入居者や家族の生活の質(Quality of Life:QOL)向上の可能性を高めていると考えられた。これらを考慮したリハビリが実施できれば多様な障害像を有する入居者のQOL向上が図れると期待することができる。これらについてはさらに検証を加える必要があり、今後の課題となった。
著者
池田 洋一郎 山口 哲生 山田 嘉仁 篠原 翼 河野 千代子 青柳 哲史 天野 裕子 鬼島 正典 黒瀬 信行 宮本 和人
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.65-69, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

小径線維ニューロパチー (small fiber neuropathy, 以下SFN) を認めたサルコイドーシス (以下サ症) の2症例を経験した. 71歳と67歳の女性が当院に紹介され, 2症例とも手足のシビレなどの症状を呈していた. 神経学的所見として, 両側上下肢遠位部に対称性の温痛覚低下を認めたが, 触覚, 関節位置覚, 振動覚は正常であった. 両者に発汗の低下と便秘がみられた. 神経伝導速度と針筋電図検査では異常は認められず, これらの所見は小径線維ニューロパチーに合致していた. 生検皮膚組織の末梢神経のPGP9.5とP75による免疫染色により, 皮膚組織の末梢神経軸索密度が正常と比して有意に減少し軸索障害が有意に増加していることが確認されSFNと確定診断した. 症例1は, ジクロフェナクや塩酸メキシレチンによって, 症例2は, 塩酸アミトリプチリンの投与で症状は軽減された. 従来, サ症の末梢神経病変は脳神経麻痺と多発単神経炎で代表されるとされていたが, この2症例の経験から, これまで考えられていたよりもSFNの合併の頻度は高いことが推測される. サ症にともなう多彩な神経障害の診断において, 神経伝導速度と皮膚生検はその中からSFNを鑑別する有意義な検査方法といえる.
著者
長瀬 裕 小松 利幸 角谷 嘉和 池田 幸治 関根 吉郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.11, pp.1560-1568, 1979-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
11

合成ポリアミドと天然ポリアミドの熱分解機構の相違と有毒ガス(-酸化炭素,シアン化水素)の発生との関連性を明らかにするため,ナイPtン6,ジスルフィド橋かけナイロン6,ナイロン6,6,絹および羊毛を試料として,ヘリウム気流中,真空中におけるTG, DTA測定およびGC, IR, MSを用いた熱分解生成物の分析を行なった。合成ポリアミドでは320~350。Cで分解が開始し, TG曲線が1段階となった。ナイロン6ではε-カプロラクタムを生じる解重合反応が主反応となり,シアン化水素は生成せず-酸化炭素もごく微量しか生成しなかった。ナイロン6にジスルフィド橋かけを施すとS-S結合の切断が分解開始点となり,同時に主鎖のN位がラジカル化されて解重合されやすくなることがわかった。また,ナイロン6,6ではアミド結合の加水分解にともない末端の脱炭酸および脱アンモニア反応が起きて主生成物は二酸化炭素,水,アンモニアであった。一方,絹および羊毛では分解開始温度は200~250。Cで合成ポリアミドにくらべ低く,二酸化炭素,水,アンモニアが熱分解主生成物であった。さらに容易に橋かけ反応が進行してTG曲線が3段階となり,その過程でシアン化水素,-酸化炭素が合成ポリアミドとくらべ多く発生することがわかった。
著者
小森 憲治郎 池田 学 中川 賀嗣 田辺 敬貴
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.107-118, 2003 (Released:2006-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
6 3

側頭葉の限局性萎縮により生じる意味痴呆と呼ばれる病態では,言語・相貌・物品など広範な対象についての意味理解が選択的に障害される。意味痴呆における葉性萎縮のパターンには,通常左右差が認められるが,萎縮の優位側に特異的な認知機能障害については,いまだ十分な合意的見解が得られていない。そこでまずわれわれは,左優位の萎縮例と右優位例の神経心理学的比較検討から,左右側頭葉の役割分化に関する手がかりを得ようと試みた。その結果,典型的な語義失語像を呈した左優位例では,呼称,語産生と,理解に関する項目で右優位例を下回り,知能検査についても言語性検査の成績低下が著明であった。一方右優位例では,総じて語義失語の程度はやや軽度で,代わって熟知相貌の認知障害,物品の認知ならびに使用障害を呈したが,言語の諸機能はまんがの理解を除き左優位例に比べ成績低下が軽度であった。また知能検査では言語性,動作性ともに低下し,何らかの視覚性知能の障害も併存している可能性が示唆された。さらに諺と物品という,それぞれ言語性・視覚性と異なる表象の保存状態を調べる補完課題を用いた比較では,どの意味痴呆患者も何らかの補完課題の障害を認めたが,諺の補完課題での成績低下が著明で物品の補完は比較的保たれる左優位例に対し,おもに物品の補完課題に著しい困難を呈し,諺では補完が比較的保たれる右優位例,という二重乖離が認められた。これらの結果は,左側頭葉前方部が言語性の,また右側頭葉前方部は視覚性の表象を司る神経基盤として重要であることを示唆している。
著者
池田 友和 大脇 渉 高橋 弘太
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-109, no.2, pp.1-6, 2015-10-31

スマートミキサーは,複数の入力信号を時間周波数平面に展開し,平面上の局所領域において非線形な混合処理を行うことで,使用者の優先させたい音を目立たせた混合出力を得ることのできる新しい音信号混合法である.従来のスマートミキサーは,音声と BGM の混合を対象とした局所的な処理であり,楽音同士の混合については検討されていなかった.本研究では,楽音同士の混合を対象として,スペクトルの全体構造に基づいた処理を行い,協和性理論を規範とし,調和の取れた混合出力を得るミキシング手法を提案する.提案手法でのミキシング結果を聴取実験と不協和度によって評価し,楽音同士の混合における,スペクトルの全体構造に基づいた処理の不協和感の緩和への有効性を確認した.その結果,440Hz 以下の半音音程の不協和な定常音について,不協和感の緩和効果があることが確認できた.
著者
岩波 保則 池田 哲夫
出版者
Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子通信学会論文誌. A (ISSN:03736091)
巻号頁・発行日
vol.J60-A, no.6, pp.505-512, 1977-06-20

従来の研究により,各種のデータ伝送システムに対する誤り率特性の解析は,広範になされてきており,多くの雑音に強い最適受信システムが考えられてきている.ただその際,妨害雑音のモデルとしては,ガウス雑音を対象にしたものが非常に多く,ガウス雑音に対する誤り率の算定は,現在ほぼなされたといえる.しかし,無線回線を用いた実際のディジタル通信システムにおいては,ガウス雑音よりもむしろインパルス雑音の影響が大きいことは経験上良く知られている.インパルス雑音に対する誤り率特性の解析についてもPSK,DPSKなどのベースバンド信号に対しては行われてきているが,無線回線用の周波数変調方式であるPSK-FM方式などについては,まだ行われていない.誤りを起す原因となる雑音には,インパルス雑音やガウス雑音のほかにも考えられるが,ここでは,インパルス雑音とガウス雑音のみを仮定し,それらを別々にPSK-FM信号に相加したときの誤り率特性を求め,更にそれらから,PSK-FM方式のインパルス雑音とガウス雑音に対する誤り率特性を2つの誤り率の重ね合せという方法により評価する.
著者
池田 智恵
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian Cultural Interaction Studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.225-237, 2012-02-01

At the end of the Qing period, there was a boom in the translation of mystery novels; however, the writing of mystery novels by Chinese authors did not become popular until the 1920s. Beginning in the late 1910s, mystery-writing contests were announced in the newspaper readers’ columns, and many of the submissions resemble the earlier translated works all being set in overseas locations. At the same time, Chinesenewspapers were overfl owing with reader submissions, known as “black curtain” articles, that disclosed the darker side of society, that were extremely popular. With the appearance of mystery novels, it was believed that imagination was necessary for the appreciation of the newspaper article as a form of entertainment. In the 1910s, however, the writing of mysteries and “black curtain” articles had yet to fuse, but in analyzing the works of the 1920s, it is possible to discern that they were written based on the imagination used for the “black curtain” articles. From this point, “black curtain” article and mysteries fuse, and mystery novels that problematise China begin to be produced.