著者
嶌田 知帆 長島 啓子 高田 研一 田中 和博
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.422-428, 2013 (Released:2014-12-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

本研究では,先駆種,遷移中・後期種の混植を用いた通称自然配植技術による植栽が行われた法面(奈良県岩井川ダム道路の採石場跡法面)において,先駆種が優占する初期緑化目標群落が形成されているか,及び階層構造が発達しつつあるかを確認するためのモニタリング調査を行った。現地調査はH18~H19 年にかけてヤマハゼ,エドヒガン,ハゼノキ,ヤマザクラ,ケヤキ,イロハモミジ,モミ,ヤブツバキ,モチノキ等の植栽が実施された防鹿柵内の全ての木本植物43 種を対象にH23 年に行った。H23 年調査時の生残率は66.1%であった。調査は過去にH21 年にも行われ,樹高階別本数分布をH21 年のモニタリングデータと比較すると先駆種と中期種は全体的に樹高階の高い方へ移行していた。一方,後期種は両年とも低い樹高階に分布していた。また,樹冠面積割合では先駆種が59.0% と最も大きく,中期種は36.1%,後期種は4.9% と,遷移段階の間に差がみられ,樹冠投影図では主に先駆種が林冠を占めていた。以上のことから,対象地が初期緑化目標群落を形成し,複層林化が進んでいることが示された。
著者
真下 いずみ 田中 和宏 橋本 健志
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.372-379, 2020-06-15

要旨:4年間自閉的生活を送っていた重症統合失調症患者に,生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用い,患者の希望する生活行為である「働くこと」を支援した.作業療法士が,就労継続支援B型事業所内(以下,事業所)に出向いて認知機能,精神症状,身体機能を評価した.多職種連携プランを立案し,事業所職員と協働した結果,患者は通所に至った.また介入前後で機能の全体的評定,社会機能評価尺度,WHO/QOL 26の得点が向上した.以上から,重症度によらず患者が希望する生活行為を遂行することが,社会機能と主観的QOLの向上をもたらすと考えられた.作業療法士が地域に出向いて患者が希望する生活行為に介入することの有用性が示された.
著者
林 邦忠 小田原 清史 笹崎 晋史 山本 義雄 並河 鷹夫 田中 和明 DORJI Tashi TSHERING Gyen 向井 文雄 万年 英之
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物遺伝育種研究 = The journal of animal genetics (ISSN:13449265)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.5-10, 2007-06-01
参考文献数
21
被引用文献数
3

In order to investigate the genetic diversity of the Bhutanese cattle, complete mitochondrial DNA displacement loop sequences from 30 Bhutanese cattle were determined and analyzed these in conjunction with previously published sequences. Sequence comparisons and phylogenetic analyses revealed the presence of <I>B.taurus</I> mitochondrial DNA haplotypes (13.3%), suggesting the genetic introgression of <I>B.taurus</I> genetic materials into Bhutanese population. The remaining <I>B.indicus</I> haplotypes indicated two clades of mitochondrial haplogroups, I1 and I2. The high frequency of I2 haplotype (46.2 %) was observed in Bhutanese cattle. Mean nucleotide divergence values were calculated within populations and Bhutanese population revealed higher value (0.75 %) than those of India (0.41 %) and China (0.19 %) . The results suggested the high genetic variability in Bhutanese cattle consisting of several haplogroups of mitochondrial DNA.
著者
田中 和幸 羽生 修二
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.76, no.660, pp.495-502, 2011-02-28 (Released:2011-03-31)

Reinforced concrete buildings lacking seismic isolation need reinforcement in earthquake-prone Japan. Guidelines for reinforcing them, and thereby conserving their historical value, have been set. This paper evaluates reinforcement efforts, focusing on reversibility and original structures, distinctions between the structures and their reinforcements. 76 modern reinforced concrete buildings are considered. Reinforcements must be distinct from original structures; otherwise the line between original structures and their reinforcements can become blurred. Article 12 of the Venice Charter addresses this concern. Additionally, historical monuments reflect cultural diversity. Reinforcements applied to concrete buildings likewise require originality of design, a fact also recognized in restoration guidelines. A third aspect of these structures is the features requiring reinforcement. Weakened points and other problems of a building must be truly reinforced, not simply disguised. Keeping the above aspects in mind, this paper offers advice on how to best reinforce historical reinforced concrete buildings so that people will enjoy them well into the future.
著者
田中 和彦
出版者
上智大学
雑誌
上智アジア学 (ISSN:02891417)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.313-401, 2005-12-27

<特集>東南アジアの土器と施釉陶磁器(Technology and Chronology of Gazed Ceramics in Southeast Asia) 第4部:フィリピン:貝塚土器の編年 (Part 4: The Philippines : Chronology of the Earthenware of Shell-middens, Earthenware and Glazed Ceramics in Southeast Asia)
著者
安野 彰 大井 隆弘 須崎 文代 田中 和幸 水野 僚子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.137-148, 2017

本研究は,近代住宅における水まわり空間の変容過程を明らかにするため,住宅改良が活発に展開された大正から昭和期にかけて活躍し,平面形式等に都市住宅の典型的傾向を示す建築家・吉田五十八の住宅作品を分析した。具体的には,水まわりの設備が描かれた平面図,展開図,詳細図等を用いて,台所・浴室・便所・女中室について,住宅全体の動線計画における位置づけや室内空間の変遷を検討した。その結果,1940 年頃と1950 年から55 年頃に変化が集中していることが確認された。そこでは,住宅における表と裏の性格と水まわり空間の関係性が段階的に変化していく様子や,新しい材料や技術の導入がそうした変化に与えた影響が捉えられた。
著者
田中 和之
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.265, pp.78-84, 2006-10

書店には安岡の関連本が並び、安岡の言葉を編んだ『安岡正篤一日一言』(致知出版社)がベストセラーになっている。安岡は1983年に86歳で死去したが、死後20年以上たった今でも、その教えを学ぶ勉強会がいくつも立ち上がっている。インターネット上には、安岡を取り上げるサイトが次々に登場している。
著者
大村 浩 田中 和世
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.427-434, 1997-06-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

音声の自然性, 個人性に深く関与する声帯振動は声道特性にも非線形な影響を与えていることが推定される。我々は, 音声分析合成系で扱える複雑さを考慮して, 声帯の比較的滑らかな運動を含む音声生成系を想定し, その非線形効果を, 音声分析合成の枠組みにおいて検討した。初めに, 線形システムの声門開口断面積とホルマントのエネルギー減衰の関係を考察し, 実音声における各ホルマントに対応する成分波形のエネルギー時間パターンを抽出し, その非線形性を示す。この観測結果に基づき, 音声合成方式としてホルマント波形の時間窓関数である非線形エネルギー減衰モデルを提案し, 合成音声聴取による評価実験によってモデルの有効性を示す。
著者
田中 和樹 キム ビョンゴン 小林 嵩 ベッカリ アブデルモウラ 難波 忍 西村 公佐 キム フーン チャン ユン 鈴木 正敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.2, pp.107-118, 2018-02-01

現在の1000倍以上のトラヒックが見込まれる5G以降の無線通信システムでは,ミリ波等の高い周波数帯の小セル局を多数設置して大容量トラヒックを収容する必要がある.小セル一局あたりの通信速度は数十Gbpsと想定され,光アクセス回線の大容量化は喫緊の課題である.更に,既に商用展開が進んでいるC-RAN構成は5G以降も有望なアーキテクチャーと考えられるものの,従来の光アクセス回線の伝送方式は通信速度の十数倍の伝送容量を必要とするため,代替技術が望まれる.光を搬送波として無線信号をアナログ波形のまま伝送するアナログRoF (A-RoF)伝送方式は,伝送帯域を大幅に低減可能で,有望な技術の一つである.本論文では,最初にA-RoF技術の既存適用例として,CATV伝送システムに用いられているIF-over-Fiber (IFoF)伝送方式を紹介する.更に,IFoF・A-RoF方式を無線基地局収容光回線へ適用した場合のシステム構成例を示す.続いて,数値シミュレーションによりIFoF伝送方式が適用可能な伝送条件の範囲を明らかにする.商用のLTE無線基地局及び実フィールドに設置された光ファイバを用いた実験を行い,数値シミュレーション結果との比較を行うとともに,IFoF伝送方式の商用システムへの適用可能性を示す.
著者
田中 和明 小菅 昭一 神波 裕嗣
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.229-230, 1992-02-24

ISO IRDS Service Interfaceは、情報溌源管理のための辞書システムに関する規格案である。現在、DISの郵便投票中であり、来年5月のオタワ会議後にIS化が予定されている。
著者
谷川 力 沢辺 京子 山内 雅充 石原 新市 富岡 康浩 木村 悟朗 田中 和之 鈴木 悟 駒形 修 津田 良夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.31-33, 2015
被引用文献数
5

国内で感染したと推定されるデング熱患者が千葉市で2014年9月8日に確認された.翌日,患者宅周辺を対象としてヒトスジシマカの成虫防除を実施した.防除対策の対象範囲は,航空写真を利用して住宅地周囲の植栽や蚊成虫の潜伏場所を検討し,患者の家を中心とする半径100メートルの円内および近隣の公園とした.殺虫剤の散布前に6カ所で8分間の人を囮にしたスイーピング法によってヒトスジシマカ成虫の密度を調べたところ平均2.8頭であった.密に茂った藪や生け垣など大きな成虫潜伏場所に対する殺虫剤散布には動力噴霧機を使用し,7%エトフェンプロックス水性乳剤を50倍希釈し,500 ml/m<sup>2</sup>で散布した.狭い空間や物陰,小さい植栽への散布にはハンドスプレイヤーを利用し,フェノトリンを50倍希釈し,50 ml/m<sup>2</sup>で散布した.さらに,公園周辺の排水溝にはフェノトリン含有の液化炭酸ガス製剤を1 g/m<sup>2</sup>で散布した.その結果,散布直後にはヒトスジシマカの密度は平均1.2頭に減少していた.
著者
阿久津 智子 松村 一利 田中 和佳 渡邊 賢 櫻田 宏一
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.103-110, 2014 (Released:2014-07-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3 6

OC-Hemocatch (HC), an immunochromatographic test device for fecal occult blood, has been used for the forensic identification of human blood. However, an improved kit, OC-Hemocatch S (HC-S), is currently available and HC was discontinued. Therefore, the applicability of HC-S for the forensic identification of human blood was evaluated. In addition, false-positive reactions with disinfectants and detergents, which were observed when using HC, were tested in HC-S. Similar to HC, HC-S was highly sensitive and specific for the detection of human blood. False-negative results due to high concentrations of human hemoglobin were not observed in 100-fold diluted blood. However, distilled water was not suitable as a diluent. The effects of heating treatment of blood and bloodstains and long-term storage of bloodstains on HC-S were similar with HC. However, no false-positive results were observed when disinfectants and detergents were used for HC-S. In conclusion, HC-S is a suitable and highly efficient test kit for the forensic identification of human blood.
著者
田中 和幸 羽生 修二
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.74, no.640, pp.1481-1490, 2009-06-30 (Released:2010-01-18)

Before World War II, finish materials used on exterior walls in Japan included tile, terracotta, mortar, steel and paint. Though many of these buildings have been designated as cultural properties, approximately 60% of these original finish materials have been remained. The author notes that there are four types of procedures which are followed: repair, restoration, resemblance and alteration. Although many buildings retain original materials in their exterior walls, resemblance and alteration in replacement materials, such as paints, are being used which were unavailable when they were first built. This presents two conservation-restoration dilemmas. First, the original exterior wall materials are being lost, and second, the overall value of the buildings decreases. This paper, drawing on conservation - restoration research, will make recommendations for the replacement of finishing materials on the exterior walls of pre-war reinforced concrete - construction buildings. The paper concludes that care should be taken when retain original materials whenever possible, and / or when choosing replacement materials.
著者
田中 和彦 Kazuhiko Tanaka
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.130, pp.31-43, 2014-03-31

アセスメントはソーシャルワークの要とされ,質の高いアセスメントができてこそ価値に基づくソーシャルワーク実践が展開できるといえる.若手PSWに対するソーシャルワーク実践力の向上を目的とした研修の方向性を探るために,アセスメントプロセスに着目し,若手PSWのアセスメントの特徴について,面接事例を用いた内容分析をおこなった.その結果,若手PSWのアセスメントプロセスにおける困難性として①PSWの枠組みでクライエントのスキルの査定を中心としていること,②変換ミス(クライエントの言葉についてクライエントの真意をくみ取れないまま,PSWの言葉で言い換えている),③話題の回避(クライエントが話したいと思われることについて避けている),④病理・欠損モデル(クライエントの問題点を抽出しようとする視点が強い),⑤直線的理解(状態の原因探しに視点が偏重である)という特徴がみられた.さらに上記5点は相互に影響しあい,アセスメントの本来の目的であるクライエントの全人的理解を困難にしていることがわかった.研修の方向性として,エキスパートのアセスメントスキルの抽出を踏まえ,体験の積み重ねだけにとどまらないアセスメントスキル獲得のための研修の必要性と,そのためのソーシャルワークの「職人技」の言語化の必要性が示唆された.
著者
田中 和子
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.321-340, 1996
被引用文献数
2

Friedrich Ratzel wrote several papers (1878, 1879, 1895b, and 1895c) and book reviews (1881, 1887, 1894, 1895a, and 1897) relating to Japan, and during 1889-1902 at Reipzig University, he gave four lectures on the world outside Europe, including Japan (Fig. 1.). His notes (manuscripts and materials) for those lectures, which are listed in Tab. 1. A and B, have been preserved in the Archives of Geography, Institute of Regional Studies (Geographische Zentralbibliothek/Archiv f&uuml;r Geographie, Instit&uuml;t f&uuml;r L&auml;nderkunde), Leipzig.<br>The examination of his writings revealed Ratzel's discourse on Japan, which has never been investigated by geographers, in connection with his extensive geographical work. This paper makes it clear that:<br>A) Ratzel was interested in Japan and maintained study and a material collection throughout his academic career (Tab. 2).<br>B) At the watershed of 1895 when Japan won the Sino-Japanese War, his negative evaluation of Japan turned to a positive one. Parallel with this change, his research-focus in Japan itself was transferred, that is, his ethnographical and anthropological study shifted to the political geography of Japan as an island empire.<br>C) In his writings before 1895, he pointed out that 1) the physical and mental features of the residents of the Japanese Islands were inferior to those of Europeans, 2)the strange social class system, which, essentially, the Meiji Restoration did not alter at all, and 3) the mysterious pluralistic jurisdiction among East Asian countries, which could easily cause a political dispute. Ratzel's sense of values with reference to European culture and his contempt for an uncivilized race in East Asia were obvious.<br>D) With Japan's defeat of China, Ratzel realized the characteristics of a land of islands and a marine nation, which were common to England. After revisions and rearrangement (Tab. 3.), his discussion of the political geography of islands (1895c) was publishedas the chapter of &lsquo;Islands (Inseln)&rsquo; in &ldquo;<i>Politische Geographie</i>&rdquo; (1897). Ratzel expected that Japan would follow the achievements of England in the near future. The most important reason why he changed his evaluation was that Japanese could master Western culture, technology, and social and political systems within a short term.<br>E) According to Ratzel, because the Japanese were a marine nation with high learning-ability and followed Europe, they succeeded in the reexpansion of marine transport over the ocean, and exceeded thier neighbors China and Korea-China used to be accompanied by Japan and Korea respectively, in culture as well as politics.<br>F) Ratzel's continuing study of Japan could be a synthetic chorography, which describes and explains a peculiar combination between a land of islands in the Pacific Ocean and a marine nation with high learning-ability. The possiblity that he preparedthe publication of &ldquo;<i>Japan</i>&rdquo; can not be denied.