著者
小林 由佳 渡辺 和広 大塚 泰正 江口 尚 川上 憲人
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.43-58, 2019-03-20 (Released:2019-03-25)
参考文献数
40
被引用文献数
2

目的:従業員参加型職場環境改善(以下,参加型職場環境改善)はメンタルヘルス不調の一次予防として有効性が示された手法であり,ストレスチェック制度の施行に伴い関心が高まっている.しかし,従業員の関与,上司の姿勢,職場の風土などにより活動の効果が一貫しないことが指摘されており,運用上の課題解決が求められる.本研究では,職場環境改善の実施手法の検討に際して職場の準備状態を見立てる観点,および組織を発達させるという組織開発の観点が有効と考え,参加型職場環境改善が有効に機能するまでに発達した職場の定義およびその獲得に必要な要因の検討と,機能する状態に向けた準備状態を段階別に把握するためのチェックリストを開発することを目的とした.対象と方法:専門家間の議論,および実務者からの意見にもとづき,参加型職場環境改善の機能する職場の状態(理想的な状態)の定義を行った.そしてその状態の獲得に必要な要因に関するアイテムプールを作成し,日本人労働者300名(男女比1:1)を対象にインターネット調査を行い,探索的因子分析にて因子構造を確認した.さらに,職場の状態のチェックリストを作成するため,理想的な状態を外生変数,その獲得に必要な要因に関する項目を内生変数としたロバスト最尤法推定によるカテゴリカルパス解析を実施し,項目ごとに閾値(threshold, θ),およびパス係数(γ)を推定した.項目ごとの閾値にもとづいて項目のレベル(その項目を達成することの難易度)を設定し,そのレベルごとに最もパス係数が高く,かつパス係数が0.60以上の項目をチェックリストに採用した.最後に各レベルと理想的な状態,および関連項目(職場の心理社会的要因,ワーク・エンゲイジメント,心理的ストレス反応)との関連を分散分析にて確認した.結果:収集された77項目のアイテムプールにおける探索的因子分析の結果,71項目3因子構造が妥当であった(第1因子「職場の受容度」,第2因子「上司のリーダーシップ」,第3因子「職場での議論の熟達」).チェックリスト作成のためのカテゴリカルパス解析の結果,第1因子から3項目,第2因子から2項目が抽出された.第3因子では理想的な状態との関連が十分でなかったため該当項目はなしと判断した.最終的に,肯定的回答率をもとに設定された4段階のレベルを5項目から判断するBODYチェックリストが作成され,各レベルと理想的な状態,および関連項目とで分散分析を行った結果,すべての指標において有意な差が認められた.考察と結論:参加型職場環境改善が有効に機能する状態の獲得に必要な要因は,職場の受容度,上司のリーダーシップ,職場での議論の熟達に整理され,これらを日常的に高めることでより有意義な改善活動につながることが示唆された.また,BODYチェックリストを用いて職場の準備状態を測定することにより,職場環境改善活動を企画する際に各職場にあった目標を設定することが可能になった.今後は,BODYチェックリストの職場単位の分布の確認および参加型職場環境改善の実施効果との関連を確認していく必要がある.
著者
三輪 敬之 渡辺 貴文 板井 志郎 西 洋子
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
設計工学・システム部門講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp._1302-1_-_1302-4_, 2012

We have simultaneously measured both the explicit movement of palms and the implicit movement of the whole body in the hand contact improvisation. And, we also have compared and analyzed the difference of the measurements between the time when the sympathetic embodied awareness is being generated and when it is not. We have obtained the following results from the comparison and the analysis under the condition that the self-other inseparable relationship is being created through the sympathetic embodied awareness between two persons. First, the implicit movement comes before that of the explicit. Second, the time when those movements occur corresponds between the two persons. Furthermore, chaos attractor is generated within the movements of hands, and there exists a rhythm of a cycle variation for a few to ten seconds. These results suggest that the space-time structure of the inner self changes through the bodily expression. It is expected that this will be an important clue to clarify the dynamics of "Ba" in the co-creative expression.
著者
渡辺 博明
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.2_80-2_99, 2015 (Released:2018-12-15)
参考文献数
26

本稿は, スウェーデンの民主政治における代表と統合の変容を, 政党政治の変化から論じるものである。従来の同国政治の特徴は, 議院内閣制の中でも特に 「委任―責任」 関係が単純化された制度設計になっていることと, 多党制でありながら 「ブロック政治」 や 「消極的議院内閣制」 の慣行により少数派政権でも意思決定を進めやすいことにあった。そして, それらを結びつけて機能させていたのが, 職能的ないし思想的に社会集団を代表しつつ, 議会内では合意形成を目指して合理的に行動しうる諸政党であった。しかし, 高度経済成長を経て有権者の政党支持が流動化するとともに, 予算編成方式の変更を機に政党側の多数派形成志向が強まり, ついには左右の選挙連合が対決するに至った。そこでは各党の政策距離が縮小する中, 有権者が政権選択のみを迫られる傾向が強まった。その一方で, 移民政策をめぐる既成政党の対応を批判する右翼ポピュリスト政党が台頭し, 議会政治に大きな影響を与えるまでになっている。今日のスウェーデンは, 選挙制度を含む諸制度への支持の安定という点で直ちに統合の危機に陥る恐れはないものの, 政党による代表と調整の機能が問い直される局面を迎えている。
著者
渡辺 大地
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.55, pp.280-292,35, 2004-04-01 (Released:2009-07-23)

In this paper, I want to discuss the so-called "Autonomy of Logic" (Logic must take care of itself)" in Wittgenstein's Tractatus Logico-Philosophicus. Wittgenstein says that this remark is a very deep and fundamental insight, and a right interpretation of this insight will clarify what Wittgenstein means by "Logic" in the Tractatus. However, the remark's implications are very obscure, so some clarifications are necessary.The remark involves two points : in the whole theory of things, properties are superfluous, and we cannot make mistakes in logic. So I discuss these points and then interpret some remarks about the "Autonomy of Logic".Firstly, I discuss Peter Hacker's interpretation of these remarks and related points. I indicate some problems of his interpretation are due to his neglect of the view of nonsense in the Tractatus and I consider this problem on the basis of a new approach to Wittgenstein's Tractatus (especially the view of Cora Diamond and that of James Conant) and I then present an interpretation of the Autonomy of Logic.Secondly I deal with "the theory of correct symbolism" in Wittgenstein's early remarks, and clarify what he means by "Logic".
著者
服部 尚子 朝比奈 昭彦 渡辺 孝宏 白井 明 鑑 慎司 渡辺 玲 岸 晶子 大原 國章
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.270-279, 2007-01-15 (Released:2008-01-15)
参考文献数
26

可変式ロングパルスダイレーザー(Vビーム®,595nm-long pulsed dye laser with adjustable pulse duration (ALPDL))は波長595nm,最大出力40 J/cm2のパルスダイレーザーであるが,パルス幅が可変(0.45ms~40ms)で,ダイナミック・クーリング・デバイス®とよばれるテトラフルオロエタンガス(-26.1℃)による皮膚冷却装置を付属していると言う特徴を有する.従来型の機種より波長の長いことから,より深くまでレーザー光が到達し,長いパルス幅,大きい出力により,より少ない副作用で,より大きな血管をターゲットとできる.ALPDLは5種類の円形のハンドピースと3x10mmの矩形のハンドピースを装着することができる.色素斑用ハンドピースは,患部の血管を障害することなく,老人性色素斑等の色素性病変を治療可能としている.ALPDLは,単純性血管腫,苺状血管腫,毛細血管拡張症,老人性色素斑,ウイルス性疣贅, 瘡,肥厚性瘢痕/ケロイド,乾癬,光老化等,様々な病変の治療に利用され,有効であるとの報告が示されている.ALPDLのこれらの疾患への治療可能性について報告する.
著者
渡辺 貴裕
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.100-107, 2011-09-30 (Released:2017-07-10)

Stories have been exclusively used as the target of reading in national language education in Japan. However, experiencing a story through drama can also have some benefits. In the UK, this kind of activity has developed; they have conventions such as still image and hot-seating, and they use situations that are not directly written in the original text. A drama lesson conducted by an experienced teacher in a primary school in London is analyzed in this paper. The lesson prompts the understanding of the story by immersing children in a fictitious world. It improves the skills of speaking and listening by setting up an authentic situation where the skills are used. It also helps to develop reading and writing skills; writing activities using the story situation were conducted by a class teacher after the lesson.
著者
渡辺 洋三
出版者
日本評論社
雑誌
法律時報 (ISSN:03873420)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.63-71, 1998-08
著者
渡辺 義明 渡辺 健次 江藤博文 只木 進一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.2802-2809, 2001-12-15
参考文献数
12
被引用文献数
19

大学の教育と研究を支援するため、キャンパス全域に公開端末や情報コンセント、無線LAN等の配備が進んでいる。我々は、このような不特定多数が多様な端末を接続して利用するネットワーク環境に適用可能な、利用者認証と利用記録を行うためのゲートウェイシステムOpengateを開発した。本システムは、閉鎖状態の端末からゲートウェイを通過するWebアクセスと行うと認証画面が表示される平易なインタフェースを持つ。認証にはPOPやFTPサーバが利用できる。認証後には端末へJava Appletを送って利用終了を監視する。このような方法により、ゲートウェイシステムの設定だけで、個人持参のPCから固定設置のWeb専用端末まで、多様な端末群を利用者の事前設定なしに制御できる。本システムはすでに、学内において約9ヶ月にわたり支障なく稼働している。To Support educational and research activities,a lot of "terminals for public use,""network sockets" and "wireless LAN" are implemented in the whole area of the campus. We have developed a gateway system named "Opegate" to authenticate and record users in such an open network environment.When an user accesses from a terminal in closed state to any web site through the gateway system,the system returns the page for authentication.To authenticate the user,POP and FTP servers are applicable.After the authentication,the system sends Java Applet to the terminal and watchs the usage.The setup procedure is needed only for gateway System.Without any setup of each terminal, the system controls wide variety of terminals,from web specific terminals for public use to personal PCs connected to network socket or wireless LAN.The system has been working for 9 months in our campus.
著者
竹橋 洋毅 樋口 収 尾崎 由佳 渡辺 匠 豊沢 純子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.580-590, 2019 (Released:2019-02-25)
参考文献数
25
被引用文献数
4 12

Grit refers to a non-cognitive trait that is characterized by perseverance and passion for long-term goals. In this study, we developed a Japanese version of the Grit Scale and examined its reliability and validity. A confirmatory factor analysis indicated that the Japanese version of the Grit Scale had two factors corresponding to the original version (study 1, 2, and 3). The results indicated that the scale has high reliability (study 1 and 3). Grit was positively correlated with conscientiousness (study 2 and 3) and self-control (study 3). Nonetheless, grit demonstrated predictive validity of longitudinal persistence and success measures over conscientiousness, self-control, and intellectual ability (study 3). These results are consistent with previous studies and support the reliability and validity of the Japanese version of the Grit Scale.
著者
工藤 真哉 対馬 伸晃 澤田 善章 斎藤 文匡 本村 文一 高島 徹 古川 利有 鈴木 唯司 黒滝 日出一 増森 二良 渡辺 耕平 稲積 秀一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1594-1602, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

1983年10月より1989年6月までの間に弘前大学泌尿器科で膀胱移行上皮癌と診断定れ, BCG膀胱内注入療法をうけた120症例における副作用をまとめるとともに, 重篤な合併症とBCG投与との関連性について検討を加えた. 局所的には, 頻尿, 排尿痛などの膀胱刺激症状が102例 (85.0%), 血膿尿が46例 (38.3%) だった. 全身的には, 発熱が43例 (35.8%), 血清GOT, GPT値異常が9例 (7.5%), 全身倦怠感が3例 (2.5%) だった. 重篤な合併症としては, 膀胱容量が50ml以下の高度萎縮膀胱が4例に, 難治性関節炎が2例に, 間質性肺炎が1例に認められた. 高度萎縮膀胱の4例ともに, BCG膀注前後に膀胱部分切除術を施行定れており, 3例はBCG膀注回数が10回以上であった. 低膀胱容量状態に加え, BCG膀注回数が多いことが萎縮膀胱の誘因となることが推. 定れた. また, 4例中2例は非可逆性であり, 組織学的には, 筋層の線維化がより高度であったが, 結核性変化は認めず, 可逆性か否かは線維化の程度により決まると思われた. 難治性関節炎の2例ともに, 関節穿刺液の結核菌培養は陰性で, 非特異的炎症反応だった. 重篤な間質性肺炎の1例は, 気管支鏡生検組織において, 肺胞中隔の著明な線維化とリンパ球浸潤を認めたが, 結核性変化は認めず, BCGに対する過敏性反応が病因であると考えられた.
著者
原 征彦 渡辺 真由美
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.951-955, 1989
被引用文献数
37

茶のタンニン(ポリフェノール)成分として緑茶からカテキン類を4種,紅茶からテアフラビン類を4種分離精製した.これらがボツリヌス菌の芽胞および栄養細胞に対して示す抗菌力を最小発育阻止濃度(MIC)により求めた.芽胞はパウチ法,栄養細胞は画線法でそれぞれを嫌気培養し,ポリフェノール濃度の違いによる菌の生育の有無を調べた.その結果,ガレートカテキン類およびテアフラビン類は100~300ppmの濃度で,ボツリヌス菌の芽胞の発芽および栄養細胞の増殖を阻止した. <BR>同じポリフェノール類が,他の耐熱性有芽胞細菌の芽胞および栄養細胞に対しても抗菌力を示すか否かにつき同じくMIC試験を行なったところ,菌により低濃度で発育が阻止される場合と高濃度でも発育が阻害されない場合とがあり,一定の傾向はみられなかった. <BR>なお本報の一部は日本食品工業学会第35回大会シンポジウム10)において発表した.