著者
新宅 賀洋 千須和 直美 小橋 麻衣 田中 都子 木村 美佳 春木 敏
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.145-154, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

【目的】A府B市C校区では,2010年度より開始された国土交通省の「高齢者等居住安定化推進事業」の支援を受け,運営されている地域レストランがある。レストラン調製弁当の喫食ならびに食と運動の健康講座参加と会食を通じて,食生活状況および高齢者の精神的・身体的健康の状況を把握し,地域レストランと連携した高齢者の食生活支援プログラムにおける介護予防の有用性を検討した。【方法】事前に研究趣旨を説明し同意の得られた男性19名・女性30名の高齢者(65歳~92歳)49名が,会食群22名(3食喫食/週,講座への参加と会食),配食群14名(弁当の配食,3食/週),対照群13名に分かれて10週間のプログラムに参加した。各群とも参加前・参加後・終了1ヵ月後に,老研式活動能力指標,主観的幸福感などの自記式による質問紙調査を行い,食事バランス管理・運動の自己管理にはTAKE10!を用いた。【結果】会食群ではプログラム参加後,主観的幸福感が有意に高くなり,食品の多様性を心がけている者は,主観的幸福感が高いことおよび食生活満足度に正の相関がみられた。【結論】高齢者に対する10週間の地域レストランを活用した食と運動の健康講座は,他者との交流や会食によって主観的幸福感が高くなるという精神的健康の改善を促し,高齢者の介護予防の一助となることが示唆された。
著者
田中 信
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.66, pp.25-60, 1930-02

(1) Cathode Sputtering。Sputtering の方法は大體Bossの方法によつた。試片は短冊形の硝子片に着膜した。唯從來の實驗と違つてゐる點は,陰極板の代りに金屬の粉末をも使つたこと,又布や紙を硝子板の代りにして,其を鍍銀して見たこと等である。(2)膜の外見。非金屬的で薄膜に於ける干渉色でない色を持つ膜,Biでは特に白色な膜,普通の金屬光澤の膜,黒味を帯びた灰色の膜,及び其等の中間の種々な膜を經驗した。非金屬的膜の發生原因は不明である。Biの白色膜發生の原因は,放電による陰極の加熱の爲に,硝子板が熱くなるのを主因と考へた。此考へは,放電時間の斷續,放電條件の調節,硝子板背面に放熱器を貼る事等によつて,裏書きされた。併し此等の膜の均整に必要な條件を充しても,猶ほ部分的に現れて來る反射能の不均等に就いては,熱電氣測定と相俟つて,陰極板に或る固有な因子のある事を知つたが,單結晶陰極板を用ゐることによつて,陰極の結晶状態のみが主因をなすものでないことを知つた。併し此の陰極板表面の影響の主因は不明である。(3)顯微鏡寫眞。反射能の小さい膜では明白な粒状組織が見られる。其上に屡々数倍の大粒が散布してゐる。此はBi, Pt, Pd, Agの皆に共通である。特にBiでは,大粒が丘の樣な形になつて存在する事を知つた。尚ほ一つの試みとして,擬格子的粒状構造の数學的分類法を考案し,此種の雜然たる組織の分類法として應用され得る事を指示した。併し,金屬膜の寫眞に就ては顯微鏡の誤差に沮まれて,未だ充分な結果は得られなかつた。又實際の場合に類似した,人工的格子組織の寫眞を作つて,同じ方法でphotometerを使つて比較する事をした。此によつて硫黄の膜が部分的には正方格子に近いと云ふ結果を得た。(4)電氣抵抗。外見上非金屬色を呈する金屬膜は異常に大きな抵抗を持つ。白色膜は金屬光澤膜に比して餘り異らない。白色及び種々の反射能の膜の比抵抗と厚さとの關係は興味ある問題であるが,併し,此れは此處で試みた樣な膜の構造の研究と相俟つて行ふべきものと考へられる。二種の異金屬の膜の二重層を作つて,其抵抗を測つた。Biが關係する膜には,著しい抵抗の特異性のある事を認めた。併し量的の結果は後日に讓る事にした。(5)熱電氣的性質。Bi膜に就ては,同一金屬の異種の膜の間に著しい熱動電力を認めた。此E.M.F.は反射能の良い膜が反射能の惡い膜に對して,hot junctionでelectro-positiveと云ふ結果に達した。放電の斷續,放電條件の加減,硝子板背面に放熱器を付けること等によつて支配した反射能の差に於て,上のE.M.F.と反射能との關係が成立つことを認めた。此と同様にPt, Pdに就ても,放電條件を變へて付けた膜の間に明瞭なE.M.F.の起ることを知つた。要するに膜の熱電氣的性質の研究には,其反射能と關係ある顯微鏡的構造の研究が必要であることは,以上の結果から明かである。又一方では,超顯微鏡的構造の差を熱電氣的性質から研究し得る曙光を認めることも出来たと考へる。又此の構造の研究は,結局は當然電氣抵抗の本質に關する研究と連關して來るであらうと考へる。終りに,此實驗は終始;寺田寅彦先生の懇篤な御指導に頼つて成つたものである。
著者
田中 孝治 岡田 和智 各務 智子 吉田 真也 田口 実佳 山崎 太
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.13-16, 2005-06-30

13年間にわたり岐阜県大垣市で計測したスギ花粉飛散数と夏の気象から, 2005年のスギ花粉飛散数の予測を行った.1991年から2002年までの夏季期間から21期間を設定した.次に, これら期間における最高気温, 平均気温, 降水量, 日照時間の積算値を算出し, 翌年(1992年から2003年まで)のスギ花粉飛散数との間の相関の有無を調べた.次いで, これらの期間から相関係数が0.7以上の期間を抽出し, 予測に有効な指数回帰式を作成した.これに2003年の夏季気象因子のデータを代入することで, 2004年のスギ花粉飛散数を算出し, 実測値と比較して予測に有効な期間と気象因子を選び出した.その結果, 最高気温, 平均気温でそれぞれ1, 4期間であり, それらの期間で指数回帰式より求めた2005年のスギ花粉飛散数の予測値は1823.4〜4918.3個/cm^2/年であった(Table 3).これら5区分における予測値の相関係数, 2004年夏のスギの樹勢因子を考慮して, 2005年の予測値は, 7月6日から7月31日までの平均気温の積算値による予測値を採用するのが妥当で, 約4900個/cm^2/年と考えられる.
著者
倉田 行伸 田中 裕 照光 真 弦巻 立 金丸 博子 吉川 博之 小玉 由記 山崎 麻衣子 瀬尾 憲司
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-97, 2013 (Released:2013-07-06)
参考文献数
12

【目的】今まで外科的顎矯正手術を受けた患者で術後に下歯槽神経の損傷によって生じたと考えられるオトガイ部の触覚閾値が上昇した患者の治癒について検討してきた.そこで本研究では抜歯などの一般的な歯科処置を含む外傷性三叉神経障害を対象として,術後経過の記録から同領域における感覚が自然治癒しにくいと予測できる触覚閾値を後ろ向きに検討した.【方法】顎顔面領域の手術や外傷でオトガイ部に感覚障害を生じた,受傷から初回の触覚閾値測定までの日数が7日から14日であり,受傷から2回目の触覚閾値測定までの日数が21日から56日であった69名を対象とし,初回に対して2回目の触覚閾値が悪化または治癒傾向となった感度,特異度,陽性予測度,陰性予測度を算出し,感覚の自然回復が困難であると予測できる診断効率を比較した.【結果】受傷から1~2週間の触覚閾値が3.0 gのときに感覚の自然回復が困難であると予測できる診断効率が最も高かった.【結論】顎顔面領域の感覚障害では,受傷から1~2週間の触覚閾値が3.0 g以上であると,その後3週間の感覚は自然回復しにくくなることが示唆された.
著者
谷口 弘一 田中 宏二
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13451375)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.45-52, 2011-03-01

This study examined the effects of support reciprocity in the relationships with principals and colleagues on self-efficacy and burnout among teachers. The respondents wore 122 school teachers (51 elementary school teachers, 9 junior high school teachers, 44 senior high school teachers, 17 teachers of school for the disabled, and 1 unidentified by school). They completed measures of social support exchange in the relationships with principals and colleagues, measurements of self-efficacy in student guidance, course instruction, and job relations, and a burnout assessment with a Japanese version of the Maslach Burnout Inventory. Teachers, support reciprocity in the relationships with principals related significantly to their self-efficacy in course instruction and job relations, and marginally significantly to their self-efficacy in student guidance. Results also indicated that teachers, support reciprocity in the relationships with colleagues correlated significantly with their self-efficacy in course instruction and marginally significantly with emotional exhaustion.
著者
柴田 幸子 藤野 祐司 辰田 一郎 金岡 靖 石河 修 梅咲 直彦 荻田 幸雄 恩田 博 松本 雅彦 日高 敦夫 山本 啓司 宮崎 晶夫 西村 淳一 迫 久男 島本 雅典 濱田 和孝 田中 文平 田村 俊次 中村 哲生 須川 倍
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.6-11, 1996-01-01 (Released:2010-09-27)
参考文献数
11

子宮筋腫に対する薬物療法に関してさまざまな試みがなされているが,なかでもGnRHアナログ(プセレリン)の使用が注目されている.今回,われわれは,子宮筋腫患者80例に対してプセレリンを900μ9/日,16週間投与し,その子宮筋腫に対する効果を検討した.対象は27歳から52歳(80症例)の過多月経などの症状を有する子宮筋腫患者で,超音波断層法にて計測し,平均65.4%の縮小率が得られた.また,子宮サイズの縮小とともに子宮筋腫にもとつく症状が軽快していくことが認められた.しかしながら,子宮筋腫発生部位別にみると筋層内筋腫,漿膜下筋腫に比べ,粘膜下筋腫において十分な縮小効果が得られず,筋腫発生部位により薬剤の効果に差があることが認められた.結果として,子宮筋腫患者に対する有用な治療法であると考えるが,子宮筋腫の発生部位別にGnRHアナログ療法の適応症例の選択を考慮する必要があると考えられた.〔産婦の進歩48(1)6--11,1996(平成8年1月)〕
著者
小林 一郎 田中 尚人 星野 裕司 ギエルム アンドレ マルラン シリル 本田 泰寛 岩田 圭佑 永村 景子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,高齢化・過疎化の著しい中山間地の農村を対象に,歴史的構造物や文化的景観を含む土木遺産を基盤とした,地域コミュニティと基礎自治体の協働による持続可能な観光支援システムを構築することを目的とする.そのために,地方分権により既存の道路ネットワークと農村の持つ利点を活かした観光支援政策,事業の先進地であるフランスに範を求め,同地と地理的・歴史的に共通点を多く有する熊本県,鹿児島県の中山間地域の農村を事例として,日仏の事例分析を行う.さらに,フランスにおける現地事例調査,国内における実践的地域づくり活動を通して,農村観光支援のための政策,人材育成,道路ネットワークの活用手法を提案する.本研究の研究対象地は,全て農業を主産業として発展してきており,道路や橋梁,運河,水利施設などを社会的資産としてストックしてきている.フランスにおける先進事例分析として文化的景観保全調査を行い,観光支援に繋がる社会的資産を分析,評価する.さらに,自立した農村観光を成功させている基礎自治体の政策立案・実施システムについて調査する.国内では,文化的景観保全調査及び,先進事例分析を受けて,日本でも実施可能な政策としていくための,地域コミュニティと基礎自治体の協働による地域づくりとして実践する.さらに,このシステム開発に有用と考えられる,研究者,行政担当者,実務者の交流を行う.研究の成果として,フランスの文化的景観制度ともいえるシット制度について,策定手法,住民参加の意味合い,歴史・景観の価値共有手法を整理した.この文化的景観保全地域の現地踏査を行うとともに,海外事例との比較調査を実施し,さらにフランスにおける景域保全計画策定への地域住民参画について整理した.日本においては,各地において,着地型観光の担い手となる観光ボランティアガイド導入の支援を行い,農業や各地の生活・生業の持続可能性に着目した地域内外の交流促進に資する視点・手法の提供を行った.
著者
田中宏 著
出版者
子安農園出版部
巻号頁・発行日
1923
著者
橋本 明記 井上 康夫 松本 英之 方田 勲 上田 和也 市川 鋼一 佐藤 彰 柴田 豊 石原 友和 太田 陽介 野崎 秀人 北之園 展 斉藤 知弘 筋誡 久 小島 政明 鈴木 陽一 田中 祥次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.357, pp.1-6, 2008-12-11
参考文献数
8
被引用文献数
5

2011年7月のBSアナログ放送の終了により解放される3チャンネルと2000年の世界無線会議(WRC-2000)で新たに追加割り当てされた4チャンネルが新たなデジタル放送に利用可能となる。これらのチャンネルでは従来のISDB-Sに加え、2008年7,月に情報通信審議会から答申された高度衛星デジタル放送方式も利用可能となる。本方式では、LDPC符号と低ロールオフ率0.1を採用し、伝送容量をISDB-Sに比べ30%以上拡大できる。ARIBでは本方式の審議の過程で機能と性能を確認するため、擬似中継器と放送衛星を用いた実証実験を行った。本稿ではこの実証実験の詳細について報告する。
著者
三上 訓顯 上北 恭史 合原 勝之 田中 一成
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.45, pp.96-97, 1998-10-30

Last year our group produced some works by the kinetic typograpy throuh Japanese experimentally in the class of degsin college in Japan. Watching the works of the students , various expressions were seen in their structures of scenes and stories and in the ways to express their emotions. These various expressions can make the communicating method abudance. By the result of our experiments , we've recognized that the kinetic typograpy through Japanese is an effective way in the design education in the future.
著者
田中 崇恵
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

新制・課程博士
著者
西尾 正輝 田中 康博 阿部 尚子 島野 敦子 山地 弘子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.215-224, 2007-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
76
被引用文献数
3

dysarthria263例 (言語治療実施群187例と言語治療を実施しなかった対照群76例) を対象とし, 言語治療成績について検討し以下の結果を得た.1.脳血管障害, 脊髄小脳変性症, パーキンソン病に起因する言語治療実施群では言語治療前後で比較して有意に明瞭度が改善したが, 対照群では有意差は認められなかった.2.脳血管障害に起因する言語治療実施群では, 重症度にかかわりなく有意な明瞭度の改善が認められ, 重症化するほど, 改善の程度が大きくなる傾向が認められた.また, 病期にかかわりなく有意な明瞭度の改善が認められた.3.ALSに起因する言語治療実施群では言語治療前後で比較して有意差は認められなかった.軽度例は経時的に明瞭度がほぼ確実に低下し, 重度例のほとんどは最重度の段階で停滞した.以上の結果に基づいて, dysarthriaの臨床において有効な言語治療手法について検討を加えた.
著者
小林 甫 ボロフスコーイ ゲンナデ ストレペートフ ヴィクト ベルナルディ ロレンツォ メルレル アルベルト デイアマンティ イルヴォ サルトーリ ディアナ グリサッティ パオロ ネレシーニ フェデリコ カヴァリエーヴァ ガリー カンコーフ アレクサンド 上原 慎一 横山 悦生 田中 夏子 土田 俊幸 新原 道信 浅川 和幸 小内 透 所 伸一 杉村 宏 木村 保茂 クム ソフィア コルスーノフ ヴィクトル KORSUNOV Victor KONKOV Alexander BOROVSKOI Gennadi STREPETOV Victor DIAMANTI Ilvo BERNARDI Lorenzo リム ソフィア カヴァリョーヴァ ガリー ディアマンティ イルヴォ グリサッテイ パオロ 山口 喬
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

昨年度までの研究によって、非重工業化地域の内発的な産業・社会の発展を将来的に担う、青年層における青年期自立の内実は、職業的自立と社会的自立との相互連関を追求することで考察しうることを確認した。本年度はそのことを、3カ国の青年層に対する「共通調査票」を作成して、定量的に分析することに主眼を置いた。イタリアでは、ヴェネト州内の国立技術高校、職業高校(ヴィチェンツァ市)、私立の職業訓練機関(ヴェロ-ナ市)の生徒を対象とした。サハリンでは、ユジノサハリンスク市、コルサコフ市の職業技術学校、普通科高等学校/リチェ-イの生徒、失業地帯マカロフ市の職業技術学校生と失業青年を取り上げた。日本は、北海道・長野県・岐阜県の工業高校生、東京の工業高等専門学校生、そして北海道と岐阜県の職業能力開発短期大学校生を選んだ。教育階梯差と地域差を考慮してである。この国際共通調査の結果を含め、2年数か月の研究成果を持ち寄り、国際研究報告会を札幌で行った(平成6年10月6日-11日。イタリアの報告4、ロシア3、日本6)。イタリア人の報告によれば、工業や手工業を学んでいる青年層は、現在校を自ら選んで入学し(学科への興味、技術・技能の習得など)、卒業後は家業を継ぐか、自らによる起業を望んでいる。ロシアにおいては、不本意入学的な職業技術学校生と、“意欲"を示す高校生/リチェ-イ生に二分されるが、卒業後の進路としては、いずれも第一次・第二次産業を志向せず、第三次産業の何かの部門を熱望している(銀行、商業、貿易など)。小売業、旅行業、漁業の中小企業を希望する者も25-30%いる。日本では、教育階梯差に関わりなく、一定の不本意入学生を含みつつ、おおむねは「就職に有利だ」という理由で入学し、(イタリア、ロシアと同じく)厚い友人関係を保持している。しかし、卒業後の進路には地域差が見られる。中小企業の選択は各々3分の1程度だが、他の地域への転出希望において北海道(工業高校生、ポリテクカレッジ生)、城南の中小企業地帯出身者が多い東京の高専生に高かった。対極に、岐阜(工業高校、ポリテクカレッジ)と長野とが来る。岐阜県では名古屋など愛知県内への通勤希望も多い。-だが、生活価値志向においては、日本(4地域)とイタリアには大きな違いは存しない。いずこにおいても、自由時間、家族、友情、愛情に高い価値を置き、やや下がって仕事が位置づく。シンナーや麻薬、理由のない暴力、汚職を否定し、結婚前の同棲を許容する。しかし、ロシアでは、高い価値の所在はほぼ同じだが、許し難いことの上位に、親や友人を援助しないことが入り、戦争時の殺人が許容される。ここには、ロシア(サハリン)的な生活上の紐帯と、反面での国家意識とが発現している。ところで、こうした共通の生活価値の存在は、一方では、若い世代が「市民社会」的なネットワーキングを形成しつつあることを示唆する。しかし、他方、職業的な価値志向としては“分散"することもまた事実である。私たちは現在、両者の相互関係の規定要因を見いだすべく分析を重ねているが、重要な要素として注目すべきは、「SOCIAL ACTORS」である。それは、イタリアでは「職業訓練-公的雇用斡旋(学校は不関与)-家族文化-労働組合-他のアソシエーション(社会的サービス分野でのボランティア)-地方自治政府」の連鎖として理解されているものである。青年層は、その生活価値・職業価値を、このような連鎖のなかにおいて、各自がそれぞれ意味づけてゆく。かつほぼ30歳位までは、多くの職業・職場を移動し、自らの“天職"を見いだすのだと言う。またロシアにおいても、1991年以前においては、90%以上の青年が第10学年まで進学して職業訓練を受けるとともに、アクタヴリストーピオニール-コムソモ-ルなどで社会生活のトレーニングを積み、同じく30歳位が各人“成熟"の指標であった。-こうしたイタリア、旧ロシアに対し、日本社会での青年期自立(職業的かつ社会的自立)の「SOCIAL ACTORS」は、企業内の教育・訓練が担ってきたとされる。だが、高等教育機関への進学率の上昇のなかの青年層は、アルバイトなどの学外生活を含む学校生活をそれに代用させているとも言い得る。この点の追究が、次回以降の研究テーマを構成する。
著者
田中 健 村上 大輔 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.133-138, 2008 (Released:2009-04-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

京都市内を事例として,好ましい屋上緑化のデザインを明らかにするため,市内の屋上から撮影した4種類の景観写真と4パターンの屋上緑化写真を組み合わせた合成画像を用いて景観評価実験を行なった。その結果,同一の背景で緑化形態(緑量)を変化させた場合に,緑量が増える程評価が向上することが示され,さらに,和風庭園風緑化が高い評価を得ることが示された。また,アイマークレコーダ(EMR)による眼球運動の測定を行い,画像内の緑量が増える程,被験者が人工物を探索する傾向があることが示された。以上の結果から古都の景観を残す京都では和風の屋上緑化が望ましいと推測された。
著者
角松 生史 小田中 直樹 桑原 勇進 小玉 重夫 佐々木 弘通 進藤 兵 都築 幸恵 長谷川 貴彦 藤川 久昭 山本 顕治 横田 光平 世取山 洋介 DIMITRI Vanoverbeke 内野 美穂
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1990年代後半以降のわが国の統治システムの構造的変容(「構造改革型」統治システム)を対象として、社会構成主義的方法を共通の立脚点とした学際的共同研究を行った。各年度毎に研究キーワードを設定して(2009年度「参加」、2010年度「責任」、2011年度「関係」)シンポジウム・共同研究会を開催した。「まちづくり」と市民参加、説明責任、教育基本法改正、歴史的記憶、裁判員制度、子どもの権利といったトピックについて、構造改革型統治システムのマクロ的・ミクロ的諸相が社会構成主義的観点から分析された。