著者
田中 知恵
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-12, 2012-03

結果が不確実であった出来事に対する認知的再解釈と後知恵バイアスに関して実際の出来事を用いて検討した。オリンピック開催地決定前後に調査を実施し,当選都市ならびに落選都市に対する開催地としての望ましさと当選の可能性について調査参加者に回答を求めた。その結果,開催地としての望ましさにおいて当選都市は事前よりも事後に高く回答されたのに対し,落選都市は低く回答された。ただしこの効果はスポーツへの関与度によって調整され,スポーツへの関与の低い参加者は開催を望まなかった都市が落選した場合,すなわち肯定的な結果となった場合に,その都市の望ましさを低めた。また当選の可能性はスポーツへの関与度によって調整された。これらの結果は,関与が低く肯定的な結果となった場合の情報処理方略の観点より解釈された。認知的再評価ならびに後知恵バイアスの効果が出来事への関与度により調整される可能性について考察した。Effects of cognitive reconsrrual and hindsight bias for unconcerned events were investigated using a real event. Two waves of assessment were conducted before and after the venue of the Olympic Games was decided, inquiring the probability and the desirability of a city being selected as the host city. Results indicated that desirability rating of the selected city increased after the selection compared to before. Moreover, the desirability rating of the unselected city decreased after the decision, compared to before. However, this effect was moderated by the respondent's involvement with sports. Participants with low involvement lowered the desirability of the unselected city after the selection when they experienced positive results. The probabilities being selected were moderated by the respondent's involvement with sports. These findings were discussed in terms of information processing strategy of people with low involvement when they meet the positive results. The possibility that involvement in an event may moderate the effects of cognitive reconstrual and hindsight bias is discussed.論文
著者
伊達 ちぐさ 田中 平三
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

健康な成人男子6名(年齢21〜26歳、身長160〜176cm、体重57〜63.5kg)をバランス・スタディーの対象者とした。食塩以外の栄養素は、すべて対象者の栄養所要量を満足させており、摂取食品群の構成も片寄りのないように工夫された基本食を作成した。この基本食を用いて食塩の摂取量が4レベル(1日当たり10g、7g、4g、1.5g)となるように使用する調味料の量を調整して、4種の実験食とした。6名の対象者を2群に分け、一方には10g食塩食を4日間、7g食塩食を7日間、4g食塩食を7日間、1.5g食塩食を10日間、最後に7g食塩食を4日間、合計32日間連続摂取させた。他方には10g食塩食を4日間、7g食塩食を11日間、4g食塩食を10日間、最後に7g食塩食を4日間、合計29日間摂取させた。実験食摂取期間中は、連日蓄尿した。また、7g食塩食と4g食塩食摂取時の最後の2日間には、バランス・スタディーを実施した。すなわち、体外へ排泄されたナトリウムを求めるため、尿へ排泄されたものと共に、この48時間に皮膚と便から排泄されたナトリウムを含むミネラルを全て収集した。実験食摂取中は3〜4日間隔で採血し、一般生化学検査と共に血中ミネラル類、レニン活性、アンギオテンシン、アルドステロン、抗利尿ホルモン等を測定した。ナトリウム出納は、7g食塩食、4g食塩食摂取時はほぼ零平衡を示したが、1.5g食塩食ではやや負出納を示した。血中成分の中では、アルドステロンは4g食塩食摂取時までは大きい変化は認められなかったが、1.5g食塩食摂取時には200%近くにまで上昇した。また、カルシウム摂取量は全実験食で一定であったにもかかわらず、尿中カルシウム排泄量は食塩摂取量が低いほど低下し、日本人にとって不足しやすいといわれているカルシウム摂取の面からは、食塩摂取量は低いほど望ましいことが示された。これらを総合すれば、わが国における成人1日当たり食塩最適摂取量は、4g付近にあるのではないかと推察された。
著者
瀧井 正人 野添 新一 小牧 元 古賀 靖之 神崎 健至 田中 弘允
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.823-830, 1995-10-30
参考文献数
22
被引用文献数
3
著者
安梅 勅江 田中 裕 酒井 初江 庄司 ときえ 宮崎 勝宣 渕田 英津子 丸山 昭子
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.9-17, 2004-03-30

子どもの3年後の発達に影響を与える要因について、長時間保育を含む保育形態、育児環境、属性等の関連を明らかにした。全国87園にて保護者と園児の担当保育専門職に質問紙調査と訪問面接調査を実施し、追跡可能であった485名を有効回答とした。その結果、1)3年後の子どもの発達への年齢・性別調整後の関連要因は、<対人技術>で一緒に買い物に連れて行く機会が乏しい、きょうだいがいる、基準年の運動発達がゆっくりである、<粗大運動><理解>で基準年の運動発達がゆっくりである場合、有意にリスクが高くなっていた、2)全変数投入の多重ロジスティック回帰分析では、<粗大運動>で本を読み聞かせる機会がめったにない、基準年の運動発達がゆっくりである、<対人技術>できょうだいがいる場合、有意にリスクが高くなっていた、3)3年後の子どもの発達への有意な関連要因として、「保育時間」はいずれの分析でも有意とならないことが示された。
著者
赤羽 誠 水野 秀之 平沢 純一 中嶌 信弥 田中 和世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.1060-1066, 2011-12-01
参考文献数
12

JEITA規格IT-4006「日本語テキスト音声合成用記号」は,テキスト音声合成技術の利用拡大を目的として(社)電子情報技術産業協会(JEITA)音声入出力方式標準化専門委員会において,特定のハードウェアやプラットホームに依存せず,様々なアプリケーションやサービスで汎用的に利用可能な日本語テキスト音声合成用記号として規格化されたものである.本稿では,本規格策定の経緯と位置付けについて概説するとともに,テキスト音声合成用記号の構成とその記述方法について解説する.また,国内外におけるテキスト音声合成技術に関連する規格の動向についても解説する.
著者
田中 郁昭
巻号頁・発行日
2013

筑波大学博士 (工学) 学位論文・平成25年3月25日授与 (甲第6439号)
著者
星川 清親 中村 聡 後藤 雄佐 田中 正夫 壁谷 雄一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.610-615, 1994-12-05
被引用文献数
2

1991年にスイートソルガム14品種を用いて, 出穂期までの播種後日数(DAS-H)と収量及び収量に関与する諸形質との関係を調べた. さらにその中の8品種を1991年から3年間栽培し, 出穂期の年次変動, DAS-Hと収量との関係を解析した. 1991年の実験では, DAS-Hが多いほど, 茎乾物収量が多く, 品種間で直線的な関係が認められた. また, 収量に関与すると考えられる形質, つまり総葉数, 伸長節間数, 茎長, 茎直径についても同様な関係が認められた. 3年間の実験の結果, DAS-Hは, 品種によっては年ごとに大きく変動した. 例えばWrayの出穂期は, 1991年ではDAS-H88(8月31日, 1993年ではDAS-H125(10月5日)で, 播種後日数にして37日の差があった. これを出穂期までの積算温度(CAT-H)でみても同様で, 1991年と1993年とで585度日の差があった. また, 各品種をDAS-H順に並べると, その順位も年により変動し, 一部の品種では早生か晩生かを決定できないものもあった. すなわち, 1992年では中生品種と位置付けられるRio, Keller, Wrayは1991年では早生品種, 1993年では晩生品種に位置づけられる結果となった. 品種によって出穂期の年次変動が大きく, しかも収量及び収量関連形質の年次変動と異なるために, 3年間を通してみると, DAS-H (CAT-H)収量, または収量関連形質との相関は低かった. しかし, 年ごとのDAS-Hと収量または収量に関与する形質との間には, 高い正の相関が認められた.
著者
田中 真由美 大湊 佳宏 土田 泰子 Tanaka Mayumi Ominato Yoshihiro Tsuchida Tasuko
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
長岡工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:00277568)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.19-24, 2009-11

This paper reports the progress of the extensive reading project launched by the English language teaching staff at Nagaoka National College of Technology. The overall aims of this project are to develop a curriculum which incorporates extensive reading into the general English courses, and to examine its effectivenss through practical researches, in order to increase students English proficiency and promote their autonomous attitude towards studying English. As an initial undertaking of the project, extensive reading is being conducted this year mainly in the English reading course for first-year students. The result of the first six-week extensive reading shows that the amount of students reading depended on the teachers guidance and support. It is suggested that teachers need to provide students with a wide variety of support to motivate them to read out of class, in order to cope with the time limitation for in-class reading.
著者
鶴 剛 森 浩二 幸村 孝由 田中 孝明 武田 彩希
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

宇宙最初期に誕生する超巨大ブラックホール「ファーストブラックホール」を探査・研究し,銀河も含めた形成と進化を読み解くことが本研究の科学的最終目標である.現在宇宙X線観測で主流のX線CCDでは読み出し速度が遅く,非同時計数によるバックグラウンド除去ができないので,科学目標に必要な微弱な天体のX線精密分光撮像が不可能である.そこでイベント駆動X 線SOIピクセル検出器(SOIPIX)を開発する.実際のサイエンス実験にも使用可能な25mm×15mmサイズのXRPIX5をフレーム読み出しで動作させることに成功し,場所による性能変化がほとんどないことを確認した.XRPIX5の改良版であるXRPIX5bのプロセスを行なった.この素子を最大4枚重ねて,偏光X線検出実験などを行うことを目的に,読み出しシステムの開発を開始した(スタックXRPIX).FY2017にその具体的な実験を行う予定である.読み出しノイズの低いXRPIX3bを用いて,裏面の低エネルギーX線感度の評価実験を行なった.その結果,昨年の不感層厚み1μmを半減し,0.,5μmにすることに成功した.開発目標が1μmであり,目標をクリアすることに成功したことを意味する.開発開始当初より,常温から0℃までは,温度を下げることで暗電流は下がるのだが,そこから減らない現象があった.この現象の解明に努力し,X線検出ノードでの保護回路のオフリークだろうという結論を得た.この暗電流を削減する素子の製造を行なった.前年度までの研究で,二重化SOIウェハを用いることで読み出しノイズ性能を向上をさせる見込みを得た.そこで今年度,XRPIX6Dとしてプロセスを行い,性能評価を行なったところ,15e(rms)の読み出しノイズを得た.シングルピクセルであれば,10e(rms)である.この値は開発目標値であり,まずは目標に到達できたことを意味する.
著者
大野 修嗣 鈴木 輝彦 原 清 今井 史彦 田中 政彦 北川 秀樹 片桐 敏郎 小林 厚生 秋山 雄次 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.701-707, 1990

症例は68歳の男性, 昭和61年10月気管支喘息と診断され, 昭和63年7月よりプレドニソロン10mg/dayの内服を開始.同年9月5日より5mg/dayに減量された.同年9月26日下肢の脱力感出現, 2日後には対麻痺にて歩行不能となった.症状発現後6日目に入院.入院時, 記銘力低下.見当識障害・項部硬直・対麻痺(いずれの筋もMMT2以下).軽度の線維束攣縮・感覚障害・直腸膀胱障害を認めた.白血球数24580/mm^3・好酸球数13760/mm^3・ESR31mm/hr・IgE1200IU/ml・骨髄像にて好酸球19.9%・脳脊髄液中好酸球10%.心電図でV_1V_2のr消失, ミエログラヒフィー, 同部のMRIにて脊髄前部に索状の腫瘤陰影が認められた.腹部単純X線では陽管の麻痺が認められた.プレドニソロン60mg/dayより投与開始, 臨床症状・好酸球の速やかな改善とMRI上の腫瘤陰影の消失が認められた.すなわち, 本症例のごとき重篤な症例に対しても, 早期のステロイド剤大量投与の有効性が示唆された.また, 好酸球性肉芽腫と考え得る本症例の髄腔内の肉芽腫様病変がアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)のある種の神経症状の原因として示唆に富むものと考えられた.
著者
小島 久史 三好 匠 田中 良明 富永 英義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.362-370, 1998-06-25
被引用文献数
11

B-ISDNが実現されると, 放送をはじめとする各種マルチキャストサービスがトラヒックのかなりの部分を占めると考えられる.そのなかでも, 今後多数出現すると考えられているミニ放送や専門放送等の視聴率の低いサービスでは, 視聴者のいる局が少なく, また時間と共に変化するので, 動的なマルチキャストルーチングを行う必要がある.また, B-ISDNの基盤となるATM網においては, VPが網の目のように張りめぐらされており, VP環境を意識したルーチングが必要である.本論文では, VP使用の制御を行う直通VP制限アルゴリズムを提案し, ATM網に適用したときの特性評価を行った.その結果, 物理網が非階層構成の場合は提案アルゴリズムが適していること, 階層構成の場合は静的ルーチングで十分であることがわかった.
著者
澤田 東一 半沢 大介 石田 真之助 田中 潤
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2002, no.5, pp.245-246, 2002-09-20
被引用文献数
1

This study deals with the influence which the degree of devotion of the driver using the steering assistance system has on manual steering after the system stop. In this experiment, the course which imitated the highway by the driving simulator. The driver is run using the steering assistance system. The system stops after that and the driver makes a lane change. In this analysis we compared the driver vehavior in this case with the case where the system is not used. Consequently, the driver regained the feeling of steering promptly after the system stop, and vehicles did not depart from a lane. However, the driver behavior is better after the system stop when the degree of devotion to driving of the driver at the time of system operation is high.
著者
古賀 千種 深津 智恵美 田中 薫樹
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-11, 1979-12-30

食品の嗜好性に影響を与えている因子が性格特性とどのような関係にあるかを,18歳〜20歳の女子学生169名を対象に調べた。嗜好因子の分析は松村のテストを用い,これにより嗜好指数を算出した。性格検査はモーズレイ性格検査(MPI)及び顕現性不安テスト(MAS)を用いた。更に肥満度をBroca指数により算出しこれと嗜好指数との関係,またBroca指数と性格特性との関係を検討した。その結果は下記のように要約される。1)性格特性一嗜好指数外向性得点の高い者ほど嗜好指数が高い傾向がみられた。すなわち外向性の者ほど食物に対して順応性や弾力性があることを示している。神経症的傾向の高い者ほど嗜好指数が低い。すなわち神経症的傾向の高い者ほど特に献立や調理についての知識や学習不足の傾向にあることがうかゞわれる。不安度と嗜好指数との間には関係は見られなかった。2)嗜好指数-Broca指数有意な相関は得られなかった。3)Broca指数ー性格特性外向性,神経症的性向および不安度とBroca指数との間には有意な関係は得られなかった。